ブリッジレポート:(2462)ジェイコムホールディングス vol.22
(2462:東証1部) ジェイコムホールディングス |
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企業名 |
ジェイコムホールディングス株式会社 |
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社長 |
岡本 泰彦 |
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所在地 |
大阪市北区角田町8番1号 梅田阪急ビルオフィスタワー19階 |
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決算期 |
5月 末日 |
業種 |
サービス業 |
項目決算期 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 当期純利益 |
2012年5月 | 17,518 | 914 | 1,044 | 603 |
2011年5月 | 15,905 | 901 | 955 | 489 |
2010年5月 | 13,522 | 789 | 834 | 475 |
2009年5月 | 14,162 | 913 | 953 | 340 |
2008年5月 | 12,404 | 885 | 907 | 489 |
2007年5月 | 9,605 | 812 | 786 | 444 |
2006年5月 | 6,657 | 594 | 552 | 274 |
2005年5月 | 4,684 | 284 | 281 | 152 |
2004年5月 | 3,271 | 142 | 141 | 56 |
2003年5月 | 2,222 | 90 | 88 | 45 |
2002年5月 | 1,616 | 77 | 76 | 40 |
2001年5月 | 1,369 | 73 | 70 | 34 |
株式情報(7/31現在データ) |
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今回のポイント |
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会社概要 |
【強みと成長戦略】
主力事業である携帯電話業界向け人材サービスにおいては、携帯電話業界に特化し蓄積してきたノウハウ、コミットした販売台数の達成率を含めた豊富な営業実績、更には接客だけでなく在庫管理や人員配置など販売に関する全業務への対応力といった営業面でのアドバンテージに加え、安定した資本力(無借金経営)や東証一部上場企業ならではのコンプライアンスといった非営業面での強みを有し、国内で有数のブランド力を誇る。現在、この磐石な事業基盤を背景に第2、第3の柱の育成に取り組んでおり、保育業界向けサービスやアパレル業界向けサービスで一定の成果を挙げつつある。また、12年7月には、中国人留学生に対する就職支援事業の運営及び関連サービスも立ち上げた。 【沿革】
ルーツは1993年9月に設立されたパッケージ旅行の企画を手掛ける(株)パワーズインターナショナル。96年4月に携帯電話ショップの運営を開始し、同年11月にはジェイコム(株)に商号を変更すると共に携帯電話業界に完全にシフト。98年10月にはショップ運営のノウハウを活かして携帯電話業界向け人材ビジネスに参入した。人材ビジネスが順調に拡大し、2005年12月に東証マザーズに上場。07年2月には東証1部市場へ指定替えとなりステータスも向上した。携帯電話業界に特化した人材サービスで業績を急拡大させた同社だが、マザーズ上場から4年を経た09年12月には、業界・業種・職種を問わずシナジーのある事業へ展開するべく持株会社体制へ移行。商号もジェイコムホールディングス(株)に改めた。M&Aや戦略的な事業提携を積極的に推進していく考えで、同年同月に認可・認証保育園の開設や院内・企業内・学内での保育サービスの受託を手掛ける(株)サクセスアカデミー(現サクセスホールディングス(株))に資本参加(持分法適用関連会社として議決権の20%を保有)。10年2月には東証1部上場の(株)TOWと資本・業務提携した他、11年9月には、住金物産(株)の100%子会社で、同社・同社グループ及び一般アパレル企業向けにデザイナーやパタンナー等の人材紹介を手掛けていた(株)アイ・エフ・シーの全株を取得。12年7月には一般社団法人「日本中華總商会」と業務提携し、同団体が行う中国人留学生に対する就職支援事業の運営及び関連サービス事業を立ち上げた。 尚、グループで認可保育園等の運営を手掛ける持分法適用関連会社サクセスホールディングス(株)が12年8月7日に大証JASDAQに株式を上場した。 【事業セグメント】
事業セグメントは、人材派遣、業務受託、紹介予定派遣、職業紹介等の総合人材サービス事業と、携帯電話キャリアショップ運営のマルチメディアサービス事業に分かれ、12/5期は前者が連結売上高の97%を占めた。また、総合人材サービス事業は、契約形態別に、派遣契約、業務委託契約(同社から見た場合、業務受託)、及び紹介予定・職業紹介契約に分かれ、セグメント内の売上構成比(12/5期、以下同じ)は、それぞれ63.1%、36.6%、0.3%。取引は携帯電話業界が最も多く、セグメント売上高の91.9%を占め、この他、育成中のアパレル業界向けが4.8%、通信業界向けが2.1%等。地域別の売上構成は、東日本地区が47.4%、西日本地区が40.1%、東海地区が12.5%。 さすがにリーマン・ショックの影響は避けられず、また、労働者派遣法改正論議の高まりも逆風(業界全体の傾向として)となったが、スマートフォンの市場拡大等による携帯キャリア間の競争激化や商品・料金体系の複雑化に伴う説明能力のある質の高いスタッフへの需要の高まりで10/5期には業績が底打ちした。 11/5期において派遣から業務委託へシフトした顧客ニーズの取り込みが進んだものの、12/5期は業務受託サービス開始当初の不可避的な採算の悪化とスマートフォンの活況による予想を超える業務量の増加で利益が伸び悩んだ。 しかし、13/5期は不採算案件の契約切替等の対策が奏功し、高い利益の伸びが見込まれている。 |
事業拡大に向けた取り組み |
(1)第二・第三の柱となる新規事業の確立
第二・第三の柱となる新規事業の確立では、M&A効果もあり事業拡大ペースが加速する他、中国人留学生向け就職支援サービスが始動した。
①アパレル業界向けサービス
携帯電話業界向けサービスに次ぐ第二の柱として期待されているのがアパレル業界向けサービスであり、11年9月に住金物産(株)より株式を取得し、100%子会社化した(株)アイ・エフ・シーとのシナジーを図り、幅広くサービスを展開していく。(株)アイ・エフ・シーは、アパレル業界に特化して蓄積してきた知識とノウハウを強みとし、デザイナーやパタンナー等の人材紹介で豊富な実績を有する。ジェイコムホールディングス(株)のアパレル業界向け売上高は、13/5期は15億円に急拡大する見込み。実績とノウハウを積み重ねて中期的には50億円規模の事業に育成していきたい考えだ。 ②中国人留学生向け就職支援
12年7月に一般社団法人「日本中華總商会」と提携し、同団体が行う中国人留学生に対する就職支援事業の運営及び関連サービス事業を立ち上げた。日本語学校を含めると約11 万人に上る在日中国人留学生のうち日本企業への就職希望者は6割を超えるとされており、これまでの実績とノウハウを活かして中国人留学生の就職を支援していく考え。尚、一般社団法人「日本中華總商会」は日本で活躍する華人・華僑の発展を目的に設立された。
(2)グループ会社の管理体制強化
グループで認可保育園等の運営を手掛ける持分法適用関連会社サクセスホールディングス(株)が12年8月7日に大証JASDAQに株式を上場。同グループは認可保育園・認証保育所、公設民営保育園、更には学童クラブなど52ヵ所を運営している他、東京大学、大阪大学等の学校、或いは病院や企業の保育施設143ヵ所の運営も受託している。今後、ニーズの強い首都圏を中心に公的保育の運営と受託保育を並行して進めていく考えで(上場により調達する資金は首都圏の認可保育園開設資金に充当する)、保育士の確保では保育士の派遣等を手掛けているジェイコム(株)と全国規模での連携を強化する。
※労働者派遣法の改正について
同社の事業は労働者派遣法の規制を受け、民主党政権が誕生以来、その改正(規制強化)の影響が喧伝されていたが、法案の骨格であった登録型派遣・製造業派遣の原則禁止が削除され、労働者派遣の規制強化色は薄まった。改正のポイントは次の通り。 事業規制の強化
・日雇派遣の原則禁止(例外:雇用機会の確保が特に困難な場合)
・グループ企業内派遣の8割規制、離職した労働者を離職後1年以内に派遣労働者として受入禁止 派遣労働者の無期雇用化や待遇の改善
・派遣元事業主に、一定の有期雇用派遣労働者につき、無期雇用への転換推進措置を努力義務化
・同種業務に従事する派遣先労働者との賃金均衡を考慮 ・マージン率等の情報公開を義務化 ・雇用時に派遣労働者に対して1人当り派遣料金額を明示 ・派遣契約解除時、派遣労働者の新たな就業機会の確保、 諸手当の支払いに要する費用負担等の措置を義務化 違法派遣に対する迅速・的確な対処
・派遣先が違法と知りながら派遣労働者を受け入れている場合、派遣先が派遣労働者に対して労働契約を申し込んだものとみなす
・労働者派遣事業の許可等の欠格事由を整備 |
2012年5月期決算 |
前期比10.1%の増収、同9.4%の経常増益
売上高は前期比10.1%増の175.1億円。売上の内訳は、主力の総合人材サービス事業が同9.9%増の169.9億円、マルチメディアサービス事業が同16.8%増の5.2億円。総合人材サービス事業では、スマートフォン市場の拡大で活況を呈する携帯電話業界向けの売上が同8.9%増加した他、第2の事業の柱として期待のかかるアパレル業界向けも業界大手クライアントとの取引拡大に伴い同2.6倍に拡大した。利益面では、業務受託案件の一部で残業増等による採算悪化があり、営業利益が同1.4%の増加にとどまったものの、持分法投資利益の増加(10百万円→57百万円)や助成金収入の計上(26百万円)等による営業外損益の改善で経常利益が同9.4%増加。税金費用の減少で、当期純利益は6.0億円と同23.3%増加した。 配当は1株当たり15円の期末配当を予定している(上期末配当と合わせて年25円)。尚、同社は11年6月に1株を200株に分割しており、これを考慮した実質的な年間配当は5,000円となる。 利益面で修正予想を若干上回る着地
12年4月16日に期初に発表した業績予想を下方修正しており、この修正予想を上回る着地となったが、期初予想との比較では、売上高(185億円)が5.3%、営業利益(10.7億円)が14.6%、経常利益(11.8億円)が11.5%、それぞれ下回った。要因は、対応件数の増加と商品・料金体系の複雑化に伴う一人当たり接客時間の長時間化に伴い、スタッフの残業時間が想定以上に増加し一部の業務受託案件で当初の受注額では不採算となる案件が発生した事。対応策として、第3四半期(12-2月)に業務委託契約から派遣契約への変更等の対策を講じた事も目先的な売上高及び利益の減少要因となった。一方、修正予想を上回ったのは、派遣契約に変更した事で各案件の収益性改善が予想以上に進んだため。尚、11年度の国内携帯電話端末総出荷台は前年度比13.5%増の4,274万台。中でも、スマートフォン市場の拡大は著しく、同2.8倍の2,417万台に拡大し、国内携帯電話端末総出荷台数の56.6%を占めた((株)MM総研調べ)。市場の活況を受けて、通信キャリアや代理店の販売促進活動も活発化している。 (2)総合人材サービス事業の動向
契約形態別では、業務委託契約が前期比26.7%増の62.2億円と大きく伸びた他(第3四半期に不採算の一部業務委託契約を派遣契約に切り替えたものの)、派遣契約も同1.9%増と堅調に推移した。業界別では、スマートフォン市場の拡大と通信キャリアの販促活動の活発化で携帯電話業界向けが156.2億円と同8.9%増加。アパレル業界向けも、全国的案件への対応力と業界内での同社知名度の向上で取引先が増加すると共に大手クライアントとの取引も拡大し、8.1億円と同2.6倍に拡大した。顧客別では、業務委託契約の取り込みが進んだ携帯電話販売代理店向けが大きく伸びた他、携帯キャリア6社向けも3.1%増と堅調に推移。また、地域別では東日本地区の同19.5%増の80.6億円と大きく伸びた。
原価率の上昇 83.1%→83.9%(0.8ポイント悪化)
業務委託契約のサービス開始当初の他社スタッフ受入れによる一時的な原価の増加(注)及び携帯電話業界における想定以上の競争激化による残業時間の増加等が要因。ただ、不採算案件の派遣契約への変更等の改善策の成果で第3四半期以降は想定以上のペースで改善が進んだ。
販管費率の改善 11.2%→10.8%(0.4ポイント改善)
コスト管理の徹底や業務効率の適正化に注力した結果、対売上比で人件費が0.2ポイント、地代家賃が0.3ポイント、営業変動費が0.1ポイント、それぞれ改善。一方、採用及び人材育成を強化した結果、採用教育費が0.2p上昇した。
(注)業務受託受注直後の他社スタッフ受入れによる一時的な原価の増加
派遣契約から業務委託契約へシフトすると、当初は利益率が悪くなる。なぜかと言うと、派遣契約から業務委託契約へ変わる場合、コンペによって業務委託先が決まるが、業務委託契約への移行後もクライアントは従来からの派遣社員の継続勤務を希望する。例えば、同社が20人で行う業務を受託した場合、従前の派遣契約時からその業務に他社の派遣社員が従事していたら、業務委託契約への移行後もその派遣社員が辞めるまではその業務に従事させる必要がある(つまり、同社が他社に派遣料を払って派遣社員を活用している事になる)。時間の経過と共にスタッフが入れ替わり(直雇用化が進む)、最終的には同社スタッフのシェアが100%となるためその過程で利益率が改善していくが、サービス開始当初は、この社員は同社の売上高に貢献しても、利益には貢献しないため利益率が悪くなる。
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2013年5月期業績予想 |
前期比11.3%の増収、同17.5 %の経常増益予想
売上高は前期比11.3%増の195億円。マルチメディアサービス事業の売上が減少するものの、総合人材サービス事業の売上が190億円と同11.8%増加する見込み。後者では、主力の携帯電話業界向けの売上が増加する他、アパレル業界向けの売上も大きく伸びる。営業利益は同25.7%増の11.5億円。業務受託案件の利益率改善に加え、収益性の高いキャンペーン案件の取り込みも進む見込み。配当は1株当たり5円増配の年30円を予定している(上期末15円、期末15円)。
上期
携帯電話業界では各通信キャリアの競争激化で販売員不足が続く見込み。不採算案件への対応一巡と委託契約案件における直雇用化の進展で原価率の改善も見込まれる。
下期
繁忙期におけるキャンペーン案件の取り込みやアパレル向けでの新規事業が売上拡大に大きく寄与。原価率の改善も鮮明となる。
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