ブリッジレポート
(6498) 株式会社キッツ

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ブリッジレポート:(6498)キッツ vol.16

(6498:東証1部) キッツ 企業HP
堀田 康之 社長
堀田 康之 社長

【ブリッジレポート vol.16】2014年3月期第3四半期業績レポート
取材概要「通期予想に対する進捗率は、売上高が73.5%、営業利益が76.2%と順調。価格改定効果がある事等を考えると、利益面で上振れの余地があると・・・」続きは本文をご覧ください。
2014年3月18日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社キッツ
社長
堀田 康之
所在地
千葉市美浜区中瀬1-10-1
決算期
3月末日
業種
機械(製造業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2013年3月 111,275 6,558 6,521 4,039
2012年3月 108,446 4,638 4,388 2,480
2011年3月 106,059 6,341 5,929 3,063
2010年3月 96,592 6,976 6,248 3,079
2009年3月 127,095 7,188 6,475 3,396
2008年3月 149,274 11,615 10,525 6,290
2007年3月 149,512 11,342 10,652 9,973
2006年3月 107,631 9,673 9,132 8,070
2005年3月 95,705 9,627 8,513 5,804
2004年3月 73,802 4,181 2,962 1,598
株式情報(2/14現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
455円 109,219,523株 49,695百万円 7.2% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
10.00円 2.2% 29.29円 15.5倍 542.41円 0.8倍
※株価は2/14終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROE、BPSは前期末実績。
 
キッツの2014年3月期第3四半期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
バルブを中心とした流体制御機器・装置の総合メーカー。バルブは、「水道メータ周り」、「ガスメータ周り」、「給湯器」等で目にする身近な存在だが、家庭だけでなく、あらゆる産業設備に使われており、同社は素材からの一貫生産を基本に、青銅、鋳鉄、ダクタイル鋳鉄(強度や延性を改良した鋳鉄)、ステンレス鋼等を素材に数万種をラインナップしている。また、バルブの材料として使用される伸銅品の外販を行っている他、フィットネス事業やホテル事業等も手掛けている。バルブでは国内トップ。伸銅品では国内2位のポジションにある。同社を含めた32社でグループを構成している。
 
【事業セグメントの概要】
事業は、バルブ事業、伸銅品事業、及び総合スポーツクラブの経営(フィットネス事業)やホテル・レストラン経営(ホテル事業)のその他に分かれ、13/3期の売上構成比は、それぞれ75.9%、16.1%、8.0%。
 
バルブ事業
バルブは、配管内の流体(水・空気・ガスなど)を「通す」、「止める」、「流れを絞る」等の機能を持つ機器で、ビル・住宅設備用、給水設備用、上下水道用、消防設備用、機械・産業機器製造施設、化学・医薬・化成品製造施設、半導体製造施設、石油精製・コンビナート施設など様々な分野で使用されている。同社は世界有数のバルブメーカーであり、耐食性に富む青銅製や経済性に優れた黄銅製の汎用バルブ、或いは付加価値の高いボールバルブ等のステンレス製バルブにおいて特に高いシェアを有する。鋳物からの一貫生産も同社の特徴で、日本で最初に「国際品質保証規格ISO9001」の認証を取得。材質や弁種のラインナップを充実させ、建築設備や各種プラントだけでなく環境・エネルギー・半導体分野にも展開しており、また、グローバルコストの実現に向けて海外生産拠点の強化にも取り組んでいる。13/3期の海外売上比率は約34%。
 
伸銅品事業
伸銅品とは、銅に亜鉛を加えた「黄銅」、すず及びりんを加えた「りん青銅」、ニッケル及び亜鉛を加えた「洋白」等の銅合金を、溶解、鋳造、圧延、引抜き、鍛造等の熱間または冷間の塑性加工によって、板、条、管、棒、線等の形状に加工した製品の総称。キッツグループの伸銅品事業は(株)キッツメタルワークスの事業分野であり、黄銅製の材料を用いた「黄銅棒」を製造・販売している(黄銅棒はバルブ部材の他、水栓金具、ガス機器、家電等の部材としても使用されている)。
 
 
 
2014年3月期第3四半期決算
 
 
国内での売上構成の悪化と円安によるコスト増で前期比19.8%の営業減益
売上高は前年同期比4.0%増の860億40百万円。主力のバルブ事業において建築設備市場の回復の遅れ等で国内販売が同1.9%増と伸び悩んだものの、円高修正を受けて海外販売が同7.8%増加した。

営業利益は同19.8%減の41億15百万円。国内での収益性の高い製品の苦戦と円安による海外子会社からの仕入原価の上昇で(株)キッツ個別の原価率が悪化。これを反映して連結売上総利益が同1.6%減少する中、円高修正による海外子会社販管費の円貨換算額の増加で連結販管費が同4.9%増加した。

四半期純利益は同13.1%減の26億06百万円。為替差益の増加(20百万円→1億81百万円)で営業外損益が、また、投資有価証券売却益が増加する一方(5百万円→1億45百万円)、減損損失が減少した(1億5百万円→25百万円)事等で特別損益が、それぞれ改善した。
 
 
 
バルブ事業  円安を追い風に海外が伸長。国内は人手不足で主力建築設備市場の回復に遅れ
売上高638億95百万円(前年同期比1.9%増)、セグメント利益54億81百万円(同17.8%減)。このうち国内販売は主力の建築設備向けの苦戦(同3%減)が響き、407億51百万円と同1.2%減少。建築設備向けは緩やかな改善が続いているが、人手不足を要因とする入札不調や工事の遅延が頻発しており、期初の想定よりも実需の発生が遅れている。このため、流通在庫も減少傾向にあるものの、調整の途上にある。一方、半導体メーカーの投資再開により半導体関連が同10%増と伸びた他、消費税増税前のマンション建設を追い風にした給装品の好調で水市場向けが同2%増加。機械装置関連も同5%減少したものの、第3四半期に入り回復の兆しが出てきた。

一方、海外販売は円安が追い風となり231億44百万円と同7.8%増加。Perrinブランド(独子会社)及ISOブランド(スペイン子会社)の好調で中国が同19%増と伸びた他、アセアン・その他も同3%増加し、アジア全体で同5%増加。ヨーロッパ・その他が同34%増と伸び、同3%増にとどまった北米も、需要は回復傾向にある。

利益面では、内製化等よる原価低減効果(15.0億円)があったものの、国内での収益性の高い製品を中心にした数量減(14.3億円の減益要因)、為替の影響(5.5億円の減益要因)、及び建築設備向け、半導体製造装置向け等で実施した売価政策(5.3億円の減益要因)等の影響をカバーできなかった。
 
※円高是正の影響
為替レートが円安方向に振れると、外貨建ての海外売上の円貨換算額が増加するものの、(株)キッツ個別が国内で販売する海外子会社製品の輸入価格が上昇する他、円貨換算した海外子会社の販管費も増加する。この第3四半期累計期間では、仕入原価の上昇が約13億円の減益要因となった他、海外子会社販管費の円換算額が6億円増加。一方、(株)キッツ個別の海外売上の円貨換算額が5.6億円、子会社の売上が8億円強増加した。
 
伸銅品事業  材料相場の上昇で販売単価が上昇し、数量も増加
(株)キッツメタルワークスの事業領域である伸銅品事業は、売上高155億96百万円(前年同期比18.8%増)、セグメント利益4億25百万円(同70.7%増)。銅相場が比較的安定して推移する中、販売数量が9%増加し売上が増加。利幅確保に努めた結果、収益性も改善し大幅な増益となった。尚、第3四半期累計期間の国内黄銅棒市場は前年同期比2%増の15,233トン/月。
 
その他  ホテル事業の収益性改善で増益
売上高65億48百万円(前年同期比4.8%減)、セグメント利益3億23百万円(同11.8%減)。フィットネス事業は12月末にはほぼ前年同期並みの在籍会員数に戻ったものの、期中の在籍会員数が前年同期の会員数を下回って推移したため売上高が同2.4%減少。ホテル事業も、空調改修工事とリニューアル工事で客室の一部が使用できなかった影響等で売上高が同6.1%減少した。利益面では、売上の減少に加え、ホテル事業での外壁塗装工事に伴う修繕費の計上が負担となった。
 
 
(株)キッツ個別の業績は、国内外での売上減少と円高修正による輸入品の採算悪化で前年同期比3.5%の減収、同47.4%の営業減益。
国内販売は同2.4%減の333億21百万円。建築設備向けで青黄銅バルブが前年同期並みの売上を確保したものの、鋳鉄バルブが減少した他、機械装置や工業プラントでの使用が多いステンレスバルブが同7.6%減と落ち込んだ。海外販売も137億43百万円と同5.7%減少。ヨーロッパ向けが増加したものの、北米向け及びアジア向けの減少が響いた。
利益面では、利益率の高いステンレスバルブの減少や海外子会社製品の仕入価格上昇で原価率が悪化。IT投資に伴う減価償却費増等も負担となり、営業利益が14億34百万円と同47.4%減少した。ただ、子会社からの配当金の増加や為替差益の計上で経常利益は同28.6%の減少にとどまった。

子会社では、上下水道向けの清水合金が前年同期並みの売上・利益を確保したものの、建築設備向けの回復の遅れで東洋バルヴが前年同期比減収・減益。中国子会社は、キッツ昆山が同減収ながら増益となったものの、キッツ閥門が増収ながら減益。北米での苦戦が響きPerrinが損失を計上した他、キッツアメリカも減収・減益。一方、半導体関連の好調でキッツSCTは売上が増加し、損益が黒字転換した。
 
 
第3四半期末の総資産は前期末に比べて51億94百万円増の1,051億66百万円。(株)キッツ個別及びタイ子会社が価格改定前の駆け込み需要に備えて在庫を積み増した事や運転資金の増加に対応するべく長短借入金を積み増した事が総資産増加の要因。自己資本比率は60.0%。
 
 
営業CFの減少は、税金費用の増加(△9億94百万円→29億05百万円)が最大の要因。投資CFのマイナスをカバーできず、フリーCFは15億13百万円のマイナスとなり、これを長短借入金の積み増しで補った。
 
 
 
2014年3月期業績予想
 
 
通期予想に変更はなく、前期比5.1%の増収、同17.7%の営業減益
第4四半期(1-3月)は、主力のバルブ事業で値上げ効果(後述)やそれに伴う駆け込み需要が見込まれ、伸銅品事業も季節要因で水関連やガス関連が堅調に推移する中、自動車・エアコン関連で消費税率引き上げ前の駆け込み需要が見込まれる。その他の事業では、フィットネス事業、ホテル事業共に売上増と収益性改善に取り組む考え。
利益面では、値上げ効果や好調が続く半導体製造装置向け製品の寄与等で国内バルブ事業の収益性が改善する他、北米や欧州も利益が改善する見込み。
通期では、バルブ事業の売上が880億円と同4.2%増加する他、伸銅品事業の売上も205億円と同14.2%増加(その他の売上は85億円と同4.0%減少)。バルブ事業を中心にした第4四半期の収益性改善で営業利益が54億円と同17.7%の減少にとどまる見込み。

配当は、1株当たり5円の期末配当を予定している(上期末配当を1株当たり50銭増配しており、年10円となる)。尚、当面、配当性向25%を目途に配当を実施していく考えだが、将来的な利益配分の目標を、「自己株式の取得を含め、連結当期純利益の3分の1前後」としている。
 
国内販売価格の改定
昨今、円高修正に伴い素材及び製品の仕入価格が急激に上昇している他、電力等のエネルギー、鉄スクラップ、及び梱包資材等の価格上昇によるコスト増も顕著だ。同社は08年に一部製品の価格改定を実施して以来、5年間にわたり販売価格を据え置いてきたが、上記要因によるコスト増を生産性の向上や合理化による企業努力で吸収する事が難しくなってきた。このため、同社及び東洋バルヴは14年1月6日に、三吉バルブは2月3日に、それぞれ製品価格を改定した。価格改定による利益押し上げ効果は年間18億円が見込まれる(14/3期は2億円)。
改定率は、青黄銅バルブ10~12%、鋳鉄バルブ7%、ダクタイル鋳鉄バルブ7%、バタフライバルブ7~12%、ステンレスバルブ7~10%、鋳鋼バルブ10~15%。
 
 
(2)第4四半期のセグメント別の見通しと取り組み
バルブ事業  国内は値上げ前の仮需による押し上げと値上げ効果、海外は欧米で受注底打ち
国内では、主力の建築設備市場が緩やかな回復が続いているものの、人手不足を要因とする入札不調や工事遅延が頻発しており、期初の想定より実需の発生が遅れている。ただ、国内販売価格改定に伴う駆け込み案件(主に昨年12月に発生した仮需)の納品を1-3月にかけて実施する(来期の第1四半期はその反動が予想される)。また、水市場向けも、公共工事の発注遅れによる工事の遅延が散見されるものの、3月までにはある程度の予算消化が見込まれる。一方、需要堅調な半導体関連では製造装置用に加え、設備用部材の増加が見込まれる。この他、機械装置関連が緩やかながら回復傾向にあり、プラント向けも第4四半期から来期の第1四半期にかけて春の定期修理需要の発生を見込む。

海外では、アセアンが、主要市場であるタイ・インドネシアで足下の不透明感が増しているため、これをカバーするべく、工業化が進むベトナム、内需が堅調なマレーシア、及び更なる建設投資・工場投資が見込まれるフィリピンでの販売を強化する。中国は先行きの景気減速懸念に加え、日本品不買品運動が続いているため、キッツブランド以外のPerrinブランドやISOブランドのプロモーションを強化して新規開拓を進める。
一方、米州では、前期好調の反動で苦戦していた北米に底打ち感が出てきた。加えて、米国安全飲料水法の改正に対応した新素材(鉛を含まない銅合金)バルブの販売拡大も期待できる(今後、カナダでも同様の規制強化が予想されている)。南米では、チリに現地社員を配置して、オイル&ガスや鉱山向け市場の開拓を開始した。
欧州はスピードが鈍いものの景気が回復傾向にあり、引き合い、見積もり、受注が徐々に増えつつある。特にスペインでの回復が鮮明で、15/3期業績への寄与が期待できる。
 
伸銅品事業  水関連・ガス関連の季節需要に加え、自動車・エアコン関連で消費税率引き上げ前の駆け込み需要も
水栓関連は素材が前年同期並みの見込みだが、ガス機器向けと共に需要期を迎えて加工品の出荷が高水準。自動車及びエアコンは消費税率引き上げ前の駆け込み需要で年明けから回復基調にある。
 
その他  フィットネス事業、ホテル事業共に売上増と収益性改善に注力
フィットネス事業、ホテル事業共に売上増と収益性改善に向けた施策を進める。具体的には、フィットネス事業において、各種短期教室等、入会数と売上の増加に向けた施策を実施すると共に、収益性の改善に向け、小規模デイサービスのプラン見直しや光熱費等の諸経費の見直しを進める。また、ホテル事業では、プランの見直しにより宿泊単価アップを図ると共に、「稀石の癒」リニューアルオープンのPRを強化。併せて商品原価の見直しと新商品投入によるサービスエリアの収益性改善にも努める。
 
 
 
(3)インドのバルブメーカー買収  薬品・食品関連市場への参入とインドでの生産・販売拠点確保
14年2月中の作業完了を目指してインドのバルブメーカーMicro Pneumatice Private Limited(以下、Micro社)の買収作業を進めている。Micro社は工業バルブやボールバルブ等のメーカーで、薬品・食品系のプロセスラインで使用されるバルブを得意とする。キッツグループは、今回の買収で、薬品・食品関連市場への参入を果たすと共に、重点エリアであるインドにおいて生産拠点と販売拠点を同時に獲得する事になる。

今後、Micro社の生産技術とキッツグループの技術を融合させたインド向け製品の開発に取り組むと共に、Micro社製品とキッツブランド製品をパッケージで提案し多様なニーズに応えていく。また、インドの日系企業に対して、日本と同様の品質とサービスを提供していく考えで、当面の目標は16/3期にインドで10億円の売上計上。

尚、Micro社はインドマハーラーシュトラ州に本社を置き、1986年の設立で資本金519,200インドルピー(約1百万円)。工業バルブ、ボールバルブ、バタフライバルブ等の製造販売を手掛けており、直近の売上高は217百万インドルピー(約3億57百万円)。従業員88名。
 
 
今後の注目点
通期予想に対する進捗率は、売上高が73.5%、営業利益が76.2%と順調。価格改定効果がある事等を考えると、利益面で上振れの余地があると思われる。価格改定は2008年以来となるが、同業者の多くが追従している模様で、足下、新価格が市場全体に浸透しつつあるようだ。
来15/3期は、国内事業において価格改定効果が通期で期待できる上、緩やかではあるが主力の建築設備市場の回復も続くものと思われる。14/3期に調整を余儀なくされたプラント関連が回復してくれば、収益性の高いステンレスバルブ等が増加し利益の伸びが加速しよう。一方、海外はタイ・マレーシアを主力とするアセアンや中国に不安あるものの、欧米が回復基調にあり、アセアン・アジアと欧米での綱引きとなる。オイル&ガス分野で高い評価を受けているISO(スペイン現法)の「3ピーストラニオンボールバルブ T60」の南米での拡販、アップストリーム(掘削)及びミドルストリーム(輸送)市場での展開、及びアセアン・アジアでのボリュームゾーンの強化等、取り組みの成果に期待したい。