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(4847) 株式会社インテリジェント ウェイブ

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ブリッジレポート:(4847)インテリジェント ウェイブ vol.14

(4847:JASDAQ) インテリジェント ウェイブ 企業HP
山本 祥之 社長
山本 祥之 社長

【ブリッジレポート vol.14】2013年6月期第1四半期業績レポート
取材概要「親会社である大日本印刷はICカードの国内No1ベンダーとしての技術やノウハウを活かし、スマートフォン向けサービスを展開している(ICカードと・・・」続きは本文をご覧ください。
2012年11月27日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社インテリジェント ウェイブ
代表取締役社長
山本 祥之
所在地
東京都中央区新川1-21-2 茅場町タワー
決算期
6月 末日
業種
情報・通信
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2012年6月 5,241 131 154 270
2011年6月 4,762 321 341 129
2010年6月 4,956 358 387 211
2009年6月 5,527 228 235 187
2008年6月 6,695 417 403 -5
2007年6月 6,367 389 407 -295
2006年6月 7,137 1,482 1,452 947
2005年6月 5,174 678 688 264
2004年6月 5,257 371 365 156
2003年6月 5,891 1,177 1,161 539
2002年6月 5,505 1,854 1,846 1,003
株式情報(11/15現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
16,520円 263,400株 4,351百万円 5.6% 1株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
500.00円 3.0% 531.51円 31.1倍 18,679.92円 0.9倍
※株価は11/15終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROE、BPSは前期末実績。
 
インテリジェント ウェイブの2013年6月期第1四半期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
クレジットカードの決済システムに強みを持つソフトウエア開発会社。リアルタイム処理が可能な高度なネットワーク技術、システムを止めないためのノンストップ技術、更には高度なセキュリティ技術を技術基盤としており、証券関連の情報集配信システムでも豊富な実績を有する他、カード不正利用検知システムや内部情報漏洩対策システム等も手がける。大日本印刷(株)が議決権の50.61%を保有する筆頭株主。子会社は、韓国の開発・販売会社子会社の1社(連結子会社)。
 
【事業内容】
事業は、カードビジネスのフロント業務、システムソリューション業務、及びセキュリティシステム業務に分かれ、12/6期の売上構成比は、それぞれ43.8%、43.8%、10.0%。 この他、報告セグメントではないが、大日本印刷(株)との連携の下、自社製品と他社製品(パッケージ)を組み合わせたクロスソリューション事業にも力を入れている。
 
 
カードビジネスのフロント業務
クレジットカード会社、銀行、大手小売業等向けに、「NET+1」をベースにしたカード決済にかかるフロント業務のシステム構築を行っている。フロント業務のシステムとは、クレジットカード会社が加盟店や信用情報センターとの接続に必要なシステム。銀行(CD/ATM、海外ATM網等の対外系接続システムとの接続)や消費者金融等でも使われている。「NET+1」はハードと自社開発のパッケージソフトからなり、大手クレジットカード会社向けではシェア70%の実績を有する。また、「加盟店や決済代行会社等向けに初期投資の抑制とランニングコストの低減が可能なLinux 対応の「Linux NET+1」の提供も行っている。
 
システムソリューション業務
クレジットカード会社等に対するソフトウエア開発及びシステム保守、クレジットカード不正利用検知システム「ACE Plus」に係るソフトウエア開発及びシステム保守、オンライン証券会社・機関投資家(バイサイド)向けに高速情報基盤システム(証券取引所等から提供される市況データや気配値等を素早く社内の各端末に配信するシステム)の構築、及び大日本印刷グループ企業向けのソフトウエア開発等を行っている。
 
セキュリティシステム業務
自社製品である内部情報漏洩対策システム「CWAT」を中心にセキュリティ関連の製品・サービスを提供しており、親会社である大日本印刷(株)と共にセキュリティ関連の新事業(サービス)の開発も進めている。
 
その他 製品販売(新規事業)
企業ウェブサイトの付加価値を高める自社製のナビゲーションツール「Faceコンシェル」と、イスラエルCHECKMARX社製ソースコード解析ツール「CxSuite」によるセキュリティガバナンス強化改善等、自社製品と他社製品(パッケージ)を組み合わせたクロスソリューション事業。大日本印刷(株)との連携の下、営業活動を行っている。
 
【沿革】
1984年12月、米国ノンストップコンピュータ・メーカーの日本法人 日本タンデムコンピューターズの社長等を務めた現会長の安達一彦氏が中心となり、コンピュータ機器の輸出入・販売、コンピュータソフトウェアの開発等を目的に設立された。当時のソフト開発会社はメーカーの下請けが多かったが、同社は自主独立を志向しパッケージソフトの開発を目指し、米国製の24時間稼動ノンストップコンピュータ向けパッケージソフトの開発に取り組んだ(24時間稼動ノンストップコンピュータに独自開発のパッケージソフトを組み込んで販売)。当時の日本において、24時間ノンストップでコンピュータが稼動しているのはクレジットカード業界のみであったため、自ずと同業界との関係が深くなったと言う。
 
転機となったのが89年の「NET+1」の開発。価格競争力や短納期といったパッケージソフトの持つ強みに加え、カスタマイズの容易さ等が評価され、大手クレジットカード会社や消費者金融等のノンバンクはもちろん、銀行等でも利用が広がった。「NET+1」の開発により、クレジットカード会社向けのパッケージソフト開発会社として認知され、クレジットカードビジネスの拡大に乗って業容を拡大、2001年6月に株式を店頭登録した(現在はJASDAQに上場)。
 
10年4月には大日本印刷(株)が同社株式の公開買付けを行い、議決権の過半を取得した(現在、大日本印刷(株)が議決権の50.61%を保有)。以後、大日本印刷グループ内での豊富な開発案件の取り込みに加え、大日本印刷(株)との連携による同グループの優良な顧客資産の掘り起こしに取り組んでおり、下記の通り、その成果も順調にあがっている。
 
 
【カードビジネスのフロント業務の特徴と同社の強み -ネットワーク技術、ノンストップ技術、ノウハウ-】
クレジットカードの利用に際しては、その都度、与信限度額や返済状況の確認作業が行われ、また、キャッシシングの際には口座残高の確認も必要となる。こうした確認作業はネットワークを介してリアルタイムで行われ、特にクレジットカードの場合、世界的なネットワークを介しての作業となる。また、システムが止まるとカードが使えなくなるため、24時間365日システムを止めないための技術やノウハウも必要だ。つまり、「カードビジネスのフロント業務」で培った、リアルタイム処理が可能な高度なネットワーク技術やシステムを止めないためのノンストップ技術、及びノウハウ、が同社の強みであり、この強みを電子コマース関連やセキュリティ等の分野に展開していく事で業容の拡大を図っていく考え。
 
 
課題と取り組み
 
業務領域と顧客ターゲットを絞り込む事で高成長・高収益を実現してきた同社だが、市場の成熟化や事業環境の変化で、ここ数年は苦戦が続き利益の低迷は否めない。課題は、新たな収益機会の獲得であり、その結果としてのトップラインの引き上げである。そのためには、金融関連、証券関連にフォーカスしていた顧客ターゲットを多様な業種に広げると共に、アライアンスや他社商品の活用も含めて業務領域を、従来からのフロント業務にとどまらず、ミドル・バックオフィスへと広げ、幅広く開発需要を取り込んでいく必要がある。実際のところ、こうした取り組みは口で言うほど容易な事ではないのだが、同社の場合、資本提携先(親会社)である大日本印刷(株)が、グループ内に多くの開発案件を抱え、また、優良な顧客資産を有する。この恵まれた環境をフルに活かすべく、同社は大日本印刷グループとのシナジーを追求しつつ、各事業セグメントにおいて課題の解決に取り組んでいく考えだ。
 
(1)カードビジネスのフロント業務
課題は「案件規模の拡大によるトップラインの引き上げ」である。この一環として、フロントシステムの導入に当たって、ミドル及びバックオフィス・システムの開発需要にも対応していく考えで、12/6期は「Linux NET+1」の導入案件で、ミドル及びバックオフィス・システムの開発も含めた大規模案件にチャレンジした。新たな分野だけにプロジェクト管理がうまくゆかず不採算となってしまったが、この失敗を次の案件に活かすべく、生産性の向上と品質管理を目的とした業務推進室を前12/6期末に新設した。業務推進室を中心に原価管理の強化を含めたプロジェクトマネジメントの改善やプロジェクトマネージャーの養成・増員に取り組んでいく事で、開発プロジェクトの効率的な遂行につなげていく。また、アライアンスによる開発手法を取り入れ、他社の技術やノウハウを活用する事で業務領域を広げ、案件規模の拡大につなげていく考え。
 
(2)システムソリューション業務
大日本印刷グループとのシナジーを追求し受託開発を拡大していく考えで、12/6期はハイブリッド書店関連の開発で実績をあげた。13/6期は案件の規模拡大を念頭に大日本印刷(株)との連携を一段と強化し、トップラインの引き上げを図る。また、クレジットカード不正利用検知システム「ACE Plus」の海外展開を進める(現在、商談中)と共に、高速情報基盤ソリューションのバイサイド(機関投資家)向け営業に取り組む(前12/6期はオンライン証券向けで実績をあげた)。また、この他の新規顧客の掘り起こしにも努める。
 
(3)セキュリティシステム業務
新規顧客へ営業拡大
情報漏えい対策システム「CWAT」を中心に幅広い業種業態の情報セキュリティ対策に係る需要を開拓していく。12/6期は既存ユーザーの更新需要を確実に取り込む事ができたものの、大規模ユーザーの獲得は想定通りに進まなかった。13/6期は「CWAT」に、ユーザーからの要望が多かった資産管理機能を追加すると共に、12月を目途にWindows 8への対応を進める。また、「CWAT」の仮想環境への対応も進める考えで、企業の情報システムにおいて今後の普及が予想されるシンクライアント端末と「CWAT」の一元管理を実現する仮想化環境ログ管理システムの開発に着手する。
 
(4)その他 製品販売(新規事業)
ここでもやはり、トップラインの引き上げが課題である。12/6期はソースコード(機械語に変換される前のプログラム)の脆弱性をスクリーニングする「CxSuite」(イスラエル・CHECKMARK社の製品)等、他社製品を活用したソリューションが好調だった。また、新製品「FACEコンシェル」の開発を完了し、営業を開始した。13/6期は企業向けセキュリティ関連商品やサービスの拡大に注力すると共に、「FACEコンシェル」の営業活動を本格化する考え。
尚、「FACEコンシェル」とは、Webサイトのナビゲーションやレコメンデーション等のWebコンシュエルジュサービスを自然言語によるチャット形式(対話形式)で円滑に行うシステム。メールやテキスト文書、Webコンテンツ等の非構造化データを解析し、Web利用者にレスポンスを返す。同社の技術と韓国Saltlux社製セマンティック・ソリューション(高品質キーワード検索)「IN2」とを融合させたシステムであり、Webサイト上でのコミュニケーション基盤(特にスマートフォンに最適化した)を提供する。また、状況に応じて、リアルチャットに切り替える事もできる(システムに代わってオペレータがチャットで対応する)。
 
 
2013年6月期第1四半期決算
 
 
前年同期比16.8%の減収、6億16百万円の経常損失
売上高は前年同期比16.8%減の9億10百万円。カードビジネスのフロント業務におけるハードウエア販売の減少が連結売上高減少の主な要因であり、当初から織り込み済み。第1四半期の損失計上も予想されていた事だが、前期から手掛けている大型案件のコスト(人件費及び外注費)が予想以上に嵩んだ(この案件は今期第2四半期に終了する予定だが、第2四半期に見込まれる経費についても第1四半期に前倒しで計上している)。
 
 
 
カードビジネスのフロント業務
売上高は前年同期比31.9%減の3億38百万円、セグメント損失3億59百万円(前年同期は1億54百万円の利益)。クレジットカード関連の一部の顧客で先送りになっていたシステム更新やハードウエア置換え等の設備投資案件が顕在化しつつあるが、この第1四半期は、前年同期に大型の更新需要があった反動でハードウエア販売を中心に売上が減少した(同社が扱うハードウエアは特殊な専用サーバのため収益性が高い)。損失計上となったのは、前期から手掛けている大型案件にかかる当四半期分の損失(3億円)計上と第2四半期(10-12月)の損失見込分1億73百万円を引き当て処理したため(原価引当)。当初は、第1四半期の利益として1億14百万円を見込んでいた。
 
主なサブセグメントの増減
ソフトウエア開発    202百万円 → 207百万円
自社開発パッケージ    0百万円 →  0百万円
保守           96百万円 →  93百万円
ハードウエア販売    194百万円 →  37百万円
 
システムソリューション業務
売上高は前年同期比10.4%減の4億64百万円、セグメント損失22百万円(前年同期は68百万円の利益)。証券業界を取り巻く厳しい事業環境を反映してシステム投資が低迷する中、親会社大日本印刷(株)が手掛けるハイブリッド書店関連の開発が一巡したため、ソフトウエア開発及びハードウエア販売を中心に売上が減少し、利益計上に至らなかった。
 
主なサブセグメントの増減
ソフトウエア開発    227百万円 → 182百万円
自社開発パッケージ    2百万円 →  3百万円
保守           70百万円 →  70百万円
ハードウエア販売    178百万円 → 143百万円
仕入パッケージ      38百万円 →  59百万円
 
セキュリティシステム業務
売上高は前年同期比12.3%増の82百万円、セグメント損失13百万円の損失(前年同期は43百万円の損失)。情報漏洩対策システム「CWAT」関連のソフトウエア開発が増加し売上が増加。コスト削減も進み損失が減少した。
 
主なサブセグメントの増減
ソフトウエア開発     5百万円 →  26百万円
自社開発パッケージ    9百万円 →  6百万円
保守           50百万円 →  41百万円
仕入パッケージ      8百万円 →  8百万円
 
その他 製品販売(新規事業)
ソースコード解析ツール「Cx Suite」(イスラエルのCHECKMARK社製)を中心に売上高25百万円(前年同期は4百万円)、セグメント損失13百万円(同43百万円から縮小)を計上した。
 
 
 
2013年6月期業績予想
 
(1)第2四半期以降の見通し
第1四半期決算を受けて上期の業績予想を下方修正した。第2四半期(10-12月)は不採算となった大型案件の検収が終了するため(売上計上される)連結売上が前年同期比23.3%増加する。第1四半期に同案件関連の損失処理を実施しているため損益も改善し、13百万円の営業利益を確保できる見込み。
一方、通期の業績予想に変更は無かった。過払い金関連の引き当てが一巡した事で一部のクレジットカード会社では投資意欲が回復しつつあり、先送りになっていたシステムやハードウエアの更新需要が顕在化してきた。こうした動きを取り込む事で、第1四半期のカードビジネスのフロント業務の受注(個別ベース)は前年同期比63.8%増加し、受注残(同)も17億94百万円と前年同期末(8億84百万円)及び前四半期末(13億85百万円)の実績を大幅に上回った。第2四半期以降も、クレジットカード会社の更新需要の取り込みに注力する事で売上の上積みと利益面での挽回を図りたい考え。
 
 
 
カードビジネスのフロント業務
「NET+1」関連で更新需要を取り込む事でハードウエア販売や保守売上の上積みを目指しており、また、新規業務分野となるポイントカードシステムの開発案件もスタートする。
 
システムソリューション業務
カード系その他の分野において、東南アジアの複数拠点で「ACE plus」の導入を検討している流通系クレジットカード会社の案件刈り取りを上期末までに完了したい考え。また、大日本印刷とのシナジーについては、連携強化と業務領域の拡大でハイブリッド書店関連が寄与した前期実績(10億5百万円)を上回る11億50百万円の確保を目指している。一方、厳しい事業環境が続いている証券系では、証券会社に加え、地方銀行や信託銀行への営業活動を強化する事で海外パッケージ「DECIDE」を用いた高速情報基盤ソリューションの拡販を図る他、得意先への技術者派遣による潜在需要の掘り起こしを図る。
 
セキュリティシステム業務
資産管理機能の追加等で情報漏えい対策システム「CWAT」の許可を図る他、仮想デスクトップ環境の操作ログ監理ツール(来春リリース予定)の開発を進める。
 
その他 製品販売(新規事業)
CHECKMARK社との契約を更新し、10月からの日本国内での独占販売権を得たソースコード解析ツール「Cx Suite」の拡販に取り組む他、引き合いが増えているWebサイトのナビシステム「Faceコンシェル」について、同システムのエンジンを使ったカスタマイズ案件等の拡大を図る。
 
 
今後の注目点
親会社である大日本印刷はICカードの国内No1ベンダーとしての技術やノウハウを活かし、スマートフォン向けサービスを展開している(ICカードとスマートフォンの“ハイブリッド戦略”)。この一環として、モバイルWalletサービスを展開する大規模な事業者を対象にした総合支援サービス(モバイルWalletの機能を提供するクラウド型のプラットフォームサービス)の育成に取り組んでおり、この取り組みの中で(株)インテリジェント ウェイブはモバイルWalletシステムの構築やアプリ開発の役割を担っている。このため、今後、モバイルWalletシステム関連の開発案件の増加が予想されるが、こうしたシステムは、これまで同社が関与してこなかったミドル及びバックオフィス・システムとの連動が必要となるケースが少なくない。第1四半期の損失計上の原因となった案件は新製品「Linux NET+1」の導入案件だが、同社にとって初めての試みとなるミドル及びバックオフィス・システムの開発も含めた大型案件だった。見積もりの甘さや短納期に対する認識の甘さは同社も認めるところだが、今後の事業拡大を考えるとミドル及びバックオフィス・システムへの対応は不可欠であり、今回、大きな損失を強いられる中で得た、「技術」、プロジェクト管理を含めた「ノウハウ」、及び「教訓」が活かされてくるものと思われる。