ブリッジレポート
(4829) 日本エンタープライズ株式会社

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ブリッジレポート:(4829)日本エンタープライズ vol.24

(4829:東証2部) 日本エンタープライズ 企業HP
植田 勝典社長
植田 勝典社長

【ブリッジレポート vol.24】2013年5月期第3四半期業績レポート
取材概要「フィーチャーフォンからスマートフォンへの市場の変化にうまく対応できていない同業者が見受けられる中で、同社はスマートフォン関連の需要・・・」続きは本文をご覧ください。
2013年4月23日掲載
企業基本情報
企業名
日本エンタープライズ株式会社
社長
植田 勝典
所在地
〒150-0002 東京都渋谷区渋谷1-17-8
決算期
5月 末日
業種
情報・通信
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2012年5月 2,790 304 318 170
2011年5月 2,370 266 283 168
2010年5月 2,147 150 173 77
2009年5月 2,475 292 317 175
2008年5月 3,123 572 578 272
2007年5月 3,677 774 783 447
2006年5月 3,416 694 688 418
2005年5月 3,018 587 570 348
2004年5月 1,958 205 168 226
2003年5月 1,752 134 131 58
2002年5月 1,704 51 53 23
2001年5月 1,417 301 262 126
株式情報(4/10現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
15,100円 377,000株 5,693百万円 5.7% 1株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
180.00円 1.2% 928.38円 16.3倍 9,679.29円 1.6倍
※株価は4/10終値。
 
日本エンタープライズの2013年5月期第3四半期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
モバイルソリューションカンパニーを標榜。コンテンツの自社開発にこだわり、音楽・デコメ・電子書籍や生活実用系等のコンテンツを制作し携帯等に配信するコンテンツサービスと、企業のコンテンツ制作・運営、システム構築、アフィリエイト広告等を手掛けるソリューションが2本柱。コンテンツの自社制作により、版権を自社で保有すると共に、効率的なプロモーションと店頭アフィリエイトの自社活用による広告宣伝費の効率化で同業他社を上回る収益性を実現している(12/5期売上高経常利益率)。
 
海外展開
日本のコンテンツを世界へ広げるべく海外展開にも力を入れており、中国とインドでの事業展開では国内コンテンツプロバイダの中で先頭を走る。中国では2G、2.5G向けのゲームコンテンツ配信を手掛け、3Gの拡大を見据えた電子コミック配信サービスを育成中(中国の作家や出版業界との連携による携帯電話向け電子コミックの配信を既に開始)。インドでもスマートフォン・3G端末の普及を見据えた取り組みを進めており、11年12月に業務提携先のMAGNA社(インドのライフスタイルマガジンの大手出版社)が出版している雑誌の電子(iPadアプリケーション)配信を開始した。
 
グループ
グループは、モバイルコンテンツを手掛ける(株)ダイブ、レーベル事業等を手掛けるアットザラウンジ(株)、交通情報を提供する交通情報サービス(株)、Web・Mobileサイト開発・保守及びコンテンツ開発等の(株)フォー・クオリア、中国事業の統括に加え、日本向けコンテンツ制作受託の他、携帯販売代理店を手掛ける因特瑞思(北京)信息科技有限公司、モバイルコンテンツの企画・開発・配信の北京業主行網絡科技有限公司、IT系の教育事業を手掛ける瑞思創智(北京)信息科技有限公司の連結子会社7社、及びモバイル向けコンテンツ配信やキャラクタライセンス事業の瑞思放送(北京)数字信息科技有限公司、インド現地法人NE Mobile Services(India)Private Limitedの非連結子会社2社。この他、13年3月に音声通信関連のソフトウェア開発を手掛ける(株)and Oneを子会社化した(議決権の70%を取得)。
 
 
 
2013年5月期第3四半期決算
 
 
前年同期比53.2%の増収、同34.3%の経常増益
売上高は前期比53.2%増の30億4百万円。前期の第3四半期に連結した交通情報等の交通情報サービス(株)の寄与や携帯電話販売会社との共同展開による有料会員サービスが大きく伸びた事でコンテンツサービス事業の売上高が15億50百万円と同45.5%増加。広告(携帯電話販売会社との協業による成功報酬型コンテンツ販売:店頭アフィリエイト)や企業向けスマートフォン用アプリ・サイトの受注増加を中心にソリューション事業の売上も14億53百万円と同62.4%増加した。
利益面では、広告の売上構成比が上昇した事等で売上総利益率が低下した他、広告宣伝費を中心に販管費も増加したものの増収効果で吸収。営業利益は2億72百万円と同37.5%増加した。
 
 
 
コンテンツサービス事業では、携帯電話販売会社との協業によりスマートフォン向け月額課金会員の獲得が進んでおり(13年2月末時点のスマートフォン向け月額課金会員の比率は49%)、フィーチャーフォン会員の減少分をスマートフォン会員の新規獲得で吸収できる体制が整ってきた。また、「auスマートパス」や「YAHOO!プレミアム」といった移動体通信事業者が提供している定額制コンテンツへの対応も強化しており、定額制コンテンツの販売増が各コンテンツの売上の下支えとなっている。
現在、スケジュールアプリ、メッセンジャーアプリ、女性向けライフサポートアプリ、SNS連携アプリ、アライアンスコンテンツ、IP電話連携サービス等のアプリやサービスの開発を進めており、来期以降、移動体通信事業者への提供はもちろん、企業アライアンス、App Store、Google play、更には海外マーケットへの展開を予定している。
 
尚、定額制コンテンツでは、auスマートパスにおいてWebサービスで主力7サイト、アプリサービスで主力3アプリを提供しており、YAHOO!プレミアムでは主力7サイトを提供。第3四半期累計期間は定額制コンテンツの売上がコンテンツサービス事業売上の6%を占めた。定額制コンテンツは、①移動体通信事業者による審査が必要なため参入障壁が高く競合が限定的、②公式サイトで培った既存コンテンツの有効活用が可能、③移動体通信事業者へ支払う回収代行手数料が不要等のメリットがある。
 
 
ソリューション事業では、クライアントの販売促進、売上拡大、業務効率改善、コスト削減等、顧客満足度に向けた多面的な取り組みが成果をあげ、ソリューションやソリューションコンテンツが拡大しており、スマートフォン対応が進んだ事で広告も成長軌道に復した。また、第2四半期(9-11月)にはコスト削減ソリューションとして、インターネットを用いた高品質の購買調達システム「リバースオークション」を立ち上げた。この他、コンテンツサービス事業で提供されるアプリやサイトの開発も増加しており、セグメント間のシナジーも高まっている。
 
尚、店頭アフィリエイトとは、携帯電話販売会社との協業による成功報酬型コンテンツ販売(リアルアフィリエイト)の事。また、リバースオークションとは、バイヤー(買い手)が調達したい品目の購入条件等を提示し、これに対してサプライヤー(売り手)が価格を提示し、その中で最低価格を入札したサプライヤーを選ぶ取引方法。
 
海外事業
中国において、「電子コミック配信」と「携帯ショップ運営」が軌道化しつつある。このうち「電子コミック配信」では、中国の人気小説「九鼎記」を漫画化した作品がヒットしており、今期中に第2弾(人気ネット小説「仙魔変」を漫画化した作品)の投入も予定されている。尚、「電子コミック配信」では、中国の作家や出版業界と連携しながら携帯電話向け電子コミック(漫画)の配信を手掛けており、この第4四半期(3-5月)から売上の計上が始まる見込み。
 
また、「携帯ショップ運営」では、12年12月に第1号店「東方路店」(上海市浦東地区)をオープンしており(運営を受託し、リニューアルオープン)、第2号店「黄金城道店」(上海市長寧区)も13年4月にオープンしている。尚、「携帯ショップ」の展開は、リアル店舗出店による新たな事業の創造と現地キャリアへの販売ノウハウ(日本式おもてなし、体験型店舗、日本の先進的デザイン等)の提供を目的に進められており、中長期では店頭アフィリエイト(コンテンツ販売)事業の展開も視野に入れている(事業主体は子会社 因特瑞思(北京)信息科技有限公司)。
 
(3)財政状態
第3四半期末の総資産は前期末比11億55百万円増の47億32百万円。好調な業績を反映してフリーCFも増加しているものと思われ現預金が増加した他、評価額の上昇で投資有価証券も増加した(2億60百万円→9億37百万円)。現預金が総資産の過半を占める等、流動性に富み、かつ、無借金の健全経営。自己資本比率は77.1%。
 
 
 
2013年5月期業績予想
 
 
通期予想は前期比49.4%の増収、同25.8%の経常増益
第2四半期決算発表時に上方修正した予想値の売上高と当期純利益を再度上方修正した(第3四半期決算発表に先立つ3月21日発表)。売上高については、コンテンツサービス事業においてアライアンス型月額課金会員の獲得が予想以上に進んでいる事、及びソリューション事業における携帯販売会社との協業による広告売上の上振れが要因であり、当期純利益については、投資有価証券売却益(2億44百万円)の発生に伴う特別利益の計上等が要因。また、第4四半期(3-5月)も売上の高い伸びが見込まれ、広告宣伝の増加等を吸収して増益基調が続く見込み。配当は1株当たり期末180円を予定。当初予定していた150円から30円の上方修正であり、前期実績の130円に対して50円の増配となる。
 
 
(2)株式会社and One(東京都千代田区)の子会社化
この3月に(株)and Oneを子会社化した(議決権の70%を取得)。(株)and One は、IP電話で内線電話網を実現するIP-PBXソフトウェア「Primus」を核とした音声通信関連のソフトウェア開発を手掛けており、音声通信技術に強みを有する。PBX(Private Branch eXchange:公衆回線への接続や内線電話同士の接続を行うための機器)のリプレース需要の取り込みに加え、スマートフォンを利用した企業向け内線化ソリューションや音声通信技術を活かした生活に密着する多様なサービス等を展開していく考え。
尚、(株)and One は10年8月の設立で、12/12期に売上高55百万円(11/12期:売上高47百万円)、営業利益8百万円(同:営業損失3百万円)を計上している。
 
 
今後の注目点
フィーチャーフォンからスマートフォンへの市場の変化にうまく対応できていない同業者が見受けられる中で、同社はスマートフォン関連の需要取り込みが順調に進んでいる。また、携帯電話販売会社との共同展開による有料会員サービス(アライアンス)や携帯電話販売会社との協業による成功報酬型コンテンツ販売(広告:店頭アフィリエイト)といった独自に開発したビジネスも順調に伸びており、かつ事業セグメント間のシナジーも享受している。現状では広告宣伝費の負担が重いものの、徐々にスケールメリットが効いてくるものと思われ、来期は一段の飛躍が期待できよう。