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(2708) 株式会社久世

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ブリッジレポート:(2708)久世 vol.6

(2708:JASDAQ) 久世 企業HP
久世 健吉 社長
久世 健吉 社長

【ブリッジレポート vol.6】2013年3月期第3四半期業績レポート
取材概要「上期決算発表時には、外食産業を取り巻く環境が厳しい事及び米国での干ばつの影響による食材価格の値上がりによる収益性の悪化等を懸念材料と・・・」続きは本文をご覧ください。
2013年3月5日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社久世
社長
久世 健吉
所在地
東京都豊島区東池袋2-29-7
決算期
3月 末日
業種
卸売業(商業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2012年3月 51,053 380 408 173
2011年3月 46,774 230 342 80
2010年3月 42,666 271 394 123
2009年3月 42,181 225 334 171
2008年3月 42,540 283 443 240
2007年3月 42,847 402 507 262
2006年3月 41,491 336 390 246
2005年3月 39,087 255 297 126
株式情報(2/22現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
679円 3,879,022株 2,634百万円 4.3% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
12.00円 1.8% 64.45円 10.5倍 1,076.01円 0.6倍
*株価は2/22終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROE、BPSは前期末実績。
 
久世の2013年3月期第3四半期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
外食産業や中食産業向けの食材卸を中心に、グループでソース、ブイヨン、スープ及び調理食品など食材の製造・販売も手掛けている。取扱品目は約21,000アイテムに上り、冷凍・常温品はもちろん生鮮品から消耗品等のノンフードまで幅広い。グループは、同社の他、ソース・スープ類の製造・販売を手掛けるキスコフーズ(株)、生鮮野菜など農産品の仕入・販売を行う(株)久世フレッシュ・ワン及びニュージーランドでソース類の製造を手掛けるキスコフーズインターナショナルリミテッドの連結子会社3社と海外戦略の立案と情報収集の役割を担う久世(香港)有限公司、及び中国での業務用食材卸売事業を目的に12年5月に設立した久華世(成都)商貿有限公司の非連結子会社2社がある 。
 
【事業内容】
事業は、食材卸売事業、食材製造事業、及びグループ会社向けが大半を占める不動産賃貸事業に分かれ、12/3期の売上構成比は、それぞれ、93.3%、6.4%、0.3%。また、販売チャンネル別(個別ベース)では、居酒屋・パブ33.6%、ディナーレストラン・ホテル・会館19.6%、惣菜・デリカ・娯楽施設・ケータリング16.4%、ファーストフード・ファミリーレストラン・カフェ30.5%。
 
食材卸売事業
取扱が難しい生鮮品を含めた業務用食材全般に加え、割りばし、ナプキン、洗剤といった消耗品等のノンフードまでを幅広くカバーし、取扱品目は約21,000アイテム。近年、PB商品や生鮮三品の取扱いに力を入れている。また、売上面、利益面で下期偏重である事も当事業の特徴である。
 
食材製造事業
連結子会社キスコフーズ(株)が食品製造工場を有し、ソース、ブイヨン、スープ及び調理食品等の自社ブランド製品及びOEM製品の製造・販売を行っている。
 
 
【第2次C&G(Change and Grow for The Good Company)中期経営計画】
同社の推計では、外食産業約23兆円のうち同社の事業対象となる全国の業務用食材マーケットは約3兆6,500億円。12/3期の同社の売上高は500億円を超えたが、シェアは1.4%に過ぎない。成熟した国内業務用食材市場に大きな成長を求める事はできないが、同社においてはシェアアップによる成長余地が大きい(売上高トップの首都圏に限っても、市場規模は国内市場の約40%に当たる約1兆4,700億円で同社のシェアは3.5%程度)。中期的な目標としては、創業85周年を迎える20/3期に売上高1,000億円、営業利益20億円の達成を掲げている。
 
 
(1)「第2次C&G経営計画」(13/3期~15/3期)
13/3期から始まる「第2次C&G経営計画」では、国内外での攻めの営業体制の確立、商品開発を軸とした戦略推進、1,000億円企業への体制構築を基本戦略とし、「三大都市圏No.1」及び「お客様満足度No.1」企業の実現と海外事業の基盤整備に取り組む。
"国内外での攻めの営業体制の確立"では、国内において首都圏(約1兆4,700億円市場)、中京圏(約4,100億円市場)、関西圏(約6,700億円市場)でシェアアップを図るべく地域別の営業戦略を進めると共に、商品・物流戦略を並行して進める。また、海外では中国・東南アジアでの業務用食材卸売事業を展開すると共に食材の供給拠点であるニュージーランドで「食の洋風化」の進む中国・東南アジア市場での販路拡大に対応した製造事業を推進する。"商品開発を軸とした戦略推進"では、グループに製造子会社を有する強みを活かして販売とのシナジーを高め、顧客ニーズを踏まえた商品開発を推進。"1,000億円企業への体制構築"では、人材育成や次世代情報システムの導入で経営基盤の強化を進めると共に、M&Aやアライアンスに積極的に対応する事で外部成長力の取り込みも図る。
 
 
(2)13/3期の重点施策
①三大都市圏でのシェアアップ <攻めの営業>   ④すべての業務プロセスの品質向上
②商品施策 ⑤海外(中国・東南アジア)への進出
③物流施策 ⑥子会社について
 
国内でのシェアアップと海外展開を両輪として業容拡大を図っていく考え。国内については、少子高齢化に加え、景気の低迷やこれに伴う節約志向の高まり等で外食市場が縮小傾向にあるものの、全国シェアが約1.4%(首都圏でのシェアは約3.5%)の同社にとってシェアアップの余地は大きい。同社は国内外食市場の70%を占める3大都市圏にフォーカスして販売を強化していく事でシェアアップを図る考え(実際、この上期は3大都市圏で売上が増加した)。一方、経済成長と共に外食市場の拡大が期待できる海外市場では、日本で育った業務用食材卸機能を根づかせていくと共に(「フルラインの利便性」を訴求すると共に、優れた日本の外食産業のオペレーション(ツールやノウハウ)を提案していく)、現在、99%を日本に輸出しているニュージーランド子会社の製品を、食の洋風化が見込まれる中国及び東南アジアへ展開していく食材製造事業の拡大を図る。
 
 
2013年3月期第3四半期決算
 
 
前年同期比10.1%の増収、同69.7%の経常増益
節約志向や低価格志向が定着し外食・中食市場も厳しい事業環境となったが、前期第4四半期(1-3月)に開設した海老名(神奈川県)、墨田及び目黒(いずれも東京都)の3営業所の寄与に加え、前年同期に東日本大震災(以下、震災)の影響を受けた事もあり、主力の食材卸売事業の売上が同9.1%増加。ニュージーランド子会社の生産本格化等で自社ブランド製品及びOEM製品の製造・販売共に増加した食材製造事業の売上も同24.2%増と伸びた。

利益面では、価格改定効果に加え、調達力の強化で低粗利商品からの切替等が進んだ事や震災の影響による品不足を補うべく緊急避難的に調達した代替商品の影響が一巡した事で食材卸売事業の連結調整前利益が7億56百万円と同40.9%増加。ニュージーランド子会社の稼働率向上等で食材製造事業の連結調整前利益も2億59百万円と同23.7%増加した。
連結ベースでは、売上総利益率が16.9%と同0.5ポイント改善し、売上の増加と相まって、営業拠点増設に伴う人件費の増加や業容拡大に伴う物流費の増加等を吸収。営業利益は4億円と同98.0%増加した。
 
 
 
 
国内外での事業の拡大で第3四半期末の総資産は205億98百万円と前期末比31億61百万円増加した。科目別では、事業拡大で売上債権・仕入債務、たな卸資産が増加した他、営業拠点の増設等で有形固定資産も増加。CFの改善で現預金が大幅に増加し、有利子負債控除後の純現預金は35億52百万円と高水準で実質無借金経営。自己本比率は21.4%。
 
 
2013年3月期業績予想
 
 
通期業績予想に変更はなく、前期比5.8%の増収、同22.4%の経常増益
通期業績予想に変更はなかったが、進捗率は、売上高78.3%(実績ベースの前年同期の進捗率75.3%)、営業利益88.9%(同53.2%)、経常利益99.6%(同72.1%)、当期純利益109.6%(同91.9%)と極めて順調。配当は1株当たり12円の期末配当を予定。
 
 
(2)「フードサービスソリューション2013~Spring&Summer ~」
13年3月12日と13日の2日間、池袋サンシャインシティ文化会館2F 展示ホールD-2において、「フードサービスソリューション2013~Spring&Summer ~」を開催する。頼れる食のパートナーという立場から同社の商品をフルラインで取り揃え、充実した内容で食材・メニューの案内を行い、既存取引先の深耕と新規取引先の開拓につなげたい考え。
 
 
尚、同社はフード・サービス・ソリューション・カンパニーを標榜し、メニューの提案と開発の支援、食材セミナー(年9回)と食材展示会(年2回)の開催、更には情報誌「久世通信」によるトレンド情報の提供といった他社に無いきめ細かい顧客フォローで首都圏No.1のポジションを確立している。
 
 
今後の注目点
上期決算発表時には、外食産業を取り巻く環境が厳しい事及び米国での干ばつの影響による食材価格の値上がりによる収益性の悪化等を懸念材料として挙げていたが、第3四半期決算を見る限り、主力の首都圏を中心に販売は順調であり、収益性の悪化もないようだ。また、(社)日本フードサービス協会のデータを見ても、外食産業の売上高はほぼ前年同期並みの推移が続いており(12月の外食産業の売上高は、強い寒気の影響や冬のボーナスの減少に加え、業態によっては中旬の総選挙の影響等を受け、従来は伸びていた年末の外食消費が足踏みしたものの、全体で前年同期月比99.0%とほぼ前年同月並みの水準を維持した)、同社の通期業績は上振れ期待が高まっている。