ブリッジレポート
(9616) 株式会社共立メンテナンス

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ブリッジレポート:(9616)共立メンテナンス vol.32

(9616:東証1部) 共立メンテナンス 企業HP
石塚 晴久 会長
石塚 晴久 会長
佐藤 充孝 社長
佐藤 充孝 社長
【ブリッジレポート vol.32】2012年3月期業績レポート
取材概要「12/3期は東日本大震災と言う試練に耐えながら中期経営計画で示された重点施策に取り組んだ。施策のうちの「寮事業の構造改革の仕上げと新たな・・・」続きは本文をご覧ください。
2012年7月3日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社共立メンテナンス
会長
石塚 晴久
社長
佐藤 充孝
所在地
東京都千代田区外神田 2-18-8
決算期
3月
業種
サービス業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2012年3月 91,170 6,017 4,602 2,376
2011年3月 84,983 4,610 3,308 1,052
2010年3月 84,513 4,033 3,012 1,254
2009年3月 82,303 5,349 4,510 2,133
2008年3月 75,606 4,492 4,167 2,740
2007年3月 66,287 3,745 3,787 2,413
2006年3月 63,084 4,611 4,823 2,010
2005年3月 58,014 4,407 4,411 2,343
2004年3月 54,080 4,004 4,059 2,137
2003年3月 50,108 4,148 3,884 2,039
2002年3月 50,064 3,908 3,580 1,821
2001年3月 37,884 2,827 2,643 1,146
2000年3月 36,787 2,368 2,281 906
株式情報(6/14現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
1,572円 14,111,738株 22,184百万円 7.7% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
38.00円 2.4% 169.36円 9.3倍 2,235.83円 0.7倍
※株価は6/14終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
"ライフステージにおける様々な場面での「食」と「住」さらに「癒し」のサービスを通じて、広く社会の発展に寄与する"と言う経営方針の下、「現代版下宿屋」(食事付きの寮の運営)を中心にした寮事業、「温泉感覚を取り入れた大浴場」と「美味しい朝食」といった寮事業のノウハウを活かしたホスピタリティ重視のビジネスホテルや「リーズナブルで質の高いリゾートライフ空間の創造と提供」をテーマに掲げたリゾートホテルのホテル事業、オフィス(事務所)・レジデンス(住居)のビルメンテナンス、ビル賃貸及び賃貸代行、駐車場運営等の総合ビルマネジメント事業、外食やレストラン運営受託のフーズ事業等を展開。知名度と実績で他社を凌駕する主力の寮事業を安定収益源とし、ホテル事業の育成により成長を加速している。
グループは、同社の他、連結子会社7社、非連結子会社3社、持分法を適用していない非連結子会社及び関連会社6社。
事業の種類別セグメントと売上構成(12/3期)は次の通りである。
 
 
【沿革】
設立は1979年9月。食の世界に長く携わった創業者 石塚晴久氏が調理人として企業の給食施設の運営受託を開始した。翌80年には千葉県佐倉市に、木造2階建て(四畳半が28室)の民間学生寮「学生会館」第一号棟が誕生。「食」を第一として、「学生の健康と元気こそが親の安心」との考えのもと、提携先の学校名を冠した学生会館事業を展開。東京・神奈川地区、名古屋地区、大阪地区へとエリアを拡大した。85年4月には、「一室から借りる事ができ、朝夕2食付き」を特徴とし、ゆっくり身体を癒せる「大浴場」も重視した社員寮事業を開始。87年5月には、学生寮、社会人寮、給食施設等の受託事業で培った「賄いのノウハウ」を活かし外食事業に展開。93年6月の現住所(東京都千代田)への本社移転を経て、同年7月に長野県でリゾートホテル事業に、8月に埼玉県でビジネスホテル事業に参入した。翌94年9月、現在のJASDAQ市場へ上場(店頭登録)、99年3月の東証二部上場を経て、01年9月に東証一部に指定替えとなった。
 
 
中期経営計画「Kyoritsu Value Up Plan !」(12/3期~16/3期)
 
現在、中期経営計画「Kyoritsu Value Up Plan!」(12/3期~16/3期)が進行中である。同計画では、「寮事業の構造改革の仕上げと新たな成長戦略の遂行」、「収穫期入りしたホテル事業の収益拡大の加速」、「第三の柱となる新規事業の育成」、「人材育成と適正配置」を重点施策として掲げ、最終の16/3期に売上高1,377億円、営業利益110億円、経常利益89.5億円の達成を目指している。
 
 
目標達成に向け、(1)コア事業の成長加速と(2)新規事業の育成に取り組んでおり、(1)では「寮事業首都圏98プロジェクト」として最重要マーケットである首都圏の営業力を強化すると共に、個別クライアント(大学、企業)のニーズに応じたエリア開発にも力を入れている。また、ドーミーイン(ビジネスホテル)の海外展開も進めていく考え。(2)では、12/3期にPKP(Public Kyoritsu Partnership:自治体向け業務受託)事業を立ち上げた。
 
(1)コア事業の成長加速
①「寮事業首都圏98プロジェクト」
「寮事業首都圏98プロジェクト」とは、エリア別の定員数のシェアが65%と最も高いものの、期初稼働率(13/3期95.6%)が最も低い首都圏の期初稼働率を98%に引上げようという取り組み。
 
 
期初稼働率引き上げに向け、学生寮では、期中対策として途中退寮の防止や講習・スクーリング等の受講者への営業を強化。期初に向けた対策として、女子学生向け及び推薦入学者・AO入試対象者向けのプロモーション強化や高校との関係強化に取り組んでいる。また、社員寮では、期中対策としてマンスリーキャンペーンの実施、期初に向けた対策としてドーミーイン(ビジネスホテル)事業部との連携による合同営業、業界大手企業OBの採用による人脈活用、提案営業の強化(自社寮保有企業や採用増企業等)、更には人気の高い池袋~渋谷間の営業強化等に取り組んでいる。
 
②ピンポイント開発
開発面では、個別クライアント(大学、企業)のニーズに応じたエリア開発、言い換えると、エリアを絞り込んだ戦略的開発(ピンポイント開発)に注力する。この一環として、情報間口を広げるべく、金融機関、不動産会社、商社、ゼネコンとの連携を強化しており、また、出口戦略としてセール&リースバックを活用した資産の流動化も進める。尚、11/3期にJ-REITに対して行なった物件売却がアナウンスメント効果を発揮し、その後、物件買取りの引合いが顕著に増加していると言う(11/3期に約140億円、12/3期に約48億円を実施)。
 
 
③ドーミーインの海外展開
この他、グローバル化に向けてドーミーインの海外展開も進める考えで、第1弾として韓国展開の準備を進めている(来春の開業を予定)。
候補案件の概要は次の通り。

住所     :韓国ソウル市瑞草(ソチョ)区
建築規模・設備:地下5階・地上15階建(レストラン・大浴場・商業施設含む)
客室数    :400室(ダブル166,ツイン212,トリプル11,フォース11)
運営形態   :賃貸借方式(契約期間20年)
想定客室単価 :円換算ベースで13,000円前後(「PREMIUM」ブランドの価格帯)
 
(2)新規事業の育成
12/3期に新規事業としてPKP(Public Kyoritsu Partnership:自治体向け業務受託)事業を立ち上げた。この事業は地方自治体向けのアウトソーシング事業で行財政改革のコンサルから業務受託まで一貫して引き受ける。行政のノンコア事業部門を受託し、同社のノウハウを活用してコスト削減と地域の雇用の安定や住民サービスの向上を図る事で行財政改革に貢献する。
 
①受託内容
主な受託業務は、様々な施設の運営や公共のサービス業務を行う施設運営管理、車両運行管理、更には地域振興事業、観光活性化、公的資産の整備等を横断的に組み合わせる事でトータル運用を実現する地域活性化支援。
具体的な業務内容は次の通り。
 
 
②初度(12/3期)実績
初年度となった12/3期は、北海道・湧別町や和歌山県・日高川町での包括受託等、16の自治体と37件の受託契約を締結し、売上高9.1億円を計上した。13/3期は64自治体との間で104件の契約締結、売上高30.6億円を計画しており、既に約16億円分についての契約が確定している。
 
 
 
 
 
 
 
 
2012年3月期決算
 
 
前期比7.3%の増収、同39.1%の経常増益
売上高は前期比7.3%増の911.7億円。東日本大震災(以下、震災)の影響を受けたものの、事業所の新規開設効果と既存事業所の稼働率向上でホテル事業の売上が伸びた他、寮事業も期を通して堅調に推移した。利益面では、ホテル事業(利益が同4.3倍に拡大)をけん引役に営業利益が同30.5%増加。特別損失の減少で当期純利益は同2.3倍に拡大した。尚、営業利益が約14億円増加したが、このうちの7.8億円はビジネスホテルの寄与で、3.4億円がリゾートホテルの寄与によるもの(この他、寮事業約1.2億円等)。配当は1株当たり19円の期末配当を予定(上期末配当と合わせて年38円)。
 
 
 
 
寮事業
受託を除く期末事業所数は前期末比7ヶ所増の419ヶ所、定員数は同649名増の32,309名。売上高は397.5億円と前期比3.0%増加したが、新規開設の増加(前期は4ヶ所増)に伴う立上げ費用の増加でセグメント利益は59.8億円と同2.5%増加にとどまった。また、期末に向けて募集活動及び空室対策を講じた結果、13/3期の期初稼働率は96.5%と前年同期を1.2ポイント上回る水準でのスタートとなった。タイプ別の寮の状況は次の通り。
 
学生寮(売上高23,642百万円、前期比2.8%増)
少子化という構造的な傾向はあるものの、大学・専門学校への進学率の上昇や四年制大学における地方からの学生入学促進の為のインフラとして学生寮の需要が高まっている。12/3期は震災の影響で留学生や被災地出身者の入寮キャンセルがあったものの、既存提携先との関係強化により期初稼働率が95.3%と前年同期の92.9%を上回る水準でスタート。東京理科大学、神戸市外国語大学、東京医療学院大学、流通科学大学等、新たな提携先の開拓も進み、学生寮の期末契約者数が19,115名と前期末比5.1%増加した。
 
社員寮(売上高9,324百万円、前期比2.2%増)
就業者数が5,977万人と前期比4.5%減少し、新卒求人者数も58.1万人と同19.8%減少する厳しい環境の中(いずれも厚生労働省資料による)、新人研修寮としての大手企業(日本生命、野村證券、大手ゼネコン等)との大口契約もあり期末契約数が7,738名と前期末比0.2%増加。仙台地区(宮城県)で復興需要による短期契約の取り込みも進んだ。
 
ドミール(ワンルームマンション)事業(売上高3,584百万円、前期比3.0%増)
学生の一人暮らしの多様化や企業独身寮の個人契約化の流れに対応し、提携学校や提携企業からの入居斡旋紹介が増加した他、食事付き寮からの住み替えもあり期末入居者数が4,177名と前期末比3.0%増加した。

上記の他、企業や学校が保有している寮を管理運営する受託寮事業の売上高(3,207百万円)が前期比7.2%増加した。
 
 
ホテル事業
期末事業所数は前期末比4ヶ所(ビジネスホテル3棟、リゾートホテル1棟が新たにオープン)増の63ヶ所、期末客室数は同591室増の9,497室。売上高が338.6億円と前11.9%増加し、セグメント利益が14.6億円と同335.4%増加した。
 
ドーミーイン(ビジネスホテル)事(売上高16,410百万円、前期比14.2%増)
宿泊特化が一般的なビジネスホテル業界にあって、同社は大浴場(「温泉感覚を取り入れた大浴場」)と朝食(「美味しい朝食」)へのこだわりで差別化を図っている。12/3期はこの差別化戦略が奏功し、ビジネスホテルでは取り込みが難しい家族旅行等の需要の取り込みが進み、出張宿泊等の好調な企業ニーズと相まって既存事業所が堅調に推移した(一部事業所で復興特需もあった)。新規オープンは「天然温泉 富嶽の湯 ドーミーイン三島」、「天然温泉 白鷺の湯 ドーミーイン姫路」、「天然温泉 袖湊の湯 ドーミーインPREMIUM博多キャナルシティ前」の3棟。
 
リゾート事業(売上高17,455百万円、前期比9.7%増)
「リーズナブルで質の高いリゾートライフ空間を創造し提供する」というテーマを掲げ、全ての利用者が満足できる「癒しの宿」を展開している。12/3期は新たに「京都 嵐山温泉 花伝抄」をオープン。既存事業所は震災による旅行自粛等の影響があったものの、平日の稼働率を高める商品づくりと販売戦略が功を奏した他、夏場のリゾートシーズンや年末年始の需要取り込みも進んだ。
 
 
 
その他の事業
デベロップメント事業の減収をその他の事業でカバーし売上高が前期比2.8%増加。利益面では、価格競争が激化した総合ビルマネジメントや新規事業として立ち上げたPKP(Public Kyoritsu Partnership:自治体向け業務受託)事業が減益・損失を計上したものの、分譲マンション開発が寄与したデベロップメント事業、フーズ事業、人材派遣事業等でカバーしセグメント利益が1.7億円と同8.5%増加した。
 
(3)財政状態及びキャッシュ・フロー(CF)
不動産の流動化(ドーミーイン3棟、寮1棟、ワンルーム1棟をセール&リースバック。金額ベースで約48億円の固定資産削減)を進めると共に、余剰資金を有利子負債の削減に充てたため、期末総資産が前期末比156.6億円減少した。
 
 
 
 
2013年3月期業績予想
 
 
前期比9.7%の増収、同5.4%の経常増益予想
売上高は前期比9.7%増の1,000億円。新規開業事業所の寄与等で寮事業及びホテル事業の売上が増加する他、PKP事業を中心にその他の事業の売上も伸びる。ただ、利益面では、値上げ等による水道光熱費の増加3.5億円、障がい者雇用を目的とした特例子会社の設立に伴う業務委託費用0.4億円、共立メンテナンスのブランド確立に向けた戦略的な広告宣伝費の投下1.8億円、更にはシステムの償却費増等を織り込んだ結果、営業利益が同1.9%の増加にとどまる見込み。金融費用の減少で営業外損益が改善するものの、特別利益の計上を見込んでいないため当期純利益は23.9億円と同0.6%の増加にとどまる見込み。
 
 
 
寮事業は期初稼働率が前年同期の実績を上回った事に加え、首都圏営業強化による底上げを見込んでいる。ホテル事業はビジネスホテルで前期比12.4%、リゾートで同9.6%の増収を見込んでおり、新規事業所はビジネスホテル6棟(国内5棟、海外1棟)、リゾート1棟の計7棟を予定。その他の事業ではPKP事業の売上が前期の9.1億円から30.6億円に増加する見込み。
 
 
 
今後の注目点
12/3期は東日本大震災と言う試練に耐えながら中期経営計画で示された重点施策に取り組んだ。施策のうちの「寮事業の構造改革の仕上げと新たな成長戦略の遂行」や「収穫期入りしたホテル事業の収益拡大の加速」においては想定以上の成果をあげ、「第三の柱となる新規事業の育成」においてもPKP事業が順調に立ち上がり、来14/3期の黒字化が見えてきた。また、財務面でも有利子負債の削減が計画以上に進んだ。初年度から各施策で成果を挙げた事は、中期経営計画の達成に向け全社が一丸となって取り組んでいる事の表れであると考える。
これらの成果を踏まえ、13/3期は7期ぶりの経常最高益更新が見込まれる。電気料金の値上げ等の影響で、営業利益はわずかに計画値を下回る見込みだが、想定以上に財務内容の改善が進んだ事で経常利益が計画値を上回る。中期経営計画の最終目標を達成すれば、16/3期の当期純利益は13/3期予想比でほぼ倍増する見込み。また、同社は11年11月から12年1月にかけて自社株買いを実施しており、今後も状況に応じて自社株買いを実施していく考えだ。当期純利益の増加と自社株買いが相まって、現在予想PER9倍強(PBR0.7倍、配当利回り2.4%)の水準にある株価の割安感が一段と強まろう。足元順調な中期経営計画の進捗に注目したい。