ブリッジレポート:(4319)TAC vol.9
(4319:東証1部) TAC |
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企業名 |
TAC株式会社 |
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社長 |
斎藤 博明 |
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所在地 |
東京都千代田区三崎町3-2-18 |
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決算期 |
3月 末日 |
業種 |
サービス業 |
項目決算期 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 当期純利益 |
2012年3月 | 22,578 | -606 | -530 | -799 |
2011年3月 | 24,575 | 465 | 283 | -244 |
2010年3月 | 23,991 | 623 | 442 | 40 |
2009年3月 | 21,092 | 1,330 | 1,352 | 669 |
2008年3月 | 20,741 | 1,069 | 1,230 | 443 |
2007年3月 | 20,553 | 1,173 | 1,333 | 742 |
2006年3月 | 19,828 | 421 | 631 | 249 |
2005年3月 | 19,669 | 459 | 558 | 81 |
2004年3月 | 19,542 | 988 | 943 | 470 |
株式情報(6/21現在データ) |
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今回のポイント |
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会社概要 |
【沿革】
1980年12月、資格試験の受験指導を目的として設立され、公認会計士講座、日商簿記検定講座、税理士試験講座を開講。2001年10月に株式を店頭登録。03年1月の東証2部上場を経て、04年3月に同1部に指定替えとなった。09年9月には司法試験、司法書士、弁理士、国家公務員Ⅰ種・外務専門職等の資格受験講座を展開していた(株)KSS(旧・早稲田経営出版)から資格取得支援事業及び出版事業を譲受。これにより、会計分野に強みを有する同社の資格講座に法律系講座が加わると共に、公務員試験のフルラインナップ化も進んだ。
【同社の強み】
(1)試験制度の変化や法令改正へのきめ細かい対応
同社は、会社設立間もない頃から講師陣が毎年テキストを改訂し、試験制度の変化や法令改正にきめ細かく対応することで他社との差別化を図り受講生の支持を得てきた。事業が200億円規模になると、毎年発生するテキスト改訂コストを吸収することが可能だが、新規参入を考える企業はもちろん、同社よりも事業規模の劣る同業者にとっても、テキストを毎年改訂することは大きな負担である(ノウハウの蓄積が進み高い生産性を実現していることも強みとなっている)。
(2)積極的な講座開発と充実したラインナップ
既に説明したとおり、同社は大学生市場の開拓も含めて積極的に新しい分野(新講座の開設)にチャレンジすることで業界トップに上り詰め、業界初の株式上場を果たした。また、09年には、Wセミナーの資格取得支援事業を譲受し、従来手薄だった法律系講座や公務員試験のラインナップを拡充した。法律系講座及び公務員試験は、会計系3講座(公認会計士、税理士、簿記検定)と共に3本柱を形成し、マーケットの大きい3本柱を中心に多様な講座をラインナップしている。
(3)受講生中心主義の下でのサービスの先進性
サービスの先進性も同社の強みである。教育メディアや講師を受講生が自由に選択できるシステムを、資格取得学校市場で最初に導入したのは同社である。その背景にある受講生中心主義の経営姿勢は、テキストの品質と共に、「資格の学校TAC」のブランド醸成に一役買っている。
【事業環境と同社業績】
公認会計士・監査審査会は、金融庁が02年12月に発表した「公認会計士監査制度の充実・強化」に基づき、07年度及び08年度の試験において、合格基準を引き下げて合格者数を増加させた。監査法人も内部統制監査等への対応をにらみ積極的に試験合格者を採用したが、08年秋のリーマン・ショック以降の急激な景気悪化もあり市場が縮小、監査法人は余剰人員を抱えることとなり、その後の採用を手控えた。一方、市場環境が大きく変化したにもかかわらず、金融庁が何の対策も講じなかったため合格数はその後も需要を上回る水準で推移し、合格者の多くが就職できず合格者の未就職問題として社会問題化した。
公認会計士試験合格者の需給は徐々に改善へ
03年には1,260人強だった合格者が、ピークの08年には3,000人を超えたが、09年以降は抑制され、11年には1,500人を下回った。しかし、合格者の未就職率が46%と依然として高い水準にある事から、金融庁は12年以降も合格者の削減を進める考えであることを表明した(12年1月5日に開催された公認会計士・監査審査会において、「合格者の活動領域の拡大が依然として進んでいないこと」及び「監査法人による採用が低迷していること」から、12年以降について「なお一層抑制的に運用されることが望ましい」と考えを示した)。また、12年1月13日には合格者の実務経験の範囲の見直し案も公表され、資本金5億円未満の開示会社や開示会社の連結子会社(海外子会社も含む)における実務経験や、正職員以外の雇用形態での実務経験も認める方向であることが示された。 |
2013年3月期決算 |
売上高について
各講座の受講者は受講申込時に受講料全額を払い込む必要があり(同社では、前受金調整前売上高、あるいは現金ベース売上高と呼ぶ)、同社はこれをいったん「前受金」として貸借対照表・負債の部に計上する。その後、教育サービス提供期間に対応して、前受金が月毎に売上に振り替えられる(同社では、前受金調整後売上高、あるいは発生ベース売上高と呼ぶ)。損益計算書に計上される売上高は、「発生ベース売上高(前受金調整後売上高)」だが、その決算期間のサービスや商品の販売状況は現金ベース売上高(前受金調整前売上高)に反映され(現金収入を伴うためキャッシュ・フローの面では大きく異なるが、受注産業における受注高に似ている)、その後の売上高の先行指標となる。このため、同社では経営指標として現金ベース売上高(前受金調整前売上高)を重視している。
コスト削減の進展で営業損益が黒字転換。現金ベース売上高にも底打ち感
現金ベース売上高は前期比6.0%減の204億39百万円。資格講座全般の受講申込みは未だ低調だが、宅建主任者、ビジネススクール講座や人材事業売上高等の景気感応度の高い講座やサービスの売上が伸びており、3月及び新年度入りした4月は月次ベースで前年同月並みを確保した。前受金調整額が5億59百万円と同32.2%減少した結果、発生ベース売上高は209億99百万円と同7.0%減少した。
個人教育事業
現金ベース売上高は前期比8.9%減の137億75百万円、現金ベースの営業損益は8億48百万円の損失(前年同期は13億20百万円の損失)、発生ベースの営業損益は3億57百万円の損失(同5億69百万円の損失)。財務会計系講座及び法律系講座を中心に資格講座の申込みが低調に推移し売上が減少したが、夏の本試験時期以降、拠点再編、講師契約の更改に伴う講師料の削減、オフショア活用による教材制作のための外注費や動画エンコード費用の削減等の効果が顕在化。営業費用が146億24百万円と同11.1%減少した。
法人研修事業
現金ベース売上高は前期比3.2%減の40億66百万円、現金ベースの営業利益は同27.0%増の10億46百万円、発生ベースの営業利益は同24.2%増の11億15百万円。主力の企業研修及び大学内セミナーがほぼ前期並みの売上を確保したものの、地方の専門学校向けコンテンツ提供・提携校・自治体の委託訓練等の苦戦が響いた。企業研修では、財務会計系研修(同5.6%減)、FP研修(同2.6%減)、情報処理分野の研修(同15.3%減)が減少する一方、ヒューマンスキル系研修(同73.3%増)や宅建研修(同36.7%増)が大幅に増加。大学内セミナーでは公務員講座が同8.6%増と好調に推移し、専門学校向けコンテンツ提供では、簿記・宅建・公務員・情報処理講座等が減少。提携校事業は、公務員講座が増加したものの、簿記・税理士・行政書士講座等が減少した。この他、自治体向け委託訓練が同8.2%減、税務申告ソフト「魔法陣」事業が同3.2%増。 出版事業(現金ベース売上高と発生ベース売上高が等しい)
同社が展開する「TAC出版」ブランド及び子会社の(株)早稲田経営出版が展開する「Wセミナー」ブランド(以下、「W出版」)の2本立てで展開しており、当期は売上高が前期比6.5%増の22億19百万円、営業利益が同12.9%増の4億37百万円。売上の内訳は、TAC出版が18億01百万円、W出版の連結修正前売上が5億62百万円。書籍制作にかかる外注費を中心に売上原価が増加したものの、販管費の削減が進み、営業費用が17億81百万円と同5.1%の増加にとどまった。当期はコンテンツの拡充を念頭に、会計系資格の入口となる簿記検定受験者の開拓・啓発のための「無敵の簿記」シリーズの充実、各資格試験における独学者ニーズの取込みのための「独学道場」シリーズの開発等に注力。この結果、刊行点数はTAC出版が64点増の522点(前年同期458点)、W出版が9点増の169点(同160点)と、それぞれ増加。これら書籍の販売を伸ばすため、アマゾンとの取引強化、自社書籍販売サイト「サイバーブックストア」の利便性向上、更には紀伊國屋書店とのタイアップによる「TAC資格祭り」フェアを開催する等、販促を強化し、資格書籍コーナーにおけるTACグループのプレゼンスの向上と顧客獲得基盤の確立に努めた。 人材事業(現金ベース売上高と発生ベース売上高が等しい)
売上高は前期比8.3%増の4億22百万円、営業利益は同93.0%増の62百万円。2012年11月の公認会計士試験合格発表以降、関東圏の採用状況が改善傾向にあり、(株)TACプロフェッションバンクの手掛ける人材紹介の利用も増加傾向にある。
財務・会計分野
発生ベース売上高は前期比18.7%減の39億15百万円。公認会計士講座は、初学者、再受験者共に受講者数の減少傾向が続いており、受講者数が同16.2%減少し同27.3%の減収(現金ベース売上高:同23.5%減)。簿記検定講座は、日商簿記検定試験の受験者が継続的に減少している事もあり(12年は58.5万人と11年の65.1万人から6.6万人減少)、受講者数が同12.2%減少し同6.8%の減収(現金ベース売上高:同7.0%減)。
経営・税務分野
発生ベース売上高は同7.4%減の48億円。税理士試験の受験申込者数は漸減傾向が続いており、2年連続の6万人割れ。簿記論、財務諸表論の合格率が18.8%、20.7%と高い結果となった事もあり(12年12月7日発表)、同社の税理士講座は初学者が堅調に推移したものの、再受験者が減少したこと等で受講者数全体では同4.2%減少。発生ベース売上高は同10.0%減少した(現金ベース売上高:同4.3%減)。一方、中小企業診断士は社会人からの人気が継続しているが、合格者が多数輩出されたため再受験者が減少したため受講者数が同2.1%減少したものの、発生ベース売上高はほぼ前期並みを維持した(現金ベース売上高:同0.2%減)。
金融・不動産分野
発生ベース売上高は同1.6%増の24億59百万円。講座別では、不動産鑑定士講座が同25.8%減(現金ベース売上高:同19.1%減)、宅建主任者講座は法人研修も好調で同10.0%増(現金ベース売上高:同11.1%増)、一方、証券アナリスト講座が同2.3%減(現金ベース売上高:同3.9%減)。この他、法人研修主体のビジネススクール同6.8%増(現金ベース売上高:同7.6%増)、保険検定講座同73.4%増(現金ベース売上高:同73.4%増)。また、開講初年度の建築士講座は、まずますの申込み。知名度の向上と共に徐々に現金ベース売上高を伸ばしている。受講者数は、不動産鑑定士講座同16.0%減、宅建主任者講座同17.5%増、証券アナリスト講座同15.2%減、ビジネススクール同9.1%減等。
法律分野
発生ベース売上高は同7.9%減の22億74百万円。司法試験講座は同35.7%減(現金ベース売上高:同43.8%減)。同講座は体制の再構築に取り組んでおり、当期は答練・オプション講座等の販売に力を入れた。司法書士講座は、開講時期に大きく売上を落とす傾向が続いており同5.4%の減収(現金ベース売上高:同16.5%減)。この他では、行政書士講座同7.7%減(現金ベース売上高:同7.1%減)、弁理士講座同13.2%増(現金ベース売上高:同13.1%増)。受講者数は、司法試験講座同46.2%減、司法書士同13.1%減、行政書士同11.4%減、弁理士同8.6%減等。
公務員・労務分野
発生ベース売上高は前期比1.4%増の49億73百万円。国家総合職・外専コースが同1.3%増(国家総合職コースで一流大学の大学生を中心に人気が低調になりつつあり、現金ベース売上高は同8.6%減)。国家一般職・地方上級コースは同2.9%増。特に地方上級職が人気になりつつあり、受験競争が激しくなることでスクールのニーズが高まっている。この他、年金アドバイザー資格コースを新規追加する等の取り組みを進めている会保険労務士講座が同0.6%減(拠点再編の影響から現金ベース売上高は同2.5%減)。受講者数は、国家総合職・外専講座同1.3%増、国家一般職・地方上級講座同3.9%増、社労士講座4.4%減等。
情報・国際分野 発生ベース売上高は前期比8.4%減の14億45百万円。情報処理講座は同10.1%減(現金ベース売上高:同10.9%減)。クラウド化の進展に伴いIT業界の案件の集約・減少や企業の統合等の影響から企業研修が伸び悩んでいる。米国公認会計士講座は同7.8%減(現金ベース売上高は、前年に日本受験が可能になって売上が伸びた反動で伸び悩んでいたが、BATIC(国際会計検定)コース等が貢献し同1.9%減まで持ち直した)。この他、CIA(公認内部監査人)講座同28.1%減、CompTIA講座同1.1%増(共に現金ベース売上高は横ばい)。受講者数は、情報処理講座同10.0%増、CompTIA同18.4%増、BATIC同25.6%増、USCPAは前期並み等。
その他(発生ベース売上高と現金ベース売上高が等しい)
売上高は同5.7%減の11億30百万円。講座に帰属しないTACBOOK売上が同19.6%減と低迷した他、スクールでの受講者減少の影響により受付雑収入が同17.4%減少した。一方、税務申告書作成ソフトの「魔法陣」事業は同3.2%増、人材関連売上高も同8.3%増と好調に推移した。
(4)受講者数の推移
受講者数は、前期比1.6%減の201,930名と3年連続で減少。このうち、個人受講者は会計系講座を中心に減少し、全体では同4.0%減の140,725名(簿記検定講座:同11.8%減、公認会計士講座:同16.4%減、税理士講座:同3.8%減)。一方、法人受講者は、同4.4%増の61,205名。提携校が同4.1%減少したものの、前の期に東日本大震災の影響を受けた大学内セミナーが同14.8%増加したほか、企業の自己啓発講座も同3.5%増と堅調に推移した。
(5)財政状態及びキャッシュ・フロー(CF)
期末総資産は前期末比22億52百万円減の168億08百万円。46億94百万円のフリーCFを原資に有利子負債の削減を推進。この他、借方では、差入保証金の回収が進み、投資その他が減少。貸方では、受講申込みが低調に推移したことで前受金が減少する一方、10億円弱の最終利益を計上したこと等で純資産が増加した。期末有利子負債は、前期末比26億24百万円減(42.3%減)の35億72百万円。自己資本比率は19.7%と8.2ポイント改善した。
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2014年3月期業績予想 |
コスト削減;効果が通期で現れ、営業利益がV字回復
現金ベース売上高は前期比4.6%減の195億円。売上の見通しは慎重なものにとどまったが、公認会計士試験合格者を取り巻く環境が改善傾向にある中、前期に立ち上げた建築士講座(12年12月開校、13年1月から本格化)の拡大が期待できるうえ、秋には教員試験対策コースの新規開講も予定しており好材料は多い。利益面では、人事制度改訂等による人件費の絞り込み、講師料の見直しの継続、賃借料削減効果のフル寄与といったコスト削減効果が見込まれ(売上原価:132億52百万円→119億65百万円)、営業利益は7億05百万円と同5倍強に拡大する見込み。1株当たり1円の復配を予定している。 |
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