ブリッジレポート:(2468)フュートレック vol.21
(2468:東証マザーズ) フュートレック |
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企業名 |
株式会社フュートレック |
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社長 |
藤木 英幸 |
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所在地 |
大阪市淀川区西中島 6-1-1 |
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決算期 |
3月 末日 |
業種 |
サービス業 |
項目決算期 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 当期純利益 |
2012年3月 | 2,562 | 501 | 502 | 261 |
2011年3月 | 2,085 | 482 | 485 | 284 |
2010年3月 | 1,996 | 530 | 540 | 315 |
2009年3月 | 1,777 | 404 | 415 | 221 |
2008年3月 | 1,598 | 264 | 277 | 159 |
2007年3月 | 1,253 | 249 | 256 | 162 |
2006年3月 | 1,443 | 173 | 165 | 99 |
2005年3月 | 1,059 | 69 | 79 | 33 |
2004年3月 | 907 | 9 | 6 | -1 |
2003年3月 | 736 | 12 | 12 | 3 |
2002年3月 | 435 | 17 | 34 | 29 |
株式情報(7/2現在データ) |
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今回のポイント |
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会社概要 |
NTTドコモの音声エージェントサービス「しゃべってコンシェル」にも、音声認識エンジンを提供している。 グループは、同社の他、音声認識コア技術の開発や音声認識サービスを提供する(株)ATR-Trek、CRMソリューションやシステムソリューションを手掛けるイズ(株)、及びスマートフォン向けアプリ開発の(株)スーパーワンの連結子会社3社。NTTドコモ・グループが発行済株式の約10%を保有し、12/3期はNTTドコモ向けの売上高が全体の59.8%を占めた。 【沿革】
半導体設計の受託からスタートし、音源IP事業へ展開
2000年4月に半導体設計の受託会社としてスタートしたが、当初から受託の枠にとどまる考えは無く、受託の傍らで自社製品の開発(携帯電話用音源LSIの設計データの開発)に取り組んだ。01年3月、設計データ開発が完了し、これを音源IPとして販売開始(設計データを知的財産権化してライセンス)。この音源IPがNTTドコモに採用され(フュートレックの音源がNTTドコモの標準仕様として搭載)、業容が拡大。05年12月に東証マザーズに株式を上場した。
音声認識で成長の第2ステージへ
06年5月には、NTTドコモと資本・業務提携契約を締結。この頃から新事業の育成に着手し、06年12月、音声認識分野に展開するべく(株)国際電気通信基礎技術研究所(ATR)と業務提携。07年5月 にはATRの関連企業である(株)ATR - Langに資本参加した(出資比率66%、残り34%はATRグループの(株)ATR-Promotions。資本参加後に(株)ATR - Trekに商号を変更)。音声認識システムの販売等が順調に拡大し、11/3期からはユーザーインターフェイス関連の開発を手掛けるUIソリューション事業(09年4月に開始した事業)と統合し、音声認識・UIソリューション事業分野として音声認識技術を利用したシステム開発やサービスの企画・提案にも力を入れている。
CRM・システムソリューション及びスマートフォン向けアプリ開発とのシナジーで音声認識事業を強化
10年9月にはスマートフォン・カーナビゲーション・家電等の操作性向上を目的とする次世代音声UIの開発を目的に(株)アクロディア(3823)と業務提携し、同年11月に資本参加(発行済株式の2.72%を取得)。11年4月には、「Visionaryシリーズ」を中心に約150社にCRMソリューションやシステムソリューションを展開するイズ(株)及びその子会社でスマートフォン向けアプリ開発等を手掛ける(株)スーパーワンを子会社化した。今後、音声認識技術を取り込んだCRM ソリューションや業務ソリューション、或いは(株)スーパーワンのWeb アプリ開発力を活かした音声認識関連のスマートフォン向けアプリ開発等を強化していく考え。
【事業内容】
事業は、ライセンス事業とライセンス以外の事業に分かれ、12/3期の売上構成比は前者が91.3%、後者が8.7%。また、前者は、音声認識・UIソリューション事業分野(同58.4%)、音源事業分野(同16.9%)、CRMソリューション事業分野(同15.9%)に分かれ、後者は基盤事業分野(同4.2%)及びカード事業分野(同4.5%)に分かれる。
【技術とサービス】
音声認識技術とは、人間の話した言葉を機器に認識させて、音声による機器操作や情報入力を可能にする技術。同社は「vGate(ブイゲート)」ブランドの下で、機器に人間の声を認識させる「vGate ASR」、音声合成により人間の言葉を発語させる「vGate TTS」、及び音声認識と音声合成を組み合わせて機器との会話を実現する「vGate Talk2Me」の3製品をラインナップしており、これらの製品を様々なアプリケーションやシステムに組込む事によって、汎用的に利用する事ができる。
(1)音声認識 フュートレック音声認識製品の強み
「屋外でのビジネスシーンにも耐え得る高い認識精度」、「幅広い品揃え」、及び「カスタマイズ可能な柔軟性」を強みとしている。同社の音声認識技術は、この分野でトップクラスの技術を誇るATRの技術がベースになっている。音声認識の方式は、「分散型音声認識」(端末で取り込んだ音声データをサーバへ送り認識処理する。わずかに通信時間がかかるが語彙が豊富)、「ローカル型音声認識」(端末内で認識処理する。処理速度は速いが語彙数が限られる)、及び「ハイブリッド型音声認識」(端末内での認識とサーバでの認識を併用する)の3方式を有しており、顧客の要望に応じて使い分けが可能(「幅広い品揃え」)。これら(音声認識、音声合成、音声対話)の製品は、顧客の要望に応じたカスタマイズが可能となっている。また、音声認識に使用する辞書のカスタマイズも行えるので、業界専用・社内専用の用語が多く使われる職場等での導入にも支障はない(「カスタマイズ可能な柔軟性」)」。 同社は「高い認識精度」、「幅広い品揃え」、「カスタマイズ可能な柔軟性」といった強みを活かして、従来から行ってきた顧客製品への技術の組込みに加え、法人向けサービス(業務ソリューションやCRMソリューション)にも力を入れていく考え。 (2)音源
音源とは、あらゆる楽器の音色を再現できる電子音再生装置。音源事業とは製品を売るのではなく知的財産である設計図とソフトウェア(音源IP)を売るビジネス。
(3)CRMソリューション
CRMソフトウェア「Visionary」を中心に、システム開発やサーバホスティング等を行っている。「Visionary」とは、Webやモバイルを活用し、顧客コミュニケーションを実現するCRMソリューションで、メール配信、アンケート、コンテンツ管理、サポート管理、注文管理、商品管理等の機能を備えている。顧客企業それぞれの環境や利用目的に合わせたシステム構築(カスタマイズ)が可能で、ニーズに応じて必要な機能だけを組み合わせて利用する事ができる。収益は月額使用料(ASP提供)又はパッケージライセンスによる一括提供、及び導入時のカスタマイズにかかる収益からなる。12/3期は震災の影響もあって赤字となったが、音声認識技術を組込んで提供する等でテコ入れを図っていく考え。 (4)E検定 ~電気・電子系技術者育成プログラム~
昨今、電気・電子系ハードウェアの技術者育成にはあまり力が注がれず、技術力低下の問題が顕在化しつつあるが、今後の市場拡大が見込まれる電気自動車やエコプロダクツの開発にはハードウェアとソフトウェアの技術の融合が必須である。同社は独自開発の「E検定 ~電気・電子系技術者育成プログラム」を通して、ハードウェアの受託開発等で培った電気・電子系のハードウェア開発技術を教育事業に応用して展開していく考え。「E検定 ~電気・電子系技術者育成プログラム」は、実務経験豊富な現場の技術者が作成しており、机上の知識ではなく実務の優先度に応じてノウハウ等を育成する事に重点が置かれ、短期間で必要な知識を習得し、応用できる様にプログラムが構成されている。12/3期に立ち上げた新しい事業だが、既にデンソーなど複数の企業へ提供を行っており、12年3月からは、エレクトロニクスの総合誌「トランジスタ技術」の発行元であるCQ出版(株)と共同で一般向け試験を開始した。 |
成長戦略 |
(1)音声認識を中心にしたワンストップソリューション
同社は、これまで受託→音源→音声認識へと主要な事業を変えながら業容を拡大させてきた。引き続き高い成長が見込まれる音声認識に注力していく考えだが、今後は「vGate」を用いた製品の企画・開発・販売やアプリケーション開発、バックエンドソリューション開発等を含めたワンストップソリューションを展開していく。注力分野として業務ソリューションを挙げており、既に音声入力で業務日報作成等ができる「銀行向け業務日報ソリューション」を販売開始している。また、イズ(株)が持つCRMソリューションやWebシステム開発、(株)スーパーワンが得意とするスマートフォンアプリ開発等とのシナジーも追及していく。 (2)電子書籍ビジネス
音声認識以外では電子書籍ビジネスに注目しており、12年3月に(株)エムアップ(3661)と電子書籍分野で業務提携を行った。(株)エムアップが展開する電子書籍レーベル「デジタルブックファクトリー」(http://dbookfactory.jp/)のコンテンツプロデュース力とフュートレックグループの持つ電子書籍関連技術の開発能力を融合して、電子書籍ビジネスを展開していく考え。(株)エムアップは、11年2月に「デジタルブックファクトリー」を立ち上げ、電子書籍ならではの活字・音楽・写真・映像を融合したハイレベルなコンテンツの企画から制作・配信に至るまでのプロデュースを行っている(「デジタルブックファクトリー」で提供された伊集院静の作品「男の流儀入門」は「ダ・ヴィンチ電子書籍アワード2012」で“読者賞”を受賞)。一方、フュートレックグループでは、(株)スーパーワンが、iPhoneやAndroid端末向け電子書籍アプリパッケージ(「ONE's BOOK VIEWER」、「ONE's BOOK VIEWER2」)の開発や電子書籍コンテンツの受託開発等で実績を有する。今後、(株)スーパーワンが持つ電子書籍関連の開発技術を(株)エムアップに提供し、電子書籍レーベル「デジタルブックファクトリー」のブランド力向上に取り組むと共に、収益力のある電子書籍ビジネスを手掛けていく考え。 尚、(株)野村総合研究所「2015年度までのIT主要市場の規模とトレンドを展望(2)」によると、10年度に850億円だった電子書籍市場の規模が15年度には2,400億円へ拡大する見込み。また、電子書籍と言うと、これまではフィーチャーフォン(従来型携帯電話)向けコミックが中心だったが、15年度にかけては、スマートフォンやタブレット端末に加え、専用リーダー端末の普及もあり、小説や写真集等が急拡大すると予想している。 (3)フュートレック・グループ 今後の方向性
「社会の変化に柔軟に対応して、その時代に求められる商品を追求していく事で継続的に発展する会社を目指す」としている。
新たな事業に積極的に挑戦し、企業価値を増大させていきたい考え。 (同社資料より) |
2012年3月期決算 |
前期比22.9%の増収、同3.3%の経常増益
売上高は前期比22.9%増の25.6億円。イニシャルフィーによる収入やカスタマイズ業務による収入の増加で主力の音声認識・UIソリューション事業分野の売上が伸びた他、イズ(株)・(株)スーパーワンの連結子会社化も売上の押し上げ要因となった。ただ、利益面では、東日本大震災(以下、震災)の影響による案件の延期や中止でイズ(株)が損失計上を余儀なくされた事や音声認識・UIソリューション事業分野での先行投資負担もあり、営業利益が同4.0%増の5.0億円と小幅な伸びにとどまった。また、当期純利益が減少したのは、税効果会計等の影響による。
音源事業分野の売上高は同48.0%減の4.3億円。音源搭載台数(フィーチャーフォンの販売台数)が減少したため、ロイヤルティ収入が減少した。尚、前期は第3四半期(10-12月)に一時的にソフトウェア音源の売上があり、この反動もあって当期の減収率が大きくなった。 CRMソリューション事業分野の売上高は4.0億円。事業主体であるイズ(株)は震災の影響による案件の延期や中止で売上が計画ほどには伸びず、約50百万円の損失を計上した。 この他、受託業務の減少を「E検定 ~電気・電子系技術者育成プログラム」と新たに連結子会社となった(株)スーパーワンの寄与で吸収した基盤事業分野の売上高が1.0億円と同31.4%増加。需要が安定しているカード事業分野の売上高が同1.9%増の1.1億円。 (3)財政状態及びキャッシュ・フロー(CF)
期末総資産は前期末比2.8億円増の34.9億円。借方では、期末にかけての売上の増加で売上債権が増加した他、イズ(株)の子会社化等で無形固定資産(のれんの発生:124百万円)が増加した。一方、貸方では、有利子負債(イズ(株)の子会社化により長期借入金が増加したが、短期借入金を返済し有利子負債全体では減少)や未払法人税等が減少する一方、仕入債務や純資産が増加した。自己資本比率は78.6%。CFの面では、期末にかけて売上債権が増加したものの4.3億円の営業CFを確保。M&Aにかかる支出等で投資CFがマイナスとなったが、1.8億円のフリーCFを確保した。有利子負債の削減を進めた事で財務CFがマイナスとなり、現金及び現金同等物の期末残高は18.5億円と前期末比1.5億円減少した。
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2013年3月期業績予想 |
前期比28.8%の増収、同39.4%の経常増益予想
大型案件の寄与で音声認識・UIソリューション事業分野の売上・利益が伸びる他、震災の影響で前期に損失計上を余儀なくされたイズ(株)の業績改善も見込まれる。配当は1株当たり400円増配の期末2,500円を予定。尚、四半期別では、音声認識・UIソリューション事業分野で大型案件の売上計上を予定している第1四半期(4-6月)の売上・利益が大幅に増加するものの、第2四半期以降は、売上高がほぼ前年同期並みにとどまる中、音声認識の更なる性能向上と多言語対応、更にはソリューションビジネス展開のための開発投資が利益を圧迫する見込み。 |
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