ブリッジレポート
(2317) 株式会社システナ

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ブリッジレポート:(2317)システナ vol.19

(2317:東証1部) システナ 企業HP
逸見 愛親 社長
逸見 愛親 社長

【ブリッジレポート vol.19】2013年3月期第3四半期業績レポート
取材概要「今期の好業績の要因として、スマートフォン関連市場の拡大を追い風にした(株)システムプロ時代からの強みであるプロダクトソリューションや・・・」続きは本文をご覧ください。
2013年3月5日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社システナ
社長
逸見 愛親
所在地
東京都港区海岸一丁目2番20号 汐留ビルディング14階
決算期
3月 末日
業種
情報・通信
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2012年3月 30,630 1,822 1,918 904
2011年3月 39,176 2,579 2,661 2,957
2010年3月 3,636 490 536 340
2009年10月 8,161 1,261 1,258 1,180
2008年10月 9,603 1,816 2,153 1,275
2007年10月 7,930 1,595 1,555 849
2006年10月 5,917 961 967 602
2005年10月 4,180 717 691 561
2004年10月 3,093 677 643 391
2003年10月 2,461 516 511 280
2002年10月 1,940 398 380 196
2001年10月 1,524 180 175 93
株式情報(2/15現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
79,400円 266,128株 21,131百万円 6.6% 1株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
3,000.00円 3.8% 6,100.28円 13.0倍 46,169.10円 1.7倍
*株価は2/15終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
システナの2013年3月期第3四半期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
2010年4月1日に(株)システムプロが、持分法適用会社だったカテナ(株)を吸収合併して誕生。旧(株)システムプロのモバイル端末のほぼ全ての工程に係る技術・ノウハウとオープン系技術、旧カテナ(株)の金融分野の業務知識と基盤系技術を融合した事業展開により新たな領域の開拓を進めている。グループは、同社の他、連結子会社4社、持分法適用会社3社。
 
 
【沿革】
1983年3月にマイクロコンピュータのソフト開発を目的としたヘンミエンジニアリング(株)として設立(84年2月、システムプロに商号変更)。80年代後半にかけて通信分野へ展開し、88年2月に日本初の対戦型オンラインゲーム「麻雀クラブ」を開発。その後、対戦型オンラインゲームで培った通信系ファームウェアの技術とノウハウを活かし移動体通信端末ソフトの受託開発に展開。その後、モバイル端末向け組込みソフトの仕様策定・開発・品質評価全般において他社を圧倒し業容を拡大させた。07年2月には、金融機関向け基幹システムの開発に強みを持つカテナ(株)と資本・業務提携(持分法適用関連会社化)。10年4月にカテナ(株)を吸収合併し、商号をシスプロカテナへ変更。同年7月に商号をシステナに変更した。
 
 
【事業内容】
事業は、ソリューションデザイン事業(12/3期調整前売上構成比40.5%)、ITサービス事業(同16.1%)、ソリューション営業(同42.5%)、クラウド事業(同0.8%)、コンシューマサービス事業(同0.2%)に分かれ、営業利益ベースではソリューションデザイン事業の利益が全体の83.0%を占める。
 
ソリューションデザイン事業
当事業は、プロダクトソリューション、サービスソリューション、金融ソリューションの3事業部から成り、プロダクトソリューションは、モバイル機器ソフトの開発・評価を中心に車載システムや情報家電等の組み込みソフト開発を手掛け、サービスソリューションは、従来のWeb系(オープン系)システムの開発に加え、アプリやコンテンツの開発、プラットフォームの設計・構築、自社商材の開発・販売を強化している。また、金融ソリューションは、金融機関向けにメインフレームのシステム開発を行っている。モバイルから基幹システムまで全ての領域の開発に対応できる会社は少なく、同社の強みとなっている。
 
ITサービス事業
システムやネットワークの運用・保守・監視、ヘルプデスク・ユーザーサポート、データ入力、大量出力等のITアウトソーシングサービスを手掛ける。主要顧客は電機メーカー、外資系企業、官公庁等。
 
ソリューション営業
ITプロダクト(サーバー、PC、周辺機器、ソフトウェア)の企業向け販売やシステムインテグレーションを手掛ける。ITサービス事業と一体となって営業展開を進め、所有から利用(クラウド等)へのニーズの変化に対応する事で事業拡大、高付加価値化を図っている。主要顧客は電機メーカー、外資系企業。
 
クラウド事業
クラウド型サービスの提供及び導入支援を行っている。具体的には、代表的なクラウド型サービスである「Google Apps for Business(以下、Google Apps)」やOffice製品・サーバー製品をクラウド型で提供する「Microsoft Office 365」を扱っており、同社の独自サービス「cloudstep」とのセットでの提供に力を入れている。「cloudstep」とは、「Google Apps」や「Microsoft Office 365」等のクラウド型サービスの使い勝手を向上するために独自に開発した業務アプリケーションや運用者向けの管理ツール等の総称。 現在、パブリック・クラウドに特化しているが、プライベート・クラウドに対応する準備も進んでいる。
 
コンシューマサービス事業
連結子会社(株)GaYaが主体の事業。スマートフォン向けソーシャルゲームの企画・開発・提供、受託開発・開発支援に係る収益がセグメントされている。
 
【中期3カ年計画】
現在、15/3期を最終とする「中期3カ年計画」が進行中である。医療、社会インフラ、エアー・クラウド、SNS、アジアマーケット等の高成長市場への新商材・新サービス・新コンテンツの投入により、3年間で売上高成長率35%以上、営業利益2.5倍以上の達成を目指している。

同社は2010年4月のカテナ(株)との合併以降、構造改革を進めてきた。結果として財務体質が改善され、攻めの経営に転じる準備が整った。初年度の13/3期は「種まきの年」と位置付け、①人材採用強化、②新商材・新サービス・新コンテンツの開発、③業務提携・M&A戦略の強化、④新ビジネスモデルへの挑戦、⑤海外進出と開発拠点強化に取り組む。①人材の採用については、これまでのシステムエンジニア中心の採用に加え、営業職の採用を強化しており、②新商材・新サービスの開発については、ソリューションデザイン事業とソリューション営業の連携強化及びITサービス事業とソリューション営業の統合を進め「ALLシステナ」のシナジーを高めていく。続く14/3期は新商材・新サービス・新コンテンツ・新ビジネスモデルの「芽生えの年」とし、最終の15/3期は、これらが収益の柱に育つ「開花の年」との位置付けで、売上高420.1億円(12/3期比1.4倍)、営業利益50.2億円(同2.8倍)、営業利益率12.0%(同2倍)の達成を目指す。
 
 
 
2013年3月期第3四半期決算
 
 
前年同期比5.5%の増収、同19.9%の経常増益
売上高は前年同期比5.5%増の233億67百万円。選択と集中により付加価値の高い業務へシフトを進めたITサービス事業の売上が減少したものの、端末や基地局の品質検証・プラットフォーム開発・性能改善等の案件を中心に主力のソリューションデザイン事業の売上が伸びた他、PCメーカーとの協業やITサービス事業との連携強化等でソリューション営業の売上も増加した。

利益面では、先行投資が続くクラウド事業を除く4事業で、利益が増加もしくは、損益が改善。特にITサービス事業は、前期に子会社東京都ビジネスサービスにおいて計上した貸倒引当金のマイナスがなくなったのに加え、業務の選択と集中を進め高付加価値業務にシフトした効果で利益が前年同期の1憶05百万円から2億60百万円に増加した。四半期純利益の増益率が大きいのは税効果会計の影響による(法人税等調整額が減少)。
 
(2)セグメント別動向
 
ソリューションデザイン事業
売上高99億58百万円(前年同期比9.5%増)、セグメント利益11億76百万円(同10.6%増)。スマートデバイスを中心にデジタル製品の開発工程全般に携わるプロダクトソリューション事業部では、端末や基地局の品質検証・プラットフォーム開発・性能改善等の案件を中心に受注が伸びた他、Androidの非携帯分野も家電や車載端末の案件が堅調に推移した。一方、サーバーサイド、端末サイドを問わず、全範囲の開発に対応できる強みを有するサービスソリューション事業部では、ゲームプラットホーム及びゲームコンテンツの両面で開発が伸びた。また、独自開発製品であるデジタルサイネージ「Totally Vision」は、地方競馬場からの受注が堅調に推移した。金融ソリューション事業部では、統合対応など大型案件の開発が伸びた他、国内ニアショア開発を積極的に推進している。 3つの事業部全てにおいて、首都圏の技術者不足が受注の制約になっていることから、札幌や福岡で開発センターの立ち上げを準備するなど地方拠点の強化に取り組んでいる。
 
ITサービス事業
売上高32億62百万円(前年同期比13.5%減)、セグメント利益2億60百万円(同146.3%増)。子会社東京都ビジネスサービスが障害者雇用という原点に立ち返り、拡大路線から堅実経営に方針を修正した事等で減収となったが、営業体制を強化した上で、ソリューション営業の豊富な顧客に対し、収益性の高いサービスの提案に取り組んだこと、企業の合併再編におけるヘルプデスクやOSのアップグレードなどのスポット案件の獲得に注力したこと、海外進出企業やグローバル企業をサポートする「IT知識+英語力」のサービス対応ができる人材の採用・教育をさらに強化したことなどにより、付加価値の高いサービスの受注が増加し利益率が大幅に向上した。
 
ソリューション営業
売上高99億25百万円(前年同期比8.8%増)、セグメント利益2億25百万円(同0.9%増)。PCメーカーとの協業、IT基盤構築を中心としたソリューションメニューの拡充、更にはITサービス事業との連携強化等の取り組みの成果が顕在化してきた。具体的には、BCP対策を軸にサービスメニューを拡充し、アセスメントから保守・運用まで一貫したシステム導入の提案を積極的に行った。また、パソコンの販売については、Windows 7へのリプレイス提案にキッティングサービスを付加し、他社と差別化を図ったことにより、前年を上回ることができた。
 
クラウド事業
売上高2億23百万円(前年同期比23.6%増)、セグメント損失1百万円(前年同期は20百万円の利益)。東日本大震災以降、BCP対策の一環として企業システムのクラウド化が進んでいる上、クラウドサービスそのものの利用メリットを実感した顧客が積極的にクラウド化を推進している事が追い風になっている。第3四半期累計期間では、独自に開発した「cloudstep」シリーズのワークフローやグループスケジューラーを組み合わせる事で機能を拡張した「Google Apps」の利用も、中堅・大企業で増加した。また、オンプレミス型グループウェアの導入ニーズの高い顧客向けにネオジャパン社の「desknet’s」の取り扱いを開始し、幅広いニーズに対応することが可能になった。今期は規模拡大を第一優先に営業力の強化、ホームページのリニューアルを中心としたプロモーション活動など積極的な投資を行っている。
 
コンシューマサービス事業
売上高34百万円(前年同期比7.8%増)、セグメント損失37百万円(前年同期は1億円の損失)。連結子会社(株)GaYaがスマートフォン向けゲームコンテンツの第一弾として、昨年4月27日に「アイドルメーカー」をGREEアプリでリリースした。第2弾は、2月下旬のリリースに向けて最終テストが進行中である。
 
 
第3四半期末の総資産は前期末比23億06百万円減の195億65百万円。有利子負債の削減が進み純有利子負債はゼロに。自己資本比率は62.8%と同2.2ポイント改善した。
 
 
2013年3月期業績予想
 
 
通期業績予想に変更はなく、前期比6.5%の増収、同49.5%の経常増益
モバイル関連や金融機関の統合関連等でソリューションデザイン事業の売上が伸びる他、ソリューション営業も堅調な推移が見込まれる。また、未だ規模は小さいものの、先行投資の成果でクラウド事業の売上が大きく伸び、コンシューマサービス事業も黒字転換に向け第4四半期にゲームの第2弾がリリースされる予定。売上が減少するITサービス事業も、利益面では大きな寄与が見込まれる。配当は1株当たり100円増配の年3,000円を予定している。
 
 
【株式の分割及び単元株制度の採用】
12年4月に全国証券取引所の有価証券上場規程等が改正され、単元株式数が100株または1,000株以外の上場会社は、14年4月1日までに単元株式数を100株とする事が義務付けられた。これを踏まえて、同社は株式の売買単位を100株とするため、1株を100株に分割すると共に、100株を1単元とする単元株制度を採用する。

具体的には、13年3月31日を基準日(同日は株主名簿管理人の休業日につき、実質的には13年3月29日)として、同日最終の株主名簿に記載または記録された株主の所有する普通株式を、1株につき100株に分割する。また、上記株式分割の効力発生日である13年4月1日をもって単元株制度を採用し、単元株式数を100株とする。
 
 
今後の注目点
今期の好業績の要因として、スマートフォン関連市場の拡大を追い風にした(株)システムプロ時代からの強みであるプロダクトソリューションやサービスソリューションの好調と、カテナ(株)を吸収合併して2年が経過し、ALLシステナとしての体制整備の進展を挙げる事ができる。また、家電や車載端末等、非携帯分野でもAndroidを搭載するケースが増えている事で同社のビジネスチャンスが拡大している事も注目材料。これまで携帯電話に限られていた技術やノウハウ等の利用範囲が広がった訳で、成長要因が一つ増えた。今期の業績予想の達成には若干不安があるものの、成長軌道への回帰に向けた足取りは確かだ。