ブリッジレポート
(5162) 株式会社朝日ラバー

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ブリッジレポート:(5162)朝日ラバー vol.19

(5162:JASDAQ) 朝日ラバー 企業HP
横山 林吉 社長
横山 林吉 社長

【ブリッジレポート vol.19】2012年3月期業績レポート
取材概要「香港子会社が材料加工工場を閉鎖する一方、東莞子会社のオペレーションの軌道化と上海子会社の設立等、課題であった海外展開が進展している。今後は・・・」続きは本文をご覧ください。
2012年7月3日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社朝日ラバー
社長
横山 林吉
所在地
埼玉県さいたま市大宮区土手町2-7-2
決算期
3月 末日
業種
ゴム製品(製造業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2012年3月 5,010 243 211 72
2011年3月 4,806 161 117 21
2010年3月 4,667 125 91 41
2009年3月 4,904 46 14 -80
2008年3月 6,284 414 325 211
2007年3月 5,314 399 375 176
2006年3月 4,578 366 353 209
2005年3月 4,057 251 251 147
2004年3月 3,449 233 211 112
2003年3月 3,154 172 159 75
2002年3月 2,907 98 85 10
2001年3月 3,582 315 336 189
2000年3月 3,140 313 300 141
株式情報(6/25現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
300円 4,548,920株 1,365百万円 2.6% 500株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
8.00円 2.7% 29.68円 10.1倍 628.95円 0.5倍
※株価は6/25終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
小型電球やLEDに被せる事で様々な発色を可能にする被覆用ゴム製品を主力とする。自動車の内装用照明を中心に、携帯用通信機器、電子・電気機器、産業機器、スポーツ用等、幅広い分野で利用されている。シリコーン(ゴム状の合成樹脂)材料の配合技術と調色技術に強みを有し(色と光のコントロール技術)、シリコーンゴムに蛍光体を配合したLED用ゴムキャップは、LEDの光を波長変換して色調や輝度を調節できるため、10,000色以上の光を出す事やLEDの課題である光のばらつきを均一化する事が可能。また、医療・衛生用ゴム製品や硬質ゴムと軟質ゴムの複合製品等も配合技術を活かしてそれぞれの用途にあったゴム質を実現している。

グループは、同社の他、ゴム・プラスチック等の研究開発を行う(株)朝日FR研究所、米国の販売会社ARI INTERNATIONAL CORP.、及び工業用ゴム製品の販売を手掛ける朝日橡膠(香港)有限公司、10年7月に設立した工業用ゴム製品の製造・販売を手掛ける東莞朝日精密橡膠制品有限公司、及び12年1月に設立した工業用ゴム製品の開発・設計・販売を手掛ける朝日科技(上海)有限公司の連結子会社5社からなる。
 
【事業内容と主要製品】
事業は、自動車のスピードメーターや内装照明の光源向けの「ASA COLOR LED」や各種センサ向けのレンズ製品「ASA COLOR LENS」、或いは弱電製品に使われる応用製品、更にはスポーツ用ゴム製品(反発弾性、高摩擦抵抗等を追及した高品質の卓球ラケット用ラバー)等の工業用ゴム事業、点滴輸液バッグ用ゴム栓や真空採血管用ゴム栓、プレフィルドシリンジ(薬液充填済み注射器)向けガスケット等、使い捨てのディスポーザブル用ゴム製品の医療・衛生用ゴム事業に分かれ、12/3期の売上構成比は、それぞれ76.1%、23.9%。
 
 
リーマン・ショック後には利益が急減したものの、10/3期以降、①高い品質による差別化、②全社あげてのコストダウンと中国子会社の軌道化、更には独自の開発製品をけん引役とする医療・衛生ゴム事業の拡大により、順調に回復。
 
 
中期経営計画
 
「"新しい価値"を提供する真の中堅企業へ」をビジョンとする3ヵ年の中期経営計画(12/3期~14/3期)が進行中である。中期経営計画では、強みであるシリコーン材料の配合技術と調色技術(色と光のコントロール技術)を活かして、「照明関連事業」、「医療関連事業」、及び「機能製品関連事業」を育成・強化すると共に、海外ビジネスの拡大に取り組んでいく考え。最終年度となる14/3期の数値目標として、売上高62億円、営業利益4億円、経常利益3億円の達成を挙げている。
 
 
 
(1)重点事業と事業別計画
①照明関連事業    14/3期売上目標27億円
色と光のコントロール技術を更に進化させて新規需要を創造する事で14/3期に売上高27億円を達成したい考え(11/3期22億円)。ターゲット市場を、自動車市場(車載インテリア)、LED照明市場、及び同社自らが創造する新照明市場としており、自動車関連で受注を確保しつつ、店舗照明や施設照明等のLEDを用いた特殊照明分野を開拓・創造していく。また、シート形成工法の取得や蛍光体改質技術の開発に取り組み、「ASA COLOR LED」の応用製品である蛍光体シートやレジスト材(現在複数メーカーと共同開発が推進中)などLED周辺部材も強化する。
 
②医療関連事業    14/3期売上目標12億円
表面改質技術と素材変性技術を活かし、市場が拡大しているディスポーザブル(使い捨て)医療機器を強化する考え。中期経営計画の目標値は14/3期に売上高12億円(11/3期8億円)だが、足元好調なプレフィルドシリンジ用ガスケット(薬剤が予め充填された注射器の気密性・液密性を持たせるために用いるシール材)をけん引役に計画の前倒し達成を目指している。
 
③機能製品関連事業  14/3期売上目標23億円
アジア地域での価格競争が激化しているものの、技術力で差別化を図り14/3期に売上高23億円の達成を目指している(11/3期18億円)。具体的には、既存の自動車関連及び情報通信関連を中心としつつ、品質向上による卓球ラケット用ラバーの競争力強化、更には表面改質及び素材変性技術の進化と応用による微小圧コントロールバルブ(電池用ゴム)やRFIDタグ用ゴムの育成にも取り組んでいく考え。

前項の計画を踏まえて、各分野の専門展示会に出展して開発製品をPRすると共に、新規顧客開拓と業界の評価を踏まえた技術ロードマップと製品開発企画のアレンジを続けていく。
 
 
(2)海外戦略
自動車関連やLED照明関連の製品を中心に、現在9%強の海外売上比率を14/3期を目途に20%に引き上げたい考え(金額ベースでは4.5億円→12億円)。重点施策として、成長する海外市場での収益拡大(北米・中国市場での自動車関連製品及びLED照明関連製品)、及び海外で更に事業展開できる基礎づくりを挙げており、中国では10年7月に設立した中国広東省の東莞朝日精密橡膠制品有限公司に機能製品の生産を移管した他、12年1月に中国上海市に販売会社 朝日科技(上海)有限公司を設立した。また、米国子会社ARI INTERNATIONAL CORP.の人員増強を図る他、新たな拠点開設に向けアセアン地域や欧州での市場調査も進めている。
尚、朝日科技(上海)有限公司は資本金50百万円(出資比率100%)で、日本(朝日ラバー)と中国(東莞朝日精密橡膠制品)で生産した製品を販売し、当面は照明関連製品が中心。販売・マーケティング業務に加え、設計や技術提案を含めた活動にも力を入れていく考え。
 
 
 
(3)設備投資
3ヶ年の設備投資として16億円を計画しており、12/3期の実績及び13/3期の計画は次の通り。
 
 
 
2012年3月期決算
 
 
前期比4.2%の増収、同80.1%の経常増益
売上高は前期比4.2%増の5,010百万円。東日本大震災(以下、震災)やタイの洪水被害による自動車の減産で自動車向けが中心の工業用ゴム事業の売上が減少したものの、自社開発した新製品の寄与で医療・衛生用ゴム事業の売上が大きく伸びた。
利益面では、利益率の高い自社開発製品の寄与で売上総利益率が27.2%と1.8ポイント改善。抑制していた人件費の復元(582百万円→639百万円)や子会社の設立等による管理費の増加(420百万円→434百万円)を吸収して営業利益が243百万円と同50.5%増加した。当期純利益の伸びが大きいのは、東日本大震災での被災に伴う保険金収入(90百万円)の計上等による特別損益の改善や税効果会計の影響による。
期末配当は1株当たり2円増配の5円を予定している(上期末配当と合わせて年8円)。
 
 
 
第1四半期(4-6月)は震災の影響で売上が落ち込んだものの、自動車生産の回復と医療用ゴム製品の好調で、夏以降、売上が急回復し利益も増加した。第4四半期(1-3月)の営業利益の落ち込みが大きいいのは、医療用ゴム関連設備での修繕費や中国の材料加工工場の閉鎖費用の発生が要因であり、いずれも一時的なもの。
 
 
工業用ゴム事業
売上高は前期比2.2%減の3,812百万円、セグメント利益は同12.4%減の263百万円。当セグメントには同社独自の開発製品である「ASA COLOR LED」を中心にした自動車関連製品とスポーツ用ゴム製品(卓球のラケット用ラバー)にかかる収益が計上されている。12/3期は世界最高グレードを誇る卓球のラケット用ラバーが堅調に推移する一方、自動車関連製品は震災やタイの洪水被害の影響による自動車の減産を受けて売上が減少した。ただ、自動車生産の回復で下期の「ASA COLOR LED」の売上は前年同期を上回り、回復基調が鮮明となった。
 
 
医療・衛生用ゴム事業
売上高は前期比32.0%増の1,198百万円、セグメント利益は同109.5%増の206百万円。前期に発売した医療用ゴム製品の新製品(同社の開発製品)の売上が順調に伸びた。10年9月に増築した医療専用の第二福島工場が高い水準で安定稼働したため利益率の改善も進んだ。
 
 
震災の影響で落ち込んだ自動車関連製品の受注が7月以降回復し、通期の売上高は4,892百万円と前期比3.7%増加した。利益面では、工場の歩留り改善や生産性の向上で売上総利益率が26.4%と1.8ポイント改善。一方、販管費は小幅な増加にとどまり営業利益がほぼ倍増した。
 
 
販管費の削減で(株)朝日FR研究所の経常利益がほぼ倍増したものの、震災の影響によるメイン車種の減産と円高の影響でARI International Corp.が大幅な減収・減益。朝日橡膠(香港)有限公司は材料加工工場の閉鎖に伴う原状復帰費用が負担となった。また、東莞朝日精密橡膠制品有限公司は震災の影響とメイン車種の量産開始の遅れが響いた。
 
 
期末総資産は前期末比63百万円増の7,758百万円。CFの改善によるキャッシュポジションの高まりが資産増加の要因。有利子負債の削減を進めた他、一部を長期性預金(投資その他)に充当したものの、現預金が増加した。
 
 
CFの面から見ると、利益の増加や運転資金の減少に加え、税負担の軽減等もあり営業CFが増加。一方、設備投資の減少で投資CFのマイナス幅が縮小したため、前期は496百万円のマイナスだったフリーCF が239百万円の黒字に転じた。有利子負債の削減により財務の健全化を進めた事と配当の支払いで財務CFはマイナスになった。
尚、当期の設備投資は261百万円(11/3期633百万円)、減価償却費は363百万円(同375百万円)。
 
 
2013年3月期業績予想
 
 
前期比3.8%の増収、同13.5%の経常増益予想
売上高は前期比3.8%増の5,200百万円。医療用ゴム製品の在庫調整を織り込んだ結果、医療・衛生用ゴム事業の売上が同1.1%の増加にとどまるものの、工業用ゴム事業の売上が自動車関連での価格対応の影響を数量増で吸収して同4.6%増加する見込み。香港子会社及び東莞子会社の損益改善もあり、営業利益は300百万円と同23.3%増加。特別損益の改善と税率の低い香港子会社や東莞子会社の寄与で当期純利益は135百万円と同85.3%増加する見込み。設備投
資は、照明関連事業(75百万円)、医療関連事業(250百万円)、機能製品関連事業(175百万円)を中心に約500百万円を予定しており(12/3期261百万円)、減価償却費は390百万円(同363百万円)を織り込んだ。
配当は1株当たり8円の配当を予定(上期末3円、期末5円)。
 
 
 
今後の注目点
香港子会社が材料加工工場を閉鎖する一方、東莞子会社のオペレーションの軌道化と上海子会社の設立等、課題であった海外展開が進展している。今後は海外の競合メーカーには無い高度なシリコーン材料の配合技術及び調色技術と海外工場のコスト競争力を融合して事業拡大を図る考え。リーマン・ショック後の落ち込みから利益面での回復は顕著だが、売上は伸び悩み気味。継続的な利益成長には売上の増加が不可欠なだけに、売上の増加に向けた体制整備が進んだ事は心強い。今後の展開に期待したい。