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(2157) 株式会社コシダカホールディングス

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ブリッジレポート:(2157)コシダカホールディングス vol.7

(2157:JASDAQ) コシダカホールディングス 企業HP
腰髙 博 社長
腰髙 博 社長

【ブリッジレポート vol.7】2012年8月期上期業績レポート
取材概要「先行きの不透明感はあるものの、東日本大震災後に大きく落ち込んだ消費マインドが改善しつつあり、余暇活動関連支出が増加傾向にあるようだ。こう・・・」続きは本文をご覧ください。
2012年5月1日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社コシダカホールディングス
社長
腰髙 博
所在地
群馬県前橋市大友町1-5-1
決算期
8月末日
業種
サービス業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2011年8月 29,093 3,356 3,336 2,877
2010年8月 21,932 2,503 2,579 1,125
2009年8月 18,955 1,496 1,427 549
2008年8月 13,649 691 731 421
2007年8月 11,332 535 561 134
2006年8月 8,878 552 560 319
2005年8月 6,360 403 400 233
2004年8月 3,552 340 337 192
2003年8月 2,037 104 99 57
株式情報(4/19現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
2,446円 9,599,926株 23,481百万円 57.6% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
35.00円 1.4% 210.42円 11.6倍 770.89円 3.2倍
※株価は4/19終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
コシダカホールディングスの2012年8月期上期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
“総合余暇サービス提供企業”を標榜し、「既存業種新業態」戦略を推進。連結子会社8社及び非連結子会社1社と共にグループを形成し、「カラオケ本舗まねきねこ」のブランドで全国展開するカラオケ事業を中心に、フィットネス(カーブス)事業及びボウリング事業を手掛け、温浴事業等の新業態開発にも取り組んでいる。
 
<沿革>
1954年に都内で飲食店として創業し、64年に現在本社のある群馬県前橋市に移転。67年に(有)新盛軒として法人組織に改組した。会社が大きく変わり始めたのは、現在、社長を務める腰髙博氏に実質的な経営権が委ねられてから。博氏のリーダーシップの下、90年にカラオケボックス事業に参入。レーザーディスクを使ったスナックやバー等でのカラオケから通信システムを活用したカラオケボックスへ需要がシフトする流れをつかみ事業を軌道に乗せた。95年8月の腰髙博氏の社長就任以降は、不況等で廃業するカラオケボックスを利用する出店モデル(居抜き出店)を開発し業容を拡大。2000年3月に(株)コシダカに組織及び名称を変更した。

06年3月には(株)カーブスジャパンのフランチャイジーとしてフィットネス事業に進出。07年6月のJASDAQ上場を経た08年10月には(株)カーブスジャパンを子会社化(実質持株比率90%)し、現在、グループでFC(フランチャイズチェーン)本部の運営とフィットネスクラブの直営店展開を行っている。

10年9月には純粋持ち株会社へ移行し、(株)コシダカホールディングスに組織及び名称を変更。併せて、第3の柱として育成するべくボウリング事業を手掛ける(株)スポルトを子会社化した。現在、同事業の基盤整備と共に温浴事業の育成にも取り組んでおり、11年11月に温浴施設3施設を大分県大分市に開設。「アミューズメント」、「スポーツ・フィットネス」、「観光・行楽」、「趣味・教養」をキーワードに「既存業種新業態」を展開する“総合余暇サービス提供企業”として企業価値の向上に取り組んでいる。
 
 
<事業セグメントとグループ>
(1)事業セグメント
事業は、「カラオケ本舗まねきねこ」や一人カラオケ専門店「ワンカラ」を運営するカラオケ事業、“女性専用の30分フィットネス”として中高年齢層をターゲットに女性専用フィットネスクラブ「Curves(カーブス)」を展開するカーブス事業、及び「健康ボウリング教室」を定期的に開催して中高年齢層の掘り起こしと固定客化に取り組んでいるボウリング事業、不動産管理事業、及び新規事業として育成中の温浴事業(各種の温浴設備を備えた施設の運営)を含むその他事業に分かれ、売上構成比は12/8期上期実績ベースで、カラオケ事業58.3%、カーブス事業30.3%、ボウリング事業9.3%、不動産管理事業0.7%、その他事業1.4%。
 
(2)グループ
グループは、純粋持株会社である(株)コシダカホールディングスと、カラオケ事業、カーブス事業、ボウリング事業、温浴事業、及び不動産管理、知的財産管理を手掛ける連結子会社8社及び韓国でカラオケ事業を育成中の非連結子会社1社。カラオケ事業は(株)コシダカが国内で317店舗を展開しており、(株)韓国コシダカが韓国ソウル市内で2店舗を運営し現地での収益モデルの構築に取り組んでいる。カーブス事業は、中間持株会社(株)カーブスホールディングスの下、連結子会社(株)カーブスジャパンが女性専用フィットネスクラブ「Curves(カーブス)」のFC本部の運営と直営店展開を手掛け、連結子会社(株)北海道コシダカ及び(株)シュクランがフランチャイジーとして直営店を多店舗展開。第3の柱として育成中のボウリング事業は、(株)スポルトが「居抜き出店方式」のノウハウを活用したボウリング場再生による店舗展開を念頭に事業を進めており、11年11月に多店舗展開を本格化した温浴事業は(株)コシダカが新規事業として育成中だ。
 
 
<成長戦略と強み>
(1)成長戦略
“総合余暇サービス提供企業として、「アミューズメント(カラオケ)」、「スポーツ・フィットネス(カーブス)」、「観光・行楽(温浴」」、「趣味・教養(ボウリング)」の4つのキーワードの下、「既存業種新業態」の開発と新たな商品及びサービスの創造に取り組んでいく考え。
 
 
「既存業種新業態」とは、例えば、カラオケ事業で育成中の一人カラオケ専門店「ワンカラ」がその一つ。通常、カラオケはグループで利用するが、「ワンカラ」は一人専用のカラオケボックス。純粋に「歌う」事を追求する事で既存カラオケボックスとの差別化を図り、新たなマーケットを開拓していきたい考え。06年9月に本庄店(埼玉県本庄市)に2室を開設し、08年2月には「浅草まねきねこ」(東京都台東区)に7室を開設。この実績を踏まえて11年11月にワンカラ神田駅前店(東京都千代田区)をオープンした。オペレーションやピット内部(カラオケボックス内部)の利便性向上等、ブラッシュアップすべき点は多いが、潜在的な需要の掘り起こしに成功し、1人で歌う事の爽快感がリピーターを増加させていると言う。ワンカラ神田駅前店の月商は6百万円程度だが、初期投資を抑える事ができるため採算は悪くないようだ。
 
 
また、“女性専用の30分フィットネス”として事業が順調に拡大しているカーブス事業も「既存業種新業態」の概念に近い事業。同社が開発した事業ではないものの、概念、ターゲットとする客層、施設等で従来のフィットネス事業とは一線を画しており、同社が買収後に花開かせた。尚、同事業では、50代以上の女性が会員数の75.1%を占めている。
 
 
(2)強み
同社グループの強みは、少子高齢化が進む日本において増加が見込まれる「アクティブシニア層」をターゲットとしている事であり、また、既にそのノウハウと実績を有する事。カラオケ事業やカーブス事業において、「アクティブシニア層」の取り込みに成功している事はその証左と言える(付け加えるなら、地域密着の事業展開により地域住民の取り込みにも成功している)。また、カラオケ事業の成功の一因でもある「居抜き出店」の実績を積み上げてきた事で、施設の再生や企業の再生についてもノウハウの蓄積が進んでいる。育成中のボウリング事業や温浴事業においては、こうした「再生」ノウハウが応用されており、併せて、事業スキームのブラッシュアップが進められている。
内需関連ビジネスを手掛ける企業の事業環境は総じて厳しいものの、68兆円と言われる国内余暇市場は同社にとって広大。今後の増加が見込まれる「アクティブシニア層」をターゲットとし、施設や企業の再生も含めて、豊富なノウハウと実績を有する事を考えると、同社グループのビジネスチャンスは拡大している。マーケットの分析力や提案力に磨きをかけると共に新業態の開発に注力する事で、ビジネスチャンスの更なる拡大が期待できよう。
 
 
2012年8月期上期決算
 
 
前年同期比14.1%の増収、同41.5%の経常増益
売上高は前年同期比14.1%増の15,850百万円。新規出店店舗の早期立ち上がりと会員向け通販の好調等でカーブス事業の売上が同33.2%増と伸びた他、東日本大震災後の娯楽に対する「安・近・短」ニーズの取り込みが進んだカラオケ事業の売上も同6.8%増加。多店舗展開を本格的に開始した温浴事業も増収に寄与した。

利益面では、カーブス事業におけるロイヤリティ収入の増加やカラオケ事業における店舗運営効率の改善等で売上総利益率が29.3%と1.7ポイント上昇。人件費やIT関連費用を中心にした販管費の増加を吸収して(もっとも販管費率は低下)、営業利益は2,227百万円と同35.1%増加した。営業外損益の改善は社債発行費(64百万円)が無くなった事等によるもので、一方、四半期純利益が減少したのは特別利益の計上による。
 
 
IT関連費の増加は、グループ全体の管理体制を強化するべく、人事・勤怠管理システムを導入した事による。
 
 
前年同期は、(株)スポルトの連結子会社化に伴う負ののれん発生益1,193百万円を特別利益に計上した。
 
 
カラオケ事業
売上高9,233百万円(前年同期比6.8%増)、セグメント利益1,510百万円(同32.5%増)。増収要因を新規出店店舗と既存店舗に分けると、新規出店店舗の寄与が426百万円、既存店舗が164百万円。既存店では、大規模リニューアルやサービスレベル向上への取り組みが成果をあげ、東日本大震災後の娯楽に対する「安・近・短」ニーズの取り込みが進んだ(客単価は前年同期とほぼ同水準の1,200円程度で推移したが、客数が増加した)。一方、利益面では、増収効果に加え、店舗運営効率の改善や新規出店が少なかった事等で売上総利益率が25.4%と2.2ポイント上昇。コスト配分の適性化もあり、セグメント利益が大幅に増加した。

上期期末の店舗数は前期末比2店舗増の317店舗(前上期末との比較でも2店舗増)。7店舗の新規出店(前年同期は8店舗)を行うと共に既存店20店舗で大規模リニューアルを実施する一方、5店舗(同2店舗)を閉鎖。一部の店舗(ディノス札幌手稲店、北海道札幌市)では、リニューアルに併せてスイーツメニューを強化する等の試みも行った。また、日本初となる一人カラオケ専門店「ワンカラ」を11年11月に神田駅前(東京都千代田区)に開設。オペレーションのブラッシュアップ、ピット内部の利便性の向上、設備機器の効率化等に引き続き取り組んでいく考えで、業態販売(開業支援パッケージ)のスキーム構築や各種パテント取得に向けたハード研究も進めている。
 
 
カーブス事業
売上高4,809百万円(前年同期比33.2%増)、セグメント利益812百万円(同43.3%増)。トレーニング後に摂取すると効果的なプロテインを中心に会員向けの物販(通信販売を利用した定期購入)が609百万円増加(690百万円→1,299百万円)した他、ロイヤリティ収入等の継続的な収入も同256百万円増加。直営店売上も245百万円増加した。
上期末の店舗数は前期末比72店舗(同5.9%増)増加の1,100店舗(内グループ直営店39店舗)、会員数は同25千人増加(同6.2%増)の424千人(前上期末:938店舗、350千人)。
 
ボウリング事業
売上高1,474百万円(前年同期比0.7%増)、セグメント損失22百万円(前年同期は77百万円の損失)。現在、管理体制や営業体制の強化等、店舗数拡大に向けた基盤整備を進めると共に、各施設における営業力の強化と効率化(POSレジの導入)、更には健康ボウリング教室(LTB:Learn To Bowl、後述)の継続開催と固定客化に向けたスキームのブラッシュアップに取り組んでいる。上期末の店舗数は16店舗(前上期末は14店舗)。スポルト苫小牧(北海道苫小牧市)を11年9月にオープン(居抜き出店)した。
尚、LTBとは、地元の体育協会や行政とのタイアップによる(株)スポルト主催のボウリング教室。受講者はアクティブシニアが中心で、(株)スポルトの社員(半数以上がプロ及びインストラクターの資格を有する)が全6週のカリキュラムを実施する。内容的には、ボウリングのレベルアップというよりも、健康維持の観点から週1回身体を動かす事に主眼が置かれている。LTBの受講修了者には定期的に開催されるリーグ戦への参加を促し固定客化を図っていく考えで、前年同期には33.0%だった固定客のゲーム数が今上期は35.8%に上昇し、固定客のゲーム売上比率も29.1%から32.3%に上昇した。
 
不動産事業及びその他事業
不動産管理事業は売上高104百万円(前年同期比9.1%増)、セグメント利益148百万円(同4.6%増)、その他事業は売上高227百万円(前年同期比193.9%増)、セグメント損失42百万円(前年同期は22百万円の損失)。その他事業では、「大分森温泉まねきの湯」など合計3店舗を「居抜き出店方式」により開設し、温浴事業の多店舗展開を本格的に開始した(上期末現在「群馬箕郷温泉まねきの湯」と合わせて4店舗を展開)。カラオケ事業の運営ノウハウや飲食サービスを水平展開していく考え。また、東京健康ランド(東京都江戸川区)の運営引き継ぎや郡山での大型の居抜き出店も決まった。更なる店舗ネットワークの拡大に向け、組織の充実を図っていく考え。
 
 
上期末の総資産は前期末とほぼ同水準(13百万円増)の18,468百万円。売上の増加や店舗増で売上債権や棚卸資産が増加した他、新規出店やリニューアルで固定資産も増加。一方、現預金や有利子負債が減少した。自己資本比率は前期末比5.9ポイント改善の40.1%。
 
 
資金効率の改善や新規出店の減少等で設備投資関連の支払いが減少したため前年同期はわずかにマイナスとなったフリーCFが495百万円の黒字に転換。配当の支払いや期日が到来した長期借入金の返済で財務CFがマイナスとなったものの、現金及び現金同等物の上期末残高は3,959百万円と前期末比140百万円の減少にとどまった。
 
 
2012年8月期業績予想
 
 
通期業績予想に変更は無く、前期比9.0%の増収、同19.8%の経常増益
通期の業績予想を据え置いたため、結果として下期は保守的な見通しとなった。営業利益の進捗率が56.8%、経常利益が56.5%と利益面で進捗しているが(売上高は50.0%)、会社側では「下期は温浴施設の大型投資を計画しており、先行投資負担が発生する」と説明している。
配当は1株当たり17.5円の期末配当を予定しており、上期末配当と合わせて年35円。11年9月に実施した株式分割(1株を400株に分割)を考慮すると、実質10円の増配となる。
 
 
カラオケ事業
下期はカラオケ本舗「まねきねこ」21店舗で大規模リニューアルを計画。共有スペースを禁煙(喫煙ブースを新設)にして居心地向上を図る他、LEDへの切替を行い環境に配慮した店づくりとする考え。また、「アクティブシニア層」向けの健康歌体操プログラムの開発にも取り組むとしている。
一方、新規出店は、東京都内(山手線沿線)中心に一人カラオケ「ワンカラ」10店舗を計画(既に5店舗は確定)。「ワンカラ」の開業支援パッケージの販売に向け、業態とブランドの早期確立を目指している。この他、ビジネスモデルの開発途上にある韓国では、ソウル市内に2号店(鍾路店)を4月14日にオープンした。
 
カーブス事業
インフォマーシャル(TVCM)を強化し効率的な販促活動を行うと共に、既存店会員増強プログラムにより加盟店の収益強化と多店舗化を支援する。また、「プロテイン」に次ぐ新しい販売商品の開発と販促支援や、カーブスプログラムのアンチエイジングに対するエビデンス取得にも取り組んでいく(カーブスプログラムがアンチエイジングに効果がある事の検証を行い、会員の参加意識の向上を図る考え)。
 
ボウリング事業
早期に45センター(店舗)体制を確立するべく、業務フローの見直しによる生産性の向上とコスト削減による収益力強化に取り組む。また、アクティブシニア層の獲得と客層の拡大に向け、健康ボウリング教室「LTB」を継続し、LTBの深堀りとスポルトならではのノウハウの蓄積を図る(LTB、リーグ戦、月例会開催等、来店頻度を高める施策の実施を計画)。
 
温浴事業
大型温浴施設の居抜き出店2件を予定しており、6月2日に東京健康ランド「まねきの湯」(東京都江戸川区)を、6月26日に郡山湯処「まねきの湯」(福島県郡山市)を、それぞれオープンする予定。尚、全国から多数の再生案件が持ち込まれており、現在、案件の精査に追われていると言う。案件の精査と並行して、多店舗展開に向けた組織整備を進めている他、食事も満喫できる施設とするべく、グランドメニューのリニューアルにも取り組んでいる。
 
 
今後の注目点
先行きの不透明感はあるものの、東日本大震災後に大きく落ち込んだ消費マインドが改善しつつあり、余暇活動関連支出が増加傾向にあるようだ。こうした中で発表された同社の12/8期上期決算は、カラオケ事業において、消費者の「安・近・短」ニーズの取り込みが着実に進んでいる事を示すものとなった。また、カーブス事業では、「女性専用の30分フィットネス」としてマスコミやメディアに取り上げられる機会が増え、「カーブス」の全国的な認知度が高まっている事に加え、事業深耕の一環として取り組んでいる会員向けの通販も成果をあげている。
もっとも、売上・利益の増加もさる事ながら、注目すべきは、好業績のけん引役であるカラオケ事業にせよ、フィットネス事業にせよ、決して新しいビジネスではなく、しかも同社は後発であるという事。国内余暇市場は1996年の90.9兆円をピークに減少傾向にあり、2010年は68.0兆円にとどまった。今後も市場の拡大は望み難いものの、今期予想ベースの売上高が320億円弱の同社にとってフィールドは十分に広い。実際、アクティブシニア層の取り込みや地域毎のニーズの汲み上げで着実に成果をあげている事を考えると、当面、市場動向と同社の業績がリンクする事はなさそうだ。