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(2708) 株式会社久世

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ブリッジレポート:(2708)久世 vol.8

(2708:JASDAQ) 久世 企業HP
久世 健吉 社長
久世 健吉 社長

【ブリッジレポート vol.8】2014年3月期第1四半期業績レポート
取材概要「今期の取り組みは、①徹底的な攻めの営業、②すべての業務プロセスの品質向上、③海外事業展開の促進及び、④グループ力の強化、の4点・・・」続きは本文をご覧ください。
2013年9月3日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社久世
社長
久世 健吉
所在地
東京都豊島区東池袋2-29-7
決算期
3月 末日
業種
卸売業(商業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2013年3月 56,060 544 697 367
2012年3月 51,053 380 408 173
2011年3月 46,774 230 342 80
2010年3月 42,666 271 394 123
2009年3月 42,181 225 334 171
2008年3月 42,540 283 443 240
2007年3月 42,847 402 507 262
2006年3月 41,491 336 390 246
2005年3月 39,087 255 297 126
株式情報(8/27現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
705円 3,879,022株 2,735百万円 8.4% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
12.00円 1.7% 95.38円 7.4倍 1,184.88円 0.6倍
※株価は8/27終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROE、BPSは前期末実績。
 
久世の2014年3月期第1四半期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
外食産業や中食産業向けの食材卸を中心に、グループでソース、ブイヨン、スープ及び調理食品など食材の製造・販売も手掛けている。取扱品目は約30,000アイテムに上り、冷凍・常温品はもちろん生鮮品から消耗品等のノンフードまで幅広い。グループは、同社の他、ソース・スープ類の製造・販売を手掛けるキスコフーズ(株)、生鮮野菜など農産品の仕入・販売を行う(株)久世フレッシュ・ワン、ニュージーランドでソース類の製造を手掛けるキスコフーズインターナショナルリミテッド及び海外戦略の立案と情報収集の役割を担う久世(香港)有限公司の連結子会社4社と中国での業務用食材卸売事業を目的に12年5月に設立した久華世(成都)商貿有限公司の非連結子会社1社がある。
 
【事業内容】
事業は、食材卸売事業、食材製造事業、及びグループ会社向けが大半を占める不動産賃貸事業に分かれ、13/3期の売上構成比は、それぞれ、92.4%、7.4%、0.2%。また、販売チャンネル別(個別ベース)では、居酒屋・パブ30.8%、ディナーレストラン・ホテル・会館20.7%、惣菜・デリカ・娯楽施設・ケータリング16.9%、ファーストフード・ファミリーレストラン・カフェ31.6%。
 
食材卸売事業
取扱が難しい生鮮品を含めた業務用食材全般に加え、割りばし、ナプキン、洗剤といった消耗品等のノンフードまでを幅広くカバーし、取扱品目は約30,000アイテム。近年、PB商品や生鮮三品の取扱いに力を入れている。また、売上面、利益面で下期偏重である事も当事業の特徴である。
 
食材製造事業
連結子会社キスコフーズ(株)が食品製造工場を有し、ソース、ブイヨン、スープ及び調理食品等の自社ブランド製品及びOEM製品の製造・販売を行っている。
 
 
【第2次C&G(Challenge and Grow for The Good Company)中期経営計画】
同社の推計では、外食産業約23兆円のうち同社の事業対象となる全国の業務用食材マーケットは約3兆8,300億円で、同社のシェアは未だ1.4%に過ぎない(トップシェアを誇る首都圏に限っても、約3.4%のシェアにとどまる)。国内業務用食材市場自体に大きな成長は望めないが、同社にとってフィールドは十分に広い。
 
 
(1)「第2次C&G経営計画」(13/3期~15/3期)
 
同社は10/3期に「C&Gプロジェクト(Change and Grow for The Good Company)」を立ち上げ、“三大都市圏No.1・お客様満足度No.1”の実現を目指し、「意識と行動の変化」に取り組んでいる。「C&Gプロジェクト」では、創業85周年を迎える20/3期に売上高1,000億円、営業利益20億円の達成を目指しているが、そのプロセスとして3年毎の「C&G経営計画」が策定され、現在、「第2次C&G経営計画」が進行中。今期は“change”を“challenge”に読み替えて、より高い目標に挑戦する。
 
「第2次C&G経営計画」は、国内外での攻めの営業体制の確立、商品開発を軸とした戦略推進、及び1,000億円企業への体制構築、という4つの基本戦略の下で進められている。
 
 
(2)14/3期の施策
取り組み方針として、①徹底的な攻めの営業、②すべての業務プロセスの品質向上、③海外事業展開の促進、④グループ力の強化、の4点を挙げている。
 
①徹底的な攻めの営業
円安と原料価格高騰に対応した粗利改善が急務であり、値上げを実施し浸透を図る。その上で、首都圏・中京圏・関西圏での新規顧客開拓に全社で取り組む。また、「給食・惣菜営業部」を新設し、老人ケアやシルバー向け等、専門分野の強化を図る。この他、生産性の向上と競争力の底上げを図るべく、最新の物流システムを導入する事で精度の向上と効率化を進めると共に、独自性のある商品の販売を強化する(ノンフードPB新ブランド「キッチンサポート」の拡販等)。
 
②すべての業務プロセスの品質向上
同社は、10年に「久世グループ品質方針」及び、ISO22000(食品安全マネジメントシステムの国際規格)に基づいた久世グループの品質保証の仕組みである「久世クオス(久世QUALITY SYSTEM)」を策定し、新しい品質への取組みを開始した。現在、商品の品質だけでなく、営業、物流、受発注などサポート部門を含めた全ての業務プロセスの品質向上に取組んでおり、13年4月には、子会社キスコフーズ(株)がISO22000の認証を取得。同社自身も13年9月の認証取得を目指して取り組みを進めている。
 
③海外事業展開の促進
ニュージーランドで製造事業を手掛けるキスコフーズインターナショナル(KFI)は 設立2年目となる前期に黒字化を達成した。14/3期は更なる収益の拡大を図るべく、フランス料理やイタリア料理のベース材料となるフォンドヴォー(仔牛のブイヨン。ソースを作る際等に用いられる)やベシャメルソース(小麦粉と牛乳で作った白いソース)との増産に取組むと共に、東南アジアへの販路拡大の準備を進める(現在、生産量の98%が日本への輸出)。
 
KISCO FOODS INTERNATIONAL LIMITED
代表者 代表取締役社長 久世真也
所在地 ニュージーランド クライストチャーチ市
設立 2011年(平成23年)5月
資本金 NZ$ 3,860,000
事業内容 ソース類製造
 
(同社資料より)
 
また、中国での食材卸売事業では、子会社久華世(成都)が、取扱商品を拡大し(肉、スパゲッティー、チーズ、ハム、鮮魚、タレ等)、現地の日本料理店に加え、西洋料理店、コンビニ、更には四川料理店の開拓を進める。一方、資本・業務提携先である上海峰二食品は新規顧客開拓(上海・蘇州・南京でのシェア拡大)と既存顧客の深耕に取組む。
 
久世(香港)有限公司
久世グループ海外法人持株会社として海外戦略と情報収集および新規事業の創出。
 
久華世(成都)商貿有限公司久世(香港)90%、河南三明食品10%
四川省成都市に拠点を置き、業務用食材卸売業を展開。
 
上海峰二食品有限公司(提携先)
上海市内の外食産業及びスーパーを中心に食品販売を展開。冷凍・冷蔵・常温食品約1,000種類を常時在庫し、注文を受けた商品を翌日配達する(毎日配送)物流を構築済み。
 
(同社資料より)
 
④グループ力の強化
キスコフーズ(株)は“スープ&ソースのソリューションカンパニー”を目指し、キスコブランド商品の開発と販売を強化すると共に(開発強化に向け、新テストキッチンをオープン)、ISO22000導入による品質向上と生産の効率化に取組む。また、KFIとのグループシナジーも追求する。
 
生鮮野菜など農産品の仕入・販売を行う(株)久世フレッシュ・ワンは、特徴ある鮮度の良い商品を扱う元気な「八百屋」を目指す。具体的な施策として、重点エリアの新規開拓及び既存顧客のシェアアップ、大口ユーザーの開拓、生産農家との連携推進、及び築地市場の豊洲への移転(15年の移転を予定)を見据えた対応準備、の4点を挙げている。
 
 
2014年3月期第1四半期決算
 
 
前年同期比11.0%の増収、48百万円の営業損失
売上高は前年同期比11.0%増の149億52百万円。“徹底的な攻めの営業”と言う方針の下、円高是正と原料価格の上昇に対応した価格政策を実施すると共に、強固な地盤を有する首都圏でのシェアアップと中京圏・関西圏での新規顧客開拓に取り組んだ成果が表れた。
利益面では、下期以降の浸透に向けた価格政策が途上にあるため、原価率が0.2ポイント上昇。新物流システムの立ち上げに伴う販管費の増加も負担となり、営業損益が48百万円の損失となった。尚、新物流システムの導入は、全国チェーンの取引先開拓が進んでいる事に対応した全国物流体制の整備と効率化を念頭に置いたもの。第1四半期は立ち上げ費用が負担となったが、新システムが軌道に乗る第2四半期以降は関連費用が減少し販管費が落ち着いてくる。
 
 
セグメント別では、食材卸売事業が同10.2%増の138億57百万円、セグメント利益が同62.2%減の77百万円。利益の減少は原価率の上昇と物流関連の先行投資負担による。一方、食材製造事業は売上高が同22.5%増の10億92百万円、セグメント利益が同88.4%増の81百万円。コストダウンが進展した事に加え、KISCO FOODS INTERNATIONAL LIMITEDの生産も順調に伸びた。
 
 
 
第1四半期末の総資産は前期末比10億45百万円増の202億68百万円。キャッシュ・フローの改善で現預金が増加する一方、有利子負債が減少したため、ネット現預金(現預金-有利子負債)は40億円を確保している。業務用食材商社としての優れた財務内容も同社の強みであり、自己資本比率は22.8%。
 
 
2014年3月期業績予想
 
 
前期比7.0%の増収、同2.9%の営業増益予想
今期の施策として掲げている4項目(①徹底的な攻めの営業、 ②すべての業務プロセスの品質向上、 ③海外事業展開の促進、及び ④グループ力の強化)に注力する事で業績予想の達成を目指している。
 
仕入れ価格や原材料価格の上昇による原価率悪化を織り込んだため、上期は前年同期比6.5%の増収ながら、同40.7%の営業減益予想。ただ、メニューが改定される下期は価格政策の浸透が見込まれ(一部では既に浸透している)、増収・増益に転じる見込み(同7.6%の増収、同17.2%の営業増益)。この結果、通期の営業利益は前期比2.9%増の5億60百万円となり、2期連続の最高益更新が見込まれる。配当は1株当たり12円の期末配当を予定。
 
 
(2)同社及び子会社キスコフーズ(株)が食品安全マネジメントシステムの国際規格「ISO22000」の認証を取得
「久世グループ品質方針」及びISO22000に基づいた久世グループの品質保証の仕組み「久世クオス(久世QUALITY SYSTEM)」を策定し、全ての業務プロセスの品質向上に取組んでいる。そして、この一環として、グループをあげてISO22000の認証取得を目指してきたが、13年4月に子会社キスコフーズ(株)が認証を取得し、この8月には同社自身も認証付与の内示を受けた(9月に取得)。1,000億円企業へ向けた中長期的な観点からの施策も順調に進んでいる。
 
 
今後の注目点
今期の取り組みは、①徹底的な攻めの営業、②すべての業務プロセスの品質向上、③海外事業展開の促進及び、④グループ力の強化、の4点。①については、商流が順調に伸びており、価格政策も取引先の理解を得られているようだ。②については、「久世クオス」の下で、かねてから取組んできたISO22000の認証を、4月に子会社キスコフーズ(株)が取得し、この8月に同社自身が認証付与の内示を受けた。同22.5%の増収、同88.4%の増益となった食材製造事業の業績が示すように、③、④についても成果があがっているようだ。コストが若干上振れした部分もあるようだが、①の施策が順調な事から、売上・利益のボリュームが増える下期に吸収する事は可能と考える。2期連続の最高益更新を見込む14/3期のスタートは上々だ。