ブリッジレポート
(6890) 株式会社フェローテックホールディングス

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ブリッジレポート:(6890)フェローテック vol.37

(6890:JASDAQ) フェローテック 企業HP
山村 章 社長
山村 章 社長

【ブリッジレポート vol.37】2013年3月期業績レポート
取材概要「思えば、JASDAQ(当時は店頭登録)上場時の同社の売上高は40億円程度で、営業利益は3~4億円に過ぎず、収益の中心は磁性流体を使ったHDD向けの・・・」続きは本文をご覧ください。
2013年6月25日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社フェローテック
社長
山村 章
所在地
東京都中央区日本橋 2-3-4 日本橋プラザビル
決算期
3月
業種
電気機器(製造業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2012年3月 60,088 4,124 3,287 1,715
2011年3月 57,880 6,931 6,290 4,483
2010年3月 31,541 703 524 156
2009年3月 36,653 2,790 2,097 743
2008年3月 36,625 3,057 2,414 1,903
2007年3月 32,517 2,288 2,081 1,703
2006年3月 23,946 1,210 1,040 708
2005年3月 21,105 1,762 1,456 633
2004年3月 15,000 615 -177 -645
2003年3月 12,845 111 -626 -899
2002年3月 14,775 916 984 -357
2001年3月 16,435 2,665 2,561 1,644
2000年3月 7,988 892 629 288
株式情報(6/10現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
426円 30,810,278株 13,125百万円 - 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
5.00円 1.2% 14.61円 29.2倍 966.10円 0.4倍
※株価は6/10終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
フェローテックの2013年3月期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
太陽電池用シリコン単結晶引上装置やシリコン単結晶の製造工程で使用される消耗品である坩堝(世界NO.1)等の太陽電池関連製品、半導体製造装置やフラット・パネル・ディスプレイ(FPD)製造装置の部品、半導体材料、各種温度調節に使われるサーモモジュール等の製造・販売を行っている。いずれも目に触れる機会はないものの、パソコンや携帯電話、液晶やプラズマ等、身近な分野で同社の技術が活かされている。グループは、同社の他、生産の中心を占める中国等の他、欧米、ロシア、台湾等に展開する連結子会社24社、持分法適用関連会社5社。
 
【事業セグメント】
事業は、半導体・FPD・LED等の製造装置に使われる真空シール、石英製品、セラミックス製品等の装置関連事業、サーモモジュールが中心の電子デバイス事業、及びシリコン結晶製造装置や装置に使われる坩堝等の太陽電池関連事業に分かれ、13/3期の売上構成比は、それぞれ49.1%、11.9%、32.1%、及びソーブレード、装置部品洗浄、工作機械等の報告セグメントに含まれないその他6.9%。尚、シリコン結晶製造装置には、装置関連事業の主力製品である真空シールが主要部材として使われており、これまで蓄積してきた技術やノウハウが活かされている。
 
 
 
経営方針
 
「事業構造改革プラン」の推進により、短期間で出血が止まり、膿を出し切った。14/3期以降は、守りから攻めに転じ、各事業において、ラインナップの拡充、顧客層の拡大、及び海外マーケットの開拓に取り組んでいく。
 
 
(1)装置関連事業
真空シールでは、パーツ・ビジネスから脱して、モジュール化やサブアッセンブリー、更にはエンジニアリング・アフターサービスの提供で高付加価値化を図っていく考えで、表面処理や洗浄とのシナジーも追及していく。また、食品、薬品、医療機器等の分野の開拓に取り組み。非半導体・FPD分野を強化していく。また、石英製品では、潜在的な有望顧客である米国、台湾企業の中国工場に対して、洗浄事業とのシナジーを追及しつつ営業を強化する。
 
 
(2)電子デバイス
多様なアプリケーション向けのニーズに対応するべく、サーモモジュール製品の開発販売を強化する。一報、海外展開では、中国の光通信分野や韓国の光通信及び浄水器分野の開拓を進める他、米国での営業を強化し高機能市場の攻略を目指す。また、生産ラインの自動化を推進し、固定費削減にも取組む。
 
 
(3)太陽電池関連事業
石英坩堝や多結晶用角槽といった消耗品、太陽電池用シリコン、で安定して利益の出せる体制を構築していく。
 
石英坩堝や多結晶用角槽
中国の太陽電池関連市場では、新指導部が供給の抑制に動き出している。このため、新たな設備投資の停滞に加え、生産も落ち込んでおり、大手パネルメーカーの一角が破綻したほどだ。この影響が、石英坩堝メーカーや多結晶用角槽メーカーにも及んでおり、現在、中国では、坩堝メーカーは5社、多結晶角槽メーカーは3社にとどまると言う。年率10~15%の成長が見込まれる太陽電池市場だけに、今後は石英坩堝や多結晶角槽の供給不足が現実味を増してくると言う。また、石英坩堝では半導体回路向けの開拓にも注力し(将来的な目標として太陽電池用2/3、半導体用1/3を掲げている)、多結晶角槽では高変換率かつ低価格を強みに60%のシェアを有する台湾市場向けを強化していく。
 
 
太陽電池用シリコン
独自技術で19%を超える高い変換効率を誇るP型ウェーハと共に、最先端のN型ウェーハのOEMを拡大させていく。遊離砥粒(研削、研磨に使用する砥粒を水に混ぜて使用する)に比べて、高精度・高能率切断が可能な固定砥粒のダイヤモンドワイヤー(芯線となるピアノ線にダイヤモンド砥粒を固定)を使用してスライスしたウェーハは日本の太陽電池メーカーから高い評価を受けている。
 
 
製造装置
太陽電池関連分野において収益性の観点から選別受注を進める一方、ガラス加工機、汎用研磨機、コアドリル装置、NC旋盤等、同社の高い技術が活かされており、また、汎用性のある装置を、太陽電池以外の一般産業に展開していく。
 
 
2013年3月期決算
 
 
前期比36.1%の減収、34億65百万円の経常損失(前期は32億87百万円の利益)
売上高は前期比36.1%減の384億24百万円。太陽電池パネルメーカーの苦戦を受けて太陽電池関連事業の売上が同54.9%減少。半導体・FPDの投資及び生産の落ち込みで装置関連事業も同24.2%、サーモモジュールを中心とする電子デバイス事業も同14.5%、それぞれ売上が減少した。
 
営業損益は36億08百万円の損失(前期は41億24百万円の利益)。シリコン結晶製造装置用部材の在庫評価減(事業縮小に伴い部材等の在庫の見直しを実施)や価格が下落した原材料ポリシリコンの低価法による評価減等18億84百万円を売上原価に計上した結果、原価率が81.8%と同9.3ポイント上昇。経費削減を進めた事や変動費の減少で販管費(貸倒引当金8億53百万円を計上)が同14.6%減少したもののカバーできなかった。為替差益8億70百万円(前期は1億39百万円の差損)の計上等で営業外損益が改善した他、特別利益に土地売却益15億48百万円を計上したものの、事業構造改革費用36億56百万円や減損損失4億58百万円など特別損失43億30百万円を計上したため、65億32百万円の当期純損失となった。
 
為替レート(期中平均)は、米ドルが80.1円(12/3期79.6円)、人民元12.7円(同12.3円)。設備投資は37億06百万円(同78億77百万円)、減価償却費は33億21百万円(28億25百万円)。
 
尚、現金支出を伴わない損失が多かった事やたな卸資産の削減が進んだ事、更には税金費用の減少もあり、前期は6億42百万円だった営業CFが15億84百万円に増加した。また、四半期ベースの売上には底打ち感も出てきた。
 
 
 
 
装置関連事業
売上高188億67百万円(前期比24.2%減)、セグメント利益1億37百万円(同94.5%減)。半導体・FPDの製造工程で使われ、その生産の多寡に売上が比例する石英製品やセラミックス製品は、スマートフォン用半導体向け等、好調な分野もあったが、総じて需要が低迷。年央から値下げ要求も強まり、売上が減少した。また、半導体やFPD等の各種製造装置の部材となる真空シールも設備投資の低迷で売上が減少したものの、小口径ウェーハ向けを中心にシリコンウェーハ加工が堅調に推移した。
 
電子デバイス事業
売上高45億63百万円(前期比14.5%減)、セグメント利益2億57百万円(同53.7%減)。サーモモジュールは、検査装置、バイオ関連機器向けが堅調に推移したものの、年央までの苦戦が響き、主力の自動車温調シート向けが減少。個人消費の低迷で民生機器向けも減少した。一方、新興国での自動車販売の好調を受けて、車載スピーカーに使用される磁性流体の売上が増加した。
 
太陽電池関連事業
売上高123億45百万円(前期比54.9%減)、セグメント損失39億34百万円(前期は7億75百万円の利益)。太陽電池の導入量は、日本・中国・米国で増加したものの、欧州での落ち込みが響き、ワールドワイドではほぼ前年度並みにとどまった。一方、太陽電池パネルの供給は中国メーカーを中心に増加し、供給過剰で価格が下落。パネルメーカー各社の収益が悪化し、設備投資はほぼ凍結状態となった。これに伴い、シリコン結晶製造装置やシリコンインゴットやウェーハの需要が減少した他、得意先の生産調整で坩堝や角槽等の消耗品の売上も減少した。
大幅な損失計上となったのは、大幅な売上の減少に加え、シリコン結晶製造装置用部材の在庫評価減(事業縮小に伴い部材等の在庫の見直しを実施したため)や価格が下落したシリコンインゴット、ウェーハの低価法による評価減等18億84百万円を売上原価に計上した事や、一部の販売先向けの売上債権の回収可能性を保守的に見直した事に伴う貸倒引当金8億53百万円を販管費に計上したため。
 
 
 
「事業構造改革プラン」に基づく取り組みが進み、期末総資産は663億43百万円と前期末比62億27百万円減少した。13年2月に金融機関との短期コミットメントラインの延長契約を締結し、同年3月には本社跡地を売却した事で当面の資金調達の不確実性を一掃した。また、「事業構造改革プラン」の下で、不採算事業からの撤退や固定費削減に加え、既存事業の強化や保有設備の有効活用等の取り組みを進めており、収益体質も改善しつつある。自己資本比率は44.9%。
 
CFの面では、大幅な最終損失となったものの、現金支出を伴わない損失が多かった事やたな卸資産の削減が進んだ事、更には税金費用の減少もあり(14億82百万円→4億92百万円)、前期は6億42百万円にとどまった営業CFが15億84百万円に増加。一方、設備投資を大幅に絞り込んだ事と本社跡地を売却した事で投資CFのマイナス幅が大幅に縮小し、前期は78億50百万円のマイナスだったフリーCFが11億82百万円の黒字に改善した。
 
 
2014年3月期業績予想
 
 
前期比9.3%の増収、7億円の経常利益予想
シリコン結晶製造装置の苦戦で太陽電池関連事業の売上が前期比9.5%減少するものの、半導体の微細化投資やモバイル用向けFPD投資等で装置関連事業の売上が前期比18.2%増加する他、電子デバイス事業も、民生用途の回復や自動車温調シート向けの増加でサーモモジュールが増加し、売上が同15.8%増加する。
 
利益面では、不採算事業の整理が一巡した事とコストダウン及び経費削減の継続で、原価率、販管費率が共に低下。営業損益が46億円強改善し、10億円の営業利益を確保できる見込み。
 
為替レート(期中平均)の前提は、 米ドル95.0円(13/3期80.1円)、人民元15.0円(同12.7円)。一方、設備投資は15億円(同37億06百万円)を予定しており、減価償却費は36億円(同33億21百万円)を織り込んだ。尚、設備投資は、大規模設備投資を計画しておらず、前期末設備未払金を考慮したCFベースの数値。
 
 
装置関連事業 売上高223億05百万円(前期比18.2%増)
真空シールの売上は前期比14.0%増の53億40百万円を見込んでいる。足元、大手を中心に半導体投資が再開されつつある事に加え、中国でのTV用大型液晶、モバイル用高精細中小型液晶及び有機EL用製造装置等、FPD投資の回復も見込まれる。また、ロボットメーカー向けにも回復の兆しがある。顧客の裾野を広げるべく、一般産業向けにチャンバー受注を開始している他、 装置のサブアッセンブリーの需要喚起やエンジニアリング・アフターサービスの提供にも力を入れる。
 
石英製品の売上は同19.5%増の40億87百万円を見込んでいる。上期後半以降の回復を見込んでおり、その根拠として、米国大手OEMからの受注底打ちや国内・アジア企業の投資再開による受注増を挙げている(13/3期は石英製品の売上の56%をOEMが占めた)。米国、台湾企業の中国工場は潜在的な有望顧客であり、同社も中国生産移管を拡大しコスト低減を図る考え。また、洗浄事業とのシナジー追求による売上増にも取組む。認定取得のスピード化や台湾市場の営業強化・短納期・安定品質・カスタマイズも並行して進める。
 
セラミックスの売上は同5.9%増の43億50百万円。半導体製造装置用のファインセラミックス製品は台湾メーカーや一部の日本メーカーによる微細化投資の再開で受注は回復傾向。また、半導体検査治具用のマシナブルセラミックス製品は、Wafer回路検査冶具の新規需要家開拓と用途拡大に取り組む。また、両製品共に新材料開発による拡販と販売競争力の強化に取り組む。
 
この他、ウェーハ加工は全般に市況が回復局面を迎えており、特に自社ブランドの拡大が見込まれる。一方、LED投資が一巡したEBガン・蒸着装置は下期以降の回復を見込む。
 
電子デバイス事業 売上高52億82百万円(前期比15.8%増)
事業の中心となるサーモモジュールの売上は前期比15.5%増の47億64百万円を見込んでいる。新規採用機種の立上げで自動車温調シート向けが増加する。また、民生、バイオ機器、半導体、光学で堅調な推移が見込まれる他、電気シェーバーや浄水器等での新規採用も進んでいる。パワーデバイス用基板の発売・認定を急ぎ、収益の底上げを図る考えで、海外では、米国や中国で光通信市場のシェア拡大に注力する。特に米国では高機能市場での営業を強化する。営業面での強化だけでなく、生産ラインの自動化を推進し固定費削減も図る。
 
太陽電池関連事業 売上高111億73百万円(前期比9.5%減)
多結晶用の角槽を含む石製坩堝の売上は前期比13.8%増の62億68百万円を見込んでいる。太陽電池需要の底打ちで数量増が見込まれる。半導体用途向けの比率引き上げに取り組む考え。一方、多結晶用角槽は競合撤退で残存者利益を享受している足元の稼働率は90%に達している。長時間耐熱品の認定で競合との差別化を図る他、銀川工場で原料のリサイクルや精錬工程でのコスト低減に取組む。また、シェア拡大に向け、半導体用途で8インチの認定を急ぐ。
 
太陽電池用シリコンの売上は前期比13.8%増の62億68百万円を見込んでいる。前期に自社製品から撤退し、OEMに全面転換ており、原材料ポリシリコンの市況下落に伴う評価損も実施済み。欧州の成長は止まったが、インド、東欧、中東、南アメリカなど新興地域での需要増が期待でき、日本・中国・米国は需要が旺盛。価格は現状レベルでの推移を想定している。顧客の高変換率・低価格要求に応える事でシェアアップを図る考えで、結晶製造を銀川工場へ展開しコストを削減すると共に、固定砥粒切断ウェーハで差別化を図る。
 
シリコン結晶製造装置の売上は同93.4%減の1億50百万円。新規受注は見込まずメンテナンス費用のみを織り込んだ。当面は、ガラス加工機、汎用研磨機、コアドリル装置等、一般産業向け汎用機器の受注で生産設備を維持する。従来のCMS事業の復活を視野に入れた受注活動を進めると共に、更なる経営合理化に取組む。
 
 
今後の注目点
思えば、JASDAQ(当時は店頭登録)上場時の同社の売上高は40億円程度で、営業利益は3~4億円に過ぎず、収益の中心は磁性流体を使ったHDD向けのコンピュータシールだった。2000年代に入ると、HDDのディスクの軸受けがボールベアリングから流体軸受けにシフトし、数年前にコンピュータシールの市場は消滅したが、同社は、石製製品やセラミックスなど品揃えの強化とOEMを含めた取引先の拡大で装置関連事業を強化すると共に、サーモモジュール事業を拡大させ、CMS事業や太陽電池関連事業といった新規事業を育成する事で11/3期に売上高600億円、営業利益69億円を達成した。12/3期第2四半期以降は極めて厳しい状態が続いたが、足元では事業環境も収益状態も最悪期を脱している。原点に立ち返り、謙虚な姿勢で事業強化とIRに取り込めば、投資家からの信任回復には時間を要しないと考える。同社の株価は、新興市場の活況を受けて5月22日にザラ場高値694を付けたが、現在、400円台前半にある。しかし、こんなものでないだろう。投資を考えるなら、絶好のタイミングと考える。