ブリッジレポート:(2428)ウェルネット vol.2
(2428:東証2部) ウェルネット |
|
||||||||
|
企業名 |
ウェルネット株式会社 |
||
社長 |
宮澤 一洋 |
||
所在地 |
東京都千代田区内幸町1-1-7 |
||
決算期 |
6月末日 |
業種 |
サービス業 |
項目決算期 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 当期純利益 |
2013年6月 | 6,866 | 1,393 | 1,420 | 759 |
2012年6月 | 6,254 | 1,198 | 1,278 | 728 |
株式情報(3/7現在データ) |
|
|
今回のポイント |
|
会社概要 |
特徴と強み |
①豊富な導入実績&強固な顧客基盤
同社のマルチペイメントサービスは、導入時の開発費および収納機関との個別契約が不要というハードルの低さが評価され、下記の様に業界を代表するリーディングカンパニーに導入されている。特にリアルタイム性が求められる航空会社、バス会社からの評価の高さは同社にとって大きな財産となっている。 この強固な顧客基盤は同社を支える重要な「見えざる資産」と評価できるだろう。 ②常にチャレンジを続ける企業DNA
請求書発行サービス、収納代行サービス、マルチペイメントサービス、ケータイチケットサービスなど、同社の開発した様々なシステムはほぼ全てが日本で初めて実用化されたものとなっており、加えて同システムの優秀さは、上記実績が証明している。同社は大企業の系列であるわけではなく、ヒト・モノ・カネといった経営資源が決して豊富な状態でスタートした訳ではない。 にもかかわらず電子決済の分野で「デファクトスタンダード」とも言える地位を確立することができた大きな要因の一つには、同社が創業時から生まれ持つ、「常にチャレンジを続ける」という企業DNAがあるのだろう。 宮澤社長は、ビジネスの意味、醍醐味を「自分の可能性を信じ続け、自分があったら便利だなと思う仕組みを自らリスクをとって開発し、すぐに提供できる具体的な形として提供する事」と考えている。 また、インタビューの中でも、「自社でなければできないものを世の中に送り出す事こそが同社の存在意義であり、それが無ければ企業として存在する意味が無い」と述べていた。 社員数は80名弱と小さな所帯ではあるが、後述する「ウェルネットアレテー」に代表される理念、心得をしっかりと掲げていることも企業DNA継承のカギとなっていると思われる。 |
2014年6月期第2四半期決算概要 |
マルチペイメントサービスが牽引し、増収・増益。計画も上回る。
売上高は前年同期比9.8%増収の37億円。EC市場の拡大に支えられ、マルチペイメントサービスが牽引した。販管費も増加したが増収効果で吸収し、営業利益は同8.5%増加の8億円だった。 売上、利益とも期初計画を上回り順調な進捗だった。 <マルチペイメントサービス>
EC市場の拡大に支えられ、堅調な伸びとなった。Jetstar、PeachAviationなどLCC(格安航空会社)のみでなく、JAL、ANAなど大手航空会社も好調だった。 2012年5月に起きた高速ツアーバス事故をきっかけに、ツアーバスが廃止となったため、同社の主要顧客である路線バス会社も好調。乗客数増のみでなく単価も上昇した。 新たに「コンビニ現金受取サービス」を開始した。まずは円滑なオペレーションを行うために取扱額の上限を9,999円としているが、オペレーションがスムーズに行われるようになれば上限引き上げを要請していく。こうしたサービスは定着するのに凡そ1年半くらいはかかるため、収益への貢献は来期後半からと考えている。 <オンラインビジネスサービス>
従来型のPINオンライン(SNSやオンラインゲーム用電子マネー)の販売は減少した。
一方POSでPINをアクティベートするギフトカードの新サービスは順調に伸びたが、PINオンラインの減少を埋めることはできなかった。
<電子認証サービス>
Jリーグ電子チケットサービスの提供が終了したことに伴い減価償却負担も減少した。
負債面では、売上増に伴う収納代行預り金の増加などで流動負債が40億円増加し、負債合計も39億円増加した。 この結果、自己資本比率は前期末比6.4%低下の32.8%となった。 大幅な営業CFおよびフリーCFの黒字を計上している。 (3)トピックス
(株)ローソンと提携し、2013年10月8日より、「コンビニ現金受取サービス」をコンビニエンスストア業界で初めて全国のローソン店舗(2013年8月末現在、10,179店舗。ローソンストア100を除く)で提供を開始した。◎「コンビニ現金受取サービス」の提供を開始 ローソンの店頭マルチメディア端末「Loppi」に消費者が販売事業者から交付された現金受取番号とIDを入力し、発行された引換券を店頭レジへ持参すると現金を受け取ることができる。 詳細は、【事業内容】(1)マルチペイメントサービス④コンビニ現金受取サービスを参照。 ◎「STORES.jp(ストアーズ・ドット・ジェー・ピー)」がマルチペイメントサービスを導入
(株)ブラケット社が提供するサービス「STORES.jp(ストアーズ・ドット・ジェーピー)」が、ウェルネットのマルチペイメントサービスを導入。全国のコンビニエンスストアでの決済が開始された。「STORES.jp (ストアーズ・ドット・ジェーピー)」は、ウェブサイト制作の知識が無くても、簡単にオンラインストアを作ることができるサービスで、新規登録から開業までに要する時間は最短2分。その利便性が評価され、2012年9月のサービス提供開始から現在までで6万店以上のストアがオープンしている。「STORES.jp」でクレジットカード、代引などに加え、今回、決済機能としてコンビニ決済が初期設定として追加されたことで、ストアオーナーとユーザー双方の利便性は更に向上すると両社は考えている。 「STORES.jp」コンビニ決済対応チェーンは現時点では下記の通りとなっている。 ローソン、ファミリーマート、サンクス、サークルK、ミニストップ、デイリーヤマザキ、スリーエフ、セイコーマート ◎東証2部へ上場
2014年2月28日付で、JASDAQから東京証券取引所市場第二部へ市場変更となった。次のステップへの準備にも着手している。 ◎自社株買いを発表
同じく2014年2月28日、昨年9月に続き、株主還元水準の向上および資本効率改善を目的として自社株買いを行うことを発表した。買付上限は15万株(自己株式を除いた発行済株式総数の1.52%)、3億円。 期間は2014年3月3日から6月30日までとしている。 株主還元方針にあるとおり、今回取得した自社株を含め、今期末に保有する自社株については当期純利益の50%分を償却する予定。残余分はストックオプション等に充当するため継続して保有する。 |
2014年6月期通期業績見通し |
業績予想に変更無し。増収・増益を計画。純利益8億円を100% 株主に還元。
売上は、主力サービスであるマルチペイメントサービスが、航空会社、バス会社等主力顧客を中心に引き続き堅調な成長を見込んでいることから前期比9.2%増収の75億円を計画。「バス IT化 プロジェクト」開始に伴うプロモーション費用などもあり、販管費率は若干上昇するが、増収効果で吸収し、営業利益は増益を予想している。新中期経営3か年計画の配当方針に従い、純利益8億円全額を株主に還元する予定。 配当性向を50%とし(前期33.1%)、配当は前期比15.00円/株増配の40.00円/株へ。残額約4億円全てを自己株式の取得および消却に充当する。 |
「バス IT化プロジェクト」および「カイゼン」の進捗 |
このうち、事業開発に関しては「次世代を担うビジネススキームの確立」を目指しているが、その中心的なものが前回のレポートでも紹介した「バスIT化プロジェクト」だ。 概要、進捗などは以下の通り。 航空券販売におけるインターネット予約の比率は2000年にはわずか3%であったが、現在は約65%にまで拡大している。同社は、予約のみでなく発券までも可能にしたシステムを航空会社のために開発したが、これによって航空各社はそれまで旅行代理店に支払っていた手数料を大幅に削減する事が出来た。 このことから、ICTは「革新的な直売モデル」を提供するプラットフォームであることが証明された。 同社はこの航空券販売におけるノウハウを活用し、それまでは時間内にバス会社の窓口に行かなければ購入できなかった都市間高速バスのチケットを、インターネットで予約後、24時間コンビニで購入できるサービスを2001年3月に日本で初めて実用化した。以降100社を超えるバス事業者と契約し、数百路線のバスチケットの発券を行っている。 航空会社に比べ企業規模が小さいバス会社には自前でシステムを開発する体力は無いため、同社のシステムを共同で利用し、販売できたチケット分を売上として受け取る方が合理的であるため、多くのバス会社が利用している。 現在、これらノウハウの集大成ともいえる大規模な統合モデルを都市間高速バス向けに開発中で、他にはない独創的な仕組みを搭載し、バス会社、利用者双方に大きなメリットを提供する考えだ。 <利用者のメリット>
スマートフォンを使って手軽にバスの検索、チケット購入ができる。
単なる乗換案内ではなく、現在の自分の位置と目的地およびそこに到着するための最適なバスが紐付けられている「直感的に使える地図アプリ」(バス会社の実際に運行している道路情報を基に構築)を搭載
車載端末及びGPSの利用により、途中の停留所でも「目的のバスがまだ来ていないのか?もう行ってしまったか?」、「満席なのか?空席はあるのか?」がわかる。
購入後の予約変更も可能
<バス会社のメリット>
電子車掌機能で、チケットを購入していないフリーの乗客を乗せることができるか否かも判断できる等、効率的な在庫管理と販売機会の増大を図ることができる。
スマホ画面上に電子チケットを配布することによる確実な決済が可能
スマホ、タブレットの利用により専用端末の開発が不要で導入コストを抑えることができる。
機能拡充、システム安定運用、コストパフォーマンス向上を目指す「カイゼン」も重要な課題として取り組んでいる。 これまで同社はスピードを最優先にシステムを構築してきたため、つぎはぎにつぎはぎを重ねたような状況になっており、効率性の点で大きな課題となっている。そこで、稼動の平準化のための仮想化、重複を避けるための機能のモジュール化を進め、トラフィック当たりのコスト低減を図る。 札幌に専門の組織を立上げ、プロジェクトをスタートさせた。 メタボ体質から脱却し、筋肉質に変身するための極めて重要な作業と位置付けている。 |
|
参考:中期経営3か年計画(2013年7月~2016年6月)について |
①前計画の検証
前経営計画の各戦略などに関し、現在までの進捗について以下のように自社評価している。
②環境認識と事業戦略
右肩上がりの成長率を維持しているEC市場を事業ドメインとしており、その中で確立した高い競争優位のスキームにより業績を伸ばしてきた。
一方で、事業スキームにもライフサイクルがあり、そのままでは陳腐化が避けられないため、今後も現状のビジネススキームのさらなる発展と新規事業開発へのチャレンジを続けていく。常に「可視化」による客観的評価を行う
ITの本質を、「価値生産者がエンドユーザーと直接結びつき、商品・サービスを、時間と場所の制約を超えて直接売買できるしくみ」と認識している。
快適かつ先進的な決済プラットフォームをコアとし、その周辺に事業領域を拡大することで継続的な利益成長を達成する。
③今後の成長戦略(事業開発・カイゼン)
成長を支える今後3年間の具体的な重点施策を、①次世代を担うビジネススキームの確立 ②カイゼン(機能拡充・システムの安定運用・コストパフォーマンスの向上=筋肉質の企業体質作り)の2つに分け、それぞれ以下の様な具体策を掲げている。 次世代を担うビジネススキームの開発
①バスの革新的直売モデルをバス事業者と一体となって推進
同社は2001年3月、都市間高速バスの予約済みチケットを24時間コンビニで購入できるサービスを日本で初めて実用化し、以降100社を超えるバス事業者と契約、数百路線のバスチケット発券を行っている。また、電子チケット領域においては航空券用ケータイチケットを皮切りに、たとえば札幌ドームなどでチケット発券・認証の実績とノウハウを積み重ねてきた。これらノウハウの集大成ともいえる大規模な統合モデルを都市間高速バス向けに開発中。 都市間高速バスの市場規模は1~1.5兆円程度と同社では考えている。 このモデルはバス事業者・利用者双方の利便性を飛躍的に高めることができる革新的なサービスで、新たな需要も掘り起こすものであり、2014年春までにリリースする予定。 バス利用者は、安心・確実に目的地までのバス便を検索・予約できる一方、バス事業者も、効率的な在庫管理をリアルタイムで行い、販売機会の増大と確実な決済を行う事が出来る。 長年培ってきた信頼関係をベースにバス事業者と協働してマーケティング、プロモーションを行っていく。 ②コンシューマ向けサービスの開発・提供
同社が手掛けてきた決済サービスのコアは、事業者向けの販売代金回収モデルが主流だが、これに加え便利なコンシェルジュ機能をスマートフォンのアプリケーションとして提供することで、支払者となるコンシューマ側に立った支払代行サービスの提供を開始する。2014年夏頃リリース予定。
カイゼン(機能拡充・システム安定運用・コストパフォーマンス向上)
③バリュートランスファープラットフォームの機能拡充(既存サービスの拡充)
指定された銀行口座へ入金することで瞬時に返金できる"ネットDE 受取"に加え、銀行口座以外で受取が可能となるような受取手段の拡充を目指す。これにより銀行口座がなくても送金できるようになるため、送金ニーズに幅広く対応することができるようになる。 マルチペイメントサービスに新たな付加価値が加わることになるため、収納代行の拡大に繋がると考えている。 ④システム安定運用・コストパフォーマンス向上
データセンターが処理するデータ量はここ数年飛躍的に増加。また同社サービスはリアルタイム処理が大きな特徴でもあることから、システムの安定運用は極めて重要と認識している。
そのため、「安定運用」と「運用コスト軽減」を同時に実現する社内体制の整備と教育訓練などを札幌事業所の重点課題として取り組む。具体的には2年間をかけて開発した「原価構成分析システム」で可視化されたスキーム毎の設備投資効率・原価測定に基づき、運用の自動化・効率化を推進すると共に、必要に応じてサービスの統廃合を行っていく。 ④成長シナリオ達成のための体制
成長戦略の両輪(「事業開発」と「カイゼン」)を強力かつスピーディーに推進するために、これら関連プロジェクトを社長直轄として推進する。
若手社員の積極的な登用とともに、必要な人材は外部にも求め「想いを共有できる人」を採用し、目標を達成できる体制を整える。
目的達成へのモチベーション高揚のためにストックオプションなど諸施策も有効に活用する。
会社としての存在意義と社員の行動指針を“ウェルネットアレテー”として定め、実効性のあるガバナンスを実現しているが、これを改めて徹底させる。
(アレテーとはギリシャ語で、「徳」、「優れた者」、「卓越したもの」を意味する。) *ウェルネットアレテー
“あったら便利なしくみ”を作り続けることで社会に貢献します。
その「しくみ」を広く世の中に提案・普及させます。
そこから得た「利益」を社員、株主、次の投資として配分します。
*ウェルネット社員アレテー
既成概念にとらわれず発想します。
まず自分の頭で考え、全体最適な提案をします。
議論はオープンに行い「決めるべき人」が決め、組織として実行します。
「誰が」「何を」「いつまでに」を常に明確にします。
実行結果を検証し、さらに改善、を繰り返します。
報告は正直、正確、迅速に行います。
提供役務と対価を文書化して合意後に取引を行います。
清廉を旨とし、接待、贈り物を受けません。
⑤中期経営3か年計画の数値目標
◎営業利益目標 20億円(2016年6月期)
中期経営計画の初年度および2 年目は成長戦略の具体的重点諸施策への投資、特に「バスIT化プロジェクト」向けプロモーションに注力する事等から利益成長率は一時的に低下。
最終年度である2016年6月期に営業利益20億円(2013年6月期比143%)を確実に達成し、その後のさらなる利益成長の礎を築いていく。
◎株主へ中期経営計画中の利益を100%還元
信用力維持、中核事業の拡充、新規事業開発の原資として今後も必要十分な手元資金は維持していくが、すでに財務面の健全性は十分に備わったと判断しており、今後は、株主への還元を今まで以上にダイナミックに行うこととし、中期経営計画中の利益は100%株主に還元する。具体的には下記の2施策を実行する。 A) 中期経営計画中の配当性向を特殊要因は除いて、従来の 33.3%から50%に引き上げ、株主への安定的で高い配当利回りを目指す。 B) 税引後利益のうち、配当後残額のすべてを自己株式の取得・消却に充当し、利益の 100%を株主に還元する。 現状保有する自己株式は売渡請求用の自己株式、株式給付信託「J-ESOP」等を除き消却し、新たに取得した自己株式は、用途を目標達成のためのストックオプション等に限定し、その他は消却する。 ◎ROE目標 15%(2016年6月期)
成長戦略の着実な推進、収益力の強化、配当額増加、自己株式の取得・消却を実施し、ROEの向上およびEPSの増加を目指す。中期経営3か年計画最終年度(2016年6月期)の ROE目標を15%とする。 |
本レポートは情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を意図するものではありません。また、本レポートに記載されている情報及び見解は当社が公表されたデータに基づいて作成したものです。本レポートに掲載された情報は、当社が信頼できると判断した情報源から入手したものですが、その正確性・完全性を全面的に保証するものではありません。当該情報や見解の正確性、完全性もしくは妥当性についても保証するものではなく、また責任を負うものではありません。 本レポートに関する一切の権利は(株)インベストメントブリッジにあり、本レポートの内容等につきましては今後予告無く変更される場合があります。 投資にあたっての決定は、ご自身の判断でなされますようお願い申しあげます。 Copyright(C) 2024 Investment Bridge Co.,Ltd. All Rights Reserved. |