ブリッジレポート
(8912) 株式会社エリアクエスト

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ブリッジレポート:(8912)エリアクエスト vol.6

(8912:東証マザーズ) エリアクエスト 企業HP
清原 雅人 社長
清原 雅人 社長

【ブリッジレポート vol.6】2013年6月期第1四半期業績レポート
取材概要「ストック収入型ビジネスが堅調に推移する中、コストコントロールも機能し利益体質が定着してきた。ストック収入型ビジネスを核に収益回復を図った・・・」続きは本文をご覧ください。
2012年11月27日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社エリアクエスト
社長
清原 雅人
所在地
東京都新宿区西新宿六丁目5番1号 新宿アイランドタワー7階
決算期
6月 末日
業種
不動産業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2012年6月 646 4 5 19
2011年6月 595 -45 -43 -50
2010年6月 735 12 14 3
2009年6月 879 -182 -179 -381
2008年6月 1,015 -311 -307 -556
2007年6月 1,530 -95 -94 -118
2006年6月 1,580 18 18 -139
2005年6月 2,091 240 236 189
株式情報(11/16現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
1,844円 209,971株 387百万円 4.5% 1株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
0.00円 0.0% 136.95円 13.5倍 2,022.11円 0.9倍
※株価は11/16終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROE、BPSは前期末実績。
 
エリアクエストの2013年6月期第1四半期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
“ビルコンシェルジェ”を標榜。東京、神奈川、千葉、埼玉の1都3県の駅前商業地において、テナント誘致及び店舗・オフィス紹介等の「テナント誘致事業」、サブリースを含むメンテナンス(清掃、設備保守、警備管理等)等の「ビル管理関連事業」、及び売買仲介を含む契約更新・契約管理の「更新及び契約管理事業」を展開。テナント誘致等を手掛ける(株)エリアクエスト店舗&オフィス及びビル管理等の(株)エリアクエスト不動産コンサルティングの連結子会社2社と共にグループを形成し、同社自身はグループのマネジメントが中心。
 
 
【沿革】
現在代表取締役社長を務める清原雅人氏が野村證券(株)を経て起業。2000年1月にエリアリンク(株)として本格的なスタートを切った(01年3月、現商号に変更)。データベースマーケティングを駆使した営業力を武器にテナント誘致を中心とした成功報酬型ビジネスを急拡大させ03年2月に東証マザーズに株式を上場。その後も順調に業績を拡大させたが、米国での不動産市況の変調が国内にも波及し事業環境が一変。06/6期は前期の収益を押し上げた不動産売買が無くなった事とテナント誘致に伴う仲介手数料収入(成功報酬型収入)の減少で営業利益が急減。繰延税金資産の取り崩しもあり、1.4億円弱の最終赤字に転落した。
 
07/6期以降はグループをあげてのコスト削減に取り組むと共に構造改革に着手。テナント誘致を中心にした成功報酬型収入に依存する収益構造からストック型収入を中心とし安定成長が可能な収益構造への転換を進めた。ただ、リーマン・ショック後の世界的な不況が企業業績を直撃しオフィス需要の低迷が深刻化、09/6期にかけては成功報酬型収入の減少に歯止めがかからず、3期連続の営業赤字を計上。営業投資有価証券や投資有価証券の評価損・売却損等の計上で最終赤字も膨らんだ。
 
10/6期も成功報酬型収入の減少が続いたが、コスト削減が進んだ事と契約更新・契約管理・メンテナンス等のストック型収入が下支えとなり4期ぶりに営業損益が黒字転換。投資業務からの撤退も完了した。ただ、11/6期は景気低迷による企業活動の低下に加え、東日本大震災の影響で年度末にかけての契約も進まず成功報酬型収入が落ち込む中、コスト削減効果の顕在化の遅れで再び営業赤字となった。しかし、ストック型収入が着実に増加しており、顕在化が遅れているものの固定費を中心にしたコスト削減も進展、黒字体質定着への道筋が見えてきた。
 
 
【財政状態及びキャッシュ・フロー(CF)】
06/6期から09/6期にかけて4期連続の最終赤字となったため純資産の毀損が進んだ。しかし、この間もキャッシュ・フローは比較的安定しており、資金繰りに窮する事はなかった。仲介や管理を収益源とする同社は、マンション開発等を行うデベロッパーと異なり、事業環境の変化への対応力が格段に高い。また、業績好調時には安定した営業キャッシュ・フローを活かして有価証券投資等も手掛けたが、07/6期以降は営業投資有価証券や投資有価証券の売却を推進。これを原資に有利子負債の削減を進めたため、12/6期末の有利子負債は22百万円と僅少で財務リスクを感じさせない。
 
 
 
成長戦略
 
(1)ストック収入型ビジネスと成功報酬型ビジネスを両輪に安定成長を目指す
会社設立から3年で東証マザーズに上場した同社だが、当時はトラブル防止・解決やテナントとの各種折衝を含めたテナント誘致が売上のほぼ100%を占めていた。一方、サブリースを含む、掃除、エレベーターメンテナンス、法定点検等のビル管理(事業)や売買仲介を含む契約更新・契約管理を行う更新及び契約管理(事業)は手掛けてはいたものの、依頼に基づく受け身のサービス提供にとどまり、積極的な営業を行っていなかった。
 
しかし、事業環境の変化で06/6期以降の業績が急激に悪化した反省を踏まえて、景気の影響を受けやすいテナント誘致事業に極度に依存した体質を改善するべく、ビル管理事業や更新及び契約管理事業の育成に取り組んだ。ストックの積み上げは根気のいる作業だが、下の表の通り、ビル管理売上、更新料売上、及びサブリース売上を合算したストック型ビジネスの収入が順調に拡大している。
 
 
(2)Only Oneのサービスでストック収入型ビジネスを強化
掃除をさせたら日本一!顧客本位のサービスが評価され新規開拓が進展
成長戦略のポイントは、豊富な実績を有する仲介(客付けやテナント誘致)やアフターフォロー(トラブルの防止・解決を含めたテナント折衝力)での強みを活かすと共に、一にも二にも「掃除」に力を入れる事。ストック収入型ビジネスの拡大を先導したのは「掃除」であり、そのバイブル的な存在となっているのが、「パノラマクリーニング」である。「パノラマクリーニング」は、清原社長が実際に提供されている掃除サービスの現場を見て感じた課題を解決するべくまとめあげたもので、パノラマスケッチ、項目指示書、抜打ちチェック、月次報告書が1セットになっている。
 
 
また、清掃業務を受託すると、ビルオーナー等が頭を悩ませる共用部のチェックと改善のためのテナントとの折衝も併せてサービスするのが同社の特徴。これがテナント管理にもつながり、「パノラマクリーニング」による定期的な業務報告と相まって、ビルオーナー等の信頼を勝ち得ていった。ちなみに、従来、ビル管理等のサービスはテナント誘致がきっかけとなり契約を獲得していたが、直近の2年半では、「パノラマクリーニング」や共用部のチェックによる評判の高まりで、契約の約80%が、それまで取引のなかった新規顧客であると言う。
 
エアコンの故障や水漏れに迅速に対応する“ビルコンシェルジェ”、賃貸借変更、テナント誘致。Only Oneのサービスで差別化
他社との差別化は掃除や共用部のチェックだけにとどまらない。同社は更なる差別化のポイントとして、“ビルコンシェルジェ”をブランド展開するトラブルへの迅速対応、賃貸借変更、及びテナント誘致、の3点を挙げており、いずれも需要の多さに注目して対応を強化すると共にサービス内容をブラッシュアップしてきた。
 
80年代後半から90年代初めにかけてのバブル期に竣工したビルが20年を経過し、エアコンの故障や水漏れ等、トラブルが増えてくる築年数に入ってきた。しかし、「こうしたトラブルに対して、リーズナブルな価格ですぐに対応してくれるサービス会社が少ない」と言うのがビルオーナー等の悩みの種。同社はこうした現状に着目し、作業内容を統一・マニュアル化すると共に、実際にサービスを提供する協力会社の整備を進めてきた。トラブルの多い水回り、電気、ガス、空調等、連絡を受けてから平均6時間以内に出動して対応すると共に、24時間以内に、写真、原因究明、改善策、見積もりを提出する。一連のサービスを「ビルコンシェルジェ」としてブランディングし、この8月に営業を強化したところ、反応は極めて良好。第2四半期(10-12月)の引合・受注は当初の想定を上回って推移している模様。
 
また、エアコン関連では、夏場に増える故障への事前対応として、エアコンのクリーニング、ガス交換、或いはエアコン自体の交換等を行う新規サービス(仮称「AMPMサービス:エアコン(A)のメンテナンス(M)はプロ(P)が、めっちゃ(M)サービスする」)の導入を計画しており、現在、メーカーやリース会社と話し合いを進めている。
 
建て替えに備えて借家契約を定期借家契約へ変更する必要があるビル等で、ビルオーナー等に代わって、テナントとの交渉を代行する賃貸借変更や(既得権が強いだけに、この交渉が実に難しい)、テナント誘致(ライバルよりも早く、かつ高い賃料で誘致)等のサービスを総合的に提供する事で、不動産会社はもとより、ビルメンテナンス会社との差別化を図っていく(同社は上記のサービスを総合的に提供できるOnly Oneの企業である)。
 
 
当面の目標として、来14/6期に営業利益1億円を目指している。現在、ビル管理事業と更新及び契約管理事業で年間50件程度の新規開拓に成功しており、14/6期の上期にかけて、このペースを維持できれば、契約の累積効果(ストック効果)で目標達成は自ずと射程距離に入る(契約できてもサービス開始時期によっては目標達成に数か月の遅れが生じる可能性はあるが、中期的な成長を考えた場合、こうした誤差は問題ではない。逆に、テナントの誘致事業いかんでは上振れの可能性もある)。
 
また、足元、目立った解約もないため、上記計画後の15/6期には、契約の累積効果で、2億70百万円~2億80百万円と思われる営業費用(売上原価+販管費)をストック型ビジネスの売上総利益でカバーできる見込み。このため、15/6期以降は、「ストック収入型ビジネスを安定収益源に、成功報酬型ビジネスで収益の上積みを図る」という体制が整う。
 
 
 
2013年6月期第1四半期決算
 
 
売上高1億73百万円(前年同期比9.5%増)、経常利益2百万円(同69.1%増)
空室率の高止まり傾向が続き、賃料水準も弱含みで推移する等、厳しい事業環境が続いたものの、更新及び契約管理やビル管理等のストック収入型ビジネスをけん引役に売上が順調に増加した。利益面では、テナント誘致及び店舗・オフィス紹介等の成功報酬型ビジネスの売上構成比が低下したため売上総利益率が42.2%と4.6ポイント低下したものの、売上の増加に加え、広告宣伝費の効率的使用等で経費コントロールも機能し営業利益が増加した。
 
 
 
財政状態に大きな変化はなく、第1四半期末の総資産は前期末比8百万円増の6億02百万円。借方ではオフィス移転(12年7月)等で有形固定資産が増加し、貸方ではストック収入型ビジネスの拡大で長期預り保証金等が増加した。投資その他の構成比が高いが、その主な科目は、投資有価証券(99百万円)、敷金及び保証金(101百万円)、保険積立金(61百万円)等で特段のリスクは無い。自己資本比率は70.5%。
 
 
2013年6月期業績予想
 
「概ね当初予想どおり順調に推移している」として、上期及び通期の業績予想に変更はなかった。第2四半期(10-12月)もストック収入型ビジネスを中心に売上が安定的に推移し、営業利益を確保できる見込み。また、「ビルコンシェルジュ」効果で足元のストック収入型ビジネスの引合・受注が想定を上回って推移している模様。期末にかけて、ストックの積み上げが加速しそうな気配だ。
 
 
 
今後の注目点
ストック収入型ビジネスが堅調に推移する中、コストコントロールも機能し利益体質が定着してきた。ストック収入型ビジネスを核に収益回復を図った同社の経営判断は正しく、成長軌道への回帰に向けたファーストステージが成功裏に終わった、と言い換える事ができる。今後はセカンドステージ。具体的には、ストック収入型ビジネスを安定収益源に経営基盤を固め、成功報酬型ビジネスで収益の更なる上積みを図っていく。三段跳びで言う、「ホップ」、「ステップ」、「ジャンプ」の、「ステップ」である。
一時期、厳しい状況にあった同社だが、見事に投資家の期待に応えてくれた。同社の健闘を讃えると共に、更なる健闘に期待したい。