ブリッジレポート
(8275) 株式会社フォーバル

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ブリッジレポート:(8275)フォーバル vol.38

(8275:JASDAQ) フォーバル 企業HP
大久保 秀夫 会長
大久保 秀夫 会長
中島 將典 社長
中島 將典 社長
【ブリッジレポート vol.38】2012年3月期業績レポート
取材概要「新たなビジネスモデルの中核をなすITコンサルティングサービス「アイコン」が順調に拡大しており、売上の増加と共に利益率の改善にも寄与して・・・」続きは本文をご覧ください。
2012年6月19日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社フォーバル
会長
大久保 秀夫
社長
中島 將典
所在地
東京都渋谷区神宮前 5-52-2 青山オーバルビル
決算期
3月
業種
卸売業(商業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2012年3月 34,695 843 846 587
2011年3月 32,287 681 665 464
2010年3月 32,206 523 478 449
2009年3月 34,358 112 17 -1,879
2008年3月 34,323 -933 -1,264 -532
2007年3月 26,216 -1,878 -2,012 -1,390
2006年3月 27,500 3 14 1,063
2005年3月 40,089 1,962 1,962 1,174
2004年3月 32,981 1,446 1,360 660
2003年3月 37,402 1,522 1,334 443
2002年3月 44,411 -860 -1,027 -4,756
2001年3月 52,045 1,026 699 86
2000年3月 54,668 1,278 1,281 1,122
株式情報(5/31現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
305円 13,563,164株 4,137百万円 11.1% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
15.00円 4.9% 51.61円 5.9倍 395.48円 0.8倍
※株価は5/31終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
フォーバルの2012年3月期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
中小・中堅企業を対象とした経営コンサルティングサービスの他、ITを活用し経営を高度化・効率化する手段として、オフィス向けの光ファイバー対応IP電話サービスやFMCサービス(固定通信と移動体通信を融合したサービス)などの通信・インターネット接続サービス、OA・ネットワーク機器の販売、携帯端末の取次、Web構築やセキュリティ対策などのインターネット関連サービスを提供している。また導入後の利活用等、経営をサポートする「アイコン」サービスを、お客様との接点を強化するサービスと位置付け、その普及に特に注力している。社名のFORVAL(フォーバル)は、「For Social Value」を語源とし、「社会価値創出企業をめざす」という経営理念が込められている。
 
【沿革】
1980年9月、新日本工販として設立され、電気通信機器やコンピュータ等の販売、及び設置工事、保守管理のサービスを開始。以来、一貫して情報通信分野における「新しいあたりまえ」創りに挑戦を続けている。同社の提案する「新しいあたりまえ」とは、商品・サービスを提供する大手メーカーやキャリアではなく、これらを実際に利用するユーザーの立場から情報通信業界が抱える矛盾、問題点を打破するために考えた新しいビジネスモデル。88年11月に株式を店頭登録した(現ジャスダック上場)。

その後は、OA・ネットワーク機器のリース販売を中心に事業が拡大し、91年10月に現商号の(株)フォーバルに商号を変更。95年4月には(株)フォーバルテレコムを設立し電話サービス事業に参入し、03年10月にサービスを開始したIP電話&ブロードバンドサービスの「FTフォン」の拡大でフォーバルグループの業容も拡大した。

ただ、近年のハード販売における付加価値の低下を踏まえ、現在、差別化が可能で付加価値も高いコンサルティングサービスへのシフトを進めており、08年4月にサービスを開始した総合ITコンサルティングサービス「アイコン」がその中核となっている。また、コンサルティングサービスの一環として、中小企業の情報化の支援やASEAN展開の支援にも取り組んでおり、前者ではIP統合ソリューションを展開。後者では、10年5月にFORVAL(CAMBODIA)CO.,LTD.(カンボジア・プノンペン)を設立し、以後、11年7月のPT FORVAL INDONESIA(インドネシア・ジャカルタ)及び同年8月のFORVAL VIETNAM CO., LTD.(ベトナム・ホーチミン)の設立、更には12年3月のミャンマー駐在員事務所(ミャンマー・ヤンゴン)の開設とネットワークの拡充を進めている。
 
【事業内容】
事業は、(株)フォーバルを中心に、中小法人向けOA・ネットワーク機器の販売、サービスの取次、コンサルティングサービス等を手掛けるフォーバルビジネスグループ、(株)フォーバルテレコムを中心に、VoIP・モバイル等の通信サービス、インターネット関連サービス、普通印刷・特注文具(ファイル・バインダー等)の製造・販売、及び保険サービス等を手掛けるフォーバルテレコムビジネスグループ、(株)リンクアップを中心にモバイルショップにおいて携帯端末の取次等を手掛けるモバイルショップビジネスグループ、の3セグメントに分かれる。
 
 
成長戦略
 
同社グループは中小・中堅企業に対するNo.1の「総合ブロードバンドソリューションカンパニー集団」を目指してきたが、技術や情報のデジタル化と共に機器の性能の差が無くなり価格競争が激化したため、従来からの機器販売を中心にしたビジネスでは利益確保が難しくなってきた。
このため同社グループは、機器販売からコンサルティングを中心にした経営支援へビジネスモデルの転換を進めている。新たなビジネスモデルはITコンサルティングサービス「アイコン」を通して企業経営そのものを支援する。「アイコン」においては様々なサービスが提供されるが、特にITを活用した経営の高度化支援とASEAN地域への進出支援に経営資源を成長ドライバーとして投入していく。
 
 
(1)ITを活用した経営の高度化支援 IP統合ソリューション「SWIFTBOX(スイフトボックス)」
「SWIFTBOX」はIP電話システム(IP-PBX)とオールインワン型ネットワークセキュリティシステム(UTM)を融合したハイブリッドなIP統合ソリューションであり、1台でIP統合オフィス環境を実現する(特許出願中:特願2012-35836号)。具体的には、IP電話システムによりビジネスフォンの使い勝手はそのままに効率化と低コスト化を実現。オールインワンのネットワークセキュリティシステムがシステム運用管理コストを大幅に削減する。
 
 
また、ユビキタス端末のコントロールが可能(BYOD対応)な事も特徴。例えば、社有・私有を問わずスマートフォンをオフィスの内線電話に利用できるため、オフィスの内線電話が不要になる他(コスト削減)、配線コードも不要(オフィスレイアウトが自由自在)。社内で利用しているアプリケーションが何処にいても利用可能なため、業務の大幅な効率化と高度化に加え、クラウド環境下で情報漏洩を防止できる。尚、BYODとはBring Your Own Deviceの略で、社員が私有の端末をオフィスに持ち込み業務に活用する事。
「SWIFTBOX」の導入による業務の効率化で新たな時間と余裕資金が生まれるため、この時間とお金の活用に関するコンサルティングの余地も出てくる(「アイコン」サービスの提供機会の拡大)。
 
(2)ASEAN進出支援
同社の大久保会長は、十分な教育の機会が無いカンボジアにおいて、自らが設立し理事長を務める公益財団法人CIESF(シーセフ)を通して、教育インフラの構築から人材教育に至る広範な支援活動に取り組んできた。
ASEAN進出支援事業は、このCIESFの活動を通じて培った経験や人脈が活きている。「同社グループ及び顧客である中堅・中小企業の事業の成長を考える上で、アジア地域の成長を取り込む事が重要」と言う考えの下、既に、カンボジア(10年5月)、インドネシア(11年7月)、及びベトナム(11年8月)に現地法人を設立しており、12年3月にはミャンマーに駐在員事務所を開設した。
 
 
 
東京商工会議所では「中小企業国際展開アドバイザー制度」を創設し、支援を希望する中小企業とアドバイザーをマッチングするサービスを提供している。フォーバル、フォーバルカンボジア、及びフォーバルベトナムの3社は、この制度の下でのアドバイザーとして認定されており、この制度も積極的に活用していく考え。また、域内の企業と取引のある日本の地域金融機関とのアライアンスも強化する考えで、12年3月に(株)百十四銀行と、12年4月に岡崎信用金庫と、12年5月に浜松信用金庫と、それぞれ業務提携した。これら金融機関の取引先で、ASEAN諸国への海外進出を検討している中小・中堅企業に対して海外進出コンサルティングサービスを提供していく。

この他、ベトナムやカンボジア等の行政機関、商工会議所、更には地域金融機関等との共催セミナーを国内で開催しており、11年度には35回のセミナーを開催した。
 
 
2012年3月期決算
 
 
前期比7.5%の増収、同27.2%の経常増益
売上高は前期比7.5%増の346.9億円。通信サービスの新規獲得鈍化や印刷・保険関連の低迷でフォーバルテレコムビジネスグループの売上が減少したものの、セキュリティ環境の構築、より快適な情報通信サービスへの転換、導入後の通信・OAやネットワーク環境の利活用のサポートサービス等、ITコンサルティングサービス「アイコン」を中心にフォーバルビジネスグループの売上が同8.7%増加した他、スマートフォン関連の好調でモバイルショップビジネスグループの売上が同24.5%増と大きく伸びた。
利益面では、人件費や、旅費交通費、教育研修費・求人費等の一般管理費を中心に販管費が増加したものの、増収とITコンサルティングサービス「アイコン」の増加等による売上総利益率の改善で吸収。営業利益は8.4億円と同23.9%増加した。受取配当金の増加や貸倒引当金戻入額及び助成金収入の計上による営業外損益が改善。投資有価証券評価損など特別損失6.4億円を計上したものの、税効果会計の影響(法人税等調整額5.0億円を計上)等で当期純利益は同26.4%増加した。配当は1株当たり期末15円を予定している。
 
 
 
 
 
期末総資産は前期末比0.5億円減の162.2億円。償却、減損処理、及び評価損の計上等による固定資産の減少と短期借入金の返済や社債の償還による有利子負債の減少が総資産減少の主な要因。自己資本比率は33.1%と前期末比1.1ポイント改善した。
 
 
CFの面では、仕入債務の増加等による資金効率の改善で前期(11.8億円)の実績を上回る13.3億円の営業CFを確保。有利子負債を削減したものの、現金及び現金同等物期末残高は41.7億円と前期末比3.2億円増加した。
 
 
2013年3月期業績予想
 
 
前期比0.9%の増収、同30.0%の経常増益予想
ITコンサルティングサービス「アイコン」を中心に引き続きフォーバルビジネスグループの売上が増加するものの、12年3月に子会社の事業を譲渡した影響で連結売上高はわずかな増加にとどまる見込み。ただ、利益率の高い「アイコン」の売上構成比が上昇する一方、原価としての代理店手数料の比率が高い回線系インセンティブ売上の構成が低下するため、営業利益率が改善。営業利益は11億円と同30.3%増加する見込み。
 
 
今後の注目点
新たなビジネスモデルの中核をなすITコンサルティングサービス「アイコン」が順調に拡大しており、売上の増加と共に利益率の改善にも寄与している。「アイコン」を通して様々な経営相談が寄せられており、12/3期の相談件数は772件と前期の460件から大幅に増加した。経営相談はビジネスのシーズ(種)であり、いかに収益化していくかが今後のポイントとなる。4月に販売を開始した「SWIFTBOX」や事業基盤の整備が順調に進んでいるASEAN地域への進出支援事業の動向と共に注目していきたい。