ブリッジレポート
(4323) 日本システム技術株式会社

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ブリッジレポート:(4323)日本システム技術 vol.21

(4323:東証2部) 日本システム技術 企業HP
平林 武昭 社長
平林 武昭 社長

【ブリッジレポート vol.21】2012年3月期業績レポート
取材概要「2012年3月期の業績は、前年同期比では改善した結果となった。同社の業績は過去3年連続して減益が続き、多くの投資家を失望させたが、ようやく底・・・」続きは本文をご覧ください。
2012年6月26日掲載
企業基本情報
企業名
日本システム技術株式会社
代表取締役社長
平林 武昭
所在地
〒530-0005 大阪市北区中之島2-2-7
決算期
3月 末日
業種
情報・通信
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2012年3月 9,027 284 327 135
2011年3月 8,990 211 264 216
2010年3月 9,322 456 497 300
2009年3月 10,449 806 852 447
2008年3月 10,705 931 945 426
2007年3月 9,711 389 405 138
2006年3月 7,917 111 125 605
2005年3月 8,189 522 502 319
2004年3月 7,767 540 537 67
2003年3月 7,064 676 635 194
2002年3月 6,939 658 606 181
2001年3月 6,285 834 814 282
株式情報(6/1現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
605円 4747590株 2872百万円 3.1% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
25.0円 4.1% 42.13円 14.36倍 917.9円 0.66倍
※株価は6/1終値。発行済株式数は直近期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
日本システム技術の2012年3月期業績について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
ソフトウェアの受託開発(12/3期売上構成比64.1%)、主に教育機関向け業務パッケージの開発・販売(同21.3%)、及び情報システム関連機器等の販売(同14.6%)を行っている。
 
<沿革>
設立は、1973年3月。JAST(同社)の特徴である教育機関向け業務パッケージには、90年代前半から取り組んでおり、94年10月に学校事務支援統合システムパッケージソフト「GAKUENシリーズ」の販売を、98年8月に大規模大学向けERP「GAKUEN REVOLUTION(学務)」の販売を、2000年2月に学校関係者間の情報ネットワークを実現する統合型Webサービスシステム「UNIVERSAL PASSPORT」の販売を、それぞれ開始。01年11月のジャスダック上場を経て、03年2月に東証二部に株式を上場した。
 
<特徴>
1.理念重視の経営
「情報化の創造・提供による社会貢献」をモットーとして、いかなる企業系列にも属さない完全独立の立場を堅持することにより、業種、技術分野、プラットフォーム等を問わず、常に最新の技術に挑戦しつつ、自由な立場で幅広い分野の開発業務に取り組むことを経営の基本方針としている。

この基本方針に則り、顧客、株主、社員、社会がそれぞれWin-Win(双方有益)の関係を築くべく、「四方良し」の理念を掲げ、それぞれの価値を最大化し、全体としての企業価値を高めることにより、安定的成長を実現することを目標としている。

また、このような成長の原動力となるのは従業員一人一人の情報システム開発に対する情熱と顧客への誠心誠意のサービスであり、そのためには人間力の研鑽が何よりも先行すべきである、との信念に基づいた「人づくり」経営に徹することにしている。
 
(経営理念の基本的考え方)
「天爵を修めて人爵これに従う」=天爵を修めることで、はじめて人爵を与えられる。人爵を得て、その結果として天爵を与えられることはない。
 
2.広範な情報サービスの提供
メーカーや系列等一切の成約を受けず、自由な立場で広範な分野のサービスを提供することが出来る。
 
(サービス内容)
1.ソフトウェア開発
2.システムコンサルテーション
3.システム管理運用
4.システムインテグレーションサービス
5.ソフトウェアパッケージの開発・販売
6.情報機器の販売、ネットワーク構築
 
(事業セグメント)
1.ソフトウェア事業(ソフトウェアの個別受託開発) ⇒ SIerの側面
①ビジネスアプリケーション分野 (事務処理系システム)
②エンジニアリングアプリケーション分野 (制御、技術系システム)
③イベントアプリケーション分野 (スポーツ・文化イベント関連システム)
④アウトソーシングサービス (情報システムの一括運営管理)
2.パッケージ事業(ソフトウェアパッケージの開発、販売) ⇒ パッケージメーカーの側面
戦略的大学経営システムの開発・販売、導入支援、保守等
 
3.システム販売事業(ハード、ソフトの販売、ITインフラの構築) ⇒ 販社(BtoB)の側面
ハードウェア・ソフトウェアパッケージの販売、保守、ネットワーク構築等
 
3.大手優良企業群との長期取引
下表のように、大手企業群と長期取引が多いのも同社の特色。しかもすべてが直接取引である。 長期取引であるため、先方顧客からは同社が「コア・パートナー」となっている場合が多く、そのため不況期でも受注が大きく落ち込むことが少ない、と会社側は述べている。
 
 
4.グループ拠点展開
 
大阪と東京の2本社制を敷いており、早くから海外に開発拠点を展開している事も特徴。また、2006年8月には、大学向けマーケットを中心とする文教分野での業容拡大を図るべく、首都圏の大規模大学を中心に、システム機器等の販売で実績のあるアルファコンピュータ(株)の全株式を取得した。これにより、パッケージ、情報機器及びネットワーク等を一貫して提供する大学向けSI(システム・インテグレーション)事業の大規模展開が可能となった。
 
また2012年3月には新日本ニーズ、SafeNeeds、桂林安信軟件有限公司と業務提携の基本合意をした。
 
5.国内トップシェア誇る教育機関向け業務パッケージ
 
大学向け経営改革ソリューションとして提供している統合業務パッケージは、94年10月の発売以来、327校(12年5月25日現在)への導入実績を有し、文教マーケットにおいて高い評価を受けている。

特徴は、大規模な総合大学から小規模の短期大学に至るまで、主要業務を全方位でカバーしているため、パラメーターの設定だけで大学個々のニーズに柔軟に対応できる事。つまり、カスタマイズの必要がないため、ユーザーは導入時及びその後の運用・メンテナンスに関わるトータルコストを削減する事ができる。なお、1案件あたりの導入金額は数10万円~数億円と、導入規模により広範囲にわたる。

少子化問題への取り組み戦略のひとつとして、大学各校は優秀な学生を確保するべく、学生向けサービスや経営品質の向上に取り組んでいる。しかし、全国に約1,200校あると言われる大学・短大の大半がメインフレーマー等による手作りのシステムやカスタマイズを前提としたパッケージを使っているという。品質・価格両面での優位性から競合は少ないようで、販売拡大の余地は大きいと思われる。現在20%のシェアを、早期に30%に引き上げたい考え。
 
 
6.その他の特長
(人材重視) ⇒ 品質安定、低コスト体質
新卒中心の採用と長期的な人材育成
人材流動の激しい業界内で高い社員定着率を維持
 
(品質、信頼へのこだわり) ⇒ 継続顧客が多い
「一括丸投げ」は行わず、社員中心のプロジェクト編成
請け負ったら顧客が満足するまでやり抜く、途中退場はしない
 
(特徴的な営業戦術) ⇒ 異なる3事業が共存
ソフトウェア事業:SE自らが受注活動
システム販売事業:大手を凌駕する提案力
パッケージ事業:全国規模のマーケティング
 
(徹底したコスト管理) ⇒ 不採算案件が極めて少ない低コスト体質
個人別30分毎の売上・原価管理
非常にコンパクトな本社間接部門
 
2012年3月期業績
 
<連結業績>
2012年3月期の業績結果は上表のようになった。会社側では「この結果は、前年同期比では全ての指標で改善が見られる」と述べている。
特に増収にもかかわらず販売管理費を減額することが出来たのは大きな改善効果であろう。
当期純利益が前年比で減額となっているのは、前年に特別利益が発生したことが主要因。
<事業セグメント別業績動向>
事業セグメント別の概況は下表のようになった。
 
(ソフトウェア事業)
通信業向けは減収となったが、他業態向けは概して堅調に推移。その結果、部門としては上表のように増収・増益となった。
 
(パッケージ事業)
仕入れ販売および保守等のサービス品目は好調であったが、大学向けPP(プログラムプロダクト)販売、EUC(End User Computing=パッケージの周辺システムの受託開発)および導入支援が減少したことから部門としては減収減益となった。しかし依然として高収益性を維持している。
 
(システム販売事業)
大学向け案件の他は比較的堅調に推移した。減収となったが赤字幅は縮小した。特に「のれん償却」が前期上半期で終了しており、今期からはこの負担が大きく軽減される。
 
<分野別売上構成推移>
分野別の売上高比率は下図のようなったが、例年と大きな変化はない。
 
 
<パッケージ事業品目別売上構成>
パッケージ事業の品目別売上高は下図のようになった。傾向としては、①高度成長期から安定成長期へ、②ハード取扱高が増加傾向、③ストックビジネス(保守)は堅調。
 
 
<最終顧客の業種別売上構成推移>
顧客別の売上構成は下図のようになった。
 
 
通信:ビジネス系の受注減で▲10%
金融:受注は回復、前期比+23%
サービス・流通:ほぼフラット
製造:+12%と好調
官公庁・その他:ビジネス系、システム販売ともに好調で+52%
教育機関:パッケージ、システム販売事業とも減少で▲8%
 
<顧客主要グループ別売上構成>
主要顧客(グループ)別の売上比率は下図・下表のようになった。
 
 
<財政状況>
12年3月期末の財政状況(貸借対照表)は下表のようであった。
 
流動資産:売掛金および現預金の減少などから6,058百万円となった。
固定資産:主に「のれん」の償却減、繰延税金資産の減少等により減少した。
流動負債:短期借入金の返済によって減少した。
純資産:主に利益剰余金の増加によって微増となった。
 
<キャッシュフロー>
キャッシュフローの状況は下表のようであった。
 
営業活動によるCF:主に売上債権の減少(326百万円)による。
投資活動によるCF:主に定期預金への預入れ(195百万円)による。
財務活動によるCF:主に短期借入金の返済(582百万円)による。
 
 
2013年3月期業績予想
 
<連結業績>
会社側では2013年3月期の業績を下表のように予想している。
 
会社側によれば、各事業部の施策は以下のようになっている。
ソフトウェア事業:増収・増益
既存の受託系では売上を継続的に拡大し「本来的」増益基調を維持
新事業が収益化することで「追加成長」
M&A先の業績寄与で「追加成長」
パッケージ事業:安定と中期成長
高収益安定策を継続
次世代製品の機能を具体化(R&D開始)
システム販売事業:黒字化
前期末比4倍超の受注残
堅調な公共系+高収益のSEサービスで牽引
のれん償却がゼロ
その他
研究開発費は12年3月期と同規模
JMICS、BankNeo、スマホは「事業」に相応しい規模に
グローバル化(事業、人財)
<主要製品の動向>
Webサービス学生支援システム
学内の情報を統合管理し、いつでもどこでもアクセスできるデジタルキャンパスを実現。
学生・教職員だけでなく社会・地域・OBへとサービスを広げる。
 
今の狙い:高収益安定戦略 ⇒ 大学運営の全方向カバーで参入障壁を超堅牢化
次の手:中期的成長戦略 ⇒ 次世代のフラッグシップ製品の開発・リリースを目指す
 
医療情報システム(JMICS)
当初サービスのレセプト自動点検から、クラウド型サービス、情報分析機能、ジェネリック情報などが追加された。
これによって今後は顧客層を拡大し、セグメントとして独立させる。
 
金融パッケージ(BankNeo)
CRM・SFA:顧客の統合管理、営業活動のPDCAサイクルを強化(既に発売済み)
融資支援:融資業務をトータルサポート(13年3月期提供予定)
経営管理:金融機関の経営を多角的に分析(13年3月期提供予定)
 
これらの製品ラインアップが揃うことで販売実績を積上げる。その後はERP化、通期黒字化を目指す
 
新日本ニーズ(グループ)のM&A
会社側では、本M&Aの期待・特長を以下のよう述べている。
① 日本システム技術にない顧客の獲得
② net等技術の保有(人、フレームワーク)
③ オフショアリングの継続的成功実績
④ 中国本土での具体的ビジネスチャンス
⑤ のれん償却の負担軽減
⑥ 経営理念のフィット感
⑦ スモールスタートし着実に業績拡大する
 
 
取材を終えて
2012年3月期の業績は上記のようになり、前年同期比では改善した結果となった。同社の業績は過去3年連続して減益が続き、多くの投資家を失望させたが、ようやく底打ちしたようだ。しかし利益水準は低く、本格的な回復とは言えないだろう。

今期も増益を予想しているが、1年前に発表した12年3月期の期初予想よりも低い。しかし増益(回復)基調を定着させることが重要であり、その意味でもまずは今期予想を達成することだ。会社側の健闘に期待したい。