ブリッジレポート
(2925) 株式会社ピックルスコーポレーション

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ブリッジレポート:(2925)ピックルスコーポレーション vol.19

(2925:JASDAQ) ピックルスコーポレーション 企業HP
荻野 芳朗 社長
荻野 芳朗 社長

【ブリッジレポート vol.19】2013年2月期上期業績レポート
取材概要「漬物や惣菜の市場は成熟しているものの、同社にとって3,700億円の漬物市場は広大であり、更に大きな市場規模を誇る惣菜市場での展開について・・・」続きは本文をご覧ください。
2012年11月13日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社ピックルスコーポレーション
社長
荻野 芳朗
所在地
埼玉県所沢市くすのき台3-18-3
決算期
2月末日
業種
食料品(製造業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2012年2月 21,587 982 1,066 591
2011年2月 20,824 577 624 365
2010年2月 18,234 536 583 322
2009年2月 18,502 399 413 202
2008年2月 17,870 286 373 205
2007年2月 16,775 293 355 218
2006年2月 16,563 158 205 -37
2005年2月 18,186 74 146 144
2004年2月 18,038 268 285 99
2003年2月 18,047 101 98 36
2002年2月 16,542 548 514 230
2001年2月 16,895 302 287 266
株式情報(10/24現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
448円 6,394,632株 2,865百万円 9.8% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
12.00円 2.7% 93.05円 4.8倍 982.00円 0.5倍
※株価は10/24終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROE、BPSは前期末実績。
 
ピックルスコーポレーションの2013年2月期上期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
浅漬・キムチ・惣菜の製造・販売及び漬物等の仕入販売を行なっており、連結子会社7社及び持分法適用会社4社と共に全国的な製造・販売ネットワークを構築している。「野菜の元気をお届けします」をスローガンに掲げ、コーポレートカラーの緑は新鮮感を表す。自社製品は、契約栽培(放射性物質の測定も実施)によるトレーサビリティの確保された国産野菜(約70%が契約栽培)が中心で保存料・合成着色料は使用しない。また、製造現場では、工場内での温度管理の徹底や入室前の全従業員の服装・健康チェック、更にはISO9001、HACCPの取得や5S活動に取り組む等、「安全な食へのこだわり」は強い。
12/2期の品目別売上構成は、製品売上が63%(浅漬・キムチ48%、惣菜12%、ふる漬3%)、商品(漬物)売上が37%。 資本関係では、東海漬物(株)が株式の49.6%を保有するが、取引はわずかにふる漬等の仕入があるのみ(12/2期は仕入高全体の2.1%)。主要な販売先は、セブン&アイ・ホールディングス(3382)で、12/2期は同グループ向けの売上が全体の37.9%(11/2期は39.3%)を占めた。
 
【沿革】
1977年2月、(株)東海デイリーとして愛知県で設立。同年12月にはセブンイレブンとの取引が始まり、その後、取引はイトーヨーカ堂、デニーズジャパン等、セブン&アイ・ホールディングスの主要企業へと拡大。93年9月、商号を(株)ピックルスコーポレーションに変更。2001年12月に株式を店頭登録(JASDAQ上場)した。
 
 
同社の業績予想は保守的な傾向が強い。13/2期は営業微減益を見込んでいるが、(株)インベストメントブリッジでは、天候等の特殊要因が発生しない事を前提に、営業最高益更新を予想する。
 
【強み】
大ヒットしている「ご飯がススムキムチシリーズ」や各種惣菜等、切れ目無く新商品を投入できる商品開発力と、全国をカバーする営業・製造・物流ネットワークを強みとする。キムチの製法や味付け手法は多種多様。同社は強みである商品開発力を活かしてキムチのラインナップを強化する事で継続的に需要を生み出しており、この商品開発力が第3の柱として育成中の惣菜事業にも活かされている。また、もう一つの強みである全国ネットワークについて言えば、漬物業界・惣菜業界において、全国ネットワークを有するのは同社のみである。
 
 
 
ねばぁねば~ぁいか人参」は松前漬けの原点とも言われている福島の郷土料理「いか人参」を参考に開発。白菜の上に千切りした人参、するめいかと松前昆布をのせた。旬のかぶと少し長めにカットした野沢菜の「小かぶと野沢菜」は素材の味を活かすため、ほんのり醤油風味でシンプルな味付け。また、「旬のうまいもの漬」は秋に旬を迎える大根、人参、ごぼうを使用。たまり醤油を加え甘しょっぱい味付けに仕上げた。たまり醤油の風味が具材によく浸み込み、味のコクをより一層深めている。
 
 
漬物市場の動向と成長戦略
 
(1)漬物市場の動向
漬物市場は約3,700億円(工業統計2012.01:野菜漬物製造業出荷額3,859億円、食品新聞2012.08:漬物品目別推定出荷額3,400億円)。ふる漬市場で漸減傾向が続いているものの、浅漬やキムチの市場は安定成長が続いている。ただ、後継者難による中小漬物メーカーの廃業等でピークの90年頃には2,400~2,500社あった全国漬物連合会(全漬連)の会員企業数が1,100社程度に減少しており、大手企業による寡占化が進みつつある。
もっとも、年商が100億円を超えているのは業界トップの同社を含めて4社に過ぎず、対象を上位10社に広げても、シェアは30.5%にとどまる(同社のシェアは6.5%)。このため、寡占化といっても緒に就いたばかりで、製品開発力や営業力が不可欠ではあるものの、同社を筆頭に上位企業については寡占化による成長余地が大きいと言える。
 
 
また、弁当等も含めた惣菜市場に目をやると、市場規模は8兆億円を超え、販売チャネル別構成比では、同社が取り組みを強化している総合スーパーが12%、食料品スーパーが24%を占める(この他、コンビ二26%、百貨店・専門店他39%)。ライバルとなるのは、フジッコ、エバラ食品、ケンコーマヨネーズ、デリア食品、大堀、イニシオフーズ等で、いずれも300~500億円規模の年商を誇る。同社は、5年ほど前に惣菜事業を本格化した後発企業であり、事業規模でも上記の競合企業に遅れを獲るが、製品開発力、全国をカバーする製造拠点、更には直販ならではのきめ細かい営業等を強みに売上を順調に伸ばしている。
近年の傾向として、節約志向の高まりから、外食を控え、惣菜を買って家庭内で食事をするケースが増えている事に加え、高齢者・単身者世帯の増加等、世帯構成の変化も惣菜メーカーにとって追い風となる。市場の拡大とシェアアップにより、同社が惣菜売上を伸ばす余地は大きいと考える。
 
(2)事業戦略
連結売上高210億円強の同社の前には、3,700億円の漬物市場と2.9兆円の総合スーパー及び食料品スーパーの惣菜市場が広がる。同社はこの広大な市場を開拓するべく、製品開発、全国を網羅する物流・営業ネットワーク、及び販売促進を三位一体とする事業戦略を推進し、既存取引先の深耕と新規取引先の開拓に取り組んでいる。
 
①製品開発
野菜をキーワードとした惣菜製品の拡充に加え、異業種企業や著名料理研究家等とのコラボレーション製品を開発する事で、量販店、生協、コンビ二を通して多様な消費者ニーズに応えている他、メニュー提案を含めて外食産業やスーパー向けの商材開発にも取り組んでいる。
また、惣菜製品強化の一環として、10月3日にメンマ等の惣菜を製造・販売する群馬県伊勢崎市に本社を置く東洋食品(株)を子会社化した(議決権の95%を取得)。現在、東洋食品(株)はPB製品が多いが、今後はグループの販売ルートを活用して全国に販売すると共に、(株)ピックルスコーポレーションが製造している量販店向け惣菜製品でメンマ等を活用していく考えで、現状2億40百万円程度の売上を早期に5億円規模に引き上げる。
 
②営業戦略
同社グループは、全国を網羅した生産・物流体制を構築しており、漬物業界・惣菜業界では唯一、全国ネットワークを構築している。12/2期はこのネットワークの活用がテレビCM等の販促効果と相まって、「ご飯がススムキムチシリーズ」の売上拡大につながった。13/2期は同シリーズで取引が拡大した販売先に対して浅漬や惣菜製品等の提案営業を強化している。

今後は、現在手薄な中国・四国地区、九州地区での販売を強化していく考えで、この一環として広島県府中市に工場を建設して製品の供給基盤を整備する。現在、中国・四国地区のスーパー等へは、子会社(株)ピックルスコーポレーション関西の工場から製品を出荷しているが、売上が順調に拡大しており同工場の余力が乏しくなってきた。新工場は来年4月の竣工を予定しており、稼働初年度となる14/2期は売上高9億円を見込んでいる。
 
③広告宣伝及び販売促進
テレビ、ラジオ、電車の車内広告、駅や野球場での大型看板等、広告宣伝活動を実施している他、小売店への売り場提案や小売店との連携による試食販売、或いは食品メーカーとの販促コラボレーションによる認知度の向上と潜在需要の掘り起こしに取り組んでいる。
 
(3)中期経営目標
中国・四国地区及び九州地区で新規の開拓と深耕に注力し、同地区のスーパーでの売場拡大(精肉売場や麺売場等)を図る。また、商品開発については、漬物や惣菜の強化に加え、漬物や惣菜以外の開発にも取り組んでいく考えで、当面の目標として、15/2期に売上高255億円、営業利益11億円の達成を掲げている。
 
 
 
2013年2月期上期決算
 
 
前年同期比14.8%の増収、同18.9%の経常減益
10月4日に期初予想を上方修正しており、修正値通りの着地となった。売上高は前期比14.8%増の126億81百万円と、上期の過去最高を更新。積極的な新製品の投入と販売活動の成果で、キムチ製品(ご飯がススムキムチ等)や惣菜製品(ナムル、オクラ、そら豆等)が量販店を中心に伸びた。

ただ、春先の天候不順による原料野菜の仕入価格高騰と生産増に伴う労務費の増加で第1四半期(3-5月)に原価率が悪化(78.6%と6.2ポイント上昇)。仕入れ価格が安定した第2四半期(6-8月)には原価率が74.9%に改善したものの、上期の売上総利益は29億54百万円と同1.6%の増加にとどまった。一方、物流費(新規取引先の増加を反映したもの)や人件費を中心に販管費は23億67百万円と同8.3%増加したため、営業利益は5億87百万円と同18.7%減少した。

尚、第2四半期は主力製品の売上が順調に伸びる中、白菜や胡瓜等の原料野菜の仕入価格が安定。売上高が64億77百万円と前年同期比9.5%増加し、営業利益は同33.4%増の4億11百万円と高い伸びを示した。
 
 
 
 
 
製品売上高は前年同期比18.0%増の82億32百万円。積極的な新製品の投入や営業活動の成果で惣菜製品が同30.9%増と高い伸びを示した他、浅漬・キムチ製品も同15.1%増と伸びた。また、商品も堅調に推移し、売上高は44億48百万円と同9.4%増加した。
販路別では、惣菜製品を中心に主力の量販店・問屋向けが同18.7%増と伸びた他、コンビ二向けも同7.1%増加した。
 
 
生産・販売の拡大を受けて上期末の総資産は143億73百万円と前期末比10億92百万円増加した。科目別では、売上債権と仕入債務が両建てで増加した他、事業拡大に伴う有利子負債の積み増し等で現預金も増加。自己資本比率は45.6%と前期末比1.6ポイント低下した。
 
 
前年同期は東日本大震災の影響で販売・生産活動が共に落ち込んだ影響で運転資金が減少した。一方、今期上期は好調な販売と生産増に伴い運転資金が増加したため営業CFが減少。全国に展開する工場の増改築に伴い投資CFのマイナス幅も拡大したため、前年同期は8億49百万円だったフリーCFが2億78百万円に減少した。長期借入金の積み増しによる成長資金の取り込みで財務CFが黒字となり、現金及び現金同等物の上期末残高は20億82百万円と前年同期末に比べて2億78百万円増加した。
 
 
2013年2月期業績予想
 
 
前期比10.7%の増収、同0.2%の経常減益予想
順調に売上・利益が伸びた第2四半期(6-8月)決算を踏まえて、通期の業績予想を上方修正した。売上の面では、ふる漬や商品を下方修正したものの、主力の浅漬・キムチや惣菜を上方修正。期初には5~7%減を見込んでいた営業利益や経常利益は、過去最高となった前期と同水準を確保できる見込み。設備投資は能力増強に向けた既存工場の増築、改築等で7億34百万円(前期は3億16百万円)を予定しており、減価償却費は4億8百万円を織り込んだ(同3億74百万円)。1株当たり配当金は上場10周年記念配5円を落とし、普通配を2円増配の期末12円を予定している。
 
 
 
 
 
 
人気の川越達也シェフがプロデュースした「川越達也オススメキムチ・シリーズ」3製品を発売した。その一つである「川越達也オススメキムチ」は、りんごともものフルーティな甘味と、魚介の旨味が特長とし、旨味がありながらもすっきりマイルドな口当たりで辛さは控え目。ご飯のおかずとして食べる際の食べやすさはもちろん、”料理に使ってもおいしい”味を追求した。尚、現在、川越達也氏を起用したCMも準備中。
 
10月に川越達也シリーズの新商品「韓国キムチ」を発売する。「韓国キムチ」は酸味を抑え、りんごの甘みと魚介の旨味を活かしたキムチで、韓国からの直輸入キムチではあるが、日本人好みの味付け。鍋や炒め物等、料理の具材にもぴったり。

(同社資料より)
 
②他業界とのコラボレーションキムチ
宅配ピザで売上・店舗数No.1のピザーラ((株)フォーシーズンズ)とのコラボレーション製品。「ご飯がススムキムチ」の甘・辛・旨味のベースをそのままに、ピザーラからピザソースとナチュラルチーズ(ゴーダチーズ)の供給を受けてイタリアンな味付けに仕上げた。そのままでも美味しいが、食パンに載せてトーストすると、これが絶品!

(同社資料より)
 
福山醸造(株)とのコラボレーションキムチ「なまらうまいキムチ」をリニューアル発売した。「なまらうまいキムチ」は、福山醸造(株)の「トモエ 北海道ほたてだし」を使用する事で、コク味、旨味が加わり、深みのあるキムチに仕上げている。ちなみに「なまら」とは、「とても」とか「すごく」と言う北海道の方言。

(同社資料より)
 
おつまみやオードブルとして楽しんでもらいたい製品。輸入品の瓶詰めピクルスと異なり、甘みとすっきりとした酸味で食べやすく、フレッシュ感あふれるサラダ感覚が特徴。スーパーのチーズ売り場等で販売中。

(同社資料より)
 
同社の売れ筋商品「ご飯がススムキムチ」がふりかけに。「ご飯がススムキムチ」の味を忠実に再現。キムチ(漬物)売り場等でも販売をしており、キムチ製品のPR効果も期待できる。

(同社資料より)
 
惣菜製品を、浅漬、キムチに続く事業の柱に育成するべく取り組んでおり、上期は、ナムル、そら豆、オクラナ等の販売が好調だった。下期はふろふき大根等を投入してく考えで、年間を通じて、継続的に季節に合わせた製品提案を行っている。

(同社資料より)
 
⑥業務用製品
業務用製品では同社のナムルを使用したビビンバ丼(ナムルの使い方の提案により実現した提携先スーパーのオリジナル商品)等で実績があり、引き続きメニュー提案を含めて外食産業やスーパー向けの商材開発にも取り組んでいく。
 
広告宣伝及び販売促進活動
ラジオやテレビに加え、JR山手線駅に掲載した屋外看板と電車内のステッカー等、今期も様々なメディアを活用した広告活動を行っており、下期の広告宣伝費は1億18百万円を予定している(前年同期の実績は1億56百万円)。
また、販売促進活動では、「川越達也オススメキムチのプレゼントキャンペーン」と「ご飯がススム増量キャンペーン」を予定している。対象商品のバーコードを利用して応募する「川越達也オススメキムチのプレゼントキャンペーン(10月~)」では、川越達也氏のレストランでのディナー等を用意しており、「ご飯がススムキムチ増量キャンペーン」では、11月より20%の増量を計画。この他、現在、ご飯がススムキムチ・シリーズを使用したメニューを掲載したレシピ本を作成中(12月頃の発売予定)。
 
 
今後の注目点
漬物や惣菜の市場は成熟しているものの、同社にとって3,700億円の漬物市場は広大であり、更に大きな市場規模を誇る惣菜市場での展開については緒に付いたばかり。また、同社グループは全国を網羅する営業・物流網を有するが、現在の売上はマーケットのボリューム以上に首都圏に集中しており、エリア的にも事業拡大余地が大きい。特に西日本は手薄なエリアが多く、広島県府中市での新工場が稼働する14/2期以降は中国・四国地区での販売が加速する(その後は九州を開拓・深耕する考え)。天候要因等で一時的に業績が振れる可能性はあるが、中食志向の高まりも追い風となり、長期的なトレンドとして業績拡大が続くものと思われる。