ブリッジレポート
(9445) 株式会社フォーバルテレコム

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ブリッジレポート:(9445)フォーバルテレコム vol.29

(9445:東証マザーズ) フォーバルテレコム 企業HP
谷井 剛 社長
谷井 剛 社長

【ブリッジレポート vol.29】2012年3月期業績レポート
取材概要「通信サービス業界は「ブロードバンドとIP電話」の普及により新たなユーザーニーズが顕在化し、また、それに対応する新たな技術・サービスの具現・・・」続きは本文をご覧ください。
2012年9月11日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社フォーバルテレコム
社長
谷井 剛
所在地
東京都千代田区神田小川町 3-9-2
決算期
3月
業種
情報・通信
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2012年3月 13,470 323 302 177
2011年3月 13,560 391 391 155
2010年3月 13,956 347 327 194
2009年3月 15,042 391 388 133
2008年3月 13,466 337 344 192
2007年3月 12,461 845 840 975
2006年3月 11,024 859 868 841
2005年3月 7,740 470 452 726
2004年3月 6,114 214 205 205
2003年3月 7,746 93 40 69
2002年3月 11,879 -1,732 -1,779 -4,939
2001年3月 18,224 284 134 45
2000年3月 20,503 53 -50 88
株式情報(7/10現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
24,350円 166,932株 4,064百万円 9.5% 1株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
1,500.00円 6.2% 1,317.90円 18.5倍 10,977.48円 2.2倍
※株価は7/10終値。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
中小・中堅法人向けにOA・ネットワーク機器の販売やサービスの取次ぎを展開するフォーバル(8275)の連結子会社。フォーバルの連結決算において、フォーバルテレコムビジネスグループとしてセグメントされている(12/3期はフォーバルの連結売上高の35.7%を占めた)。グループは同社の他、連結子会社5社、持分法適用関連会社1社、非連結子会社1社。
 
【事業内容と企業グループ】
同社及び連結子会社(株)FISソリューションズによる法人向けVoIPサービス(高速ブロードバンド回線を利用した電話やインターネット接続サービス)や法人向けFMC(Fixed Mobile Convergence)サービス「2way Smart」の提供と関連機器販売の「IP&Mobileソリューション事業」、連結子会社(株)トライ・エックスを中心に普通印刷・特注文具の製造・販売を手掛ける「ドキュメント・ソリューション事業」、及び(株)保険ステーションによる保険やプライバシーマーク等に関する各種コンサルティング等の「コンサルティング事業」に分かれる。また、持分法適用関連会社(出資比率50%)で、(株)光通信(9435)グループの(株)アイ・イーグループとの合弁会社(株)ホワイトビジネスイニシアティブが「2way Smart」の企画開発及び関連するハードウエア開発を手掛けている。12/3期の売上構成比は、それぞれ75.0%、17.2%、7.8%。また、利益(連結調整前)の構成比は、それぞれ43.3%、27.2%、29.5%。
 
 
【沿革】
中堅・中小企業をターゲットとして、「新しい あたりまえ(業務革新につながる新商品や新サービス)」を提供するフォーバルグループ。その回線リセーラー(電気通信事業者から回線を仕入れてエンドユーザーに再販する)「フォーバル・インターナショナル・テレコミュニケーションズ(株)」として95年4月に設立され、「fit(フィット)コール」のブランドで国際電話サービスを開始。96年に市外電話サービス、97年に市内電話サービスと取扱いを広げた。98年8月に現商号へ変更し、99年10月に「fit接続サービス」、2000年2月に「fitホスティングサービス」、同年9月にはインターネットサービスと音声サービスを組み合せた「iパックサービス」を開始する等、インターネット関連ビジネスを拡大。同年11月に東証マザーズに株式を上場した。02年2月にソフトバンクBB(株)と合弁会社を設立し、中小法人向けVoIP(インターネット上で音声データを送受信する技術)及びADSLサービスを開始。03年10月にはブロードバンドの軸足を光ファイバーに移し、光ファイバー対応IP電話「FTフォン」サービスを開始。光ファイバーを利用したブロードバンドの普及を捉え利益を急拡大させた。
 
 
成長軌道への回帰に向けた取り組み
 
 
08/3期以降は、光ファイバー対応IP電話「FTフォン」の販売が一巡する中、リーマンショック、その後の景気悪化、更には東日本大震災と、同社のターゲットである中堅・中小企業を取り巻く環境が厳しさを増した。足元、回線利用にかかる継続収入が下支えとなり一定の利益水準を維持しているものの、閉塞感は否めない状況にある。

この状況を打破し、成長軌道への回帰を図るべく開発したサービスがホワイトビジネスフォンパック(WBP)である。WBPは、固定回線サービス、携帯電話サービス、IP電話サービス、及びブロードバンド接続サービスを一つのパッケージとして商品化し、このサービスの利用に必要な携帯電話(IP電話機)及びゲートウェイ装置も合わせて提供する。固定回線サービスと携帯電話サービスを融合し(FMC)、オフィスの置型電話を整理する事で利便性を損なわずに通信費の削減を実現するサービスであり、必要な機器も同社グループが提供する。

WBPを構成する実際のサービス及び商品が、スマートフォンを利用したFMC(Fixed Mobile Convergence:固定電話と携帯電話の融合)サービス「2way Smart(ツーウェイスマート)」(11/3期販売開始)及び独自開発の携帯電話対応アプリ、光ファイバーによる超高速ブロードバンドサービスを介してクラスA(固定電話同等品質)という最高水準による高品質音声(電話)を実現した法人向けIP電話サービス「スマートひかり」(12/3期発売開始)、そして独自開発のゲートウェイ装置「SWIFT BOX」(13/3期発売開始)である。
 
(1)スマートフォンを利用したFMCサービス「2waySmart(ツーウェイスマート)」
「2waySmart」では、1台のスマートフォンが、社外では携帯電話として、社内では内線電話として利用できる。このため、社内のビジネスフォン(固定の電話機)が不要になり、また、回線を引き回す必要も無いため、オフィスをスマートにする事ができる。
 
(2)法人向けIP電話サービス「スマートひかり」
12/3期に販売を開始した「スマートひかり」は光ファイバーによる超高速ブロードバンドサービスを介してクラスA(固定電話同等品質)という最高水準による高品質音声(電話)を実現した法人向けIP電話サービス。全国一律のわかり易い料金プランとスマート(リーズナブル)な通話料金を特長とする。

(社)電気通信事業者協会の「テレコムデータブック2010(TCA編)」によると、固定電話からの発信(国内向け通話)の79%は2分以内。このデータを基に「スマートひかり」の通話料金(税別、以下同じ)は全国一律2分5.5円に設定されている(大手キャリアでは市内3分8.5円、県内市外3分20~40円等)。また、携帯電話向けは全キャリア一律で60秒16円(同20~40円)、国際電話は米本土で60秒2.5円(同60秒60円等)。また、従来であれば個別契約が必要だった、音声通話(基本3通話で追加可能)とプロバイダー一体型の光インターネット接続料(最大で下り100Mbps)が一本化(ワンビリング)されているため事務の負担も軽い。更には、万が一、光回線が障害を起こした場合でも、自動迂回着信機能を備えているため、事前に指定した番号に着信する。
 
(3)ゲートウェイ装置「SWIFT BOX」
12年4月23日に「SWIFT BOX(スイフトボックス)」の販売を開始した。「SWIFT BOX」はIP電話システム(IP-PBX、IP電話主装置)とオールインワン型ネットワークセキュリティシステム(UTM、総合型脅威管理システム)を融合したハイブリッドな通信&セキュリティ・ソリューション。
 
 
投資を抑えてセキュアかつ効率的なIP統合オフィス環境を実現
「SWIFT BOX」は、IPビジネスフォンとネットワークセキュリティという異なる分野の機能を世界で初めて一体化(同社調べ)する事で、IPネットワーク上で制御される端末のほとんどを1台でコントロールできるようにした。価格は従来の総合型脅威管理システムと同程度の価格に設定されているため、従来の総合型脅威管理システムへの投資と同額で、セキュアかつ効率的なIP統合オフィス環境を実現できる。
 
BYOD (Bring Your Own Device)対応による高い利便性
「SWIFT BOX」は、iPhone やAndroid といったスマートフォンやタブレット等の端末もコントロールできるため、社員が持っているスマートフォンをそのままオフィスの内線電話として使う事ができ(BYOD対応)、スマートフォンから会社の代表番号での発信や会社の代表番号にかかってきた電話をスマートフォンでとる事もできる。このため、オフィス内のビジネスフォンの内線電話が不要となりコスト削減が可能であり、また、配線コードが不要になるためオフィスのレイアウトも自由自在。また、社内で利用しているアプリケーションを、机を離れている時や社外にいる時でもセキュアに利用する事ができるため(クラウド環境下で利用)、業務の大幅な効率化&高度化にも役立つ。
 
 
尚、現在「SWIFT BOX」は特許出願中(特願2012-35836号)だが、今後もIP統合環境における更なる機能拡張に取り組んでいく考え。
 
(4)既存の顧客資産の活用と光通信グループによる新規顧客の開拓で成長軌道へ回帰
「2way Smart」、「スマートひかり」、及び「SWIFT BOX」は、いずれも高い利便性を有する事に加え、コスト面での優位性も顕著なだけに今後の収益貢献が期待される。実際、従来の回線リセールや「FTフォン」で積み上げてきた顧客資産を活用する事で一定量の販売が見込める上、営業力に優れる光通信グループの営業が軌道に乗れば新規顧客の開拓にも弾みが付こう。
 
 
2012年3月期決算
 
 
前期比0.7%の減収、同22.8%の経常減益
売上高は前期比0.7%減の134.7億円。コンサルティング事業が伸びたものの、円高や東日本大震災の影響による企業活動の停滞が響きドキュメント・ソリューション事業の売上が落ち込んだ他、IP&Mobileソリューション事業もVoIPサービスにかかる課金収入が減少した。
営業利益は同17.3%減の3.2億円。全般的にはコストの抑制が効いたものの、売上の伸び悩みで「2way Smart」・「スマートひかり」の販売強化に向けた人員増が負担となった。持分法投資損益(12百万円→△7百万円)を中心に営業外損益が悪化したものの、特別損益の改善(△213百万円→△105百万円)で当期純利益は1.7億円と同14.2%増加した。
 
 
個別ベースでは、「2way Smart」の拡販で販売コミッションである一時収益が増加したものの、従前からのサービスにかかる課金収入の減少でストック収益が減少した。尚、ストック収益は、課金収入とその他(ビリングのOEMにかかる収益)に分かれ、12/3期は前者が76.9億円(同5.8%減)、後者が5.5億円(同13.4%増)。また、売上総利益は、前者が8.0億円(同10.4%減)、後者が2.7億円(同28.2%増)。一方、子会社は、(株)保険ステーションの寄与等で売上が増加したものの、ドキュメント・ソリューション事業の苦戦が響き売上総利益が減少した。
 
 
 
IP&Mobileソリューション事業   売上高100.9億円(前期比2.4%減)、セグメント利益1.5億円(同27.7%減)
法人向けIP電話サービス「スマートひかり」の販売が堅調に推移したものの、東日本大震災の影響もあり中堅・中小企業を取り巻く環境は厳しく、売上の大半を占めるVoIPサービスにかかる課金収入が減少。「2way Smart」の販売も伸び悩み、拡販に向けた先行投資が負担となった。
 
ドキュメント・ソリューション事業  売上高23.1億円(前期比5.6%減)、セグメント利益1.0億円(同36.8%減)
円高や震災の影響等で主要顧客であるメーカー各社(自動車、工作機械、半導体製造装置等)の販促活動が停滞し売上が減少。稼働率が低下し、製造部門等の固定費が利益を圧迫した。ただ、利益の大半は下期に計上しており、足元の回復傾向は鮮明。
 
コンサルティング事業        売上高10.5億円(前期比38.7%増)、セグメント利益1.0億円(同51.8%増)
好調の要因は、プライバシーマーク・ISO承認取得コンサル、請求システム(ワンビリングサービス)のOEM供給、及び企業向け保険販売。保険販売では採算も改善した。
 
 
期末総資産は前期末比2.8億円減の60.6億円。総資産減少の主な要因は、フォーバルグループ全体の財務戦略もあり、余剰資金を有利子負債の削減に充てた事。この他、通常の償却や減損処理でのれんが減少した他、評価損の計上で投資有価証券も減少した。CFの面では、2.9億円のフリーCFを確保したものの、有利子負債の削減や配当の支払いによるキャッシュ・アウトがこれを上回った。
 
 
 
2013年3月期業績予想
 
 
前期比4.2%の減収、同22.4%の経常増益
売上高は前期比4.2%減の129億円。前期の第3四半期から第4四半期にかけて「2way Smart」の販売部隊(直販部門)を適正規模に再編したIP&Mobileソリューション事業や前期末に一部の事業を売却したドキュメント・ソリューション事業の売上高が減少する見込み。一方、利益面では、上記の事業売却や適正規模への再編による損益改善効果で営業利益が3.9億円と同20.6%増加する見込み。配当は1株当たり800円の期末配当(年間1,500円)を予定。
 
(2)前12/3期の課題と今13/3期の取り組み
IP&Mobileソリューション事業
「2way Smart」の販売チャネルは、連結子会社(株)FISソリューションズによる直販(直接販売)と親会社である(株)フォーバルを含めた代理店による販売(間接販売)の2つに分ける事ができる。12/3期は景気悪化等による販売の伸び悩みで直販部隊の人件費が負担となり、(株)FISソリューションズの損益が悪化した。ただ、第3四半期(10-12月)末に事業環境に応じた人員規模に削減した結果、第4四半期(1-3月)半ば以降、同社の損益は改善傾向にある。具体的には、第3四半期は大幅な赤字を計上したが、2月以降は上記施策の効果で月次損益が黒字転換し第4四半期はわずかな赤字にとどまった。4月以降も黒字基調を維持しているようで、13/3期は黒字確保が見込まれる。
また、ハイブリッドな通信&セキュリティ・ソリューションとしてゲートウェイ装置(SWIFT BOX)の販売を開始する他(4,000台の販売を見込む)、「2waySmart」用モバイル端末向けのスマートアプリの開発・投入を強化する。
 
 
Wi-FiやBluetoothを利用してi-PadやiPhoneのファイルを他のi-PadやiPhoneへ転送できる「ぱっと転送」、複数台のi-PadやiPhone上で会議やプレゼンテーションを行うための「Smart Presentation」、法人向けクラウドストレージサービス「Smartストレージ」、更には1台のスマートフォンを社外では携帯電話、社内では内線電話として利用するための「2way Smart」等を既にラインナップしており、今後も順次拡充していく考え。
 
ドキュメント・ソリューション事業
前期末に不採算事業を売却したため売上が減少するものの、前下期以降、事業環境が改善傾向にある事や不採算事業の売却効果も見込まれる。また、売上の面でも、新規顧客を開拓した効果が徐々に現れてくる見込み。
 
コンサルティング事業
前期は保険事業の収益改善が進んだ他、拡販に力を入れている請求システムのOEMも伸びた。今期は保険販売(主に損害保険)における全国的なディーラー網の拡充に取り組むと共に、引き続き請求システムのOEM販売に注力する。
 
 
今後の注目点
通信サービス業界は「ブロードバンドとIP電話」の普及により新たなユーザーニーズが顕在化し、また、それに対応する新たな技術・サービスの具現化等、ダイナミックな事業環境の変化が続いており、通信サービス事業者は事業環境の変化に対応した新たなサービスメニューを機動的に創出していく事が求められている。同社においては、12/3期までに「2way Smart」、「スマートひかり」及び「SWIFT BOX」といった中期的な成長に向けたサービスや商品のラインナップの拡充と整備が進んだ。厳しい状況が続いているマクロ経済についても、東日本大震災や原発問題、更には東電管内を中心にした電力不足懸念等で大きな逆風が吹いた前期に比べれば改善傾向にある。今13/3期に結果を残す事ができれば、来期以降の展望が開けてくると考える。