ブリッジレポート:(3778)さくらインターネット vol.3
(3778:東証マザーズ) さくらインターネット |
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企業名 |
さくらインターネット株式会社 |
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社長 |
田中 邦裕 |
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所在地 |
大阪市中央区南本町1-8-14 堺筋本町ビル |
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決算期 |
3月 末日 |
業種 |
情報・通信 |
項目決算期 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 当期純利益 |
2012年3月 | 9,164 | 873 | 808 | 556 |
2011年3月 | 8,584 | 1,225 | 1,194 | 572 |
2010年3月 | 7,812 | 748 | 723 | 567 |
2009年3月 | 7,106 | 392 | 349 | 374 |
2008年3月 | 6,478 | 85 | -25 | -632 |
2007年3月 | 4,703 | -271 | -346 | -493 |
2006年3月 | 2,758 | 210 | 197 | 105 |
2005年3月 | 1,930 | 133 | 132 | 70 |
株式情報(4/26現在データ) |
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今回のポイント |
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会社概要 |
【事業概要】
事業は、ハウジングサービス(以下、サービスを略)、ホスティング、及びこれら業務に付帯するドメイン取得やサーバ構築コンサルティング及びクラウド等のその他サービスに分かれ、13/3期の売上構成比は、それぞれ32.8%、57.6%、9.6%。同社のハウジングはラック貸し(1つのラックを1顧客が占有)が中心だが、石狩データセンターでは大規模利用向けにスペース貸しも行っている。また、石狩データセンターはリモートハウジングを提供しており、物理作業の全てを同社が代行する事で遠隔地にあるハンデをカバーしている(緊急時でもユーザが現地に赴く必要がない)。一方、ホスティングは、物理サーバを貸し出す物理ホスティング(専用サーバとレンタルサーバの2つのサービスを提供)と、物理サーバ上に複数の仮想マシン(VM)を作成し、VM単位でサービスを提供する仮想ホスティング(クラウドとVPSの2つのサービスを提供)に分かれる。 【沿革】
田中社長が学生時代の1996年12月に創業
事業のスタートは、現社長の田中邦裕氏がサーバインフラの提供ビジネスを開始するべく、“sakura.ne.jp”というドメインの取得申請を行った1996年12月。当時の田中氏は舞鶴工業高等専門学校(京都府舞鶴市)の4年生(18歳)。自らデータの置き場に困っていたため、「それなら自分でやってみよう」と言うのが起業の動機。ドメイン取得後にレンタルサーバサービスの提供を開始し、翌97年6月には専用サーバサービスの提供を開始した。99年8月には さくらインターネット(株)として法人組織に改組。同年10月に大阪(大阪市中央区)と東京(東京都豊島区)にデータセンターを開設し、ハウジングサービスを開始した。
2005年10月に東証マザーズ上場も、相乗効果を狙ったオンラインゲームの苦戦で08/3期に債務超過に
2000年4月、同業のエス・アール・エス(株)、(有)インフォレストと合併し、商号をエスアールエス・さくらインターネット(株)へ変更。同年12月にエス・アール・エス(株)の代表取締役社長だった笹田亮氏が代表取締役社長兼CEOに就任した。04年7月には商号を さくらインターネット(株)へ改めて変更し、05年10月に東証マザーズに株式を上場。東証マザーズ上場後もデータセンター事業が順調に拡大したものの、06年8月から開始したオンラインゲーム事業で苦戦(米Turbine社の「ダンジョンズ&ドラゴンズ オンライン ストームリーチ」と「The Lord of The Rings Online」の日本語版を運営)。オンラインゲーム事業はデータセンター事業との親和性の高さに着目したものだったが、07/3期(最終損益△4億93百万円)、08/3期(同△6億32百万円)の2期間で11億円強の最終損失を計上する原因となり、同社は債務超過に陥った。
再建に向け田中氏が社長に復帰。データセンター事業に経営資源を集中し11/3期にかけて業績はV字回復
このため、07年11月に田中氏が代表取締役社長に復帰し、再建に向けた取り組みを本格化した。幸い国内トップクラスの実績を有するデータセンター事業が好調だった事と田中氏のリーダーシップもあり、08年2月に双日(株)と資本提携し(持分法適用会社となる)、債務超過を解消。11年2月には双日(株)のTOBに賛同し資本関係を強化すると共に(連結子会社となる)、改めて業務提携契約を締結した。同年11月にはクラウドコンピューティングに最適化した日本最大級の郊外型大規模データセンターとして、石狩データセンター(北海道石狩市)が竣工。11/3期にかけて業績はV字回復。現在、東京(3:西新宿、東新宿、代官山)、大阪(堂島)、北海道(石狩)の5か所でデータセンターを運営している。
【特徴と強み】
同社の特徴及び強みとして、国内有数規模のITインフラ基盤、開発から運用・サポートに至る一貫体制(全て自社で対応)、及び国内トップクラスの顧客資産とブランドバリュー、の3点を挙げる事ができる。
国内有数規模のITインフラ基盤
国内最大級(注)の規模となるさくらインターネットのバックボーンネットワーク(ネットワークの基幹部分)は、日本国内の代表的なIX(複数のインターネットサービスプロバイダのネットワークや学術ネットワーク等を相互接続する接続ポイント)や数多くの大手ISP(インターネットサービスプロバイダー)と東京・大阪で接続を行い、高い可用性(システムの壊れにくさ)と圧倒的なトラフィック配信能力を実現している。また、国内事業者では最大規模となる通信回線容量を確保し、対外接続の総計はデータセンター専業事業者としてはトップクラスの244Gbps。東京、大阪、石狩の各データセンター間もギガビット以上大容量で接続されている。
開発から運用・サポートに至る一貫体制(自社運営のデータセンターとバリューチェーンの内製化)
既に説明した通り、多くのホスティングサービス事業者がインフラ(データセンター施設)を外部に依存しているのに対して、同社はインフラを自社で保有し、かつ、このインフラをハウジングサービスにも活用する事で稼働率を上げ、固定費リスク(インフラ保有リスク)を軽減している。また、多様なニーズに柔軟に対応するべく、自社での開発・運営・サポート体制を敷いている(サービス提供に係る全ての工程を自社内で手掛ける事ができる)。各データセンターは無停電電源装置とエンジン発電機を備え、災害発生時には電源供給も可能。セキュリティについては、カードキー認証による開錠システムが導入されている。この他、躯体構造では、震度6強の地震にも耐える制震・耐震・免震構造を採用しており、データセンターに求められるファシリティ能力も高次元でクリアしている。
リスク分散された国内トップクラスの顧客基盤とブランドバリュー
同社は、「高品質かつコストパフォーマンスに優れたサービスを提供する」と言う経営理念の下、日本のインターネット創成期から、コストパフォーマンスに優れた汎用性の高いシンプルなサービスの提供と、スタートアップビジネスから大規模サイトの運営まで幅広い用途への対応に取り組んできた。このため、高品質・低コストのデータセンター事業者としてITエンジニアへの認知度が高く、かつ、個人から法人まで幅広く利用されている(一部の大手顧客への依存度が高い同業者の多くとは異なり、小口顧客の構成比が高く、リスク分散が進んでいる)。
顧客構成
同社の顧客構成は下表の通り。「料金別顧客構成」からは、一部の大手顧客に依存しない、バランスのとれた顧客構成が見て取れる。また、月額10~50万円の顧客が順調に伸びており、コストパフォーマンスを武器にスタートアップ段階にある顧客の取り込みが順調である事もわかる。ただ、スタートアップ段階にある顧客の取り込みが順調である一方、顧客がステップアップしていく段階で他社へ乗り換えるケースが少なくないようだ。このため、リテンション(retention:顧客維持)を念頭に営業強化に取り組んでいる。
尚、優れた柔軟性と拡張性に加え、都市型データセンターでは実現困難な低価格を実現した石狩データセンターの稼働(11年11月)でポテンシャルが各段に高まった事を踏まえ、双日グループと連携して官公庁・自治体市場やエンタープライズ市場の開拓にも力を入れていく考え。 |
新中期経営計画(13/3期~15/3期)と14/3期の施策 |
(1)市場動向
モバイルデバイスやWebアプリケーションの利用増、システムのクラウド化など企業のIT資産に対する意識の変化(ITアウトソーシングへの抵抗感低下)、更にはBCP(事業継続計画)/DR(災害復旧)対策を含めたIT資産の冗長化需要等で、データセンター市場は引き続き拡大傾向にある。ただ、その一方で、IT投資コストの削減ニーズやデータセンターの供給増で価格競争が激化している。加えて、原油価格の上昇や原発事故を背景にした電気料金値上げ等によるコストアップ要因の発生もあり、データセンター事業者の収益環境は厳しさを増している。
(2)新中期経営計画(13/3期~15/3期)
現在進行中の新中期経営計画においては、「ITインフラ」、「テクノロジー」、「サービス」、「セールス」を強化し、新たな競争優位の確立を目指している。
定量的目標
定量的目標は下表の通り。最終となる15/3期の目標として、売上高125億円~、経常利益12.5億円~を掲げている。また、この前提目標として、売上成長率10%以上、売上総利益率30%以上、売上高経常利益率10%以上の3項目を挙げている。
石狩データセンター2号棟の構内工事を開始
石狩データセンターは8棟の建設を予定しているが(用地は確保済み)、現在、建屋が完成しているのは1号棟と2号棟の2棟。このうち使用しているのは、1号棟のみで、2号棟は棟内工事を行っていなかった。2号棟は1号棟の稼働状況を見て棟内工事を開始する考えだったが、1号棟の収容余力が乏しくなってきたため、当初の想定よりも1年前倒しで工事を開始する事となった(1号棟は2年半程度での満杯を想定していた)。ちなみに1号棟は500ラックの収容能力があるが、既に400ラックが通電しており(ホスティングと大規模ハウジング案件で各々200ラックの割り当て)、残る100ラックについては4月中の竣工に向けて工事が進行中。新たに通電する100ラックのうち、50ラックについては日商エレクトロニクス(株)と契約済みで5月から課金を開始する。 (3)14/3期の施策
14/3期の施策として、「さくらのVPS」を入り口としたプラットフォーム化の推進、一般企業向けデータセンターサービスの提供、さくらブランドの浸透と顧客エンゲージメントの向上、セールスの強化、拠点の特色を生かしたデータセンター運営の5点を挙げている。
「さくらのVPS」を入り口としたプラットフォーム化の推進
仮想ホスティング(ホスティングとクラウドの総称)の需要が伸びており、同社が提供する仮想ホスティングも件数を伸ばしている。このため、「さくらのVPS」を入り口としたプラットフォーム化を進めていく考え。具体的には、「さくらのVPS」の新規サーバ需要の吸引力を活かし顧客基盤の拡大を図り、顧客の成長段階に応じて、「さくらのクラウド」、更には「さくらの専用サーバ」や「リモートハウジング(ハウジング)」へ移行を促す事でリテンションを強化する。このため、上位サービスにストレスなく移行できる環境の整備や複数サービスをシームレスに活用できる環境の整備に取り組むと共に、新プランの投入や機能強化を継続的に実施していく。
一般企業向けデータセンターサービスの提供
大規模な需要が見込める一般企業向けホスティング市場へ参入し、専用サーバやシステム構築の自由度の高さとホスティング並みの利便性を備えたリモートハウジングの販売拡大を図る考え。Windowsなど一般企業の情報システムで採用されているOSを搭載したプランを投入する事でサービスを強化すると共に、セールス面では、独自の販売チャネルを持つ企業との提携を模索していく。
さくらブランドの浸透と顧客エンゲージメントの向上
さくらブランドの浸透と顧客エンゲージメントの向上に向け、前期に実施した石狩データセンター見学ツアーのような同社主催のイベントを全国展開していくと共に、Webメディアを活用して技術情報を発信していく。尚、同社は、SNSにおいて国内トップクラスのファン数を獲得しており、この4月には、開発者向け技術情報サイト「さくらのナレッジ」をオープンした。
セールスの強化
リテンション強化を目的に、顧客接触回数の増加を図るべく営業リソースを強化すると共に、サービスサイトとセールスサイトをリニューアルする。
拠点の特色を生かしたデータセンター運営
収益性の高い既存データセンターの競争力を維持しつつ、成長余力が大きい石狩データセンターにリソースを集中する。
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2013年3月期決算 |
前期比3.5%の増収、同0.5%の経常増益
売上高は前期比3.5%増の94億82百万円。上期に発生した大口解約の影響を下期の新規大口案件の稼働で吸収し、ハウジングの売上が同3.3%増加。ホスティングも、専用サーバの落ち込みをレンタルサーバやVPSの増加等で吸収して売上が同3.5%増加した。尚、ホスティングでは、価格を改定した新プランの寄与とディスク容量の増強や処理性能向上など既存サービスの機能強化でレンタルサーバの売上が同13.6%増加した他、前期末に高性能サーバを導入してサービスパフォーマンスの向上を図ったVPSの売上も同89.6%増加。10月に課金を再開したクラウドも新規案件の取り込みが進んだ(クラウドを含むその他の売上が9億08百万円と同3.5%増加)。この他、解約の増加と解約対策としての初期費用無料プランの投入の影響で売上が同11.2%減少した専用サーバも、初期費用無料プランそのものは評価されており、利用件数は回復傾向にある。 尚、第3四半期が前四半期比で増収ながら営業減益となったのは先行投資負担によるもの。具体的には、稼働スペースの拡張や提供サーバ台数の増加等による石狩データセンターの償却負担増、新サービス関連の仕入増加(フラッシュメモリを用いたストレージ「SSD」等)、更にはWebプロモーション強化等を挙げる事ができる。 |
2014年3月期業績予想 |
前期比16.0%の増収、同0.9%の経常増益
売上高は前期比16.0%増の110億円。13/3期第4四半期の受注動向から石狩データセンター1号棟の高い稼働状況が見込まれる他、期中に稼働を開始する2号棟の寄与も見込まれ、売上は高い伸びを示す。サービス別では、ハウジングと足元も引き続き好調なレンタルサーバの売上が共に2億円強増加する見込みで、VPSで5億円強、クラウドで3億円程度の増収を見込んでいる。
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