ブリッジレポート
(3667) 株式会社enish

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ブリッジレポート:(3667)enish vol.2

(3667:東証マザーズ) enish 企業HP
杉山 全功 社長
杉山 全功 社長

【ブリッジレポート vol.2】2013年12月期第1四半期業績レポート
取材概要「コストコントロールと共に、バトルゲームの育成と男性ユーザーの取り込み、更にはプラットホームの分散といった施策も成果をあげている。第2四・・・」続きは本文をご覧ください。
2013年5月21日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社enish
社長
杉山 全功
所在地
東京都渋谷区広尾1-13-1
決算期
12月末日
業種
情報・通信
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2011年12月 2,590 526 523 298
2010年12月 415 64 71 55
2010年1月 22 -40 -41 -41
株式情報(5/2現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
4,650円 2,637,400株 12,264百万円 48.9% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
34円 0.7% 170.62円 27.3倍 398.24円 11.7倍
※株価は5/2終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROE、BPSは前期末実績。
 
enishの2013年12月期第1四半期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
レストラン経営シミュレーションゲーム「ぼくのレストランⅡ」やアパレルショップの経営シミュレーションゲーム「ガルショ☆」、カードバトルゲーム「ドラゴンタクティクス」等の人気作品を有するソーシャルゲームの開発会社。資本・業務提携先であるグリー(株)が運営する「GREE」を中心に、「Mobage」、「mixi」等のSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を通してゲームを提供している。
社長を務める杉山全功氏は、携帯電話向けコンテンツ配信会社インデックス(4835)の経営企画室長や占いコンテンツ大手ザッパラス(3770)の会長兼社長を歴任。ザッパラスでは同社を東証1部上場へ導いた。
 
【事業内容】
事業はソーシャルアプリ事業の単一セグメント。自社で開発したゲームを、「GREE」、「Mobage」、「mixi」、「hangame(ハンゲーム)」、「Ameba(アメーバ)」、「entag! !(エンタグ)」といったプラットホーム(SNSやソーシャルゲームサイト)を通して提供しており、ユーザーはフィーチャーフォン(従来型携帯電話)やスマートフォンでゲームを楽しむ事ができる。ゲームは無料だが、ゲームを展開する上で有効なアイテム等(「ぼくのレストランⅡ」の場合、店を繁盛させるために必要なレシピや店舗を飾るアイテム等)を購入した場合、課金が発生する。ユーザーへの課金及び料金回収はSNSを運営するプラットホーム事業者に委託し、同社はその対価としてシステム利用料等を支払っている。
 
ユーザーはF1層と呼ばれ、購買力が高いとされる20~30代の女性が中心で、「ぼくのレストランⅡ」はユーザーの70~80%、「ガルショ☆」は90%が女性。このため、男性ユーザーの拡大に向け、バトルゲームを育成中である。13/12期第1四半期は、「ぼくのレストランⅡ」の売上が非連結売上高の35%を占め、以下、「ガルショ☆」21%、「ドラゴンタクティクス」(バトルゲーム)28%、「ポケットダンジョン2」(同)9%、その他7%。
 
 
【強み】
ソーシャルゲームビジネスは、基本は無料で利用でき、ゲーム内で使用するアイテムの販売等で収益をあげていくビジネスである。このため、ゲームでいかにして「お金を払ってもいいから、もっと楽しみたい」と言う気にさせるかがポイントとなり、ゲームとしての完成度の高さに加え、リリース後もユーザーの嗜好の移り変わりに合わせたゲームシステムの改良やイベント等の導入といった運営力が必要となる。
 
同社はデータマイニングの強みを活かし、ゲームのリリース後にもユーザーの行動履歴の分析を行う事で、ゲームの利用率、継続率、課金率等の指標が改善するよう継続的にゲームに改良を加えている。こうした改良は同社に限った事ではないが、数週間で配信が終了するゲームもある中、同社においてはロングセラーとして長く収益に貢献しているゲームが多い事が同社のデータ分析の精度の高さと分析に基づく施策の妥当性・適時性を物語っている。また、この成功体験を新規タイトルの企画・開発に活かして、戦略的・継続的に作品を投入している。
 
ゲーム作品を複数のプラットホームに迅速に提供可能なフレームワークの整備が進んでいる事も同社の強みである。このため、ゲームの特性と各プラットホームのユーザーの特徴や傾向を考慮して配信するプラットホームやその組み合わせを決める事や、短期間での新規アプリの企画・開発と相まって成長速度の速いソーシャルゲーム市場に機動的に対応していく事が可能である(フレームワークとはアプリケーションソフトを開発する際に必要となるアプリケーションの土台として機能するソフトウエアの事)。
 
 
 
2013年12月期第1四半期決算
 
 
前年同期比89.8%の増収、同264.8%の経常増益
売上高は前年同期比89.8%増の16億円。12年7月(前期第3四半期)にリリースしたバトルゲーム「ドラゴンタクティクス」が増収をけん引。主力のシミュレーションゲーム「ぼくのレストランⅡ」や「ガルショ☆」、「ポケットダンジョン2」(バトルゲーム)等のロングセラー作品の売上も増加した。
営業利益は同264.6%増の4億09百万円。増収効果に加え、労務費がネイティブアプリケーション(後述)開発に向けた人材の前倒し採用等で増加したものの、外注費のバランスを取りながらのコストコントロールが機能し、原価率が60.1%と前年同期に比べて2.6ポイント改善。一方、販管費は、当四半期は新タイトルのリリースがなかったため広告宣伝費が低減した他、上場による知名度・信用度の向上による採用費の抑制効果もあり、売上や売上総利益に比べて相対的に小幅な伸びにとどまった。
 
第1四半期末の従業員数は前期末比15名増の136名(正社員113名、派遣社員等23名)。内訳は、エンジニア39.7%(前期末42.1%)、デザイナ28.7%(同29.8%)、ディレクタ19.9%(同18.2%)、管理等11.8%(9.9%)。派遣社員は前期の半ば以降に採用を開始しており、前年同期には在籍していなかった。期末157名体制の構築に向け、引き続き優秀な人材を厳選採用して行く考え。
 
尚、ネイティブアプリケーション(以下、ネイティブアプリ)とは、スマートフォンで主流のアプリで、端末にダウンロードして使用するアプリ(同社の場合、端末にダウンロードして遊ぶゲーム)。これに対するものが、従来型携帯電話向けで主流だったブラウザアプリ。ダウンロードせずにブラウザ上でゲームが展開されていた。
 
 
施策の順調な進捗  バトルゲーム売上構成比及び男性ユーザー比率が上昇、プラットホームの分散も進展
主力の経営シミュレーションゲームの増収基調を維持しつつ、新カテゴリーとして育成に力を入れているバトルゲームの売上を伸ばす事ができたのもこの第1四半期の特徴。具体的には、「ポケットダンジョン2」が堅調に推移する中、「ドラゴンタクティクス」が寄与した事でバトルゲームの売上が前年同期比1440%増加し、売上構成比が前年同期の5%から38%に上昇。一方、経営シミュレーションゲームは同23%の増収ながら、売上構成比が94%から61%に低下した(この他、その他のカテゴリーは1%で変わらず)。バトルゲームの売上拡大に伴い、狙い通りに男性ユーザーの獲得も進み、男性の比率が24%から31%に上昇した(バトルゲームの売上構成比ほどに男性比率が上昇していないのは、バトルゲームの単価が1.3~1.4倍高いため)。
 
また、配信先も広がり、「GREE」経由の売上が増加する中で、プラットホーム別売上構成比は、「GREE」が前年同期の73%から56%に低下し、「mixi」(12%→23%)、「mobage」(9%→10%)、及び「その他(6%→11%)」の構成比が上昇した。尚、その他の構成比上昇は、昨秋にドランゴンンタクティクス等の配信を開始した「Ameba」(4.7%)の寄与が大きかった。
 
この他、スマートフォン対応も進んでおり、スマートフォン経由の売上構成比が前年同期の17%から43%に上昇した。
 
(2)四半期業績の推移
 
第4四半期(10-12月)は年末・年始を迎える事もあり、他の四半期に比べてイベントの投入が増えるため売上のボリュームが最も大きくなる。このため、例年、第1四半期はその反動が出るが、この第1四半期は、「ドラゴンタクティクス」が伸びた事に加え、「ガルショ☆」もバレンタイン関連のイベントが好評で売上が増加。「ぼくのレストランⅡ」や「ポケットダンジョン2」の反動減を吸収した。
 
コスト面では、売上原価の約60%を占める支払手数料(プラットホーム事業者への支払)は売上と連動するため売上の増加に伴い増加したが、労務費及び外注費については、前期第4四半期以降、バランスを取りながら開発効率の向上に努めており、徐々にその成果が現れてきた(もっとも、労務費・人件費が前四半期比で減少したのは、前期末に決算賞与を支給した影響)。新規タイトルの投入がなかった事と既存タイトルのマーケティングについて費用対効果を重視し効率化を図った事で広告宣伝費も減少した。
 
この他、ソーシャルゲームの周辺ビジネスとして育成中のO2O(Online To Offline)事業では、2月1日から3月3日にかけて(株)バーガーキング・ジャパンとの提携により、同社の全国約60店舗で来店促進キャンペーンを実施し、目標を上回る動員を達成できた。具体的には、キャンペーン期間中に店舗で商品を購入した際に受け取るレシートにシリアルナンバーを印字し、「ぼくのレストランⅡ」のゲーム上でシリアルナンバーを入力するとポイントが貯まり購入者限定アイテムが取得できた。
 
 
第1四半期末の総資産は前期末比91百万円増の16億89百万円。借方では、売上債権の回収が進んだ事で現預金が増加した他、オフィスの増床で有形固定資産も増加。貸方では、好調な業績を反映して純資産が増加した。自己資本比率は同7.0ポイント改善の72.7%。財政体質は極めて健全で、資産の大半を現預金と売上債権が占め、有利子負債の残高はない。
 
 
第2四半期以降の取り組み -ネイティブアプリへの対応と海外展開-
 
急激な市場の成長が続くネイティブアプリ市場に参入すると共に海外展開を開始する事で更なる成長に向けた布石を打つ。ネイティブアプリについては、第3四半期(7-9月)に経営シミュレーションゲーム1タイトル、バトルゲーム1タイトルのリリースを予定しており(Android版及びiOS版)、同社が既存市場で持つ優位性(経営シミュレーションゲーム運用ノウハウ、女性ユーザー獲得ノウハウ等)を活かして事業を進めていく。その後、ボリューム・成長性共に高い海外マーケットを取り込むべく上記タイトルのローカライズ(現地の言語への対応等)を行い、第4四半期(10-12月)にリリースする計画。当初の展開はアジアや北米を想定しているが、今期業績への売上寄与は見込まず、運営及び広告宣伝コストのみを織り込んだ。
 
また、上記の取り組みと並行して、4半期に1案件のペースでO2O事業の取り組みを進める他、既存タイトルについて、需要変動のリスク分散を念頭にマルチプラットホーム展開(現在配信していないプラットホームからの配信)及びNTTドコモのキャリアサイトであるdゲームへの展開を進める(dゲームからは4月25日に配信開始)。
 
 
 
2013年12月期業績予想
 
 
成長戦略の推進で第2四半期以降、マーケティング費用が増加
上期の業績予想に対する進捗率は売上高53%、営業利益・経常利益共に87%、当期純利益90%。特に利益面で進捗しているが、第2四半期にアニメの大型IPを使ったバトルゲーム(ブラウザアプリ)1タイトルのリリースを予定しており、人件費を含めたマーケティング費用が増加する(第1四半期は新規タイトルのリリースが無かった)。また、第3四半期のリリースに向け、ネイティブアプリ2本の開発費も増加する見込み。
 
発表されている上期及び通期の業績予想から算出される下期の業績予想は、売上高37億円、営業利益3億50百万円、経常利益3億30百万円、四半期純利益1億70百万円。第3四半期にシミュレーションゲームとバトルゲーム(共にネイティブアプリ)各1タイトル、第4四半期にブラウザアプリ1タイトルのリリースと海外展開を予定しており、第2四半期以上にマーケティング費用が増加する他、海外展開に向けローカライズ費用も発生する。
 
 
通期では、前期比51.2%の増収、同23.1%の営業増益を見込む
通期の業績予想に対する進捗率は、それぞれ24%、50%、51%、56%。下期は既に説明した通りコストが増加するため(海外展開については、売上寄与を見込まず、運営及び広告宣伝コストのみを織り込んだ。)、上期に比べて利益率が低下するものの、通期では経営目標である年率20%の利益成長を達成できる見込み。
配当予想は正式に公表されていないが、同社は純利益の20%を配当に充てていく考え。このため、通期の利益が予想通りであれば、今期の配当は1株当たり34円となる。
 
 
今後の注目点
コストコントロールと共に、バトルゲームの育成と男性ユーザーの取り込み、更にはプラットホームの分散といった施策も成果をあげている。第2四半期以降増加するマーケティング費用については、新規タイトル及び新規プラットホームに重点的に投下し、既存プラットホームの既存タイトルには費用対効果重視で対応する事でマーケティング費用全体をコントロールしていく考え。ロングセラーとなっている既存タイトルの場合、広告宣伝費を投下してもMAU(月当たりのアクティブユーザー数)は増えるが、必ずしも課金ユニークユーザー数の増加にはつながらないと言う。この第1四半期は既存タイトルの広告宣伝費を抑制したためMAUが減少したものの、既存の課金ユニークユーザー数及び単価への影響はなかったようだ。MAUの減少が新規の課金ユニークユーザー数の獲得に影響した可能性はあるが、その影響は軽微であり、タイトル全体で考えると広告宣伝費の費用対効果が改善した。
マルチプラットホーム戦略、バトルゲームの育成、更にはO2O事業といった既存タイトルの基盤強化に向けた施策と、攻め(ネイティブアプリへの参入及び海外展開)と守り(コストコントロール)のバランスのとれた成長戦略の成果に期待したい。