ブリッジレポート
(4767) 株式会社テー・オー・ダブリュー

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ブリッジレポート:(4767)テー・オー・ダブリュー vol.28

(4767:東証1部) テー・オー・ダブリュー 企業HP
川村 治 会長兼社長
川村 治 会長兼社長

【ブリッジレポート vol.28】2012年6月期第2四半期業績レポート
取材概要「上期は、利益率が低い携帯電話のキャンペーンが増える等で、更なる原価管理の厳格化といった課題が顕在化したものの、化粧品・トイレタリー・・・」続きは本文をご覧ください。
2012年3月2日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社テー・オー・ダブリュー
会長兼社長
川村 治
所在地
東京都港区虎ノ門 4-3-13 神谷町セントラルプレイス
決算期
6月
業種
サービス業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2011年6月 10,570 378 377 131
2010年6月 12,575 671 670 357
2009年6月 14,210 1,401 1,392 876
2008年6月 14,397 1,362 1,343 729
2007年6月 13,070 1,051 1,041 551
2006年6月 12,341 781 784 423
2005年6月 10,705 771 782 465
2004年6月 9,638 781 765 466
2003年6月 9,441 1,103 1,073 537
2002年6月 8,600 940 920 462
2001年6月 7,555 756 730 371
2000年6月 5,995 556 537 238
株式情報(2/21現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
478円 11,397,145株 5,448百万円 4.8% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
26.00円 5.4% 32.70円 14.6倍 440.39円 1.1倍
※株価は2/21終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROE、BPSは前期末実績。
 
テー・オー・ダブリューの2012年6月期上期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
イベント・プロモーション業界のトップカンパニー。イベントの企画・制作・運営・演出、セールスプロモーション(SP)に関するグッズ・印刷物の制作及び付帯業務を手掛ける。実際のイベント現場では照明、音響、映像、舞台制作、モデル・コンパニオンや警備員の派遣、整理、撤収、清掃等様々な業務があるが、これらの専門業者を外注先とし、イベント全体をコントロールすることで主催者が来場者に伝えたいことを具現化することが重要な任務となる。プロモーションの場合も、印刷、グラフィックデザイン、事務局運営、OOH(交通広告や屋外広告など家庭以外の場所で接触するメディア広告の総称)、ウェブ制作等の業務があるが、これらをトータル的にコントロールし納品することが任務となる。

ただ、日本では大半のイベントが、イベント主催者(クライアント)からの発注を受けた大手広告代理店によって開催されている。このため、同社を含めた実際にイベントの企画・制作・運営を行う会社は、イベント主催者から直接受注するのではなく、大手広告代理店を介して受注するケースが多い。同社グループも例外ではなく、電通グループ、博報堂グループ、アサツーディ・ケイグループに対する売上高が、全体の72.7%(11/6期実績)を占めている。

また、イベントの企画・制作・運営は、小規模事業者が強みを持つ特定領域において各々対応しているのが実状だが、同社はグループ企業の強化・拡充とアライアンスにより、数少ない総合プロモーション会社として事業領域を拡大させている。マス広告からきめ細やかなプロモーションへとクライアントのニーズがシフトする中、総合的な企画力、制作力、営業力を兼ね揃えた同社の比較優位は今後も高まっていくと思われる。
 
<ワンストップ体制と提案力の強化に向けた取り組み>
マス広告からきめ細やかなプロモーションへシフトするクライアントニーズに対応するべく、同社は「ワンストップ体制と提案力の強化」に取り組んでいる。具体的には、自社の企画力や営業力に磨きをかけると共に、アライアンスにより制作力を強化していく考えで、この一環として、デジタル強化、空間プロデュースの企画提案強化、店頭強化、ノベルティ強化、プロモーションメディア強化の5つの課題に取り組んでいる。
 
 
2012年6月期上期決算
 
 
前年同期比17.8%の増収、同70.5%の経常増益
売上高は前年同期比17.8%増の6,830百万円。ナショナルブランド・メーカー2社を新規開拓した化粧品・トイレタリーが大きく伸びた他、アミューズメント機器メーカーの新規開拓で精密機器・その他製造も伸長。この他、被災地で活発化したキャンペーンの取り込みが進んだ携帯電話や飲料、更には東京モーターショーの寄与で自動車も増加した。
利益面では、携帯キャンペーン等の利益率の低い中型案件(20~50百万円)が増加したものの、増収効果で売上総利益率が改善。経費節減と予算の未消化による販管費の減少もあり、営業利益は592百万円と同66.8%増加した。四半期純利益の伸びが大きいのは、特別損益の改善と税効果会計の影響による。
 
 
化粧品・トイレタリーや精密機器・その他製造で近年の営業強化の成果が表れた他、被災地で活発化したキャンペーンの取り込みで情報・通信(主に携帯電話)や食品・飲料・嗜好品(主に飲料)が増加。東京モーターショーの寄与で自動車も増加した。
一方、カテゴリー別では、被災地でのキャンペーンの取り込みで販促の売上が大きく伸び、これに伴い制作物の売上も増加した。
 
 
(2)財政状態及びキャッシュ・フロー(CF)
上期末の総資産は前期末比1,520百万円増の8,911百万円。受注・売上の回復で、売上債権、未収入金(売上債権のファクタリングに伴う債権)及び仕入債務等が増加。一方、運転資金の増加と有利子負債の削減に伴い現預金が減少。子会社(株)ペッププランニングの株式売却で無形固定資産(のれん)及び投資その他(投資有価証券)も減少した。上期末の自己資本比率は58.5%。
上記の説明でCFも説明できる。営業CFのマイナス幅拡大は、受注・売上の回復による運転資金の増加が要因であり、投資CFのマイナス幅が拡大したのは、株式売却に伴い(株)ペッププランニングが連結対象となった事で同社が保有する現預金から除外された事による。
 
 
 
2012年6月期業績予想
 
 
通期業績予想に変更はなく、前期比8.5%の増収、同82.0%の経常増益
上期業績が上振れしたものの、通期業績予想を据え置いたため、結果として下期の予想が保守的なものになった。上期末の受注残高(注)は4,098百万円と前年同期の4,212百万円を下回っているものの、手持ち案件そのものは前年同期(金額ベース)を上回っており、案件の確実な取り込みで通期売上予想を達成したい考え。増収効果と間接原価(外注費等ではなく、社内で発生する原価)の抑制で利益率の改善も進む見込み。
配当は1株当たり期末配当13円を予定している(上期末配当と合わせて26円)。
 
(注)受注残高
受注残高とは、①イベントの規模(金額)、実施時期等が決定している(受注済み)案件、②金額、実施時期等に不確定要素のある(受注済み)案件、及び③同社がほぼ受注する見込みにある案件(80%以上の確度)の合計額。この他、④企画競合案件のうち、同社が受注する確度の高い案件(50%以上の確度)、及びプレゼンテーション実施済みの⑤企画競合案件の合計が3,996百万円ある(前年同期は3,610百万円)。
ちなみに、前11/6期の下期は、震災後に上期末の受注残高及び下期に受注した案件のうち約18億円がキャンセルまたは延期された(上期末受注残高に限ると約14億円がキャンセルまたは延期)
 
 
(2)今後の対策
ワンストップ体制と提案力の強化に向け、自社の企画力や営業力に磨きをかけると共に、アライアンスにより制作力を強化していく考え。この一環として、デジタル強化、空間プロデュースの企画提案強化、店頭強化、ノベルティ強化、プロモーションメディア強化の5つの課題に取り組んでいる。
 
デジタル強化(対応力強化)
今やデジタル(Web)はセールスキャンペーンに不可欠なものとなっているが、イベント受注額が1,000万円単位であるのに対して、Webプロモーションの受注額は100~200万円程度。このため、同社はWebをハブに総合的なセールスキャンペーンを提案していく考え。技術面や対応力を強化するべく、今期は下記3社と新たに業務提携を行った。
 
 
空間プロデュースの企画提案強化(企画提案強化)
専任者を配置し社内体制の強化を図る考え。具体的には、プロモーションに必要となる空間プロデュースの企画提案力を強化するべく、空間演出・施工管理専任の社員(1級建築士)を配置した。1級建築士として培った豊富な経験と知識を活用した空間プロデュースの企画提案を実施していく考え。
 
店頭強化(販促強化)
ジェイコムホールディングス(株)(東証一部:2462)との資本・ 業務提携に加え、店頭プロモーション(売り場で成果を上げるための提案等)の提案力を強化するべく成果追求型の営業支援業務を行う(株)ヒト・コミュニケーションズ(JASDAQ:3654)との業務連携を模索している。
 
ノベルティ強化(品質管理強化)
ノベルティグッズの企画、開発、販売をワンストップで行う(株)トランザクション(JASDAQ:7818)や品質管理・総合検査サービスに強みを持つ日本ラボテック(株)と業務提携した。日本ラボテック(株)は、各種の商品検査(衣類品、生活用品、食品、雑貨・履物ペット用品)の他、店舗衛生検査、腸内細菌検査、コンサルティング、及び商品開発支援を行っており、11/12期売上高は2億円。
 
プロモーションメディア強化(提案領域拡大)
プロモーションメディア強化として、総合什器備品レンタル業の広友リース(株)と業務提携した。この提携では、広友リース(株)が強みを持つ建設現場やマンション販売センターのプロモーションメディア化及びルートサンプリングの拠点化に取り組む他、広友リース(株)の製品である「折り紙ハウス」を屋外メディアとしてプロモーションに活用していく。広友リース(株)は11/3期の売上高が96億円で、オフィス向けレンタル事業、代理店向けレンタル事業、各種イベント向けレンタル事業、建設現場事務所向けレンタル事業、マンション販売センター向けレンタル事業、ファシリティ・マネジメント事業を手掛けている。
 
 
今後の注目点
上期は、利益率が低い携帯電話のキャンペーンが増える等で、更なる原価管理の厳格化といった課題が顕在化したものの、化粧品・トイレタリーや精密機器・その他製造で新たなクライアントが獲得できる等、これまでの営業の成果が表れ大幅な増益となり、期初予想に対しても大幅な上振れとなった。上期業績が上振れする中で通期業績予想を据え置いたため、結果として下期予想が慎重なものとなったが、震災後に強まった自粛ムードが後退し、販促活動が正常化しつつあるだけに業績の上振れ期待は大きい。
また、来期以降の業績拡大に向けた、デジタル強化、空間プロデュースの企画提案強化、店頭強化、ノベルティ強化、及びプロモーションメディア強化といったワンストップ体制と提案力強化に向けた取り組みも順調に進捗している。10/6期、11/6期と2期連続で減収・減益を余儀なくされた同社だが、11/6期の下期を底に新たな成長サイクルに入ったと思われる。