ブリッジレポート
(6890) 株式会社フェローテックホールディングス

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ブリッジレポート:(6890)フェローテック vol.34

(6890:JASDAQ) フェローテック 企業HP
山村 章 社長
山村 章 社長

【ブリッジレポート vol.34】2012年3月期業績レポート
取材概要「装置関連事業、太陽電池関連事業共に本格的な回復には今しばらく時間を要する見込み。ただ、その一方で真空技術や精密加工等のコア技術を活かした・・・」続きは本文をご覧ください。
2012年6月19日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社フェローテック
社長
山村 章
所在地
東京都中央区日本橋 2-3-4 日本橋プラザビル
決算期
3月
業種
電気機器(製造業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2012年3月 60,088 4,124 3,287 1,715
2011年3月 57,880 6,931 6,290 4,483
2010年3月 31,541 703 524 156
2009年3月 36,653 2,790 2,097 743
2008年3月 36,625 3,057 2,414 1,903
2007年3月 32,517 2,288 2,081 1,703
2006年3月 23,946 1,210 1,040 708
2005年3月 21,105 1,762 1,456 633
2004年3月 15,000 615 -177 -645
2003年3月 12,845 111 -626 -899
2002年3月 14,775 916 984 -357
2001年3月 16,435 2,665 2,561 1,644
2000年3月 7,988 892 629 288
株式情報(6/8現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
425円 30,612,319株 13,010百万円 5.9% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
20.00円 4.7% 14.60円 29.1倍 1,090.66円 0.4倍
※株価は6/8終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
フェローテックの2012年3月期第3四半期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
太陽電池用シリコン単結晶引上装置やシリコン単結晶の製造工程で使用される消耗品である坩堝(世界NO.1)等の太陽電池関連製品、半導体製造装置やフラット・パネル・ディスプレイ(FPD)製造装置の部品、半導体材料、各種温度調節に使われるサーモモジュール等の製造・販売を行っている。いずれも目に触れる機会はないものの、パソコンや携帯電話、液晶やプラズマ等、身近な分野で同社の技術が活かされている。
グループは、同社の他、生産の中心を占める中国等の他、欧米、ロシア、台湾等に展開する連結子会社20社、持分法適用関連会社6社。
 
【事業セグメント】
事業は、半導体・FPD・LED等の製造装置に使われる真空シール、石英製品、セラミックス製品等の装置関連事業、サーモモジュール応用製品が中心の電子デバイス事業、及びシリコン結晶製造装置や装置に使われる坩堝等の太陽電池関連事業に分かれ、12/3期の売上構成比は、それぞれ41%、9%、46%、その他4%(ソーブレード、装置部品洗浄、工作機械等の報告セグメントに含まれない)。尚、シリコン結晶製造装置には、装置関連事業の主力製品である真空シールが主要部材として使われており、これまで蓄積してきた技術やノウハウが活かされている。
 
 
 
(1)太陽電池関連事業における取組み
12/3期は製造装置関連、太陽電池関連をけん引役に好調なスタートを切ったものの、年央以降、欧州の債務問題に端を発した金融不安や中国経済の減速で両事業共に急ブレーキがかかった。13/3期は下期以降の回復に望みを託す状態だが、太陽電池関連においては「太陽がある限り太陽電池関連ビジネスの成長は続く」と言うのが同社の考え。パネル価格の下落を受けて、製造装置や坩堝等の製品、原材料の結晶シリコン共に価格が下落しているが、同社においては生産性の改善が進んでいる事に加え、シリコン単結晶製造装置では生産性(他社製品の1.3倍の引上げ速度、20%程度の歩留まり優位性)やエネルギー効率(消費電力が20%程度少ない)に優れた新製品の投入で差別化も進んでいる。
 
 
 
(2)新たな成長の芽
また、装置関連事業や電子デバイス事業において、真空技術や精密加工といったコア技術を活かし新たな成長の芽も育ちつつある。
 
装置関連事業
・小口径ディスクリート向けウエーハ
10年ほど前から小口径ウエーハの加工(インゴットからの切り出しと鏡面仕上げ)を受託しているが、3年前から自社ブランドのウエーハ供給に力を入れており、前12/3期に日本・中国・台湾のメーカーから認定を取得した。13/3期は自社ブランドのウエーハがパワー半導体向けを中心に伸びる(足元、月産15万枚だが、第2四半期には同20万枚レベルに達する見込み)。自社ブランド品の量産拡大に対応したサービス体制の整備と共に更なる設備増強を進める考え。
 
・真空チャンバー・蒸着装置
LEDデバイスの素子を製造する際に使われるMOCVD装置向けの真空チャンバーの製造も軌道に乗ってきた。チャンバー専門メーカーは数多いが(水槽専門、タンクローリー専門、ボイラー専門等のメーカーは多い)、エレクトロニクス業界での専門メーカーは少なく、特に1,500度以上の高温対応が求められるMOCVD装置向けの真空チャンバーを供給できるメーカーは限られると言う。同社は結晶製造装置で培った高度な真空技術や高温特性が強みとなっており、顧客から高い評価を得ている。その他に10年1月に同社の米国子会社が英国のEdwards Vacuum Inc.からTemescal事業部(真空蒸着装置関連装置)を譲受したMOCVDの後工程となる電極形成に使用する技術で、LEDを始めスマートフォンの水晶発信など化合物半導体をターゲットにした蒸着装置で顧客の開拓が進んでいる。
 
・サファイヤ炉
同じくLED関連で、単結晶サファイヤ(LEDの結晶成長用基板として用いられる)を成長させるための成長燒結炉(サファイヤ炉)の開発も進んでおり、12年3月に35Kgと70Kgの2機種のサンプル出荷を開始した。単結晶サファイヤの品質がLEDの品質を大きく左右し、そのコストを下げる事でLEDの価格競争力の強化にもつながるが、サファイヤ炉を手掛けるメーカーは少なく、ロシア・ウクライナ・米国に数社ある程度。同社は中国の政府研究機関と共同で開発に成功した。

尚、中国ではエネルギー効率が悪い照明用白熱電球を2016年までに廃止する考えで、昨秋、そのロードマップが国家発展改革委員会より発表された。同案では、100ワット以上の照明用白熱電球の販売や輸入を2012年10月1日までに、60ワット以上の照明用白熱電球の販売や輸入を2014年10月1日までに、15ワット以上の照明用白熱電球の販売や輸入を2016年10月1日までに、それぞれ廃止するとしており、また、エネルギー効率が基準値を下回るハロゲンランプの生産・販売や輸入も禁止するとしている。つい最近、中国政府からLED関連メーカーを対象に補助金を支給する旨の発表もなされており、中国では2016年にかけてLED照明市場が急拡大すると見られており、同社は真空チャンバーやサファイヤ炉の供給を通して中国LED市場の成長を取り込む考え(今後更にLED関連製品が増える可能性もある)。
 
電子デバイス事業
・パワーデバイス用基板
IGBT(大電力の高速スイッチングが可能な半導体素子)は、需要が拡大しているインバータ(直流電力から交流電力を電気的に生成する電源回路で、制御装置と組み合わせる事等で省エネルギー効果が期待できる)に不可欠なものとなりつつあるが、同社は冷却用のサーモモジュールを組み込んだIGBT向け基板の開発に成功した。市場は100億円規模とみられており、13/3期より国内大手メーカーへの供給が始まる(装置関連事業で手掛けるパワー半導体向けの小口径ウエーハ事業とシナジーが高い事業である事は言うまでもない)。

この他、サーモモジュールでは、新材料の開発により、従来30%程度にとどまっていた材料歩留まりを92%に改善する事ができた。同社は連結子会社Ferrotec Nord Corporation (ロシア)との連携で、世界NO.1の性能を誇るサーモモジュールの開発に成功しているが、自動化ラインを有する世界で唯一のサーモモジュールメーカーでもある。高い性能とコスト競争力を武器にバイオや光通信の市場でシェアアップを図る考え。
 
 
 
2012年3月期決算
 
 
前期比3.8%の増収ながら、47.7%の経常減益
売上高は前期比3.8%増の600億円。装置関連事業や電子デバイス事業の売上が減少したものの、受注残の消化が順調に進んだ結晶製造装置や消耗品の寄与で太陽電池関連事業の売上が大きく伸びた。
営業利益は同40.5%減の41.2億円。売上の減少で装置関連事業や電子デバイス事業の限界利益が減少した他、売上が増加した太陽電池関連も製品価格の下落や原材料在庫の評価損の計上等で利益が1/3に縮小した。
営業外損益の悪化は金融費用の増加(457百万円→581百万円)やコミットメントラインの設定に伴う手数料(190百万円)の計上等が要因。特別利益の減少もあり(前期損益修正益や保険解約返戻金の計上が無くなった事等による)、当期純利益は同61.7%減少した。
設備投資の実施額は78.7億円(前期50.3億円)、減価償却費として28.2億円(同26.5億円)を計上した。為替レート(期中平均)は、米ドルが前期(83.8円)比4.2円円高の1ドル=79.6円、人民元が同(12.5円)0,2円円高の1元=12.3円。
 
 
装置関連事業
売上高248.8億円(前期比10.1%減)、セグメント利益24.9億円(同19.3%減)。製品別では、セラミックスの売上が増加したものの、半導体・FPD・LED等の製造装置に使われる真空シールや半導体製造時の消耗品として使われる石英製品が大きく落ち込んだ他、シリコンウエーハ加工も減少した。尚、セラミックスの好調は、スマートフォン市場の拡大でFlash MemoryやLogic IC向けにマシナブルセラミックス"ホトベール"(垂直型プローブカードのプローブピンのガイド板として使われる)が伸びた事等による。
 
電子デバイス事業
売上高53.3億円(前期比22.8%減)、セグメント利益5.5億円(同52.4%減)。サーモモジュール応用製品は、医療・バイオ機器・半導体・光学向けが底堅く推移したものの、主力の自動車温調シート向けが一部顧客のプログラム変更による在庫調整で減少(想定内)。家電等の民生機器向けもエコポイントの終了やタイの洪水等の影響で受注減となり落ち込んだ。
 
太陽電池関連事業
売上高273.5億円(前期比29.3%増)、セグメント利益7.7億円(同68.7%減)。受注残の消化が進み製造装置(結晶製造装置及び角切りワイヤーソー)が伸びた他、日・中・韓でのシェアアップで石英坩堝の売上も増加。市況の急激な悪化(年間で40%の単価ダウン)で下期には生産調整を強いられた太陽電池用シリコンも通期では増収を維持した。利益面では、製品全般に価格が下落した他、太陽電池用シリコンの原材料となるポリシリコンの評価損(上期3億円、下期2.6億円)の計上や関連装置の開発費約14億円も響いた。
尚、製造装置は急激な市況悪化に伴い、下期以降、新規受注が激減した。消耗品は、単結晶シリコン向けの石英坩堝が堅調に推移したものの、多結晶シリコン向けの角槽が苦戦。太陽電池用シリコンは市況悪化が深刻さを増し、つれて加工品であるウエーハの価格も大幅に下落した(年間で40%ダウン)。
 
 
3セグメントがそろって減収・減益。収益性の高い真空シールや石英製品を中心とした売上の減少で装置関連事業の利益が大幅に減少した他、製品全般での価格下落や原材料の評価計上で太陽電池関連事業が7.3億円の損失となった。一方、電子デバイスは省エネ製品に欠かせないパワーデバイス用基板の開発等にかかる先行投資の一巡で、微減収ながら利益が大幅に増加した。
 
 
 
期末総資産は前期末比110.7億円増の725.7億円。公募増資(オーバーアロットメントに伴う第3者割当増資を含めて約70億円を調達)や短期借入金を中心にした有利子負債の積み増しで現預金が増加した他、太陽電池関連を中心にたな卸資産が増加。太陽電池関連事業での子会社設立(中国・銀川市のシリコンインゴッド・石英坩堝製造会社及びコバレントマテリアル(株)との角槽製造の合弁会社の2社を設立)や上海・杭州工場(装置関連事業及び太陽電池関連事業)での設備投資等で有形固定資産も増加した。
尚、売上債権及びたな卸資産が増加したものの、回転月数は前者が3..2ヶ月から2.1ヶ月へ、後者が1.9ヶ月から1.8ヶ月へ短縮されている。

たな卸資産の主な内容は次の通り。
真空シール       1,035百万円(11/3期末868百万円)
石英          1,084百万円(同1,140百万円)
サーモ         1,112百万円(同1,246百万円)
セラミックス       815百万円(同  895百万円)
太陽電池用製造装置   3,299百万円(同1,249百万円)
太陽電池用シリコン製品 2,150百万円(同1,430百万円)。
 
 
CFの面では、利益の減少と運転資金の増加に加え、税金費用の増加もあり(△1,054百万円→△1,482百万円)、営業CFが減少する中、中国での設備投資(7,877百万円)等で投資CFのマイナス幅が拡大したため、フリーCFが78.5億円のマイナスとなった(前期は25.8億円のマイナス)。一方、財務CFは公募増資と借入金の積み増しで100.9億円の黒字となり、現金及び現金同等物の期末残高は95.6億円と前期末比44.9億円増加した。

有形固定資産取得による支出(設備投資)の主な内容は次の通り。
上海子会社   1,324百万円
杭州子会社   4,045百万円
銀川子会社   1,513百万円
 
 
2013年3月期業績予想
 
 
前期比16.8%の減収、同75.7%の経常減益予想
売上高は前期比16.8%減の500億円。装置関連事業で下期以降の緩やかな回復が見込まれるものの、前下期に受注が急減した製造装置や価格が低迷する太陽電池用シリコンを中心に太陽電池事業の苦戦が響く。サーモモジュール応用製品が大半を占める電子デバイス事業も自動車温調シート向けを中心に数量ベースでの伸びが見込まれるものの、価格面で軟調な地合いが続く見込み。

営業利益は同70.9%減の12億円。利益の減少は減収による限界利益の減少が主な要因だが、(太陽電池用シリコンの原材料となるポリシリコン)の在庫評価減6億円等も売上原価に織り込まれている。営業外損益の改善はコミットメントラインの設定にかかる手数料が無くなる事や為替差損を見込んでいないため。
設備投資は18億円(前12/3期78.7億円)を予定しており、減価償却費は31億円(同28.2億円)を織り込んだ。為替レートの前提は、米ドル79.6円→78.0円人民元12.3円→12.8円
 
 
 
装置関連事業
真空シールや石英製品の苦戦が続くものの、自社ブランド品の拡大でウエーハ加工が回復する他、スマートフォン市場拡大の恩恵を受けるセラミックも堅調な推移が見込まれ、売上高は235.3億円と前期比5.4%の減少にとどまる見込み。 主な製品の見通しは次項の通り。
 
 
電子デバイス事業
サーモモジュールの売上が前期の49.3億円から45.5億円に減少する見込みで、セグメント売上高は49.5億円と前期比7.3%減少する見込み。サーモモジュールは価格の低下もあり売上高が減少するものの、主力の自動車温調シート向けは新規採用車種の立ち上げが上期と下期にそれぞれ1プログラム予定されており、民生・バイオ機器・半導体・光学用も堅調な推移が見込まれる。また、サーモモジュールを組み込んだパワーデバイス用基板の販売を開始する他、新材料の開。発で歩留りと性能を大きく向上させた新製品を投入し光通信分野でのシェアアップを図る。引き続き生産ラインの自動化も進める。
 
太陽電池関連事業
製造装置の累積販売台数の増加で石英坩堝の売上が前期比17.0%増加するものの、前下期に受注が急減した製造装置の売上が同61.4%減少する他、需要減と価格下落で太陽電池用シリコンの売上も同27.2%減少する見込み。主な製品の見通しは次の通り。
 
 
 
 
今後の注目点
装置関連事業、太陽電池関連事業共に本格的な回復には今しばらく時間を要する見込み。ただ、その一方で真空技術や精密加工等のコア技術を活かした多分野展開が進捗しており、新たな成長の芽が育ちつつある。このため、13/3期は成長軌道への回帰に向けた足場固めの期と位置付ける事ができる。太陽電池関連事業の主戦場である中国では3年半ぶりに金利の引き下げが行われた。金融緩和や景気刺激策による事業環境の改善にも期待したい。