ブリッジレポート
(2925) 株式会社ピックルスコーポレーション

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ブリッジレポート:(2925)ピックルスコーポレーション vol.21

(2925:JASDAQ) ピックルスコーポレーション 企業HP
荻野 芳朗 社長
荻野 芳朗 社長

【ブリッジレポート vol.21】2013年2月期業績レポート
取材概要「漬物や惣菜の市場は成熟しているものの、3,700億円の漬物市場は今期の予想売上高が251億円の同社にとって広大であり、総合スーパーや食品スー・・・」続きは本文をご覧ください。
2013年5月14日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社ピックルスコーポレーション
社長
荻野 芳朗
所在地
埼玉県所沢市くすのき台3-18-3
決算期
2月末日
業種
食料品(製造業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2012年2月 21,587 982 1,066 591
2011年2月 20,824 577 624 365
2010年2月 18,234 536 583 322
2009年2月 18,502 399 413 202
2008年2月 17,870 286 373 205
2007年2月 16,775 293 355 218
2006年2月 16,563 158 205 -37
2005年2月 18,186 74 146 144
2004年2月 18,038 268 285 99
2003年2月 18,047 101 98 36
2002年2月 16,542 548 514 230
2001年2月 16,895 302 287 266
株式情報(4/24現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
694円 6,394,585株 4,438百万円 8.8% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
12.00円 1.7% 97.43円 7.1倍 1,058.84円 0.7倍
※株価は4/24終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
ピックルスコーポレーションの2013年2月期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
浅漬・キムチ・惣菜の製造・販売及び漬物等の仕入販売を行なっており、連結子会社7社及び持分法適用会社4社と共に全国的な製造・販売ネットワークを構築している。「野菜の元気をお届けします」をスローガンに掲げ、コーポレートカラーの緑は新鮮感を表す。自社製品は、契約栽培(放射性物質の測定も実施)によるトレーサビリティの確保された国産野菜(約70%が契約栽培)が中心で保存料・合成着色料は使用しない。また、製造現場では、工場内での温度管理の徹底や入室前の全従業員の服装・健康チェック、更にはISO9001、HACCPの取得や5S活動に取り組む等、「安全な食へのこだわり」は強い。
13/2期の品目別売上構成は、製品売上が64.1%(浅漬・キムチ47.0%、惣菜14.5%、ふる漬2.6%)、商品(漬物)売上が35.9%。資本関係では、東海漬物(株)が株式の49.6%を保有するが、取引はふる漬等の仕入がわずかにあるのみ(13/2期は仕入高全体の1.9%)。主要な販売先は、セブン&アイ・ホールディングス(3382)で、13/2期は同グループ向けの売上が全体の35.6%(12/2期は37.9%)を占めた。
 
【沿革】
1977年2月、(株)東海デイリーとして愛知県で設立。同年12月にはセブンイレブンとの取引が始まり、その後、取引はイトーヨーカ堂、デニーズジャパン等、セブン&アイ・ホールディングスの主要企業へと拡大。93年9月、商号を(株)ピックルスコーポレーションに変更。2001年12月に株式を店頭登録(JASDAQ上場)した。
 
【強み】
大ヒットしている「ご飯がススムキムチシリーズ」や各種惣菜等、切れ目無く新商品を投入できる商品開発力と、全国をカバーする営業・製造・物流ネットワークを強みとする。キムチの製法や味付け手法は多種多様。同社は強みである商品開発力を活かしてキムチのラインナップを強化する事で継続的に需要を生み出しており、この商品開発力が第3の柱として育成中の惣菜事業にも活かされている。また、もう一つの強みである全国ネットワークについて言えば、漬物業界・惣菜業界において、全国ネットワークを有するのは同社のみである。
 
 
 
市場動向と事業戦略
 
(1)市場動向
漬物市場
漬物市場は約3,700億円(工業統計2012.01:野菜漬物製造業出荷額3,859億円、食品新聞2012.08:漬物品目別推定出荷額3,400億円)。沢庵等のふる漬市場の縮小でピークの5,000億円から漸減傾向が続いているものの、浅漬やキムチの市場は安定成長が続いている。ただ、後継者難による中小漬物メーカーの廃業等でピークの90年頃には2,400~2,500社あった全国漬物連合会(全漬連)の会員企業数が1,100社程度に減少しており、大手企業による寡占化が進みつつある。
もっとも、年商が100億円を超えているのは業界トップの同社を含めて4社に過ぎず、対象を上位10社に広げても、シェアは30.5%にとどまる(同社のシェアは6.5%)。このため、寡占化といっても緒に就いたばかりで、製品開発力や営業力が不可欠ではあるものの、同社を筆頭に上位企業については寡占化による成長余地が大きいと言える。
 
 
惣菜市場
また、弁当等も含めた惣菜市場に目をやると、市場規模は8兆3千億円を超える。販売チャネル別構成比では、同社が取り組みを強化している総合スーパーが12%、食料品スーパーが24%を占め(この他、コンビ二26%、百貨店・専門店他39%)、両チャネルの市場規模は約2.9兆円。成熟市場ではあるが、近年の傾向である中食志向の高まりや高齢者・単身者世帯の増加による世帯構成の変化が惣菜メーカーにとって追い風となっている。ライバルとなるのは、フジッコ、エバラ食品、ケンコーマヨネーズ、デリア食品、大堀、イニシオフーズ等で、いずれも400~500億円規模の年商を誇る。
同社は、6年ほど前に惣菜事業を本格参入した後発企業であり、事業規模では上記の競合企業に遅れをとるが、製品開発力、全国をカバーする製造拠点、更には直販ならではのきめ細かい営業を強みに売上を順調に伸ばしている。
 
 
 
商品開発力と直販ならではの営業力を強みに5年間の売上高・営業利益の伸びは大手各社を大きき凌駕している。また、過小資本ではないがROEも高い。惣菜事業の拡大でスケールメリットを享受できれば、営業利益率の改善も見込まれる。
 
(2)事業戦略
3,700億円の漬物市場と2.9兆円の総合スーパー及び食料品スーパーの惣菜市場。同社はこの広大な市場を開拓するべく、製品開発、広告宣伝・販売促進、及び全国を網羅する営業・物流ネットワークを三位一体とする事業戦略を推進し、既存取引先の深耕と新規取引先の開拓に取り組んでいく考え。
 
①製品開発(14/2期の新製品)
生きて腸まで届くピーネ乳酸菌キムチ
塩麹やヨーグルトに代表される発酵食品や乳酸菌は多くのメディアで取り上げられ、健康ブームの一翼を担っている。特に乳酸菌は腸内環境改善や免疫力向上等の効果が注目され、“乳酸菌=体・美容に良い”という認識が定着している。このため、同社は他社のキムチとの差別化を図るべく独自で乳酸菌を研究し(キムチは乳酸発酵を利用した食品)、胃酸に強く生きて腸まで届く植物性乳酸菌「Pne-12(ピーネ12)」の同定に成功。この乳酸菌を用いて、ピーネ乳酸菌キムチとして商品化すると共に「Pne-12(ピーネ12)」の特許を出願した。
 
・「ピーネ乳酸菌キムチ」は生きて腸まで届く植物性乳酸菌「Pne-12」を添加しつつも、発酵による酸味を抑え、日本人好みの食べやすい味に仕上げた新しいキムチ。
・魚介の旨みたっぷりのコクとりんご等の甘みが効いた味付け。酸味はほんのりまろやかで、コクがありながらもすっきり食べられる。
・白菜は100%国産を使用し、希望小売価格は税込み268円。5月1日発売予定。
 
美味しい減塩浅漬シリーズ
「減益食品は味気ないものが多い」と言う消費者の声に応え、美味しさを追求した減塩浅漬け「減塩 かぶ胡瓜(塩分30%カット)」、「減塩 のざわな漬(塩分20%カット)」、「減塩 ゆず白菜(塩分20%カット)」を発売した。
 
 
「減塩 かぶ胡瓜」は同社の従来製品と比べて塩分を30%カットしたものの、美味しさはそのまま。サラダ感覚でパクパク食べられる(希望小売価格248円)。「減塩 のざわな漬」は一般的な野沢菜漬けと比べて塩分を20%カットしたが、美味しさはそのまま。ご飯によく合う醤油風味の効いた漬物(希望小売価格248円)。「減塩 ゆず白菜」は同社の従来製品と比べて塩分を20%カットしたものの、やはり美味しさはそのまま。ゆずの香り豊かに仕上げた定番の白菜漬(希望小売価格258円)。
 
開発者より一言((株)ピックルスコーポレーション 開発課)
御客様からのお問い合わせで当社の漬物の塩分が何%なのかを聞かれることがありました。詳しく御話しを伺ってみると漬物は好きで食べたいけれど腎臓を悪くしていて塩分の摂取量を制限をされているとのこと。度々寄せられるこの声が減塩浅漬開発のきっかけとなりました。こだわりポイントは1つだけ!「減塩だけど美味しさはそのまま」です。塩味と一緒に感じられる甘味や酸味のバランスを変えてみたり、旨味などを感じさせる調味料の配合を試行錯誤した結果、従来の浅漬に引けを取らない美味しさの減塩浅漬が出来ました。ぜひ一度ご賞味ください。ピックルスは皆様の健康な漬物ライフを応援します!
 
 
サラダ系惣菜の拡充
健康志向の高まりに応えるべく、訴求力の強い「野菜」をキーワードに既存商品の継続的な改善と商品ラインナップの拡充を図る考え。
 
 
東洋食品(株)の子会社化
惣菜事業強化に向けたラインナップ拡充を念頭に、製品開発と共にM&Aにも機動的に対応していく考え。この一環として12年10月3日にメンマやザーサイの専門メーカーでメンマを使った惣菜製品等も手掛ける 東洋食品 株式会社(群馬県伊勢崎市)を子会社化した(95%出資)。(株)ピックルスコーポレーションの販路を使って、メンマなど東洋食品(株)製品の拡販を図る計画で、(株)ピックルスコーポレーションの惣菜ラインナップの拡充にもつながる。12/8期の東洋食品(株)の売上は2億40百万円(営業利益6百万円)だったが、早期に5億円を拡大させたい考え。
 
②広告宣伝・販売促進
「川越達也のキムチ研究所」(中国放送)の放送でキムチ料理を紹介
中国放送にて13年4月から、キムチを使った料理を提案する番組「川越達也のキムチ研究所」の放送を開始した(全6回)。この番組では、キムチ研究所の所長である川越シェフが、キムチの料理のワンポイントアドバイスと共に、美味しくて栄養価の高いオススメキムチレシピを紹介する。
 
メディア等を活用した広告宣伝活動
引き続きラジオ、テレビ、更には同社の本社に近い西武ドームの大型広告看板等を活用した広告宣伝活動を展開していく。
 
JR山手線駅大型看板、JR・私鉄ドアステッカー、西武ドーム等(首都圏)
 
ラジオ
全国(TBSラジオ)、北海道、東北、首都圏、中京、開催、中国・四国等
 
テレビ
首都圏(日本テレビ)、中京、関西、中国・四国等
(同社資料より)
 
③全国ネットワークを活かした営業戦略
自社工場や物流管理センターに加え、子会社4社や合弁会社4社等と連携する事で、漬物・惣菜メーカーとしては唯一、全国を網羅した生産・物流体制を構築しており、これにより、全国どこにでも同じ品質・同じ味の製品を届ける体制を確立している。
浅漬は冷蔵管理で消費期限4日~7日と消費期限が短い食品のため、生産は受注生産となる。各得意先からオンラインで注文を受け、365日生産を行っており、出来上がった製品は品質を維持するため、得意先の店頭まで10℃以下の低温流通(コールドチェーン)で結ばれている。

このインフラを活かすと共に売場提案の強化等で、スーパーや生協との取引拡大を図っていく考え。また、惣菜の拡大に向け、従来の漬物売場だけでなく、惣菜売場等への営業を強化している他、プライベートブランドへの対応を含めてコンビ二との取引拡大にも力を入れている。
また、これまで手薄だった中国・四国地区や九州地区に加え、ネット販売にも力を入れていく考えで、今後の成長要因として期待されている。
(同社資料より)
 
中国・四国地区事業の拡大
西日本は子会社(株)ピックルスコーポレーション関西(京都府大山崎町)の事業エリアであり、浅漬、キムチ、惣菜の製造、漬物の仕入販売を行っている。13/2期は課題の一つだった中国・四国地区で売上が伸びたもの、京都工場から製品及び商品を配送していたため物流費が想定以上に増加する等で連結ベースの利益を圧迫した。加えて、京都工場もフル操業の状態で増産余力が乏しいため、現在、広島工場(広島県府中市)の建設を進めている。同工場の敷地面積は4,800㎡で、総投資額(土地、建物、機械設備等)は9億円。13年5月の竣工を予定しており、稼働初年度なる14/2期は売上高9億円を見込んでいる。
 
尚、(株)ピックルスコーポレーション関西の14/2期予想は売上高39億54百万円(前期比10.6%増)、営業利益62百万円(同44.6%減)。広島工場の立ち上げ負担から利益が減少するものの、売上は順調に拡大する見込み。工場別の売上高は、京都工場30億54百万円、広島工場9億円。
 
 
 
目標達成に向け、中国・四国地区の販売を強化する考えで、現在、合弁会社で展開している九州地区のてこ入れも図る。品目別では、12/2期に12.1%だった惣菜の売上構成比が15/2期には17.3%に上昇する見込み(12/2期比で70%弱の増収。浅漬・キムチは構成比が48.0%から45.9%に低下するものの、売上高は12/2期比で13%弱の増加を見込む)。また、販路については、スーパーにおける売場拡大(精肉売場、麺売場等)に取組む考えで、子会社東洋食品(株)やグループ外企業との連携等で漬物・惣菜以外の製品開発にも力を入れる。尚、広島工場への投資で14/2期の設備投資は13億14百万円を予定しているが(減価償却費4億52百万円)、15/2期は4億円に減少する見込み(同4億42百万円)。
 
 
2013年2月期決算
 
 
前期比11.5%の増収、同8.6%の経常減益
売上高は前期比11.5%増の240億63百万円。製品売上が154億27百万円と同13.1%増加した他、漬物の仕入・販売の商品売上も86億35百万円と同8.7%増加。製品では、ラインナップの拡充が進んだ惣菜が大きく伸びた他、主力の浅漬・キムチも、「ご飯がススムキムチシリーズ」が堅調に推移する中、新たに投入した「川越達也オススメキムチシリーズ」が売上を押し上げた。
ただ、利益面では、春先や冬場の原料野菜の価格高騰で売上総利益率が23.4%と1.2ポイント低下する一方、中国・四国地区での販売が順調に拡大した事等で物流費や人件費を中心に販管費が増加。営業利益は9億15百万円と同6.8%減少した。当期純利益が同3.5%の減少にとどまったのは、受取補償金35百万円の計上等で特別損益が改善したため。
配当は1株当たり12円を予定。上場10周年の記念配当5円を落とし、普通配当を2円増配する。
 
 
 
 
期末総資産は前期末比4億98百万円増の137億86百万円。運転資金の増加で営業CFが減少する中、新工場関連の先行投資や既存工場への設備投資で投資CFのマイナス幅が拡大したものの、2億56百万円のフリーCFを確保し現預金が増加。貸方では、純資産が増加し、自己資本比率は49.1%と1.8ポイント改善した。尚、設備投資は広島工場用地の土地取得や既存工場の増改築等で4億22百万円(3億16百万円)、減価償却費は3億83百万円(3億74百万円)
 
 
 
2014年2月期業績予想
 
 
前期比4.6%の増収、同10.7%の経常増益予想
売上高は前期比4.6%増の251億80百万円。製品売上が166億11百万円と同7.7%増加する見込みで、引き続きラインナップの拡充と量販店での売場開拓に取組む惣菜が伸びる他、キムチを中心に浅漬・キムチの堅調な推移が見込まれる。また、M&A効果でふる漬けの売上も増加する見込み。利益面では、営業及び開発部門を中心にした人員増強で販管費が増加するものの、増収効果と製品原価率の改善で吸収し、営業利益が10億18百万円と同11.2%増加する見込み。設備投資は広島工場の立ち上げや既存工場の増改築等で13億14百万円(4億22百万円)を計画しており、減価償却費は4億52百万円(3億83百万円)を織り込んだ。
 
 
 
 
今後の注目点
漬物や惣菜の市場は成熟しているものの、3,700億円の漬物市場は今期の予想売上高が251億円の同社にとって広大であり、総合スーパーや食品スーパーを対象にした惣菜市場は約2.9兆円と更に大きい。このため、全国を網羅する営業・物流網を有し、商品開発力と直販ならではの営業力を強みとする同社の業績拡大余地は大きい。実際、過去5年間、大手惣菜メーカーを凌駕する成長力を続けており、資本効率や財務バランスにも優れる。また、現在の売上はマーケットのボリューム以上に首都圏に集中しており、エリア的にも事業拡大余地が大きい事も注目点で、特に西日本は手薄なエリアが多く、14/2期以降は広島工場の稼働で中国・四国地区での販売が加速する見込み(その後は九州を開拓・深耕する考え)。天候要因等で一時的に業績が振れることは有るだろうが、長期的なトレンドとして業績拡大が続くものと思われる。