ブリッジレポート
(1909) 日本ドライケミカル株式会社

スタンダード

ブリッジレポート:(1909)日本ドライケミカル vol.3

(1909:東証2部) 日本ドライケミカル 企業HP
遠山 榮一 社長
遠山 榮一 社長

【ブリッジレポート vol.3】2013年3月期業績レポート
取材概要「「自社単独では打ち破りがたい限界を、アライアンスによる多角的な視点からのアプローチによって乗り越える。」というビジョンの下、矢継ぎ早に・・・」続きは本文をご覧ください。
2013年7月2日掲載
企業基本情報
企業名
日本ドライケミカル株式会社
社長
遠山 榮一
所在地
東京都品川区勝島1-5-21
決算期
3月末日
業種
機械(製造業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2012年3月 23,765 1,041 994 404
2011年3月 21,248 738 729 343
2010年3月 21,409 618 580 1,403
2009年3月 23,624 991 1,000 687
2008年3月 10,232 159 165 445
2007年9月 19,756 -38 4 -69
2006年9月 17,024 -222 -204 -229
2005年9月 17,927 48 66 18
株式情報(5/28現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
2,445円 2,619,670株 6,405百万円 14.8% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
70.00円 2.8% 318.24円 7.7倍 2,098.13円 1.2倍
※株価は5/28終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROE、BPSは前期末実績。
 
日本ドライケミカル(株)の2013年3月期決算、2014年3月期見通し、現在の取組みなどについて、ブリッジレポートにてご紹介致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
「消火・防災のプロフェッショナル」として高い評価を受けている国内最大級の総合防災企業であり防災エンジニアリング企業。
一般建築物やプラント向けの消火設備の設計・施工、船舶用消火設備の製造・販売、消火設備の保守・点検サービス、各種消火器・防災製品、消防自動車の製造・販売など幅広く事業を展開。
長年にわたって培われた経験と実績、高いエンジニアリング能力、独自の製品開発力などが強み。
2000年12月上場廃止となったが、2011年6月に再度東京証券取引所市場第2部へ上場。
積極的なアライアンス戦略で顧客に新たな付加価値を提供する。
 
【沿革】
1955年 4月   粉末消火器、粉末消火設備および自動火災報知設備の製造・販売を主業として設立。
1991年 9月  東証2部へ上場。
1995年 6月  東証1部へ指定替え。
2000年12月  米国の総合セキュリティー・防災メーカーであるタイコインターナショナル社のTOBにより100%子会社となり、上場廃止。
2010年 3月  株式上場を視野に取引先を中心に資本政策を実施。
2011年 6月  東証2部へ再上場。
2012年 2月  取引先を中心に資本政策を実施、大和PI社の持株比率38%へ。
2012年 5月  (株)初田製作所(非上場)との基本業務提携契約締結。大和PI社の持株比率0%へ。
2012年 8月 (株)イナートガスセンター設立
2012年10月 沖電気防災株式会社を子会社化
2013年 2月 新日本空調(株)と資本業務提携を締結
 
【社長プロフィール】
遠山 榮一社長は、1950年生まれの63歳。
1972年に三菱商事に入社後、経理、財務部門、海外子会社などを歴任後、2004年1月同社入社。2005年8月に代表取締役就任。
認知度・信用力の拡大を通じた企業価値の向上と企業体質の強化を図るために、再上場を目指し同社を牽引。
従来の発想にとらわれない発想で「消火・防災市場」の創造・開拓を目指す。
 
【企業理念・経営方針】
以下の企業理念と経営方針の下、事業を展開している。
 
<企業理念>
① プロフェッショナル
消火・防災のプロフェッショナルとして、人々に安心と安全を提供する。
② パートナーシップ
関係するすべての会社とともに、お客様に最良の製品・サービスを提供する。
③ 人財育成
変化を捉えて未来を拓く、人を活かし、人を育てる。
④ 環境
環境にやさしい製品作りを通じ、社会に貢献する。
 
<経営方針>
・コア事業の発展:市場動向の変化に強い企業となるべく消火・防災に関わる事業に経営資源を集中し、各事業を継続して強化・整備していく。
 
・事業連携によるさらなる発展:各事業が相互に協力し、情報を提供することでさらなるビジネス機会を創出する。
 
・経営基盤の強化:人事制度の整備と人財育成、技術部門の集中による開発力向上及び全社横断的な品質保証体制を構築していく。
 
【市場環境】
◎経済産業省の「平成22年 工業統計調査」(平成24年4月6日公表・掲載)によれば、「消火器・消火装置(消防自動車の艤装品を含む)」と「消火器具・消火装置の部分品・取付具・附属品」の出荷額合計は、2010年で568億円となっている。
国内の設備投資サイクルに応じた上下はあるが、1998年の794億円と比較すると、3割弱低い水準となっており、成熟市場と位置付けられる。
 
 
参入障壁の高い業界であることから新規参入は少ないが、既存企業間でのシェア争いは激しいものとなっている。
 
◎上場の同業他社としては以下の3社を挙げることができる。
 
 
他3社に比べると同社の事業規模、時価総額は小さく、株価は昨年より2倍以上と大きく上昇はしたものの、PERも最も低い。従来の防災業界には見られない、新市場の創造・開拓にチャレンジしているものの、更なる認知度の向上が必要と考えられる。
 
【事業内容】
総合防災企業として「防災設備事業」、「メンテナンス事業」、「商品事業」、「車輌事業」の4事業部門から構成されている。各事業において「火を消す」というニーズ全てに対応し、顧客満足度の最大化を図っている。また、新たな顧客ニーズを開拓し、新しいビジネスの開発に結び付けていくという方針を掲げている。
 
<防災設備事業>
売上高の約半分を占める同社の主力事業。建築防災設備、プラント防災設備、船舶防災設備の3分野がある。
どの分野においても顧客の防災・消火ニーズは多様化、大型化、高度化、複雑化している。
同社は、長年培ってきた豊富な実績・ノウハウと高い技術力によって、顧客に対し最適な防災システムを提供している。
 
「建築防災設備」
55年を超える歴史を持つ同社において最も実績のある分野。
対象建築物は、オフィスビル、高層マンション、大型ショッピングセンター、駐車場、トンネルなど。
 
 
最近でも都内の大型再開発において数多くの施工実績を上げている。
 
同社はこれら建築物の建築主もしくは建築に携わる大手建設会社や設備工事会社から消火・防災設備の設置を受注している。
 
一般建築物の消火・防災設備は、消防法によってその設置が義務付けられており、設置基準も詳細に定められている。また、設置後の点検に関しても厳格な基準が設けられている。
消防法の歴史は常に強化の歴史であるが、同社はその強化に迅速且つ適切に対応し、大切な人命と貴重な財産を守るという社会的使命を担い、責任を持って遂行。顧客からの高い信頼を獲得してきた。
 
「プラント防災設備」
原子力、火力、ガス、石油、石炭などさまざまなエネルギープラントから、石油化学、医薬、鉄鋼など広範な産業分野の製造工場および倉庫などが対象。
 
 
顧客は電力会社や重電メーカーなど。
 
エネルギープラントでは、火災が発生し初期消火に失敗すると油流出を伴う大規模火災に発展する恐れがある。
そこで、このような火災には大量の消火薬剤を散布できる泡やガスといった消火設備が最適である。
同社は、このように、対象物の危険性、特殊性、形状に最も適した消火・防災設備をデザインし、構築している。
 
「船舶防災設備」
30年の歴史と実績を持つ。
船舶用の消火・防災設備は船舶安全法、海上人命安全条約、船級協会などの規定により設置・点検が義務付けられている。
 
 
自船消火設備として機関室や貨物艙には二酸化炭素消火設備、ガス運搬船甲板部には粉末消火設備、他船消火設備としてタグボートや消防艇には泡水消火設備や粉末消火設備などがある。
対象船舶は大型タンカー、旅客船・フェリー、消防艇など多岐にわたる。
 
<メンテナンス事業>
設置した消火・防災設備もいざというとき確実に作動しなくては何の意味もない。
消火・防災設備の点検は消防関係法令に規定され、最低年間2回の点検が義務付けられている。
同社は消防設備士の資格を持つスタッフによる各種消火・防災設備の保守点検業務およびそこから派生する修繕及び改修工事を行っている。
主要顧客は施主及びビル管理会社など。
同事業については、社会的な要請やコンプライアンス意識の高まりを背景に成長が見込まれること、また収益性の観点から今後とも収益の柱として強化していきたいと考えている。そのためには、幅広く消火・防災の知識を有し、お客様に信頼される人財の育成・強化が必要と認識している。
 
<商品事業>
同社は日本初の粉末消火器を開発したパイオニアであり、以来、研究・開発を重ね、独自の技術で幅広いニーズに応えるさまざまな消火器や防災関連商品を企画・開発している。
 
 
オフィス・工場などに設置される一般的なタイプの消火器のほかに、発電所や石油関連施設などの危険物施設向けの大型消火器、自動車に搭載する消火器、家庭用消火器などさまざまなタイプの消火器の製造・販売を行っている。
 
1999年には日本で初めてアルミ製容器を市場で最も流通しているABC粉末消火器10型に採用して販売を開始し、その後もアルミ製容器を用いた多くの製品を展開してきている。このアルミ製容器を用いた消火器は、軽くて耐食性に優れ、リサイクル性が高く環境にやさしいという利点がある。現在同社は鉄製以外の容器を用いた消火器においてトップシェアを誇る。
 
アルミニウム製消火器は、
・鉄製に比べ約20%軽いため、操作性が格段に向上する。
・錆びにくい性質から腐食による破裂を起こしにくい。
・環境にやさしく、ISO14000Sやごみゼロ工場などに適している。
といった特徴がある。
 
同社はアルミ製消火器の先駆的メーカーであり、アルミ製消火器の国内市場はほぼ独占の状況となっている。
今後は殆どが未だ鉄製である海外市場へ進出していく考えだ。
消火器以外には、火災報知器、避難器具、防災キットなど各種防災用品の仕入・販売を行っている。
 
 
同社は全国14ブロック、計234社(平成25年5月末現在)の販売代理店で構成されている「エクスチン会」により、全国をカバーする強力な販売体制を構築している。
(「エクスチン」は、消火器の英語「a fire extinguisher」からとっている。)
 
<車輌事業>
消防自動車には、消火栓や河川から水を汲み上げ放水する消防ポンプ自動車、水源のない場所で放水可能な水槽付消防ポンプ自動車、油火災等の消火を行う化学消防ポンプ自動車などさまざまな種類があるが、同社は、消火・防災技術の最先端を結集することで、こうした専門性の高い消防自動車のニーズに対応している。
 
 
同社は、消防ポンプ自動車、水槽付消防ポンプ自動車、化学消防ポンプ自動車の他、支援車、指揮車、小型動力消防ポンプ付水槽車など、各種の消防自動車を製造・販売している。
主要装置の機能の高度化のみならず、自動揚水モニター装置、泡自動混合装置などの電子化、自動制御化も進めることで、操作性・安全性の向上および省力化に貢献している。
 
車輌メーカーよりトラックシャーシを購入した後、顧客ごとの仕様に合わせた艤装(*室内外の各種装備などを車体に取り付ける工程のこと)を施し消防自動車として納入する。
顧客のほとんどは地方自治体で、交換需要が中心となっている。
競争は厳しいが長年携わってきた中で同社独自のアイデアや技術も具現化してきており、今後も注力していく考えだ。
 
 
特徴と強み
 
同社の事業ドメインである消火・防災業界は、防災設備に関して消防法を始めとする詳細な規定があり、工事・保守点検では消防設備士の資格が必要である。また商品分野においても日本消防検定協会などによる検査の合格が必須であることなどから、参入障壁が高いことが特徴である。
これに加えて同社独自の特徴としては以下の4点があげられる。
 
①長年にわたって培われた経験と実績
同社の創業は1955年4月。今年で57年の歴史を有しており、長年にわたり培ってきた経験と実績に基づく信用力は、大きな財産と考えられる。
 
②高度なエンジニアリング能力
一般建築物、プラント、船舶など幅広い分野における多数の、そして多様な消火・防災設備の施工実績は、同社の高度なエンジニアリング能力に裏付けられている。
 
③独自の製品開発力
アルミニウム製消火器は同社が業界に先駆けて開発・量産化に成功。現在国内ではほぼ独占状態である。今後も同社オンリーの製品開発を進めていく。
 
④積極的なアライアンス戦略
防災業界は、専門領域が分化され、また他社と共同で事業を展開するといったことは極めて例がない業界。
そうした中で、同社はアウトサイダーであった遠山社長のリーダーシップの下、従来の発想に囚われることなく新たな消火・防災マーケットを創造しようという経営戦略により、再上場以来、積極的なアライアンスを展開している。
 
 
2013年3月期決算概要
 
 
売上、利益ともに2ケタの増加
防災意識の高まり、法令改正に伴う需要の発生などを取り込み、大型案件のなかった車輌事業を除き全ての事業で売上、売上総利益ともに大きく伸ばすことができた。販管費も増加したが適切にコントロールし、売上増で吸収。沖電気防災(株)子会社化(6か月間の寄与)もあり、前期比で大幅な増収・増益となった。また2012年11月、2013年4月と2度の上方修正を経て期初計画も大きく上回った。
 
 
◎防災設備事業
低粗利を余儀なくされている工事案件等もあったが、大型プラント物件工事で上半期に前倒しで進捗があったこと、沖電気防災(株)を連結子会社にしたことなどから、売上、売上総利益ともに大きく増加した。
 
◎メンテナンス事業
消防法の強化に伴う防災意識、コンプライアンス意識の高まりにより、社会インフラ整備・充実のニーズが高まり、引き続き改修・補修工事が好調で、売上、売上総利益ともに大幅に増加した。
 
◎商品事業
消火器の点検基準が改正(2011年4月施行)され、製造から10年を経過して設置されている消火器の耐圧性能点検(水圧検査)が義務付けられたことによる更新需要が継続している。また東日本大震災に伴う防災意識の高まりによる防災グッズの販売も好調だった。
 
◎車輌事業
前期にあった大型案件が無かったことなどにより売上、利益ともに減少した。
 
 
沖電気防災(株)の子会社化等により、資産、負債とも増加。有利子負債は21億円増加した。また純資産は自己株式取得分が減少。この結果、自己資本比率は26.6%と前期末に比べ4.5ポイント低下した。
 
 
営業CF、フリーCFともに超過を継続。自己株式取得約8億円もあったが、長期借入金も約8億円増加し財務CFも超過。キャッシュポジションは8億円増加した。
 
 
2014年3月期通期業績予想
 
 
小幅ながらも増収・営業増益を見込む
前期に比べ、売上、利益ともに伸び率は小さいものの、売上高は300億円に到達する見込み。利益率もほぼ同水準で推移する。
2011年の再上場を契機に積極的に取組んできた様々な取り組みの刈取りの1年と位置付けている。
 
(2)資本政策&目標とする経営指標
前回レポートで触れたが、従来は減価償却額と投資額をほぼバランスさせる中での安定配当の継続を基本方針としてきたが、今後は企業価値向上のための成長戦略投資にもより積極的に取り組んでいく考えで、加えて生産能力増強のための設備投資も必要と考えていることから、投資のための資金需要が高まっている。
そこで、今後も安定した配当を継続していく一方で、株主への利益還元と成長投資のための内部留保のバランスを総合的に勘案して、配当政策を実施していくこととしている。
2014年3月期の予想配当は通期70.00円/株、配当性向は22.0%。(前期22.4%)
加えて、株主優待制度の導入を2013年5月に発表した。
毎年9月30日現在の1単元以上保有株主に対し、1,000円相当の商品または寄付のいずれかを選択してもらうというもの。同社は、主要事業が建築設備工事という性格上、収益が下期に偏重するため、上記配当性向を念頭に置いた上で、バランスを取るために中間期末保有の株主に対して実施し、長期保有を促すことを目的としている。
 
また、目標とする経営指標を新たに「売上高400億円以上、売上高経常利益率5%以上の維持」と設定した。
 
 
成長に向けた取組み
 
成長に向けた現在の取組み、今後の展望などを、遠山社長、経営企画部 阿部部長に伺った。
 
①新日本空調株式会社との資本業務提携
積極的なアライアンスを進めている同社が、またも新たなアライアンスを実現させた。
2013年2月、新日本空調(東証1部、コード:1952)との資本業務提携を発表。
新日本空調は、「空気を中核とする熱・水技術による空調」事業を展開する大手空調設備企業で、NDCとは同じ建築設備という事業領域であり、互いの技術力、開発力、顧客基盤といった経営資源を活用して新たな付加価値を顧客に提供することを目指す。
 
具体的には、
空調・消火・防災設備の一体受注
リニューアルの共同提案
新製品・新工法・新システムの開発
などを進めていく。
 
新日本空調はインターネットの更なる拡大で建設需要の拡大が見込まれるIDC(インターネット・データ・センター)関連工事を始め、原発関連工事、海外案件等で実績があることから、NDCにとっては新たなマーケットへの参入が期待できる。
 
NDCは新日本空調の普通株式342,000株を、新日本空調はNDCの普通株式48,000株を取得した。(新日本空調に対し、自己株式処分により第三者割当を行った。)
 
②株式会社イナートガスセンターの設立
アライアンス戦略の一つとして法人株主との協業にも取組んできた同社だが、こちらでも具体的な案件を立ち上げた。
 
ガス系消火設備(ガスボンベ等)で使用するために充填された消火薬剤のCO2ガス等は、設備の撤去時や、15年超の点検時にはほとんどを大気中に放出するというのがこれまでの業界の常識であった。
これに対し、同社株主の内の1社である松山酸素(株)が愛媛県松山市に保有する施設は、これらのガスを放出せずに、96%以上再生する事ができるという優れた性能を持っていた。
かねてから「環境」を重視してきたNDCはこの技術に着目し、2012年8月、両社合弁で(株)イナートガスセンターを設立。NDCの千葉工場内で同様の施設の建築に着手していたが、2013年4月より本格的に営業を開始した。
 
全国でも2か所しかなく、世界でも例を見ないガスおよびガスボンベの回収・再処理・再利用という新たな事業を開始し、環境対応を更に徹底する。
 
③連結子会社「沖電気防災株式会社」とのシナジー創出
これも前回レポートで報告の通り、2012年10月、沖電気防災株式会社を連結子会社化した。
「煙・熱の感知、報知」に優れた沖電気防災と、「消火のプロフェッショナル」である同社が一体となることで、全ての消火・防災需要に対して製品やサービスを提供する事ができる体制を、長い歴史を持つ防災業界において初めて手にした。
それぞれの企業文化を大事にしながらも顧客に対しては両社一体で問題解決にあたり、同社グループにしか提供できない新たな付加価値を見出してもらうことを目指している。
現在は人員交流、情報交換をスムーズに行い、またコスト削減も図るため全国各営業拠点の統合が進行中で、5月31日にリリースがあったように、今年10月には両社の本社所在地も東京・台場に統合する。
 
 
NDCの事業を完全に補完する企業を子会社にすることができた。ワンストップで顧客ニーズに対応できる体制が構築できたことは、休眠顧客を始めとした顧客開拓のための強力な武器を手に入れたことを意味し、同業他社に対する大きな差別化になると考えている。
実際に、今までは消火器の販売のみの関係であった顧客販売店から、それ以外のオーダーが入るケースも出始めた。2013年3月期の商品事業売上にも一部反映されている。
各スタッフに関しても、今まではそれぞれ「消火の専門家」、「感知・報知の専門家」という存在であったが、グループ化により、知識の融合が進み、一人で全ての課題に対応できるような「人材の高度化」を進めることが可能であり、会社の価値を高めることができる。
今回の子会社化により沖電気防災の株式を40%保有している沖電気工業(株)とも関係を構築することができた。沖電気工業(株)が強みとする通信に関する技術、ノウハウ、製品を組み込み、より質の高い防災インフラ構築にも取り組む。
また、沖電気防災の前の株主であるパナソニックとも、スマートハウス、スマートシティというコンセプトが広がる中で、「防災」という観点からNDCがパナソニックに対し、単なる製品供給にとどまらない、より魅力的な提案ができるのではないかと考えている。
NDC、沖電気防災両社の社長は遠山社長が兼務している。理念、方向性、メッセージを全社に浸透させ、ベクトルを同一方向にし、両社の融合を着実かつスピーディーに進展させる。
 
④(株)初田製作所との協業の進捗
昨年5月に基本業務提携を行った初田製作所との協業も着実に進展している。このアライアンスの意味を顧客も理解、認識し始めており、事業の歯車は確実にかつ力強く回転し始めているという。
 
鉄製消火器に強い初田製作所と、アルミ製消火器という独自製品を持つNDCの間で、OEM製品のラインアップ強化が進んでおり、顧客の選択肢を増やすことで顧客層の拡大と顧客満足度の向上に繋がっている。消火器のシェアは両社合わせればNo.1になっている。
製品物流コストの合理化、環境を意識した廃消火器回収の効率化を進めるために東日本に物流センターを設置する計画を進めている。また共同仕入れ体制も検討中。
また、ガス系消火設備のデモンストレーション、沖電気防災製品を含めた消火・防災製品の展示、実習や研修を実施するための共同トレーニング施設の建設も検討している。
消火器の回収、リサイクルは、環境という視点からこれからの日本に欠かせないコンセプトだが、単に自社の損得だけを考えたら取り組めるものではない。その点で、初田製作所とは防災業界の将来に対するビジョン、理念を、しっかりと共有できている。
 
⑤海外メーカーとの提携
海外の防災機器メーカーとも相次いで関係を構築。国内にはない優れた製品を顧客のために取り込んでいくことは防災メーカーとしての義務であると認識している。これも、従来の防災業界では見られなかった発想、展開だ。
 
◎Xtralis社
高感度煙感知器として世界的に高く評価され、データセンター等で採用されているVESDA超高感度煙感知器の販売契約を同社と締結した。新日本空調とのアライアンスの中で取り込む。
VESDA感知器、消音ヘッド、IG541の3点セットを主体に営業展開するプロジェクトチームを組成した。
 
◎FireDos社
FireDos水動力混合装置の販売契約を締結した。
FireDos社の泡混合装置は世界的にプラントで使用されているもので、消火にあたっては水ではなく、泡が適しているケースも多く、顧客に提供するラインアップを強化する。
消防車両に搭載して機能テストを行い、同業の消防自動車メーカーへの供給も視野に入れて拡販を進める。
 
⑥地球環境への取組み
従来より同社は、企業理念の一ヶ条において「環境にやさしい製品作りを通じ、社会に貢献する」と定めており、環境に対する意識は大変強いが、今後もさらに推進していかなければならないと、遠山社長以下全社員で考えている。
そこで、2013年2月、「環境ポリシー」を制定、発表した。
主要な取り組みは以下の4つ。
 
CO2の消火活動以外の排出ゼロ
アルミニウムの循環型リサイクルの推進
CO2カーボンオフセット推進
欧州指令RoHS(電気電子製品中での鉛、水銀、カドミウム等6物質の含有禁止)への対応
 
環境に対する貢献は企業としての責務であると同時に、他社に対する差別化の一要因であるとも考えている。
 
 
今後の注目点
「自社単独では打ち破りがたい限界を、アライアンスによる多角的な視点からのアプローチによって乗り越える。」というビジョンの下、矢継ぎ早に様々な動きを見せている同社だが、「2012年に蒔いた種が実を結ぶのが2013年」と遠山社長は考えている。
 
本文中に触れたように、沖電気防災に関しては、ワンストップ・ソリューション体制の構築により、既に徐々にではあるが成果が表れ始めているということで、今期は本格的な収益貢献を期待している。
また、初田製作所とのアライアンスも着実に進展しているし、昨年春に掲げたテーマ「株主とのコラボレーション」についても、イナートガスセンターの営業開始という具体的な結果を見ており、ベースとしての防災意識の高まりも継続すると予想されることから、売上高300億円台実現は決して困難な目標とは思われず、むしろ投資家としては、利益成長のスピードがどうなるのか?についての関心が高まるだろう。
中期目標「経常利益率 5%」は、3~4%台であった2010年から2012年に比べれば大きな上昇ではあるが、2013年3月期、2014年3月期(予)の5.4%、5.2%からすると、やや物足りないようにも感じられる。成長投資に注力していく方針ではあるものの、業務効率の改善、付加価値のある製品・サービスの開発によって、どれだけ利益率を引き上げていくことができるのか?を中期的な視点で注目していきたい。