ブリッジレポート
(2317) 株式会社システナ

プライム

ブリッジレポート:(2317)システナ vol.25

(2317:東証1部) システナ 企業HP
逸見 愛親 社長
逸見 愛親 社長

【ブリッジレポート vol.25】2015年3月期第1四半期業績レポート
取材概要「上期予想に対する進捗率は、売上高50.5%(実績ベースの前年同期の進捗率50%)、営業利益56.1%(同46.8%)、経常利益57.6%(同47.5%)・・・」続きは本文をご覧ください。
2014年8月19日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社システナ
社長
逸見 愛親
所在地
東京都港区海岸一丁目2番20号 汐留ビルディング14階
決算期
3月 末日
業種
情報・通信
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2014年3月 33,969 1,656 1,746 1,797
2013年3月 31,662 2,244 2,292 1,203
2012年3月 30,630 1,822 1,918 904
2011年3月 39,176 2,579 2,661 2,957
2010年3月 3,636 490 536 340
2009年10月 8,161 1,261 1,258 1,180
2008年10月 9,603 1,816 2,153 1,275
2007年10月 7,930 1,595 1,555 849
2006年10月 5,917 961 967 602
2005年10月 4,180 717 691 561
2004年10月 3,093 677 643 391
2003年10月 2,461 516 511 280
2002年10月 1,940 398 380 196
2001年10月 1,524 180 175 93
株式情報(8/5現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
777円 25,382,100株 19,722百万円 14.2% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
30.00円 3.9% 53.87円 14.4倍 502.00円 1.5倍
※株価は8/5終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROE、BPSは前期末実績。
 
システナの2015年3月期第1四半期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
2010年4月1日に(株)システムプロが、持分法適用会社だったカテナ(株)を吸収合併して誕生。旧(株)システムプロのモバイル端末のほぼ全ての工程に係る技術・ノウハウとオープン系技術、旧カテナ(株)の金融分野の業務知識と基盤系技術を融合した事業展開により新たな領域の開拓を進めている。連結子会社7社及び持分法適用会社3社と共にグループを形成。
 
 
【事業内容】
事業は、ソリューションデザイン事業、金融・基盤システム事業、ITサービス事業、ソリューション営業、クラウド事業、コンシューマサービス事業、及び海外事業に分かれる。尚、ソリューションデザイン事業は2014年4月1日付けで、プロダクトソリューション事業とサービスソリューション事業を統合して新たにセグメントした。
 
ソリューションデザイン事業
スマホアプリやWebアプリの開発、スマートデバイスを利用したネットビジネスの企画から設計・開発・運用までを一貫してサポートするサービスソリューション事業と、スマホアプリやWebアプリの性能・評価・品質検証、サービスプロバイダー向けのサーバ監視・運用サービス等のクオリティデザイン事業に分かれる。スマートデバイスの開発企業やネットビジネス関連企業に加え、端末開発やWeb関連の開発で培った技術を活かしつつ、情報家電、公共事業、ホームセキュリティ、自動車業界等の非携帯端末分野、更には、エンドユーザの業務システム開発等、幅広くユーザニーズを取り込んでいく考え。
 
金融・基盤システム事業
国内外の生・損保や銀行を顧客として、金融系システム開発や基盤系システムの開発を行っている。生損保業務では、情報系、契約管理業務、保険料計算、代理店業務から営業管理業務に至るまで幅広い業務ソリューションの開発経験を有し、銀行業務では、メインフレームへの対応はもちろん、オープンシステムの分野においても、営業店系システム及び対外系チャネルシステム等で豊富な開発実績を有する。
 
ITサービス事業
システムやネットワークの運用・保守・監視、ヘルプデスク・ユーザーサポート、データ入力、大量出力等のITアウトソーシングサービスを手掛ける。顧客は電機メーカ、金融機関、外資系企業、官公庁等。
 
ソリューション営業
ITプロダクト(サーバ、PC、周辺機器、ソフトウエア)の企業向け販売やシステムインテグレーションを手掛ける。ハード販売型のビジネスからサービス提供型のビジネスへシフトを進めており、ITサービス事業等とも連携して所有から利用(クラウド等)へのニーズの変化に対応する事で事業拡大、高付加価値化を図っている。顧客は電機メーカ、外資系企業。
 
クラウド事業
クラウド型サービスの導入支援からアプリケーションの提供までを手掛けており、「Google Apps for Business(以下、Google Apps)」と同社が開発した「cloudstep」の組み合わせによるシステナ版グループウエアと一体となったシンプルなクラウドサービスを提供している。「cloudstep」とは、「Google Apps」等のクラウド型サービスの使い勝手を向上させるための業務アプリケーションや運用者向け管理ツール等の総称。 現在、パブリック・クラウドに特化しているが、プライベート・クラウドへの対応も進めている。
 
コンシューマサービス事業
連結子会社(株)GaYaを中心に事業を進めている。スマートフォン向けソーシャルゲームの企画・開発・提供、受託開発・開発支援に係る収益がセグメントされている。自社タイトルやエンジンの複数プラットフォームへの展開とPC/スマホの垣根を越えたマルチ対応ゲーム制作に取り組んでいる。
 
海外事業
タイの現地法人Systena (THAILAND) Co.,Ltd.及び米国の現地米法人Systena America Inc.の連結子会社2社を中心に事業を進めている。タイの現地法人(バンコク)は、東アジアの成長をシステナグループに取り込むべく、13年4月に設立され、10月に営業を開始した。監視カメラサービス事業とサーバ構築事業が立ち上がっており、14年6月からバンコクグルメサイト「バングル」のサービスを開始した。2年での黒字化を目指している。

一方、米国の現地法人(カリフォルニア州)は13年11月に設立され、14年1月に営業を開始した。①米国に進出した国内大手通信キャリアや米国でデバイス及びサービスを展開するメーカ向けのモバイル及び通信関連の開発・検証支援、②FirefoxやTIZEN等、第3のOSを搭載したスマートデバイスやオートモーティブデバイスの研究開発、及び③SNSゲームや自社商材コンテンツを利用したスマホアプリの展開等を事業領域とし、最新技術・サービスの動向調査やインキュベーションセンターとしての機能も担っている。
 
 
 
2015年3月期第1四半期決算
 
 
前年同期比7.2%の増収、同38.0%の経常増益
売上高は前年同期比7.2%増の81億97百万円。ネット関連の各種ソフトウエアやサービスの開発を中心に主力のソリューションデザイン事業の売上が増加した他、事業部間の連携強化が成果をあげクロスセル(cross-sell)が進んだ事で、金融・基盤システム事業、ITサービス事業、ソリューション営業事業の売上も増加した。
営業利益は同43.6%増の3億95百万円。前年同期にあった大型案件の反動と先行投資の影響からクラウド事業の利益が減少したものの、他のセグメントの利益が揃って増加。中でも、収益性が大きく改善した3事業(金融・基盤システム事業、ITサービス事業、ソリューション営業事業)の寄与が大きかった。四半期純利益が4億05百万円と同166.9%増加したのは税効果会計の影響による。
 
 
ソリューションデザイン事業
売上高26億02百万円(前年同期比8.3%増)、営業利益1億62百万円(同0.3%増)。前期での「プロダクトソリューション事業」と「サービスソリューション事業」を統合して、今期より新たに「ソリューションデザイン事業」としてセグメントした。このため、前年同期の実績は、「プロダクトソリューション事業」と「サービスソリューション事業」を合算したもの。
また、「ソリューションデザイン事業」は、組込み系の開発・検証を含む各種ソフトウエアやサービスの開発を行う「サービスソリューション事業」と各種製品やソフトウエア開発のプロジェクト管理・企画・仕様定義・品質管理に携わる「クオリティデザイン事業」の2事業に分かれる。
 
サービスソリューション事業
売上高17億00百万円、営業利益1億37百万円。各種ソフトウエアやサービスの開発では、通信キャリアのインターネットサービス分野での受注が拡大した他、インターネットを利用したサービス、ゲーム、証券、教育といったネットビジネスの分野の受注も増加した。一方、組込み系では、同社のモバイル端末開発の豊富なノウハウと実績が評価され、情報家電やホームセキュリティ、車載関連の引き合いが増えている。また、セキュアブレイン社と共同開発した同社のオリジナル製品でスマートフォン向け不正送金・フィッシング詐欺対策アプリ「Web Shelter」が売上を伸ばしている。東京スター銀行での採用をきっかけに引き合いが増加し、複数の金融機関で導入が決まったと言う。
 
クオリティデザイン事業
売上高9億01百万円、営業利益24百万円。スマートデバイスやWebサービスの分野で培った豊富なノウハウと実績を活かして、公共系、サービス系、システム系、ネットワーク系での受注拡大に取り組んでいる。モバイル系では、米国を中心に海外展開を進めており、試験計画・設計のコンサル業務から商品性・ユーザビリティ評価の実施まで幅広く受注活動を行っている。
 
金融・基盤システム事業
売上高9億36百万円(前年同期比10.4%増)、営業利益84百万円(同105.6%増)。金融システム事業では、各顧客案件の拡充、各ベンダーからの案件横展開、更には成功プロジェクトのノウハウを使った新規案件の獲得に力を入れている。案件の取り込みが進んでおり、下期に複数の大型案件を受注できる見込み。
基盤システム事業においては、ソリューション営業本部と連携した提案活動により受注した大型のシステム更新案件がスタートした。
 
ITサービス事業
売上高11億57百万円(前年同期比7.4%増)、営業利益51百万円(同69.7%増)。既存顧客のIT戦略のパートナーとして業務範囲を拡大すると共に、新規開拓にも積極的に取り組み、全社のリソースをフルに使った「ALLシステナ体制」での「1クライアント複数サービス」の提案営業を展開している。この一環として、前期から継続して取り組んできた、ソリューション営業本部の豊富な顧客に対するITサービス全般の提案営業が成果をあげており、企業統合対応・OSのアップグレード対応等のスポット案件や社内システムサポートの長期継続案件等、新規受注が増加している。
 
ソリューション営業
売上高33億67百万円(前年同期比5.9%増)、営業利益92百万円(同130.8%増)。Windows XPのサポート終了に伴うリプレース案件の寄与で売上が増加した。また、金融・基盤システムを中心とした開発部門との連携が成果をあげ、機器販売からインフラ構築、システム開発、保守運用に至るワンストップサービスの商談が複数進行している。
 
クラウド事業
売上高1億01百万円(前年同期比32.1%減)、営業利益4百万円(同82.2%減)。前年同期に大型案件があった反動で売上が減少する中、営業力強化に向けた先行投資が影響した。もっとも、新規案件獲得と既存契約の更新は順調に進んでおり、特にグループウエアの刷新を目的に「Google Apps」を検討する企業の取り込みが進んでいる。主力取扱商品「Google Apps」と組み合わせて提供する「cloudstep(※)」シリーズの拡充が成果をあげているようだ。

※「cloudstep」とは、「Google Apps」や「Microsoft Office 365」等のクラウドサービスの使い勝手の向上や安全性の向上を目的とした業務アプリケーションや運用者向けの管理ツールを同社独自のソリューションとして展開するサービス群。
 
コンシューマサービス事業
売上高58百万円(前年同期比448.2%増)、営業利益12百万円(前年同期は営業損失24百万円)。スマートフォン向けゲームコンテンツを開発し、SNSゲームを展開する大手SNSサイトへ提供している他、他社が開発・リリースしたゲームの運営受託も手掛けている。第1四半期は、他社が開発・リリースしたタイトルの運営で売上が増加する中、回収ピークを過ぎた自社タイトルをベトナムへ業務移管する事でコストを削減した。
 
海外事業
売上高6百万円(前年同期は売上計上なし)、営業損失15百万円(前年同期は営業損失1百万円)。タイと米国で子会社が事業展開しており、タイでは13年10月にSystena (THAILAND) Co.,Ltd.が、米国ではSystena America Inc.が14年1月に、それぞれ営業を開始した。Systena (THAILAND) Co.,Ltd.は、政情不安もあり、メインビジネスである日系企業向けのクラウド型業務アプリケーションサービスの導入やサーバ環境の再構築等の軌道化が遅れているが、スマートフォン向けモバイルアプリサービスとして6月にサービスを開始したバンコク版レストラン検索アプリ「バングル」が人気を博している。ダウンロードが1,000を超え、ウンロードの増加に伴い日系・非日系のレストランからの掲載申込も増加傾向にあるという。下期からサービス課金を開始する予定だ。
一方、国内大手通信キャリアの米国通信キャリア買収に伴う技術支援と日本企業の米国市場進出に伴う開発・検証支援を手掛けるSystena America Inc.は、設立当初から受注が見込まれた大手通信キャリアとメーカからの受注はもちろん、他の通信キャリアやメーカからの受注にも成功しており、順調に推移しているようだ。
 
 
第1四半期末の総資産は前期末に比べて2億76百万円減の199億79百万円。期末を越えた事で売上債権・仕入債務が減少した他、配当の支払い等で純資産も減少。この他、季節要因で賞与引当金も減少した。自己資本比率は前期末に比べて0.3ポイント改善の63.7%。
 
 
*ROE(自己資本利益率)は「売上高当期純利益率(当期純利益÷売上高)」、「総資産回転率(売上高÷総資産)」、「レバレッジ(総資産÷自己資本、自己資本比率の逆数)」の3要素を掛け合わせたものとなる。ROE = 売上高当期純利益率 × 総資産回転率 × レバレッジ
*上記は決算短信及び有価証券報告書のデータを基に算出しているが、算出に際して必要となる総資産及び自己資本は期中平残(前期末残高と当期末残高の平均)を用いている(決算短信及び有価証券報告書に記載されている自己資本比率は期末残高で算出されているため、その逆数と上記のレバレッジは必ずしも一致しない)。
 
東証発表の「決算短信集計」によると、東証1部、東証2部、及びマザーズ上場企業の14/3期のROEは、金融を除く全産業8.65%(前期は4.99%)、製造業8.55%(同4.53%)、非製造業8.79%(同5.67%)。同社は上場企業の平均を上回るROEを実現している。ただ、14/3期のROEの改善は繰延税金資産の計上で当期純利益が前期比49%強増加した影響が大きい(TIZEN関連の研究開発投資等で営業利益は同26%強減少した)。
 
 
2015年3月期業績予想
 
 
前期比3.0%の増収、同27.0%の経常増益予想
Windows XPのサポート終了に伴うPCリプレース需要の一巡によるソリューション営業の売上減少を見込んでいるため、売上高全体では小幅な伸びにとどまるが、体制整備が進むソリューションデザイン事業や事業モデルを切り替えた金融・基盤システム事業の売上が収益性の改善を伴って大きく伸びる。タイ子会社や米国子会社が通期で寄与する海外事業やラインナップの拡充が進むコンシューマサービス事業は共に売上が損益分岐点に達する見込み。配当は1株当たり15円の期末配当を予定。
 
 
 
今後の注目点
上期予想に対する進捗率は、売上高50.5%(実績ベースの前年同期の進捗率50%)、営業利益56.1%(同46.8%)、経常利益57.6%(同47.5%)、と売上・利益共に順調。第1四半期決算は会社側の想定を上回ったものと思われ、15/3期の出だしは順調。ソリューションデザイン事業における組織改編とネットビジネス分野及び自動車関連分野へのシフト、或いは金融・基盤システム事業、ITサービス事業、ソリューション営業事業を中心にした事業部間連携の強化による「1クライアント複数サービス」の推進等、ハードからソフトへの質の転換と安定した経営体質への変革に向けた取り組みが成果をあげている事がその要因だ。