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(8912) 株式会社エリアクエスト

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ブリッジレポート:(8912)エリアクエスト vol.12

(8912:東証マザーズ) エリアクエスト 企業HP
清原 雅人 社長
清原 雅人 社長

【ブリッジレポート vol.12】2014年6月期第3四半期業績レポート
取材概要「サブリース物件の順調な獲得で今期業績の上振れ期待が高まっている上、来期以降の業績見通しも一段と明るさを増している。清原社長の説明を聞・・・」続きは本文をご覧ください。
2014年5月20日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社エリアクエスト
社長
清原 雅人
所在地
東京都新宿区西新宿六丁目5番1号 新宿アイランドタワー7階
決算期
6月 末日
業種
不動産業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2013年6月 819 49 50 37
2012年6月 646 4 5 19
2011年6月 595 -45 -43 -50
2010年6月 735 12 14 3
2009年6月 879 -182 -179 -381
2008年6月 1,015 -311 -307 -556
2007年6月 1,530 -95 -94 -118
2006年6月 1,580 18 18 -139
2005年6月 2,091 240 236 189
株式情報(5/14現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
114円 20,997,100株 2,394百万円 7.9% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
0.00円 0.0% 6.64円 17.2倍 27.17円 4.2倍
※株価は5/14終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROEは前期末実績。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
"ビルコンシェルジェ"を標榜。東京、神奈川、千葉、埼玉の1都3県の駅前商業地において、テナント誘致等の「成功報酬型ビジネス」と、サブリースやビル管理・メンテナンス(清掃、設備保守、警備管理等)を中心に売買仲介や契約更新・契約管理等も手掛ける「ストック収入型ビジネス」を展開。グループは、グループマネジメントが中心の同社の他、テナント誘致等を手掛ける(株)エリアクエスト店舗&オフィス、ビル管理等の(株)エリアクエスト不動産コンサルティング、及び不動産賃貸の(株)まや商会の連結子会社3社。「エリアクエスト」と言う社名には、「地域に根差して(エリア)、不動産の価値を追求する(クエスト)」と言う思いが込められている。
 
 
【沿革】
創業者である清原雅人氏は1991年4月に明治大学法学部を卒業して野村證券(株)に入社。7年間の証券営業を経て、1998年4月に野村證券時代の友人と共にクエストプロパティーズ(株)を設立して不動産業界に身を投じた。証券営業で培った営業力を活かして商業ビルのテナント誘致(リーシング)で手腕を発揮し、2000年1月に独立してエリアリンク(株)を設立。その後、クエストプロパティーズ(株)の買収等を経て2001年3月に社名を(株)エリアクエストに変更した。データベースマーケティング重視の営業でテナント誘致を中心とした成功報酬型ビジネスを拡大させ、会社設立からわずか3年1か月で(2003年2月)東証マザーズに株式を上場。不動産ファンドの資金流入で不動産業界が活況を呈する中、国道16号線内(東京、神奈川、千葉、埼玉)の商業施設にフォーカスした営業戦略が奏功し、上場後も順調に業績が拡大。04/6期には経常利益が4億円を超えた。
 
 
景気や不動産市況の悪化が業績を直撃
しかし、その後は欧米の不動産市況の減速、米国サブプライムローン問題の顕在化、そしてリーマン・ショックへと続き、世界経済が急速に悪化。その影響が国内の景気や不動産市況にも波及し主要顧客の出店にブレーキがかかり、同社の業績も急角度で下降線をたどった(06/6期から09/6期にかけて最終損失を計上)。このため、07/6期以降はグループをあげてのコスト削減と収益構造改革を推進。不動産市況の影響を受けやすい成功報酬型ビジネスから、安定した収益が見込めるストック収入型ビジネスへのシフトを進め、安定成長が可能な収益構造への転換を図った。
 
売上構造改革の成果が徐々に顕在化
当初はクレームも多く、立ち上がりは順調と言えなかったが、清原社長が自ら作成した「パノラマクリーニング」(作業指示と結果報告のシステム)が高い評価を得て、徐々に営業成果が上がり始めた。取引開始をきっかけに、消防法上問題となる共用部分の不正使用等、貸主側共通の悩み事の解決にも積極的に対応すると共に、漏水を含む水回り、電気、空調、ガス、エレベーターといった設備面でのトラブル等に対しては即時対応(問題が発生すればいち早く駆けつけ)で臨んだ事が、ビルオーナー等からの信頼を深め、同社が物件を借り上げて転貸するサブリース物件の獲得につながった。

尚、「パノラマクリーニング」は清原社長が実際に掃除サービスの現場を見て感じた課題を解決するべくまとめたもので、丁寧で効率的な掃除手順に基づく作業指示と結果報告のシステム。一方、借主への対応は、テナントの接点がないビルメンテナンス会社等では対応が難しいが、同社グループは仲介業務でテナントとの接点がある事に加え、以前からトラブル防止・解決やテナントとの各種折衝等、テナント誘致サービスの一環として手掛けていた。また、設備トラブル等への対応は、借主の営業面での支障など2次的被害を防ぐべく、負担や責任が、借主にあるか、貸主にあるか、不明確な段階で駆けつけ(連絡を受けてから平均6時間以内に出動)、24時間~72時間で、写真、原因究明、改善策、見積もりを提出している。
 
 
 
成長戦略 「ビルコンシェルジェ」サービスによる案件獲得を梃にサブリースを含むビル管理を拡大
 
「パノラマクリーニング」に基づき作業内容が統一され、かつマニュアル化された充実した掃除サービス、賃貸借上のトラブルフォロー、及び設備トラブルへの即時対応の3点からなるサービスを、同社は「ビルコンシェルジェ」としてブランド化すると共に商標登録した。
 
 
下請工事会社の対応を一本化し、漏水含む水回り、電気、空調、ガス、エレベーターといった設備面でのトラブル等への即時対応
営業面での支障など2次的被害の発生を防ぎ、借主の満足度向上はもちろん、貸主の満足度も向上
サブリース物件の獲得とテナントの確保
同社の収益基盤の安定化
 
(2)バブル期に竣工したビルのメンテナンスニーズの取り込みで事業拡大
一方、80年代後半から90年代初めにかけてのバブル期に竣工したビルが20年を経過し、エアコンの故障や水漏れ等、トラブルが増えてくる築年数に入ってきが、「トラブルに対して、リーズナブルな価格で迅速に対応してくれるサービス会社が少ない」と言うのが、ビルオーナー等の悩み。同社はこうしたニーズに応える事でビル管理やメンテナンス等の物件を獲得し、更にはサブリースにつなげていく考え。
 
 
 
2014年6月期第3四半期決算
 
 
前年同期比44.0%の増収、経常利益73百万円
企業の出店意欲が回復傾向にあるものの、同社が強みを有する店舗など商業施設の賃料は弱含みで推移しており、同社グループに限れば、事業環境は手放しで喜べる状態とは言えないようだ。しかし、同社グループは売上構造改革が予想以上に進み、契約積み上げ型のビジネスであるストック収入型ビジネスが順調に拡大しており、売上高が8億37百万円と同44.0%増加。

グループ管理を担う(株)エリアクエスト個別が人材採用を拡大する等、攻めの経営に転じた事で、人件費、求人費、地代家賃、広告宣伝費等を中心に販管費が増加したものの、増収効果で吸収して営業利益が前年同期の32百万円から72百万円に2.2倍に拡大。四半期純利益が経常利益を上回ったのは、投資有価証券売却益84百万円など特別利益95百万円を計上したため四半期純利益は1億20百万円と同5.1倍に拡大した。
 
 
 
 
第3四半期松の総資産は前期末に比べて2億円増の11億29百万円。13年8月に不動産賃貸を手掛ける(株)まや商会を子会社化(全株式を取得)した事が増進増加の要因で、借り方では有形固定資産や無形固定資産(借地権)が増加。一方、貸方では、純資産の増加に加え、サブリース契約の獲得が順調に進んでいる事を反映して長期預り保証金が増加。この他、業容拡大に伴う運転資金の増加に対応して長期借入金をわずかに積み増した他、リース債務も増加した。もっとも、実質無借金経営で、自己資本比率も50.5%と高い。
 
 
2014年6月期業績予想と中期事業計画
 
 
計画を上回るペースでサブリース物件の獲得が進む14/6期
ビル管理、更新料、及びサブリースからなるストック型収入ビジネスが順調に拡大しており、14/6期は連結売上高の72%弱、売上総利益の71%弱に達する見込み。“リノベーションサブリース”の提案も成果を上げ、サブリース物件の獲得が計画を上回るペースで進んでいる事も特徴で、売上・売上総利益の両面で大きく貢献。サブリースの物件数は、14/6期期初に35物件だったが、第3四半期末には72物件に増加しており、14/6期末の目標としていた75物件を第4四半期(4-6月))早々に達成できる見込み。
 
 
※サブリース物件の獲得に寄与するリノベーションの提案営業
 
15/6期以降の見通し
15/6期は人件費の増加が見込まれるものの、サブリースを中心にした売上総利益の増加で吸収し、営業利益が今期予想の94百万円から1億80百万円に増加する計画。ビルオーナー等の貸主との信頼関係の構築がサブリース物件獲得の原動力になっている事や、サブリースは長期にわたり安定した収益が期待できるため、中期的な売上及び利益計画が立てやすい事等から、計画が大きく下振れするリスクは少ない。更なる事業拡大にはマンパワーの不足が課題だったが、採用活動を強化した結果、14/6期は新卒3名を含む10名が入社した。このため、15/6期は人件費の増加が見込まれるものの、サブリースを中心にした売上総利益の増加で吸収する。中期的には、事業エリアを現在の1都3県から、関東、東海、関西へと、全国展開していく考えだ。
尚、従来、15/6期は2億円の営業利益を計画していたが、利回り高さを踏まえて予定していた賃貸物件の売却を見送る事とした。売却見送りにより、本来であれば、1億50~60百万円にとどまるはずの営業利益だが、サブリースの好調で1億80百万円を確保できる見込み。

一方、成功報酬型ビジネスについては、13/6期に底打ちした模様で、今後、緩やかな回復が見込まれる。マンパワーの制約に加え、足元、マクロの景況感の改善が成功報酬型ビジネスの事業環境の改善につながっていない事を踏まえて大きな伸びは見込んでいないもの、徐々に収益の拡大ペースが加速していくとみている。
 
 
18/6期には経常最高益の更新へ
上述のとおり、現在進行中の中期事業計画は、成功報酬型ビジネスの見通しを保守的なものに抑え、ストック収入型ビジネスの積み上げを中心にした計画ではあるが(言い換えると、2つのエンジンのMaximum Performance発揮を見込んでいない)、18/6期には経常利益が過去最高を更新する見込み。加えて、継続的な収益の拡大で財務内容の改善も進み、復配に向けた歩みも着実に進む。
 
 
 
今後の注目点
サブリース物件の順調な獲得で今期業績の上振れ期待が高まっている上、来期以降の業績見通しも一段と明るさを増している。清原社長の説明を聞くと、サブリース物件は乗降客の多いJRの都心駅周辺や人気のある私鉄の主要駅周辺等、優良物件ばかり。ビルコンシェルジュとして、誠心誠意で取り組んだ成果でビルオーナー等の貸主との信頼関係構築が進んでいる。加えて、「リノベーションサブリース」として、地域特性や立地に応じて物件の用途や機能を変更して性能を向上させたり価値を高めたりするリノベーションの提案を合わせ行っている事も物件獲得につながっているようだ。
中期事業計画において、収益のもう一つの柱である成功報酬型ビジネスの見通しは慎重だが、東京五輪の開催に向けた都心不動産市場の活性化や高齢化に対応した商業施設の都心回帰等で今後の事業環境は一段と明るさを増すことが予想され、成功報酬型ビジネスの上振れにも期待が持てる。
同社の経常最高益は成功報酬型ビジネスが伸びた04/6期の4億02百万円だが、ストック収入型ビジネスをけん引役に18/6期の更新が視野に入ってきた。また、現在、累積損失(欠損)を抱えているが、計画取りに収益が回復すれば、17/6期から18/6期にかけて累積損失を一掃できる見込みで、07/6期以来の復配が見えてくる。清原社長は前倒しによる利益計画の達成と早期の復配を目指しており今後に期待したい。