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ブリッジレポート:(3667)enish vol.3

(3667:東証マザーズ) enish 企業HP
杉山 全功 社長
杉山 全功 社長

【ブリッジレポート vol.3】2013年12月期上期業績レポート
取材概要「(株)矢野経済研究所によると、2013年度の国内ソーシャルゲーム市場は4,256億円(ユーザー課金ベース、広告収入除く)と前年度比10%の伸びが・・・」続きは本文をご覧ください。
2013年8月20日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社enish
社長
杉山 全功
所在地
東京都渋谷区広尾1-13-1
決算期
12月末日
業種
情報・通信
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2012年12月 4,430 666 654 373
2011年12月 2,590 526 523 298
2010年12月 415 64 71 55
2010年1月 22 -40 -41 -41
株式情報(8/9現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
4,800円 2,644,880株 12,695百万円 48.9% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
34.00円 0.7% 170.62円 28.1倍 398.24円 8.9倍
※株価は8/9終値。ROE、BPSは前期末実績。
 
enishの2013年12月期上期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
レストラン経営シミュレーションゲーム「ぼくのレストランⅡ」やアパレルショップの経営シミュレーションゲーム「ガルショ☆」、カードバトルゲーム「ドラゴンタクティクス」等の人気作品を有するソーシャルゲームの開発会社。グリー(株)が運営する「GREE」を中心に、「Mobage」、「mixi」等のSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を通してゲームを提供している。
社長を務める杉山全功氏は占いコンテンツ大手ザッパラス(3770)の会長兼社長として、ザッパラスを東証1部上場へ導いた実績を有する。
 
【事業内容】
事業はソーシャルアプリ事業の単一セグメント。自社で開発したゲームを、「GREE」、「Mobage」、「mixi」、「hangame(ハンゲーム)」、「Ameba(アメーバ)」、「entag! !(エンタグ)」といったプラットフォーム(SNSやソーシャルゲームサイト)を通して提供しており、ユーザーはフィーチャーフォン(従来型携帯電話)やスマートフォンでゲームを楽しむ事ができる。ゲームは無料だが、ゲームを展開する上で有効なアイテム等(「ぼくのレストランⅡ」の場合、店を繁盛させるために必要なレシピや店舗を飾るアイテム等)を購入した場合、課金が発生する。ユーザーへの課金及び料金回収はSNSを運営するプラットフォーム事業者に委託し、同社はその対価としてシステム利用料等を支払っている。
 
ユーザーはF1層と呼ばれ、購買力が高いとされる20~30代の女性が中心で、「ぼくのレストランⅡ」はユーザーの70~80%、「ガルショ☆」は90%が女性。このため、男性ユーザーの拡大に向け、バトルゲームを育成中である。13/12期上期は、「ぼくのレストランⅡ」の売上が非連結売上高の34%を占め、以下、「ガルショ☆」22%、「ドラゴンタクティクス」(バトルゲーム)27%、「ポケットダンジョン2」(同)9%、「男塾」2%、その他6%。
 
 
【強み】
ソーシャルゲームビジネスは、基本は無料で利用でき、ゲーム内で使用するアイテムの販売等で収益をあげていくビジネスである。このため、ゲームでいかにして「お金を払ってもいいから、もっと楽しみたい」と言う気にさせるかがポイントとなり、ゲームとしての完成度の高さに加え、リリース後もユーザーの嗜好の移り変わりに合わせたゲームシステムの改良やイベント等の導入といった運営力が必要となる。
 
同社はデータマイニングの強みを活かし、ゲームのリリース後にもユーザーの行動履歴の分析を行う事で、ゲームの利用率、継続率、課金率等の指標が改善するよう継続的にゲームに改良を加えている。こうした改良は同社に限った事ではないが、数週間で配信が終了するゲームもある中、同社においてはロングセラーとして長く収益に貢献しているゲームが多い事が同社のデータ分析の精度の高さと分析に基づく施策の妥当性・適時性を物語っている。また、この成功体験を新規タイトルの企画・開発に活かして、戦略的・継続的に作品を投入している。
 
ゲーム作品を複数のプラットフォームに迅速に提供可能なフレームワークの整備が進んでいる事も同社の強みである。このため、ゲームの特性と各プラットフォームのユーザーの特徴や傾向を考慮して配信するプラットフォームやその組み合わせを決める事や、短期間での新規アプリの企画・開発と相まって成長速度の速いソーシャルゲーム市場に機動的に対応していく事が可能である(フレームワークとはアプリケーションソフトを開発する際に必要となるアプリケーションの土台として機能するソフトウエアの事)。
 
 
 
2013年12月期上期決算
 
 
「ドラゴンタクティクス」の寄与に加え、漸減を見込んでいた既存タイトルも想定以上の水準で推移
売上高は前年同期比81.6%増の31億46百万円。前期第3四半期(12年7月)に投入した「ドラゴンタクティクス」が大きく寄与した他、プラットフォーム拡大効果もあり、「ぼくのレストランⅡ」や「ガルショ☆」など漸減を見込んでいた既存タイトルも想定以上の水準で推移した。一方、新規投入タイトルは、「魁!!男塾」の1タイトルのみ。その「魁!!男塾」も5月下旬に投入したため、上期業績への寄与は限定的だった(上期の売上構成比2%)。
 
利益面では、新規タイトルの開発費・広告宣伝費等の先行投資負担で売上原価及び販管費が増加したものの、各コストは同社のコントロール下にあり、対売上比(構成比)は共に前年同期を下回った。
 
尚、同社は開発費を資産計上せず、発生した期に費用計上している(一部は先行的に費用計上)。また、6月17日に上期予想を上方修正しており、その際の予想値は、売上高31億円、営業利益6億15百万円、経常利益6億15百万円、四半期純利益3億65百万円。
 
 
前年同期比73.9%の増収、同152.0%の経常増益
売上・利益の増加要因は上期と同様。6月17日に上方修正した上期(1-6月)の業績予想に織り込まれていた第2四半期(4-6月)の業績予想は、売上高15億円、営業利益2億06百万円。修正予想を上回る着地となった。
 
 
同社のゲームはバトルゲームと経営シミュレーションゲームの2つのカテゴリに分ける事ができるが、13/12期上期は「ドラゴンタクティクス」の寄与でバトルゲームの売上が前年同期比480%増加し、前年同期は11%だった売上構成比が38%に上昇。バトルゲームをけん引役に男性ユーザーの比率も前年同期の25%から29%に上昇した。一方、売上構成比が88%から62%に低下した経営シミュレーションゲームも、売上高は同23%増と伸びた。
また、プラットフォームの拡大に取組んだ結果、mixi(13%→21%)、mobage(9%→12%)の売上構成比が上昇する一方、GREEは売上が増加したものの、売上構成比は前年同期の71%から53%に低下した(第2四半期末時点で、8プラットフォームへ提供中)。
この他、スマートフォンの市場拡大を背景に前年同期は23%だったスマートフォン経由での売上高が46%に上昇した。
 
 
売上原価は前年同期比74.0%増の10億06百万円。労務費及び外注費の増加は新規タイトルの開発に伴うもので、カードバトルゲーム展開に伴うデザイン外注の増加に合わせて外注費の活用を増やした。一方、支払手数料はプラットフォームの運営会社に支払うもので、本来、売上見合いで増減するが、マルチプラットフォーム戦略を推進した事で全社的な料率が低下した。
販管費は同14.8%増の229百万円。効果的な広告宣伝費の投入で広告宣伝費の構成比が低下した他、人件費率や採用費率等も低下した。株式上場による知名度の向上効果が採用面で表れていると言う。こうした採用環境の改善に加え、上期の収益が上振れした事もあり、下期は来期以降を見据えた開発体制の強化を前倒しで進めていく考え。これまで157名としていた期末の全従業員数を165名に引き上げた(派遣社員等28名を含む上期末全従業員数は144名)。
 
 
上期末の総資産は前期末比4億09百万円増の20億08百万円。借方では、4億55百万円のフリーCFを確保した事で現預金が増加し、貸方では、好決算を反映して純資産が増加。上期末の自己資本比率は70.7%と同5ポイント上昇した。
 
 
 
2013年12月期業績予想
 
(1)下期の取り組み
下期の新規投入タイトル数を当初計画の3タイトルから4タイトル(ブラウザアプリ1タイトル、ネイティブアプリ3タイトル)に増やすと共に、開発要員を中心に人材採用を前倒しで進める(期末全従業員数が当初予定の157名から165名に引き上げられた)。人員増で手狭になるため事務所も移転する。移転に関連して発生する費用・損失については予想できる範囲で下期予算に織り込んだが、実際の移転は今期末から来上期にかけて、時期をみて実施する考え。
また、引き続きマルチプラットフォーム戦略も展開していく。マルチプラットフォーム戦略では、フレームワークを活かして既存タイトルを未進出プラットフォームへ展開させる事で開発コストをかけずに新たな収益機会を得る事ができる。
 
一方、海外展開では、第1弾として第4四半期(10-12月)に韓国で1タイトルを投入する予定で、下期の予算に運営及び広告宣伝コストを織り込んだ(売上は見込んでいない)。ボリューム・成長性共に高い海外市場において、これまでに培ってきた優位性を活かし、ローカライズ・カルチャライズで展開していく考え。
 
この他、ゲーム周辺事業として力を入れている「O2O(Online To Offline)」については、(株)コロプラとの業務提携(7/18)による位置ゲーを活用した案件を実施していく予定。新たな取り組みとして、「知育アプリ」の提供を第4四半期に開始する。
 
 
 
通期業績予想に変更はなく、前期比51.2%の増収、同23.1%の営業増益を見込む
通期の業績予想に対する進捗率は、売上高47%、営業利益88%。上期の利益が大幅に上振れする中で通期業績予想を据え置いたため、特に利益面での進捗が著しい。しかし、下期の新規投入タイトルを当初の3タイトルから4タイトルへ増やしたため開発費や広告宣伝費が期初の想定よりも増える上、通期業績に上振れ余地が出てくれば、来期以降の業容拡大に向け積極的に追加投資を実施していくとしている。また、今期末から来上期にかけて、時期を見てオフィスを移転する計画であり、移転に関連して発生する費用・損失についても予想できる範囲で織り込んだ。
 
配当予想は正式に公表されていないが、当期純利益が予想通りであれば、今期の配当は1株当たり6円増配の期末34円となる見込み。同社は配当性向20%を目途に配当を実施していく考え。
 
 
今後の注目点
(株)矢野経済研究所によると、2013年度の国内ソーシャルゲーム市場は4,256億円(ユーザー課金ベース、広告収入除く)と前年度比10%の伸びが見込まれる。事業環境に恵まれる中、営業利益の進捗率が88%に達しているのだから、通期の利益が上振れしないはずがない。しかし、いつまでも「ぼくのレストランⅡ」等のロングセラータイトルに頼ってばかりはいられない。既存タイトルが堅調なうちに、成長のための種まきを行い、成長の芽を育てていく必要がある。このため、13/12期は、更なる利益の上積みを目指すよりも、20%程度の増益にとどめて、来期以降を見据えた施策を進める同社の戦略は的を射たものと考える。今下期の新作4タイトルの投入に続き、来期は7タイトル程度の新作投入を予定している模様。下期から来期にかけて、中期成長力をどれだけ高める事ができるか注目したい。