ブリッジレポート
(6890) 株式会社フェローテックホールディングス

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ブリッジレポート:(6890)フェローテック vol.35

(6890:JASDAQ) フェローテック 企業HP
山村 章 社長
山村 章 社長

【ブリッジレポート vol.35】2013年3月期第2四半期業績レポート
取材概要「自社ブランドの太陽電池用シリコン製品からの撤退及び米国での坩堝生産からの撤退により、前者で発生していた原材料価格と製品価格のギャップ・・・」続きは本文をご覧ください。
2012年12月25日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社フェローテック
社長
山村 章
所在地
東京都中央区日本橋 2-3-4 日本橋プラザビル
決算期
3月
業種
電気機器(製造業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2012年3月 60,088 4,124 3,287 1,715
2011年3月 57,880 6,931 6,290 4,483
2010年3月 31,541 703 524 156
2009年3月 36,653 2,790 2,097 743
2008年3月 36,625 3,057 2,414 1,903
2007年3月 32,517 2,288 2,081 1,703
2006年3月 23,946 1,210 1,040 708
2005年3月 21,105 1,762 1,456 633
2004年3月 15,000 615 -177 -645
2003年3月 12,845 111 -626 -899
2002年3月 14,775 916 984 -357
2001年3月 16,435 2,665 2,561 1,644
2000年3月 7,988 892 629 288
株式情報(11/30現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
286円 30,810,278株 8,812百万円 5.9% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
5.00円 1.7% - - 1,090.66円 0.3倍
※株価は11/30終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROE、BPSは前期末実績。
 
フェローテックの2013年3月期上期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
太陽電池用シリコン単結晶引上装置やシリコン単結晶の製造工程で使用される消耗品である坩堝(世界NO.1)等の太陽電池関連製品、半導体製造装置やフラット・パネル・ディスプレイ(FPD)製造装置の部品、半導体材料、各種温度調節に使われるサーモモジュール等の製造・販売を行っている。いずれも目に触れる機会はないものの、パソコンや携帯電話、液晶やプラズマ等、身近な分野で同社の技術が活かされている。グループは、同社の他、生産の中心を占める中国等の他、欧米、ロシア、台湾等に展開する連結子会社20社、持分法適用関連会社6社。
 
【事業セグメント】
事業は、半導体・FPD・LED等の製造装置に使われる真空シール、石英製品、セラミックス製品等の装置関連事業、サーモモジュール応用製品が中心の電子デバイス事業、及びシリコン結晶製造装置や装置に使われる坩堝等の太陽電池関連事業に分かれ、12/3期の売上構成比は、それぞれ41%、9%、46%、その他4%(ソーブレード、装置部品洗浄、工作機械等の報告セグメントに含まれない)。尚、シリコン結晶製造装置には、装置関連事業の主力製品である真空シールが主要部材として使われており、これまで蓄積してきた技術やノウハウが活かされている。
 
 
 
事業構造改革
 
 
クリーンエネルギー政策を追い風とした欧州での太陽電池ビジネスの活況に加え、投機マネーの流入もあり、2011年にかけて、世界最大の太陽光パネル生産国である中国において太陽電池パネルの生産や増産投資が活発化した。中国に主要な製造拠点を有し、太陽電池用シリコン結晶製造装置や石英坩堝等の消耗品に加え、シリコンインゴッドやウエーハ・セルといった太陽電池向けのシリコン製品を生産する同社もこの恩恵を受けて11/3期は売上高及び利益が過去最高益を大幅に更新した。
 
しかし、普及支援策の規模縮小や南欧の債務危機の余波等で、11年後半以降、欧州での需要が急減。12年は更に状況が悪化し、中国太陽光パネルメーカーの多くが経営難に見舞われた。装置や消耗品の需要急減やシリコン製品の価格下落で、同社の太陽電池関連事業も、12/3期下期以降、急速に悪化。当初は底打ち期待があった13/3期も、一段と厳しさが増し収益の悪化が加速した。当面、事業環境の好転が見込めない事から、シリコン結晶製造装置の製造・販売及び石英坩堝の製造・販売の縮小や、自社ブランドのシリコン製品の製造・販売からの撤退(シリコンインゴッドはリスクの無い受託生産に転換)を骨子とする「事業構造改革プラン」を策定し実施する事となった。
 
「事業構造改革プラン」の実施に伴う一部設備の減損・除却や人員合理化等で損失が発生するため、13/3期は大幅な最終赤字が避けられないが、損失計上が一巡する14/3期は太陽電池関連事業の収益性改善とニッチ市場で高シェア製品群を有する装置関連事業及び電子デバイス事業で着実に収益を上げる事で黒字転換を図る考え。
 
【事業構造改革プランの概要】
不採算となった太陽電池関連事業を縮小すると共に、人員の削減と緊急対策としての役員報酬の減額及びその他人件費の削減を実施する。
 
(1)太陽電池関連事業の縮小
シリコン結晶製造装置及び消耗品群の一部製品の生産を縮小する他、太陽電池用シリコン事業において、ウエーハ・セルの製造・販売から撤退し、シリコンインゴッドは自社ブランド品の製造・販売から撤退しリスクの無い受託生産に専念する。
 
①シリコン結晶製造装置 :一部製品の生産縮小
主な製品は、単結晶引上装置、多結晶製造装置、角切りソー装置等で、いずれも生産性の悪い旧型からの買い替え需要が見込まれるものの、資金繰りの悪化で代金回収が不透明な取引先が多いため現在は積極的な販売を控えている。このため、生産を大幅に縮小すると共に部品・部材在庫の評価減及び除却を実施する。尚、中期的な観点から、省エネ化等の付加価値機能の研究開発投資は継続する。
 
②消耗品群 :一部製品の生産縮小
主な製品は、石英坩堝、ホットゾーン等で、いずれも単結晶引上装置ユーザー向けの消耗品だが、ユーザーの生産調整に伴い需要が低迷している。このため、大手太陽光パネルメーカーが破たんした米国での坩堝製造から撤退(工場閉鎖)すると共に、中国坩堝工場も坩堝製造装置を削減する(これに伴い製造装置の減損等を実施する)。
 
③太陽電池用シリコン :自社ブランド品の撤退
主な製品は、シリコンインゴット、シリコンウエーハ、セル等で、いずれも製品価格の下落が続いており、原価を下回る逆ザヤ状態が続いている。このため、自社ブランド品事業から撤退し、委託先が原材料となるポリシリコンを調達し同社が生産を請け負うシリコンインゴットの受託生産に特化する。
 
 
 
【今後の事業方針】
シリコン結晶製造装置や消耗品の生産縮小と太陽電池用シリコンのビジネスモデルの転換により太陽電池関連事業の収益性改善を図ると共に、ニッチ市場で高シェア製品群を有する装置関連事業及び電子デバイス事業で着実に収益を上げる事で14/3期に黒字転換を達成し、15/3期以降の成長軌道への回帰を目指す。
 
 
電子デバイス事業
主力のサーモモジュールは、高性能材料を使用した新製品を積極的に投入していく考えで、自動化ラインの増設により安定した製品供給とコスト低減にも取り組む。また、現在、自動車向けが大半を占める米国市場において、通信、医療、バイオなど高機能製品需要を掘り起こすべく、直販体制を強化する(これまでは代理店販売)。この他、需要旺盛なパワー半導体向けDCB(Direct Copper Bonded)基板の品質向上と生産能力増強に取り組み、主要市場である日欧での拡販を図る。尚、DCB基板とは、セラミックス基板に銅回路版をDCB法で接合した放熱用絶縁基板で放熱性に優れる(サーモモジュールで培った接合技術を活かす事ができる)。
 
太陽電池関連事業
需要が減少しているシリコン結晶引上装置等の結晶製造製品は、ランニングコストが低い省エネ型製品やリチャージ機能を付加した製品開発に留める。一方、シリコン製品は、自社ブランドから撤退し、シリコンインゴットの受託生産に特化する。この他、消耗品である石英堆塙は、太陽電池向けの他、半導体向け製品の製造も進める。
 
その他事業(非報告セグメント)
中国市場向け事業として手掛けている加工機の受託生産、表面処理(メッキ・部品洗浄)、ソーブレードなど比較的景気に左右され難い事業の集積により収益基盤を強化する。また、来期投入の新製品として、スマートフォン向けのガラス加工機及び研磨機、サファイヤ用コアドリル及び研磨機の準備を進めている(いずれも、受託加工事業用に内製したNCルーターやNC旋盤等のノウハウが活かされている)。この他、シリコン結晶製造装置で培った結晶炉技術を活かしLED基板用途のサファイヤ炉の開発を進める。
 
 
2013年3月期上期決算
 
 
前年同期比43.9%の減収、27億11百万円の経常損失
売上高は前年同期比43.9%減の200億48百万円。半導体関連業界及び太陽光関連業界の不振で装置関連事業、太陽電池関連事業、及び電子デバイスの主要3セグメントで売上が大きく落ち込んだ。
 
営業損益は21億53百万円の損失(前年同期は35億64百万円の利益)。全セグメントで損益が悪化したが、特に太陽電池関連事業が23億93百万円(前期は9億84百万円の利益)の損失となった事が響いた。連結損益計算書ベースでその要因を分析すると、シリコン結晶製造装置用部材の在庫評価減(事業縮小に伴い部材等の在庫の見直しを実施した)8億27百万円や価格が下落した原材料(ポリシリコン)の低価法による評価減4億38百万円を売上原価に計上した結果、原価率が81.9%と10ポイント上昇(特殊要因を除いた原価率は75.5%で3.6ポイントの低下にとどまる)。経費削減に努めた他、変動費も減少したが、一部の装置販売先向け売上債権について貸倒引当金6億81百万円を引き当てた事もあり、販管費は57億88百万円と同10.7%の減少にとどまった。
尚、上記の通り大幅な営業損失となったものの、金銭的支出を伴わない費用及び評価損が大半を占めたため、営業キャッシュ・フローは1億57百万円の流出にとどまり(前年同期は24億60百万円の流入)、資金面でのダメージは少なかった。
 
四半期純損益は61億57百万円の損失。支払手数料が減少したものの(1億21百万円→8百万円。前年同期は公募増資を実施)、支払利息(2億75百万円→3億22百万円)や為替差損(80百万円→1億83百万円)の増加で営業外損益が悪化。関係会社株式売却益75百万円など79百万円を特別利益に計上したものの、事業構造改革費用(米国坩堝工場清算費用や太陽電池の原材料関連費用等)26億84百万円、投資有価証券評価損1億66百万円など29億09百万円を特別損失に計上した他、今後も厳しい収益状況が続くとの想定の下、同社及び子会社の繰延税金資産を5億86百万円取り崩した。尚、為替の期中平均レートは米ドルが1ドル=79.78円(前年同期は81.78円)、人民元が1人民元=12.65円(同12.52円)。
 
 
尚、同社オリジナルの太陽電池用シリコン製品(シリコンインゴッドやウエーハ・セル等)の製造・販売から撤退したが、これらにかかる製造装置については今後も継続するシリコンインゴッドの受託生産で活用するため減損処理を実施しなかった。より難易度の高い半導体集積回路用のシリコンインゴッドやウエーハの製造・加工で実績がある同社の技術・品質・コストに対する評価は高い。足元、価格比で高い変換効率を実現する特殊インゴッドの商談が進んでおり(現在、サンプル評価の段階)、商談がまとまれば、キャパシティは満杯となる。
 
また、貸倒引当金の繰り入れは、太陽電池製造装置の事業縮小に伴い装置の売掛金について客先の支払い能力を精査した結果であり、装置の稼働率が著しく低いか、或いは、小規模事業者で継続取引が難しいと思える企業向けの売上債権について引き当てを行なった。国営企業や大手企業等で支払が遅れているが、支払が続いている企業向けの債権については正常債権と判定し、専任部隊を設けて債権の回収に当たっている(必ずしも楽観はできないが、万が一、貸倒引当金が発生しても影響は限定的なようだ)。
 
(2)セグメント別動向
 
装置関連事業
売上高95億09百万円(前年同期比35.3%減)、セグメント利益1億40百万円(同92.5%減)。真空シール(43億52→24億27百万円)、石英製品(32億65百万円→17億43百万円)、EBガン・LED蒸着装置(22億62百万円→12億83百万円)、セラミックス(23億24百万円→21億48百万円)、及びウエーハ加工(24億93百万円→19億09百万円)と全ての製品及びサービスで売上が減少した。ただ、スマートフォン用半導体の微細化設備投資向けの石英製品、セラミックス製品等、製造プロセスに使用されるマテリアル製品や、スマートフォン用通信制御IC向けの電子ビーム装置(米国子会社製品)等、堅調な製品もあった。
 
太陽電池関連事業
売上高70億22百万円(前年同期比57.8%減)、セグメント損失23億93百万円(前年同期は9億84百万円の利益)。最大の需要地だった欧州で各国政府よる支援等が削減された事と最大の生産国中国での過剰生産で世界的に需給バランスが崩れ、製造装置や消耗品の需要が減少し、シリコン製品の価格下落が続いた。売掛金の回収に懸念のある一部取引先の売掛金に対して貸倒引当金を計上した事、及び販売見合わせとなった装置部材やポリシリコンの在庫評価損を計上した事等で損失が拡大した。
 
電子デバイス事業
売上高21億95百万円(前年同期比31.8%減)、セグメント利益1億15百万円(同78.1%減)。当セグメントはサーモモジュール応用製品の売上が大半を占める。半導体製造装置向けの減少等で減収・減益となったが、季節商品等がやや軟調だった民生機器向けを除き、想定の範囲内。主力の自動車温調シート向けは増加しており、高級車向けの新規案件も立ち上がりつつある。
 
(3)財政状態及びキャッシュ・フロー(CF)
 
上期末の総資産は前期末比39億13百万円減の686億58百万円。借方では、現預金や繰延税金資産が減少した他、4年前にグループ入りしたフェローテックセラミックス社関連の償却が進み、のれん償却も減少(上期償却額は2億09百万円で下期も同額。来上期に償却が終了する)。一方、事業構造改革引当金23億96百万円を計上した事で投資その他が増加した。貸方では純資産が減少。自己資本比率は39.7%と前期末比6.3ポイント低下した。
 
 
 
2013年3月期業績予想
 
 
下期は売上高189億51百万円、四半期純損失21億42百万円を見込む
売上高は前年同期比22.2%減の189億51百万円。自動車温調シート向けサーモモジュールを中心に電子デバイス事業の売上が増加するものの、太陽電池関連事業の売上が大きく落ち込む他、半導体市場の回復が見込めず装置関連事業の減収傾向も続く見込み。
損益面では、製品販売の伸び悩みを踏まえて、10年7月に取得したピュアシリコン製品の特許権の減損1億64百万円を売上原価に織り込んだ他、日欧米での希望退職募集に係る特別退職金2億22百万円、中国杭州における坩堝事業合理化に伴う旧型設備の廃棄損1億04百万円、米国坩堝工場の追加清算損85百万円等を特別損失に計上する予定。ただ、太陽電池関連事業の構造改革に伴い発生する一時的な損失の大半が上期に計上されているため、下期の最終損失は上期ほどには膨らまない見込み。
 
 
通期予想は売上高390億円(前期比35.1%減)、当期純損失83億円(前期は17億15百万円の利益)
期初予想を下回った上期実績及び下期実施分の「事業構造改革プラン」の影響を織り込み、通期業績予想が下方修正された。為替の前提は、米ドルが1ドル=78円(前期79.6円)、元が1元=12.8円(前期12.3円)。配当は1株当たり5円の期末配当を予定している。
尚、子会社が12月決算のため、「事業構造改革プラン」の実施に伴う太陽電池関連事業の収益性改善効果は14/3期以降に顕在化する見込み。
 
 
 
今後の注目点
自社ブランドの太陽電池用シリコン製品からの撤退及び米国での坩堝生産からの撤退により、前者で発生していた原材料価格と製品価格のギャップによる評価損及び後者で発生していた設備稼働損という出血が止まる。製造装置や消耗品も需要を見ながらの安全運転となるため、会社側では「上期で妥当な損失処理を実施したと考えており、追加的な損失の発生を完全には否定できないものの、その場合でも影響は限定的なものにとどまろう」とコメントしている。来14/3期は、製造工程の見直しと合理化による人員の減少、業務内容の整理による人員の減少、テーマの絞込みによる研究開発費の効率化効果、更には報酬・給与・賞与のカット・減額等の効果も業績に反映されてくる。今期予想売上高の390億円規模で最終黒字を確保できる収益体質に転換する見込みだ。