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ブリッジレポート:(2462)ジェイコムホールディングス vol.23

(2462:東証1部) ジェイコムホールディングス 企業HP
岡本 泰彦 社長
岡本 泰彦 社長

【ブリッジレポート vol.23】2013年5月期上期業績レポート
取材概要「上期は不採算対策や一部通信キャリアにおける直雇用化の影響といった一時的な要因で売上が減少したものの、下期は携帯電話業界の旺盛な人材需要が・・・」続きは本文をご覧ください。
2013年1月29日掲載
企業基本情報
企業名
ジェイコムホールディングス株式会社
社長
岡本 泰彦
所在地
大阪市北区角田町8番1号 梅田阪急ビルオフィスタワー19階
決算期
5月 末日
業種
サービス業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2012年5月 17,518 914 1,044 603
2011年5月 15,905 901 955 489
2010年5月 13,522 789 834 475
2009年5月 14,162 913 953 340
2008年5月 12,404 885 907 489
2007年5月 9,605 812 786 444
2006年5月 6,657 594 552 274
2005年5月 4,684 284 281 152
2004年5月 3,271 142 141 56
2003年5月 2,222 90 88 45
2002年5月 1,616 77 76 40
2001年5月 1,369 73 70 34
株式情報(1/11現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
700円 9,174,000株 6,422百万円 13.7% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
30.00円 4.3% 77.12円 9.1倍 527.81円 1.3倍
※株価は1/11終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
ジェイコムホールディングスの2013年5月期上期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
今回のポイント
 
 
会社概要
 
業界特化型の人材サービスを中心に展開する企業グループ。グループは、純粋持株会社である同社の他、派遣や業務請負等の総合人材サービスと携帯電話キャリアショップの運営を手掛ける連結子会社ジェイコム(株)、持分法適用関連会社サクセスホールディングス(株)とその傘下で認可保育園等の運営を手掛ける(株)サクセスアカデミー、及びアパレル業界に特化しデザイナーやパタンナー等の専門職の人材紹介を手掛ける(株)アイ・エフ・シー等非連結子会社2社。
 
【強みと成長戦略】
主力事業である携帯電話業界向け人材サービスにおいては、携帯電話業界に特化し蓄積してきたノウハウ、コミットした販売台数の達成率を含めた豊富な営業実績、更には接客だけでなく在庫管理や人員配置など販売に関する全業務への対応力といった営業面でのアドバンテージに加え、安定した資本力(無借金経営)や東証一部上場企業ならではのコンプライアンスといった非営業面での強みを有し、国内で有数のブランド力を誇る。
現在、この磐石な事業基盤を背景に第2、第3の柱の育成に取り組んでおり、アパレル業界向けサービスや保育業界向けサービスで成果を挙げつつある。
 
【沿革】
ルーツは1993年9月に設立されたパッケージ旅行の企画を手掛ける(株)パワーズインターナショナル。96年4月に携帯電話ショップの運営を開始し、同年11月にはジェイコム(株)に商号を変更すると共に携帯電話業界に完全にシフト。98年10月にはショップ運営のノウハウを活かして携帯電話業界向け人材ビジネスに参入した。人材ビジネスが順調に拡大し、2005年12月に東証マザーズに上場。07年2月には東証1部市場へ指定替えとなりステータスも向上した。

携帯電話業界に特化した人材サービスで業績を急拡大させた同社だが、マザーズ上場から4年を経た09年12月には、業界・業種・職種を問わずシナジーのある事業へ展開するべく持株会社体制へ移行。商号もジェイコムホールディングス(株)に改めた。M&Aや戦略的な事業提携を積極的に推進していく考えで、同年同月に認可・認証保育園の開設や院内・企業内・学内での保育サービスの受託を手掛ける(株)サクセスアカデミー(現サクセスホールディングス(株))に資本参加(13年1月現在、持分法適用関連会社として議決権の17.7%を保有)。10年2月には東証1部上場の(株)TOWと資本・業務提携した他、11年9月には、住金物産(株)の100%子会社で、同社・同社グループ及び一般アパレル企業向けにデザイナーやパタンナー等の人材紹介を手掛けていた(株)アイ・エフ・シーの全株を取得。

尚、グループで認可保育園等の運営を手掛ける持分法適用関連会社サクセスホールディングス(株)が12年8月7日に大証JASDAQに株式を上場した。
 
【事業セグメント】
事業セグメントは、人材派遣、業務受託、紹介予定・職業紹介等の総合人材サービス事業と、携帯電話キャリアショップ運営のマルチメディアサービス事業に分かれ、12/5期は前者が連結売上高の97%を占めた。

また、総合人材サービス事業は、契約形態別に、派遣契約、業務委託契約(同社から見た場合、業務受託)、及び紹介予定・職業紹介契約に分かれ、セグメント内の売上構成比(12/5期、以下同じ)は、それぞれ63.1%、36.6%、0.3%。取引は携帯電話業界が最も多く、セグメント売上高の91.9%を占め、この他、育成中のアパレル業界向けが4.8%、通信業界向けが2.1%等。地域別の売上構成は、東日本地区が47.4%、西日本地区が40.1%、東海地区が12.5%。
 
 
 
同社は携帯電話ショップ運営から携帯電話業界特化の人材サービスへと事業の軸足をシフトさせる事で携帯電話市場拡大の波を捉え業績を拡大させた。ショップ運営の開始から9年で東証マザーズへ上場し、その後も東日本への事業エリア拡大で成長速度を加速。07年2月には東証1部市場への昇格を果たした。

さすがにリーマン・ショックの影響は避けられず、また、労働者派遣法改正論議の高まりも逆風(業界全体の傾向として)となったが、スマートフォンの市場拡大等による携帯キャリア間の競争激化や商品・料金体系の複雑化に伴う説明能力のある質の高いスタッフへの需要の高まりで10/5期には業績が底打ちした。

11/5期において派遣から業務委託へシフトした顧客ニーズの取り込みが進んだものの、12/5期は業務受託サービス開始当初の不可避的な採算の悪化とスマートフォンの活況による予想を超える業務量の増加で利益が伸び悩んだ。
しかし、13/5期は不採算案件の契約切替等の対策が奏功し、高い利益の伸びが見込まれている。
 
 
重点施策と進捗状況
 
13/5期の重点施策として、サービス品質の向上、第二・第三の柱となる新規事業の確立、グループ会社の管理体制強化、及び事業環境に迅速に対応できるコンプライアンス体制の維持、の4点を挙げている。
 
 
(1)サービス品質の向上
顧客企業、求職者の双方から選ばれる人材サービス会社であるべく、プラス・アルファのサービス提供に取り組んでいく。この一環として、人材確保で苦戦している中小の携帯電話代理店向け新卒紹介に取り組んでおり、既に100校程度の大学と提携済みで学内キャリアセンターの運営受託の商談も進んでいる。前12/5期は30名だった新卒紹介を、今13/5期(今春入社)は300名に拡大させたい考え。
 
(2)第二・第三の柱となる新規事業の確立
①アパレル業界向けサービス
総合人材サービスを手掛けるジェイコム(株)と11年9月に100%子会社化した(株)アイ・エフ・シーのシナジーを図り、幅広くサービスを展開していく。13/5期上期は、催事の短期雇用だけでなく中長期雇用案件の受注が拡大した他、地方での対応実績が評価され、首都圏や大阪といった主要都市部での案件が増加傾向にある。ジェイコムホールディングス(株)のアパレル業界向け売上高は、13/5期は15億円に急拡大する見込み。実績とノウハウを積み重ねて中期的には50億円規模の事業に育成していきたい考え。尚、(株)アイ・エフ・シーはアパレル業界に特化して蓄積してきた知識とノウハウを強みとし、デザイナーやパタンナー等の人材紹介で豊富な実績を有する。
 
 
②保育業界向け事業の拡大
持分法適用関連会社サクセスホールディングス(株)が、グループで認可保育園・認証保育所、公設民営保育園、更には学童クラブなど52ヵ所を運営している他、東京大学、大阪大学等の学校、或いは病院や企業の保育施設144ヵ所以上の運営も受託している。12年8月のJASDAQ上場に伴い組織体制及び業務管理体制の整備も進み、今後、ニーズの強い首都圏を中心に公的保育の運営と受託保育を並行して拡大していく考え。保育事業の最大の課題である保育士の確保では、保育士の派遣等を手掛けているジェイコム(株)と全国規模での連携を強化する。尚、サクセスホールディングス(株)は、12/12期に受託保育事業で13ヵ所、公的保育事業で11ヶ所(いずれも首都圏)の新規開設を予定している。
 
 
(3)コンプライアンス体制の強化
これまで同社は経験者の採用・派遣だけでなく、未経験者の育成にも力を入れてきた。このため法令順守はもちろん、引き続き採用後の集中研修やフォローアップ研修、更には全体研修等に力を入れ、未経験者を社会人に育て上げる制度・社風を強化・促進していく。
 
 
2013年5月期上期決算
 
 
前年同期比7.2%の減収、同8.9%の経常増益
売上高は前年同期比7.2%減の81億05百万円。全国的な対応と業界知名度の向上で大手クライアントとの取引が拡大したアパレル業界向けが大きく伸びたものの、主力の携帯業界向けの落ち込みをカバーできなかった。携帯電話業界向けの落ち込みは、前12/5期第3四半期(12-2月)に不採算の業務受託案件を派遣契約に切り替えた事及び派遣の抵触日(※)を迎え一部の通信キャリアにおいて販売員の直接雇用化があった事等が要因。セグメント別売上高は、総合人材サービス事業が同7.9%減の78億14百万円、マルチメディアサービス事業が同20.6%増の2億91百万円。
利益面では、不採算となった業務受託案件の派遣契約への切り替え効果等で売上総利益率が17.1%と0.8ポイント改善。業務受託案件に要していた人件費や通信費等の減少により販管費率も11.2%と0.2ポイント改善し、営業利益は4億79百万円と同12.3%増加した。補助金収入の減少で経常利益が同8.9%の増加にとどまったものの、サクセスホールディングス(株)の上場に伴い発生した持分変動利益38百万円を特別利益に計上した事や税効果会計の影響等で四半期純利益は3億68百万円と同26.7%増加した。

予想との差異要因も上記とほぼ同様。一部の通信キャリアの販売員直接雇用化等で売上が下振れしたものの、業務受託案件を派遣契約に切り替えた効果で売上総利益率が0.8ポイント、販管費率が0.2ポイント予想を上回った。
 
※ 抵触日
労働者派遣法では、政令26業務以外の業務(いわゆる自由化業務)について派遣受入期間の制限を設けており、抵触日はこの期間の制限に抵触(違反)する事になる最初の日(派遣可能期間が終了した翌日)の事。抵触日以降は、派遣労働者を受け入れる事ができないため、業務を継続するためには派遣労働者の派遣先企業の直接雇用への切り替えや業務委託化等の措置を取る必要がある。尚、クーリング期間(派遣を受け入れない期間3カ月間+1日以上)後には、再び派遣を受け入れる事ができる。
 
不採算案件に対する対応(業務受託から人材派遣への切り替え)について
スマートフォン市場の拡大等により携帯電話業界における人材需要が拡大している。派遣法改正を念頭においた派遣から業務委託(同社から見た場合、業務受託)への需要シフトもあり、同社は積極的に業務委託契約による案件の取り込みを図ったが、来店者に対する対応件数の増加や商品・料金体系の複雑化に伴う1人当たり接客時間の増加により、受注を優先した当初の受注額では不採算になる案件が発生していた。このため業務委託契約にかかる契約金額の増加交渉を開始し、増額が難しい案件は前期の第3四半期に派遣契約に切り替えた。この切り替えの影響で今期は全体の売上が減少したものの、案件毎の採算が想定以上に改善した(同じ業務であっても、業務委託契約から派遣契約に切り替えると契約金額自体は減少するが、不採算が発生する事はない)。
 
 
(2)総合人材サービス事業の動向
契約形態別では、前述の不採算対策の影響で業務委託契約が前年同期比20.6%減と落ち込んだ他、一部の通信キャリアにおいて販売員の直接雇用化があった影響で派遣契約の売上も同1.1%減少。一方、直接雇用化に伴いキャリアから支払いを受けた紹介料等で紹介予定・職業紹介の売上が増加した。また、紹介予定・職業紹介では、人材確保で苦戦している中小の携帯電話代理店向けの新卒紹介が軌道化しつつある。既に100校程度の大学と提携済みで、学内キャリアセンターの運営受託の商談も進んでいる。

業界別では、不採算対策及び一部通信キャリアにおける直雇用化の影響で携帯電話業界向けが減少したものの(スマートフォンの急速な普及を背景に携帯電話業界の人材需要は旺盛だったが)、全国的な対応と知名度の向上で大手クライアントとの取引が拡大し中長期案件も増加したアパレル業界向けが6億22百万円と同2.1倍に拡大。未だ売上規模は小さいものの、保育業界や介護業界向けサービスのノウハウの蓄積も進んだ。

顧客別では、一部キャリアの直雇用化で携帯キャリア向けが、不採算対策の影響で大手携帯電話販売代理店向けが、それぞれ減少。一方、その他販売代理店及び量販店向けは、携帯電話業界での販売員不足が反映され売上が増加した。

地域別では、不採算対策や一部通信キャリアにおける直雇用化の影響が大きかった西日本地区及び東海地区の売上が大きく落ち込んだものの、アパレルや保育等の他業界向けサービスが伸びた東日本地区はわずかな売上の減少にとどまった(首都圏に限ると、携帯電話業界向けの落ち込みをカバーし前年同期比0.1%増)。
 
 
 
 
 
 
前期の第3四半期に不採算となった一部の業務受託案件を派遣契約へ切り替えた効果で、原価率が前年同期の83.7%から82.9%へ想定以上に改善した他、人件費率(0.2ポイント改善)や営業変動費率(0.3ポイント改善)を中心に販管費率も0.2ポイント改善した。一方、下期以降の事業拡大を睨み採用及び人材育成を強化したため、採用教育費率は0.4ポイント上昇した。
 
(4)財政状態及びキャッシュ・フロー(CF)
 
無借金経営で流動性に富んだ財政状態に大きな変化はなく、上期末の総資産は前期末比36百万円減の62億33百万円、自己資本比率は同4.3ポイント改善の77.7%。科目別では、借方において、回収が進んだ売上債権や償還で信託受益権が減少する一方、現預金や投資有価証券(7億71百万円→8億68百万円)が増加。貸方では、スタッフの減少でスタッフの給与となる未払金が減少する一方、純資産が増加した。
 
 
利益の増加と売上債権の回収が進んだ事等で前年同期は2億08百万円のマイナスだった営業CFが2億61百万円の黒字に転換。信託受益権の償還等で投資CFも黒字となり、5億82百万円のフリーCFを確保した。配当金の支払で財務CFがマイナスになったものの、現金及び現金同等物の上期末残高は17億87百万円と前期末比4億46百万円増加した(前年同期末比では6億62百万円の増加)。
 
 
2013年5月期業績予想
 
 
下期の見通しは売上高113億94百万円(前年同期比29.7%増)、経常利益6億73百万円(同25.8%増)。繁忙期におけるキャンペーン案件の取り込みやアパレル業界向けサービスの拡大で売上が大きく伸び、原価率の改善も進む見込み。
 
 
通期業績予想に変更は無く、前期比11.3%の増収、同17.5%の経常増益
売上高は前期比11.3%増の195億円。マルチメディアサービス事業の売上が減少するものの、総合人材サービス事業の売上が190億円と同11.8%増加する見込み。後者では、主力の携帯電話業界向けの売上が増加する他、アパレル業界向けの売上も大きく伸びる(12/5期:8億17百万円→13/5期:15億円)。営業利益は同25.7%増の11.5億円。業務受託案件の利益率改善に加え、収益性の高いキャンペーン案件の取り込みも進む見込み。配当は1株当たり5円増配の年30円を予定している(上期末15円、期末15円)。
 
 
 
今後の注目点
上期は不採算対策や一部通信キャリアにおける直雇用化の影響といった一時的な要因で売上が減少したものの、下期は携帯電話業界の旺盛な人材需要が売上に素直に反映されてくる。携帯電話業界はスマートフォン市場の拡大による通信キャリアの販売競争の激化に加え、タブレット端末市場の拡大等商品やサービスの複雑化に伴う一人当たり接客時間の長時間化や求められる業務知識の増加等で慢性的な販売員不足が生じており、販売員だけでなく販売に付随する業務への人材需要も高まっている。このため引き続き良好な事業環境が続く見込みだ。また、第二の柱として立ち上がってきたアパレル業界向けサービスが本格的な成長期を迎えている事に加え、12年8月にJASDAQに株式を上場したサクセスホールディングス(株)も調達した資金を活用して首都圏での認可保育園の開設を積極的に進めており、アパレル業界向けサービス、保育業界向け事業共に来期は一段の拡大が見込まれる。今期の業績については、売上面で若干ハードルが高いように思われるが、利益面では十分射程圏内。今期の経常利益の着地が予想通りであれば、来14/5期の3連続経常最高益更新が視野に入ってくる。