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(8860) フジ住宅株式会社

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ブリッジレポート:(8860)フジ住宅 vol.35

(8860:東証1部) フジ住宅 企業HP
宮脇 宣綱 社長
宮脇 宣綱 社長

【ブリッジレポート vol.35】2014年3月期第2四半期業績レポート
取材概要「アベノミクスや日銀による異次元の金融緩和を受けた景況感の回復や消費増税前の駆け込み需要から住宅市場に追い風が吹いている。こうした中・・・」続きは本文をご覧ください。
2013年12月24日掲載
企業基本情報
企業名
フジ住宅株式会社
社長
宮脇 宣綱
所在地
大阪府岸和田市土生町1丁目4番23号
決算期
3月
業種
不動産業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2013年3月 66,047 3,809 3,761 2,268
2012年3月 71,594 4,928 4,903 2,767
2011年3月 59,796 3,648 3,680 2,027
2010年3月 48,614 2,137 2,118 1,237
2009年3月 45,300 2,584 2,388 1,361
2008年3月 48,793 2,723 2,413 2,097
2007年3月 52,221 4,233 4,090 911
2006年3月 41,333 3,229 3,196 1,312
2005年3月 43,954 3,208 2,799 1,661
2004年3月 34,387 2,034 1,891 684
2003年3月 32,905 1,198 1,028 545
2002年3月 33,419 899 692 297
2001年3月 31,433 2,928 2,681 1,503
2000年3月 34,268 1,596 1,117 -2,237
株式情報(11/25現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
686円 35,820,044株 24,573百万円 10.9% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
26.00円 3.8% 90.45円 7.6倍 611.56円 1.1倍
※株価は11/25終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
フジ住宅の2014年3月期第2四半期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
地盤である大阪府下全域の他、阪神間・和歌山県北部地域で、戸建分譲・中古住宅等の住宅・不動産事業を展開。主力の戸建分譲は、分譲ながら間取りや設備仕様等、建築基準法の範囲内で最大限に顧客の要望を取り入れる「自由設計方式」と50~150戸規模で街並みの統一性を重視した開発を行う「街づくり」に特徴がある。また、中古住宅の改装販売、金融機関とタイアップした土地有効活用事業や個人投資家向けの賃貸マンション販売事業、賃貸・管理事業、注文住宅事業も事業の柱である。
 
分譲住宅事業(14/3期第2四半期売上構成比47%)
戸建とマンションの分譲を手掛けており、「自由設計方式」と「街づくり」を特徴とする戸建では、用地仕入・許認可の取得から、宅地造成、設計、建築、販売までの一貫体制を構築。マンション分譲は地価上昇とその後の供給過剰・需要低下に伴う事業リスクの高まりを予見し05年春に事業を停止したが、リーマン・ショック後の地価の下落と分譲マンション市場の需給改善を踏まえて12年2月に再開。駅近の利便性の高い立地等、物件を厳選した1次取得者向けの価格訴求力のある分譲マンション販売を特徴とする。
 
住宅流通事業(同 31%)
「快造くん」のブランド名で展開している中古住宅の再生・販売及び新築建売住宅の販売に係る収益が計上されている。エリア毎に住まい探しの情報拠点となる「おうち館」や、仕入・販売の拠点となる「フジホームバンク」を設けており、中古住宅では地域密着営業により交差点単位での地域情報の収集・分析力をベースとした物件の鑑定力や仕入・販売価格の査定の速度と正確性、更にはリフォーム業者の育成やマニュアル化等、独自のノウハウを強みとする。一方、新築建売住宅では、泉州地区(泉佐野、熊取、貝塚、岸和田中心)で小規模分譲地を開発し手頃な価格の建売住宅を販売。当事業は分譲住宅事業でカバーできない低価格ゾーンをカバーしている。
 
土地有効活用事業(同 9%)
賃貸住宅等の建築請負と個人投資家向け一棟売賃貸マンションの収益が計上されている。建築請負では、遊休地の有効活用を目的とした賃貸マンション・アパート等の建築提案を行なっており、市場調査・企画・設計・建築・竣工引渡後の運営管理までを一貫してサポート。コスト競争力のある木造アパート「フジパレス」シリーズに08年11月サービス付き高齢者向け住宅「フジパレスシニア」が加わり、より独自性が強まった。飛び込みによる営業活動は行っておらず、金融機関や既契約者からの紹介、及びリピートを中心に案件を獲得。また、個人投資家向け一棟売賃貸マンションでは、1棟当たり1億円前後の賃貸アパートが中心。資金運用手段として根強い需要がある。
 
賃貸及び管理事業(同 12%)
100%子会社フジ・アメニティサービス(株)が手掛けている。安定収益源となるばかりでなく、賃貸住宅の建築請負や個人投資家向け一棟売賃貸マンションの他、分譲マンションの販売等との相乗効果も高い事業。
 
注文住宅事業(同 1%)
市況の影響を受けにくい非不動産販売事業育成の一環として、戸建住宅の新築や建替えを請負うといった事業を行っている。会社の第5の柱として展開中。
 
 
中期事業計画(13/3期~15/3期)
 
同社は、地域に根付いた住宅提供事業者として、新築戸建住宅、分譲マンション、改装付中古住宅、土地有効活用の一環としてのアパート建設や個人投資家向け一棟売賃貸マンション販売、更には不動産管理等、住宅・不動産に関する多様な商品及びサービスの提供に取り組んでいる。また、市況変動への対応策として、地価の急激かつ大きな下落にも耐え得る独自の財務指標の下で在庫コントロールを徹底すると共に、市況の影響を受けにくい注文住宅の建築請負等の非不動産販売事業の育成・強化にも取り組んでいる。現在、進行中の中期事業計画では、こうした取り組みを推進し更なる体質強化に取り組むと共に最終の15/3期に売上高870億円、経常利益55億円の数値目標を達成したい考え。
 
 
13/3期 実績
売上高が計画を下回った要因は、中古住宅の苦戦による住宅流通セグメントの売上の計画未達(計画を75億87百万円下回った)。中古住宅は仕入競争激化に伴う価格上昇を踏まえて仕入を抑制したため、販売物件が不足した。前期(12/3期)末の豊富な受注契約残高の消化が順調に進んだ土地有効活用セグメントの売上高が計画を16億99百万円上回ったがカバーできなかった。
一方、利益面では利益率の高い土地有効活用セグメントの売上増が中古住宅の利益減少を補い、経常利益及び当期純利益が当初計画とほぼ同水準で着地した。尚、販売を開始した分譲マンションは期末受注契約残高が312戸に達しており、次期の売上・利益への貢献が期待される。
 
14/3期 予想
当初、見通しが厳しいと予想していた中古住宅は前期、堺市に新設・移転した「フジホームバンク堺店」の効果が出る等、仕入、販売ともに回復傾向となり、第2四半期実績では期初売上予想の65%強の進捗で推移している。自社の強みが活かせる限られた地区でシェアを拡大させるというドミナント戦略が奏功し、住宅流通セグメント全体でも売上、利益ともに期初予想を上回る進捗で推移。自由設計住宅は、阪神間・堺市の大型現場の引渡しが本格化し、分譲戸建の売上・利益が中期事業計画を上回る見込み。
この他、分譲マンションの引渡し(470戸を見込む)もほぼ計画通りの進捗であり、分譲住宅セグメントの売上を押し上げる。また、土地有効活用セグメントでは、ヒット商品となったサービス付き高齢者向け住宅「フジパレスシニア」を北摂・阪神間で更に拡大する。賃貸及び管理セグメントは、土地有効活用セグメントでの賃貸アパート及び分譲住宅セグメントでの分譲マンションの引渡しにより管理物件が増加し収益が拡大する。
 
15/3期 計画
消費税引き上げ等の不透明感がある上、今後の地価の状況いかんで土地の仕入れが影響を受けるため、分譲戸建、分譲マンション共に慎重な見通し(分譲住宅セグメントは減収を見込んでいる)。一方、土地有効活用セグメントは北摂・阪神間での営業強化の成果が期待でき、住宅流通セグメントも緩やかな回復基調が続く見込み。また、土地有効活用セグメントや分譲マンション引渡しの増加に伴い賃貸及び管理セグメントの管理物件も増加する。事業が軌道化してくる注文住宅セグメントでは、堺市に開設した展示場の効果もあり地域密着型の営業展開が成果をあげる見込みである。
 
 
 
2014年3月期第2四半期決算
 
 
前年同期比22.0%の増収、同+36.4%の経常増益
売上高は前年同期比22.0%増の396.9億円。前期の受注水準の低さが影響した土地有効活用セグメントが減少したものの、昨年2月より事業を再開した分譲マンションの引渡しが本格化した分譲住宅セグメントと中古住宅の仕入れが回復傾向となった住宅流通セグメントが増加した。また、販売状況を示す受注契約高は分譲住宅セグメントや住宅流通セグメントに加え、土地有効活用セグメントなどがけん引し同31.9%増加。売上高の先行指標となる9月末の受注契約残高も前年同期末比34.7%増加した。
利益面でも、土地有効活用セグメントの減少が影響したものの、分譲マンションの引渡しの本格化や中古住宅の販売増加により、分譲住宅セグメントや住宅流通セグメントなどが増加した。分譲住宅セグメントの売上高増加が寄与したものの、収益性の高い土地有効活用セグメントの売上高減少が影響し、売上総利益率は同0.3ポイント低下した。販売の増加にともない広告宣伝費、人件費などの費用も増加したが、販管費の増加は前年同期比12.4%の増加と売上高の伸び率を下回り、当第2四半期は売上・利益ともに期初予想を上回る結果となった。
 
 
第2四半期の実績は、売上面と利益面ともに会社計画を上回った。
 
 
分譲住宅セグメントの売上高は前年同期比81.5%増の186.6億円、セグメント利益は同218.1%増の20.1億円。売上及び利益の増加は、当第2四半期連結累計期間に分譲マンションを224戸引渡したことが寄与。また、受注契約高は分譲マンションの寄与で190.2億円と同20.7%増加。受注契約残高は296.2億円と同30.3%増加した。
 
住宅流通セグメント売上高は前年同期比14.0%増の123.4億円、セグメント利益は同50.1%増の3.9億円。中古住宅の仕入れが回復傾向となる中、受注契約戸数が634戸(前年同期は508戸)と好調に推移し受注契約高は125.7億円と同22.2%増加。受注契約残高は34.5億円と同26.2%増加した。
 
土地有効活用セグメントの売上高は前年同期比48.0%減の36.6億円、セグメント利益は同65.8%減の4.4億円。売上及び利益の減少は、前年度前半の受注が低調であったことが影響。一方、「フジパレスシニア」(低賃料タイプサービス付き高齢者向け住宅。契約当たり単価は1億80百万円程度が中心)や「個人投資家向け一棟売り賃貸マンション」が好調に推移し、受注契約高は同106.0%増の76.3億円、受注契約残高は同50.1%増の103.2億円。
 
上記の他、賃貸及び管理事業セグメントは、土地有効活用事業にリンクした賃貸物件及び管理物件の取扱い件数が増加したことや中古住宅アセット事業が軌道に乗ったことから売上高が47.2億円と前年同期比13.3%増加し、セグメント利益も2.8億円と同17.1%増加した。また、立ち上げ期にある注文住宅事業は、売上高が2.9億円と同41.5%増加したものの、受注経費の増加を補いきれずセグメント損失3百万円(前年同期は損失25百万円)となった。
 
 
 
 
今後の売上高の先行指標となる受注契約残高は、増加傾向。
 
 
2013年9月末の総資産は789.7億円と前期末比20.4億円増加した。たな卸資産の増加21.0億円が主なもの。たな卸資産の主な内訳と金額は、販売用不動産156.8億円(前期末128.7億円)、仕掛販売用不動産186.1億円(同155.7億円)、開発用不動産252.3億円(同290.0億)。有利子負債は18.5億円の減少。一方、利益剰余金の増加などから自己資本比率は同1.1ポイント上昇し29.3%となった。
 
 
CFの面では、四半期利益の増加や仕入債務の増加などから営業CFがプラスとなる中、有形固定資産の取得などで投資CFのマイナス幅が拡大したものの、フリーCFはプラスへ転換した。財務CFのマイナスは、長期借入金の返済によるもの。
 
 
 
2014年3月期業績予想
 
 
前期比21.1%の増収、同40.9%の経常増益予想
14/3期予想の前期比21.1%の増収、同40.9%の経常増益に変更なし。前期の好調な受注を反映した分譲戸建の引渡し増加と分譲マンションの竣工・引渡しの本格化で分譲住宅セグメントの売上・利益が大きく伸びる。中古住宅は、15/3期以降の回復を見込んでいるが、足元今期の前半より仕入れは回復傾向。14/3期第2四半期は売上面と利益面で会社計画を上回ったものの消費税駆け込み需要の反動や資材価格、労務費の上昇などのリスク面を考慮し、期初予想は据え置かれた。
配当も1株当たり年26円(上期末13円、期末13円)の予定に変更なし。
 
 
(2)中古住宅アセット事業
賃貸事業と中古住宅販売事業を融合した中古住宅アセット事業を開始。賃貸入居者付きの中古分譲マンションを取得し保有することで賃貸収入を獲得するとともに、将来入居者が退去した後にリフォーム付き中古住宅として販売を行う事業。
今後5年間で1,000戸(約100億円)の賃貸入居者付き中古分譲マンションの取得を目標としている。
 
 
 
今後の注目点
アベノミクスや日銀による異次元の金融緩和を受けた景況感の回復や消費増税前の駆け込み需要から住宅市場に追い風が吹いている。こうした中、同社でも販売状況を示す契約高は、分譲マンション、中古住宅、低賃料タイプサービス付き高齢者向け住宅、個人投資家向け一棟売り賃貸マンションなどの受注が好調に推移し、14/3期第2四半期に前年同期比31.9%増加した。更に、売上高の先行指標となる9月末の契約残高も前年同期末比34.7%増加するなど、下期の業績に対する不安は小さい。