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(8860) フジ住宅株式会社

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ブリッジレポート:(8860)フジ住宅 vol.33

(8860:大証1部,東証1部) フジ住宅 企業HP
宮脇 宣綱 社長
宮脇 宣綱 社長

【ブリッジレポート vol.33】2013年3月期業績レポート
取材概要「13/3期は減収・減益となったものの、分譲住宅事業が落ち込む中で土地有効活用事業の売上が増加し収益を下支えした。逆に14/3期は土地有効活用・・・」続きは本文をご覧ください。
2013年6月4日掲載
企業基本情報
企業名
フジ住宅株式会社
社長
宮脇 宣綱
所在地
大阪府岸和田市土生町1丁目4番23号
決算期
3月
業種
不動産業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2012年3月 71,594 4,928 4,903 2,767
2011年3月 59,796 3,648 3,680 2,027
2010年3月 48,614 2,137 2,118 1,237
2009年3月 45,300 2,584 2,388 1,361
2008年3月 48,793 2,723 2,413 2,097
2007年3月 52,221 4,233 4,090 911
2006年3月 41,333 3,229 3,196 1,312
2005年3月 43,954 3,208 2,799 1,661
2004年3月 34,387 2,034 1,891 684
2003年3月 32,905 1,198 1,028 545
2002年3月 33,419 899 692 297
2001年3月 31,433 2,928 2,681 1,503
2000年3月 34,268 1,596 1,117 -2,237
株式情報(5/13現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
771円 35,529,044株 27,393百万円 10.9% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
26.00円 3.4% 91.19円 8.5倍 611.56円 1.3倍
※株価は5/13終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
フジ住宅の2013年3月期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
地盤である大阪府下を中心に阪神間で、戸建分譲・中古住宅等の住宅・不動産事業を展開。主力の戸建分譲は、分譲ながら間取りや設備仕様等、建築基準法の範囲内で最大限に顧客の要望を取り入れる「自由設計方式」と50~150戸規模で街並みの統一性を重視した開発を行う「街づくり」に特徴がある。また、中古住宅の改装販売、金融機関とタイアップした土地有効活用事業や個人投資家向けの賃貸マンション販売事業、賃貸・管理事業、注文住宅事業も事業の柱である。
 
分譲住宅事業(13/3期売上構成比37%)
戸建とマンションの分譲を手掛けており、「自由設計方式」と「街づくり」を特徴とする戸建では、用地仕入・許認可の取得から、宅地造成、設計、建築、販売までの一貫体制を構築。マンション分譲は地価上昇とその後の供給過剰・需要低下に伴う事業リスクの高まりを予見し05年春に事業を停止したが、リーマン・ショック後の地価の下落と分譲マンション市場の需給改善を踏まえて12年2月に再開。駅近の利便性の高い立地等、物件を厳選した1次取得者向けの価格訴求力のある分譲マンション販売を特徴とする。
 
住宅流通事業(同 33%)
「快造くん」のブランド名で展開している中古住宅の再生・販売及び新築建売住宅の販売に係る収益が計上されている。エリア毎に住まい探しの情報拠点となる「おうち館」や、仕入・販売の拠点となる「フジホームバンク」を設けており、中古住宅では地域密着営業により交差点単位での地域情報の収集・分析力をベースとした物件の鑑定力や仕入・販売価格の査定の速度と正確性、更にはリフォーム業者の育成やマニュアル化等、独自のノウハウを強みとする。一方、新築建売住宅では、泉州地区(泉佐野、熊取、貝塚、岸和田中心)で小規模分譲地を開発し手頃な価格の建売住宅を販売。当事業は分譲住宅事業でカバーできない低価格ゾーンをカバーしている。
 
土地有効活用事業(同 16%)
賃貸住宅等の建築請負と個人投資家向け一棟売賃貸マンションの収益が計上されている。建築請負では、遊休地の有効活用を目的とした賃貸マンション・アパート等の建築提案を行なっており、市場調査・企画・設計・建築・竣工引渡後の運営管理までを一貫してサポート。コスト競争力のある木造アパート「フジパレス」シリーズに08年11月サービス付き高齢者向け住宅「フジパレスシニア」が加わり、より独自性が強まった。飛び込みによる営業活動は行っておらず、金融機関や既契約者からの紹介、及びリピートで案件を獲得。また、個人投資家向け一棟売賃貸マンションでは、1棟当たり1億円前後の賃貸アパートが中心。資金運用手段として根強い需要がある。
 
賃貸及び管理事業(同 13%)
100%子会社フジ・アメニティサービス(株)が手掛けている。安定収益源となるばかりでなく、賃貸住宅の建築請負や個人投資家向け一棟売賃貸マンションの他、分譲マンションの販売等との相乗効果も高い事業。
 
注文住宅事業(同 1%)
市況の影響を受けにくい非不動産販売事業育成の一環として、注文住宅の建築請負事業とリフォーム工事の請負事業を手掛けている。注文住宅建築では早期の100棟体制構築を目指している。
 
 
中期事業計画(13/3期~15/3期)
 
同社は、地域に根付いた住宅提供事業者として、新築戸建住宅、分譲マンション、改装付中古住宅、土地有効活用の一環としてのアパート建設や個人投資家向け一棟売賃貸マンション販売、更には不動産管理等、住宅・不動産に関する多様な商品及びサービスの提供に取り組んでいる。また、市況変動への対応策として、地価の急激かつ大きな下落にも耐え得る独自の財務指標の下で在庫コントロールを徹底すると共に、市況の影響を受けにくい注文住宅の建築請負やリフォーム工事の請負等の非不動産販売事業の育成・強化にも取り組んでいる。現在、進行中の中期事業計画では、こうした取り組みを推進し更なる体質強化に取り組むと共に最終の15/3期に売上高870億円、経常利益55億円の数値目標を達成したい考え。
 
 
13/3期 実績
売上高が計画を下回った要因は、中古住宅の苦戦による住宅流通セグメントの売上の計画未達(計画を75億87百万円下回った)。中古住宅は仕入競争激化に伴う価格上昇を踏まえて仕入を抑制したため、販売物件が不足した。前期(12/3期)末の豊富な受注契約残高の消化が順調に進んだ土地有効活用事業の売上高が計画を16億99百万円上回ったがカバーできなかった。
一方、利益面では利益率の高い土地有効活用セグメントの売上増が中古住宅の利益減少を補い、経常利益及び当期純利益が当初計画とほぼ同水準で着地した。尚、販売を開始した分譲マンションは期末受注契約残高が312戸に達しており、次期の売上・利益への貢献が期待される。
 
14/3期 予想
引き続き中古住宅の見通しが厳しいものの、阪神間・堺市の大型現場の引渡しが本格化するため分譲戸建の売上・利益が中期事業計画を上回る見込み。中古住宅は堺(大阪府堺市)に「フジホームバンク堺店」を前期に新設・移転した効果で仕入増が期待できるものの、依然として厳しい仕入競争が続いている。また、景況感の改善が低価格ゾーンの物件を提供する中古住宅には逆風となる事等もあり、売上高は中期事業計画を下回る13/3期並みの水準にとどまると予想としている。
この他では、分譲マンションの引渡し(470戸を見込む)が本格化し、分譲住宅事業の売上を押し上げる。また、土地有効活用事業では、ヒット商品となったサービス付き高齢者向け住宅「フジパレスシニア」を北摂・阪神間で更に拡大する。賃貸及び管理事業は、土地有効活用事業での賃貸アパート及び分譲マンションの引渡しにより管理物件が増加し収益が拡大する。
 
15/3期 計画
消費税引き上げ等の不透明感がある上、今後の地価の状況いかんで土地の仕入れが影響を受けるため、分譲戸建、分譲マンション共に慎重な見通し(分譲住宅事業は減収を見込んでいる)。一方、外部環境の影響を受けにくい土地有効活用事業は北摂・阪神間での営業強化の成果が期待でき、住宅流通事業も緩やかな回復基調が続く見込み。また、土地有効活用事業や分譲マンション引渡しの増加に伴い賃貸及び管理事業の管理物件も増加する。事業が軌道化してくる注文住宅事業では、堺市に開設した展示場の効果もあり地域密着型の営業展開が成果をあげる見込みである。
 
 
 
2013年3月期決算
 
 
前期比23.3%の経常減益ながら、ほぼ予想に沿った着地
売上高は前期比7.7%減の660億47百万円。賃貸住宅等建築請負等を手掛ける土地有効活用事業や賃貸及び管理の売上が増加したものの、分譲住宅事業及び住宅流通事業の売上が減少した。分譲住宅事業の減収は前期に引渡しが想定以上に進んだ反動であり、住宅流通事業では過度な仕入競争を回避したため中古住宅の売上が落ち込んだ。
 
一方、販売状況を示す受注契約高は分譲住宅をけん引役に658億36百万円と同5.7%増加。売上高の先行指標となる期末受注契約残高に至っては前年同期末比26.9%増の393億91百万円と大幅に増加した。
 
利益面では、売上の減少で売上総利益が減少する中(収益性の高い土地有効活用事業の寄与等で売上総利益率は0.5ポイント改善)、営業拠点の増設、分譲マンションの販売本格化に伴う広告宣伝費の増加(15億03百万円→17億60百万円)、営業強化のための人員採用に伴う人件費の増加(24億37百万円→25億66百万円)等で販管費が増加。営業利益は38億09百万円と同22.7%減少した。当期純利益が同18.0%の減少にとどまったのは、税負担の減少による。
 
 
分譲住宅事業の売上高は前期比12.6%減の246億26百万円。売上の減少は自由設計住宅(分譲戸建)の引渡しの減少(824戸→675戸)によるもので、平成25年3月期に販売を本格化した分譲マンションで24戸の引渡しを行ったがカバーできなかった。セグメント利益は同34.0%減の21億31百万円。売上の減少に加え、リーマン・ショック直後に仕入れた利益率の高い物件の引渡し一巡で利益率が低下する中、分譲マンション販売に係る広告宣伝費の増加が負担となった。一方、受注契約高は自由設計住宅の好調と分譲マンションの寄与で366億36百万円と同49.5%増加。受注契約残高は292億64百万円と前年同期末比69.6%増加した。
 
住宅流通事業は、新築建売住宅の仕入・販売が堅調に推移したものの、中古住宅の落ち込みが響き、契約高が216億79百万円と前期比22.9%減少。受注契約高の減少で売上高が217億37百万円と同22.0%減少し、セグメント利益も5億61百万円と同54.5%減少した。受注契約残高は前年同期末比1.8%減の32億27百万円。中古住宅の苦戦は、一部業者の仕入攻勢による物件価格の上昇を受けて仕入を抑制したため販売物件が不足した事が要因。12年9月にフジホームバンク堺店を新設・移転し、今後の仕入体制を強化した。
尚、分譲住宅が契約から引渡し(売上計上)までに半年から1年を要するのに対して、中古住宅や新築建売住宅は契約から引渡しまでの期間が短く、ほぼ"契約≒引渡し"と考える事ができる。
 
土地有効活用事業は、豊富な契約残を抱えていた「フジパレスシニア」(低賃料タイプサービス付き高齢者向け住宅。契約当たり単価は1億80百万円程度が中心)やメゾネット型賃貸住宅の工事が順調に進み、売上高が107億44百万円と前期比46.9%増加。収益性の高い賃貸住宅等建築請負の売上構成比上昇で利益率も改善し、セグメント利益が15億75百万円と同82.7%増加した。一方、端境期にある受注契約高は同24.9%減の68億82百万円、受注契約残高は前年同期末比37.8%減の63億53百万円。尚、足元、4月、5月の契約は回復基調にある。
 
上記の他、賃貸及び管理事業は、土地有効活用事業にリンクした賃貸物件及び管理物件の取扱い件数増と稼働率の改善で売上高が85億64百万円と前年同期比9.0%増加し、セグメント利益も4億53百万円と同5.8%増加した。また、立ち上げ期にある注文住宅事業は、売上高が3億73百万円と前期比0.5%減少する中、今後の営業展開に向けた営業社員の増員に伴う採用費及び人件費の増加等でセグメント損失が前期の31百万円から77百万円に増加した。
 
 
 
 
天候や工事の進捗次第で竣工・引渡しが前後するため契約残高には振れが生じるが、販売状況を示す契約高は一貫して右肩上がり。
 
 
14/3期以降の販売拡大を見据えた積極的な仕入れにより期末総資産は769億26百万円と前期末比117億16百万円増加した。たな卸資産の内訳と金額は、販売用不動産128億77百万円(前期末109億13百万円)、仕掛販売用不動産155億77百万円(同96億51百万円)、開発用不動産290億01百万円(同257億56百万円)。自己資本比率は同2.6ポイント低下の28.2%
 
 
 
(4)分譲住宅の仕入状況と中古住宅の在庫状況
13/3期は、14/3期以降の分譲部門の販売拡大・強化を見据えて分譲戸建、分譲マンション共に用地の仕入れを積極的に進めた。14/3期について、同社は「これまで以上にバラエティーに富んだ商品ラインナップで販売活動を展開していく」としている。
 
 
 
 現在進行中の戸建・マンションプロジェクト
 
中古住宅の在庫状況
仕入競争の激化を受けて、中古住宅の在庫はピークとなった12/3期第3四半期末から13/3期第2四半期末にかけて大きく減少した。ただ、13/3期第3四半期以降は在庫水準が回復傾向にある。
 
 
 
2014年3月期業績予想
 
 
前期比21.1%の増収、同40.9%の経常増益予想
前期の好調な受注を反映して分譲戸建の引渡し増加と分譲マンションの竣工・引渡しの本格化により、分譲住宅事業の売上・利益が大きく伸びる。一方、中古住宅は、依然として厳しい仕入競争が続いており、業績の回復は15/3期以降となる見込み。
配当は1株当たり6円増配の年26円を予定している(上期末13円、期末13円)。
 
 
 
今後の注目点
13/3期は減収・減益となったものの、分譲住宅事業が落ち込む中で土地有効活用事業の売上が増加し収益を下支えした。逆に14/3期は土地有効活用事業の落ち込みを分譲住宅事業でカバーし、大幅な増収・増益が見込まれる。これは偶然ではなく、多様な商品・サービスを提供する事によるポートフォリオ効果であり、同社の真骨頂。好不況の波の大きい不動産業界にあって、事業環境の変化への対応力強化に取り組んできた成果である。
一部業者の仕入れ攻勢で予想外の苦戦を強いられた中古住宅も売上の源泉である在庫が回復基調にある。デフレ商品であり、価格訴求力を強みとする中古住宅は、"いわゆる財布の紐が緩む"時期は苦戦を強いられるため本格的な回復には時間が必要だが、低金利が続く中での景況感の回復や可処分所得の増加は主力の自由設計住宅に追い風となる。2段階で引き上げられる消費税引き上げの影響は読み難いが、同社は自然体で臨んでいく考え。