ブリッジレポート:(7776)セルシード vol.12
(7776:JASDAQ) セルシード |
|
||||||||
|
企業名 |
株式会社セルシード |
||
社長 |
長谷川 幸雄 |
||
所在地 |
東京都新宿区原町3-61 桂ビル4F |
||
決算期 |
12月末日 |
業種 |
精密機器(製造業) |
項目決算期 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 当期純利益 |
2012年12月 | 75 | -846 | -842 | -913 |
2011年12月 | 86 | -1,418 | -1,358 | -1,442 |
2010年12月 | 66 | -1,204 | -1,002 | -1,009 |
2009年12月 | 87 | -785 | -788 | -790 |
2008年12月 | 61 | -778 | -644 | -650 |
2007年12月 | 40 | -809 | -614 | -616 |
2006年12月 | 23 | -672 | -464 | -470 |
2005年12月 | 34 | -412 | -336 | -343 |
2004年12月 | 53 | -257 | -214 | -215 |
株式情報(8/29現在データ) |
|
(※セルシードの適時開示アラートメール登録を希望される方はこちらから)
|
今回のポイント |
|
会社概要 |
【事業内容】
事業は、各種用途向けに様々な種類の細胞シートを開発・製造・販売する「細胞シート再生医療事業」と、細胞シートの培養器材である温度応答性細胞培養器材及びその応用製品の開発・製造・販売を行う「再生医療支援事業」とに分かれる。「細胞シート再生医療事業」では、現在、共同研究先と5つの再生医療医薬品パイプライン(新薬候補)の研究開発を進めており、「再生医療支援事業」では、細胞シート再生医療の基盤ツールである温度応答性細胞培養器材(世界で唯一当社が製造)及びその応用製品を開発・製造(多額の設備投資を必要とする一部の工程は外部委託)し、世界各国の大学・研究機関等に提供している。「再生医療支援事業」は細胞シート再生医療事業の提携先開拓のための戦略的な意義も有している。
【細胞シートの特徴】
細胞シートは、生体組織・臓器の基本単位であり、「細胞外マトリックス」を保持しているため、縫合等の処置をする事無く患部に移植する事ができる。また、積層化が可能なため、3次元組織・臓器を構築できる可能性もある。
温度応答性細胞培養器材「UpCell」
細胞シートは、世界で同社だけが製造している細胞シート回収用温度応答性細胞培養器材(製品名:「UpCell」)を用いて作製する。「UpCell」は東京女子医科大学の岡野光夫教授が考案し、同社がそのコンセプトを製品化したもので、「温度応答性ポリマー」の一種であるポリ-N-イソプロピルアクリルアミド(PIPAAm)が使われている。「温度応答性ポリマー」とは、温度によって分子構造を変える性質(温度応答性)を持つポリマーの総称である。PIPAAmを器材(シャーレ)表面にナノテクノロジーを駆使して共有結合で固定すると、培養器材表面は32℃以上で細胞が付着できる適度な疎水性(水分を弾く性質)になり、32℃以下では細胞が付着できない親水性(水分を含む性質)になる。
細胞が有機的に結合した組織を回収する事が可能
一般に細胞は接着蛋白質(「細胞外マトリックス(後述)」)を分泌し自らを固定する事で増殖する。言い換えると、接着蛋白質を分泌して自らをどこかに固定しないと増殖できないのだが、従来の培養方法では、培養した細胞をトリプシン等の蛋白質分解酵素を用いて接着蛋白質を分解して回収していた(それ以外に培養細胞の回収方法が無かった)。このため、酵素処理によりバラバラになった細胞しか回収できず、細胞が有機的に結合した組織を回収する事ができなかった。一方、「UpCell」を用いた温度処理回収の場合、細胞をシート状かつ細胞外マトリックス等を保持した状態で回収できるため、患部定着率が高く増殖が容易だ(バラバラの細胞も接着蛋白質を分泌するため時間の経過と共に定着し細胞同士が結合するが、患部へ定着するとは限らない)。尚、細胞外マトリクスとは、細胞の外に存在する超分子構造体。細胞外の空間を充填すると共に、骨格的役割や細胞間結合の足場的役割を担う他、細胞の増殖・分化も制御する。このため、細胞を細胞として機能させるために不可欠な物質と言う事ができる。 |
中期経営計画(13/12期~15/12期) |
細胞シート再生医療の産業化に向けた3つの柱 「事業提携」、「戦略投資」、「財務基盤」
【事業環境 -再生医療の拡大に向けた国家的な取り組み-】
この4月に再生医療推進法が成立し、5月にはiPS細胞を使う再生医療の実用化に向けた薬事法改正案と再生医療安全性確保法案が閣議決定され衆院に提出された(審議は次期通常国会となる見込み)。
※首相官邸Webサイト(2013年6月14日「日本再興戦略 - JAPAN is BACK -」)等を基に(株)セルシード作成
※日本経済の再生に向けた「3本の矢」のうちの3本目の矢である「成長戦略」は、①日本産業再興プラン、②戦略市場創造プラン、③国際展開戦略という3つの項目で構成されている。
【3つの柱の遂行 -「事業提携」、「戦略投資」、「財務基盤」-】
3つの柱として揚げた「事業提携」、「戦略投資」、「財務基盤」について、Automation(生産システムの自動化)、Allogeneic(他家細胞原料化の実現)、及びAlliance(産学連携・産産提携による取り組み)の3つの「A」をキーワードに進めていく考え。
事業提携:事業提携により、細胞シート再生医療第1号製品の早期事業化(事業提携の構築、研究開発戦略の組み換え)
細胞シート再生医療の産業化に向け克服すべき課題は、“産業化「出口」の確立”、“生産ブレークスルー(技術開発+インフラ整備)”、及び “Innovativeな研究成果の製品化・事業化”の3つ。いずれの課題についても、Innovationを創出している「大学」、製品化ノウハウを蓄積している「先進ベンチャー」、産業化資源を蓄積している「大手企業」等とAllianceを組成して取り組んでいく考え。また、“産業化「出口」の確立” については、各パイプラインをライセンスアウトによる導出や、臨床研究が終了したものは先進医療での活用により(先進医療では「評価療養」として扱われ、保険外併用療養費の支給対象となる)、早期の収益化を図る。一方、“生産ブレークスルー(技術開発+インフラ整備)”については、Automation(生産システムの自動化)、言い換えると、細胞単離、培養、品質評価、積層化といった高度な技術と熟練を要する生産プロセスの自動化に取り組んでいく。この他、原料制約 の解消に向け、他家細胞の原料化(第2世代の細胞シート)やiPS細胞の原料化(第3世代の細胞シート)に向けた取り組みも進めていく。 角膜再生上皮シートにかかる事業展開
角膜再生上皮シートについては、日本での環境変化(フォローの風)を踏まえて、世界戦略を組み換えつつある。日本においては、経済産業省が公募した平成25年度「再生医療等産業化促進事業」に、同社が申請した①「世界標準化に向けた角膜再生上皮シート再生医療製品の有効性評価手法」の検証、及び②細胞シート再生医療製品の製造コストの削減及び品質担保のための品質評価方法の検証が採択された(①及び②の研究について経済産業省から受託したと換言できる)。これに伴い、13/12期より、研究開発費等を計上する予定で、来14/12期より本件実施に伴う補助金収入(営業外収益)等を計上する。
戦略投資 :中長期的な企業価値成長を目指した「戦略分野への先行投資」(「戦略分野」の検討・選定・投資)
上期の特許取得は、新型温度応答性細胞培養器材技術「共培養用器材表面」(欧州、5月発表)、密閉型細胞培養容器による上皮系細胞の新規培養方法(日本、5月発表)、角膜内皮再生シート(韓国、6月発表)、移植用角膜内皮再生シート(韓国、1月発表)、癌組織モデル作製用 癌細胞シート(日本、6月発表)の5件。また、09年度以降、細胞シートの生産自動化に取組むFIRSTサイエンスフォーラムの岡野教授プロジェクトに参画している。同社が担当しているのは、細胞シートの自動積層化装置でスタンプを利用した積層化技術が応用されている。 財務基盤 :収支バランスを改善し持続的成長を支え得る「財務基盤」の確立(公的補助金・助成金活用、資金調達枠設定、支出抑制)
成長資金を取り込むべく、9月にUBS AG ロンドン支店を割当先(第三者割当)とする第10回新株予約権及び第11回新株予約権(行使価額修正条項付)計274個を発行する。新株予約権と資金調達の概要は次の通り。
|
2013年12月期上期決算と通期予想 |
売上高47百万円(前年同期は43百万円)、経常損失216百万円(前年同期は518百万円の損失)
細胞シート再生医療事業の売上はなかったが、再生医療支援事業で前年同期の実績(43百万円)及び期初予想(35百万円)を上回る47百万円の売上を計上した。利益面では、経営合理化策に基づく経費削減と研究開発費の抑制(340百万円→87百万円)で細胞シート再生医療事業の損失が前年同期の375百万円から118百万円へ縮小。この結果、連結営業損失が前年同期の566百万円から224百万円に縮小し、期初予想(435百万円の損失)下回った。
通期業績予想に変更はなく、売上高530百万円(前期は75百万円)、経常損失215百万円(前期は842百万円の損失)
細胞シート再生医療事業において460百万円の売上を計上できる見込み。エマウス社からの契約一時金の売上計上(既に受領済みの契約一時金150万米ドルを前受金から売上高へ振り替え)や、細胞シート再生医療事業に係る提携一時金等を織り込んだ。一方、再生医療支援事業は、前期実績(75百万円)をわずかに下回る70百万円を想定しているが、全社的な支出抑制の範囲内において販売促進活動を展開し売上の積み上げを目指している。損益面では、売上の増加と費用対効果向上を通じた継続的な支出抑制で、営業損失が前期の846百万円から245百万円に縮小する見込み。資金状況に即して機動的かつ柔軟に先行投資及び経費を投下していく考え。 |
|
本レポートは情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を意図するものではありません。また、本レポートに記載されている情報及び見解は当社が公表されたデータに基づいて作成したものです。本レポートに掲載された情報は、当社が信頼できると判断した情報源から入手したものですが、その正確性・完全性を全面的に保証するものではありません。当該情報や見解の正確性、完全性もしくは妥当性についても保証するものではなく、また責任を負うものではありません。 本レポートに関する一切の権利は(株)インベストメントブリッジにあり、本レポートの内容等につきましては今後予告無く変更される場合があります。 投資にあたっての決定は、ご自身の判断でなされますようお願い申しあげます。 Copyright(C) 2024 Investment Bridge Co.,Ltd. All Rights Reserved. |