ブリッジレポート:(4847)インテリジェント ウェイブ vol.12
(4847:JASDAQ) インテリジェント ウェイブ |
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企業名 |
株式会社インテリジェント ウェイブ |
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代表取締役社長 |
山本 祥之 |
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所在地 |
東京都中央区新川1-21-2 茅場町タワー |
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決算期 |
6月 末日 |
業種 |
情報・通信 |
項目決算期 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 当期純利益 |
2011年6月 | 4,762 | 321 | 341 | 129 |
2010年6月 | 4,956 | 358 | 387 | 211 |
2009年6月 | 5,527 | 228 | 235 | 187 |
2008年6月 | 6,695 | 417 | 403 | -5 |
2007年6月 | 6,367 | 389 | 407 | -295 |
2006年6月 | 7,137 | 1,482 | 1,452 | 947 |
2005年6月 | 5,174 | 678 | 688 | 264 |
2004年6月 | 5,257 | 371 | 365 | 156 |
2003年6月 | 5,891 | 1,177 | 1,161 | 539 |
2002年6月 | 5,505 | 1,854 | 1,846 | 1,003 |
株式情報(5/11現在データ) |
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今回のポイント |
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会社概要 |
【事業内容】
事業は、カードビジネスのフロント業務、システムソリューション業務、及びセキュリティシステム業務に分かれ、11/6期の売上構成比は、それぞれ58.1%、31.3%、10.6%。
カードビジネスのフロント業務
クレジットカード会社、銀行、大手小売業等向けに、「NET+1」をベースにしたカード決済にかかるフロント業務のシステム構築を行っている。フロント業務のシステムとは、カード利用者の信用照会(オーソリゼーション)等、クレジットカード会社が加盟店や信用情報センターとの接続に必要なシステム。「NET+1」はハードと自社開発のパッケージソフトからなり、大手クレジットカード会社向けではシェア70%の実績を有する。
システムソリューション業務
証券取引所等から提供される市況データや気配値等を素早く社内の各端末に配信する「市況情報配信システム」、クレジットカード不正利用検知(偽造検知)システム「ACE Plus」等の自社製品及び他社製品(海外商品)を用いたシステム構築を行っている。
セキュリティシステム業務
自社製品である内部情報漏洩対策システム「CWAT」や「EUC Secure」を中心にセキュリティ関連の製品・サービスを提供しており、親会社である大日本印刷(株)と共にセキュリティ関連の新事業(サービス)の開発も進めている。
その他 製品販売(新規事業)
セキュリティ強化や業務効率の改善等、自社製品と他社製品(パッケージ)を組み合わせたクロスソリューション事業。大日本印刷(株)との連携の下、営業活動を行っている。
【カードビジネスのフロント業務の特徴と同社の強み -ネットワーク技術、ノンストップ技術、ノウハウ、信頼-】
クレジットカードの利用に際しては、その都度、与信限度額や返済状況の確認作業が行われ、また、キャッシシングの際には口座残高の確認も必要となる。こうした確認作業はネットワークを介してリアルタイムで行われ、特にクレジットカードの場合、世界的なネットワークを介しての作業となる。また、システムが止まるとカードが使えなくなるため、24時間365日システムを止めないための技術やノウハウも必要だ。つまり、「カードビジネスのフロント業務」には、リアルタイム処理が可能な高度なネットワーク技術やシステムを止めないためのノンストップ技術、ノウハウ、そして何よりも顧客となる金融機関等からの信頼性が不可欠(このため参入障壁が高い)。また、単年度での振れはあるものの、ハードウェアが5年程度で更新を迎える事に加え、技術やネットワークの進歩、或いは様々な社会犯罪等への対応で更新需要が絶えず発生している。 【各事業における取り組み】
主要顧客であるクレジットカード業界の成熟化で、06/6期をピークに同社の売上高は減少傾向にある。このため、成長軌道への回帰に向け、3セグメントで新たな取り組みを進めると共に、新規事業の育成に力を入れている。取り組みは緒に就いたばかりではあるが、新たな成長の芽が育ちつつあり、また、大日本印刷(株)との資本提携も、ネットワーク技術、ノンストップ技術、セキュリティ技術といった強みを活かせるフィールドの拡大につながっており、12/6期は4期ぶりの増収が見込まれている。
カードビジネスのフロント業務
主力商品である「NET+1」はクレジットカード会社や銀行において高い導入実績を有するが、顧客層を広げるべく「NET+1」の廉価版とも言えるLinux 版「NET+1」の営業を12/6期より本格化した。従来からの「NET+1」は2重化された高価な専用ハードウェアを使用していたが、Linux 版「NET+1」は安価なLinuxサーバで運用できるため、初期投資の抑制とライニングコストの低減が可能だ。決済代行会社やアクワイアラー、更には小規模な加盟店等をターゲットとしている。昨今、Web通販におけるカード決済化の進展でカードが使えるチャネルや加盟店が増加しているため、チャネルや加盟店の開拓と管理を行うアクワイアリング業務の権利を取得する事業者が増えている。また、ゲーム向け等を中心にプリペイドカード関連での需要も強いようで、アクワイアリング業者やプリペイドカード関連の事業者からの案件獲得が進んでおり、現在、導入作業が進行中だ。 ただ、営業活動が順調な反面、実際の導入作業の練度向上はこれからで、プロジェクト管理(原価コントロール)が課題となっている。認知度向上による更なる拡販と共に収益性向上に取り組んでいく考え。 システムソリューション業務
受託開発において大日本印刷(株)のグループ会社の開発案件獲得に取り組んでおり、12/6期は7億円の売上を目標としていたが、第3四半期までに8億円の売上を計上した。グループシナジーが徐々に顕在化しつつあり、今期の上積みはもちろん、来期の更なる事業拡大を念頭に営業を強化している。一方、証券ソリューションは証券業界を取り巻く環境が厳しく、同社もその影響を受けている。ただ、保留となった来期以降の商談が継続している他、他社製品(アルゴリズムトレードシステム「ONETICK」、ネットワーク高速処理システム「Solace System」、デリバティブ取引のポートフォリオ管理システム「DECIDE」)を用いたソリューションでビジネスチャンスが広がっている。また、海外展開として、中国において、現地の日系SIベンダーと提携して「ACE Plus」の営業強化に取り組んでいる他、タイやインドネシアでイオンクレジットサービス(株)向けの案件が拡大している香港の提携先に社員を派遣(人的交流)し、実地研修を積ませている。 セキュリティシステム業務
内部情報漏えい対策システム「CWAT」の保守収入を安定収益源に、電子ファイル利用のセキュリティ対策製品「EUCSecure」の拡販と、他社製品を用いたソリューションの拡大に取り組んでいる。他社製品を用いたソリューションとは、今期から営業を本格化したもので、具体的には、Webサイトの脆弱性診断ツール「Web Sanitizer」や業務システムの脆弱性を検知するソースコード解析ツール「Cx Suite」を用いた対サーバ攻撃ソリューションである。「Web Sanitizer」は韓国KAISTサーバーセキュリティ研究センターとBitscan社が共同開発したSaas(Software as a service)型リモートセキュリティサービスでWebサイトの脆弱性をリアルタイムで診断できる。一方、「Cx Suite」はイスラエルのCHECKMARK社の製品。両ソリューション合計で既に10社への導入が完了する等、販売は順調だ。尚、同社は、システムソリューション業務及びセキュリティシステム業務における他社製品を用いたソリューションについては、決算説明において「その他 製品販売(新規事業)」としてセグメントしている。 その他の新規事業
新製品「FACEコンシェル」の開発を完了し、営業を開始した。「FACEコンシェル」は、Webサイトのナビゲーションやレコメンデーション等のWebコンシュエルジュサービスを自然言語によるチャットによる対話形式で円滑に行うシステム。「NET+1」等では、カード決済を行うために構造化されたデータベースを安全かつ効率的に解析する技術が用いられていたが、「FACEコンシェル」では、メールやテキスト文書、Webコンテンツ等の非構造化データを解析し、Web利用者にレスポンスを返す。同社の技術と韓国Saltlux社製セマンティック・ソリューション(高品質キーワード検索)「IN2」とを融合させたシステムであり、Webサイト上でのコミュニケーション基盤(特にスマートフォンに最適化した)を提供する。また、状況に応じて、リアルチャットに切り替える事もできる(システムに代わってオペレータがチャットで対応する)。
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2012年6月期第3四半期決算 |
前年同期比13.6%の増収、同22.5%の経常増益
売上高は前年同期比13.6%増の3,865百万円。前年同期に大型の更新需要があった反動でカードビジネスのフロント業務の売上が減少したものの、ハイブリッド書店システムの開発等、親会社大日本印刷(株)のグループ会社向けシステム開発をけん引役にシステムソリューション業務の売上が大きく伸びた。また、今期より営業活動を本格化したLinux 版「NET+1」や新規事業(他社製品を用いたソリューション事業)もセキュリティ製品等を中心に順調に立ち上がった。利益面ではLinux 版「NET+1」の開発費が負担となった事や売上構成比の変化(高い市場シェアを有し高収益なカードビジネスのフロント業務の売上構成比が低下)等で原価率が上昇し売上総利益が減少化したものの、継続的な取り組みである全社的な経費節減努力で販管費が減少(全社経費が125百万円減少し、Linux 版「NET+1」の販売開始に伴う先行費用等を吸収した)。営業利益は99百万円と前年同期の実績86百万円を上回った。受取利息の増加と為替差損の減少による営業外損益の改善で経常利益は102百万円と同22.5%増加。税効果会計の影響(法人税等調整額△222百万円の計上)で、四半期純利益は経常利益を大幅に上回る228百万円となった。 カードビジネスのフロント業務
売上高1,664百万円(前年同期比21.8%減)、セグメント利益480百万円(同43.6%減)。大型案件の反動やハードウェア価格の低下に加え、二重化されたコンピュータの上で動く「NET+1」から廉価なLinux版「NET+1」へ販売の中心がシフトした事もあり、売上が減少した。利益面では、Linux版「NET+1」の導入業務かかるコストが予想以上に嵩み、利益の落ち込みが大きくなった。Linux版「NET+1」については、中期的にはプロジェクト管理の練度向上で利益率の改善が見込まれるものの、当面は予想以上の負担が続く見込み。 主なサブセグメントの増減
ソフトウエア開発 1,029百万円 → 941百万円
自社開発パッケージ 29百万円 → 63百万円 保守 303百万円 → 283百万円 ハードウエア販売 755百万円 → 372百万円 システムソリューション業務
売上高は1,804 百万円(前年同期比78.8%増)、セグメント利益281百万円(前年同期比123.0%増)。大日本印刷(株)のグループ会社向けシステム開発をけん引役にカード系・その他事業の売上が前年同期の495百万円から1,243百万円に伸びた他、証券系事業も、厳しい事業環境の中で10%弱売上が増加した。
主なサブセグメントの増減
ソフトウエア開発 639百万円 → 992百万円
自社開発パッケージ 46百万円 → 27百万円 保守 237百万円 → 227百万円 ハードウエア販売 16百万円 → 373百万円 仕入パッケージ 63百万円 → 178百万円 セキュリティシステム業務
売上高294 百万円(前年同期比11.4%増)、損失51百万円(前年同期は223百万円の損失)。損失計上となったものの、ほぼ想定に沿った着地。保守契約の累積効果で利益率の高い保守売上が着実に増加しており、業務効率の改善と経費節減による損益分岐点売上高の引き下げで損失が大幅に減少。通期ベースでの利益計上が視野に入ってきた。
主なサブセグメントの増減
ソフトウエア開発 35百万円 → 31百万円
自社開発パッケージ 42百万円 → 36百万円 保守 163百万円 → 167百万円 ハードウエア販売 0百万円 → 0百万円 仕入パッケージ 20百万円 → 58百万円 その他 製品販売(新規事業)
売上高は101百万円、セグメント損失67百万円。今期より営業を本格化した事業だが、順調な立ち上がりとなり、通期の目標(150百万円)達成に目途がついた。
前年同期比0.4%の増収ながら、同52.5%の経常減益
カードビジネスのフロント業務におけるLinux版「NET+1」の寄与やシステムソリューション業務におけるハードウェア販売等で売上が増加したものの、Linux版「NET+1」の導入業務のコストが嵩んだ事や、システムソリューション業務のハードウェア販売の利益率が低い事もあり、微増収ながら営業利益が同53.0%減少した。
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2012年6月期業績予想 |
通期業績予想に変更なく、前期比11.3%の増収、同20.2%の経常増益
カードビジネスのフロント業務において、売上・利益の両面で下振れの懸念がある。売上の面では、システムソリューション業務の上積みで吸収できそうだが、利益面ではカバーできない可能性が高い。期末にかけてLinux版「NET+1」の納入が進む一方、Linux版「NET+1」の収益性改善には今しばらく時間を要する見込み。配当は1株当たり500円の期末配当を予定している。
一方、カードビジネスのフロント業務は売上・利益の両面で下振れの懸念がある。売上の面では、ハードウェアの価格低下が従来からの「NET+1」用のハードウェアにも及びつつある事に加え、初期投資を抑える事ができるLinux版「NET+1」の営業が順調な事もマイナス要因となっている。利益面では、中期的には改善の余地が大きいものの、当面、Linux版「NET+1」は原価率の高い状態が続く見込み。加えて、カード会社に対する親会社である銀行の管理が強化され、この影響で「NET+1」の管理に対する要求レベルも高まっている(結果として、同社は管理コストの増加を強いられる)。 |
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