ブリッジレポート
(2317) 株式会社システナ

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ブリッジレポート:(2317)システナ vol.15

(2317:東証1部) システナ 企業HP
逸見 愛親 社長
逸見 愛親 社長

【ブリッジレポート vol.15】2012年3月期第3四半期業績レポート
取材概要「カテナ(株)の吸収合併から2期が経過した。本体の構造改革に取り組んだ前期に続き、今期は子会社の構造改革を実行している。この取り組みが計・・・」続きは本文をご覧ください。
2012年2月28日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社システナ
社長
逸見 愛親
所在地
東京都港区海岸一丁目2番20号 汐留ビルディング14階
決算期
3月 末日
業種
情報・通信
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2011年3月 39,176 2,579 2,661 2,957
2010年3月 3,636 490 536 340
2009年10月 8,161 1,261 1,258 1,180
2008年10月 9,603 1,816 2,153 1,275
2007年10月 7,930 1,595 1,555 849
2006年10月 5,917 961 967 602
2005年10月 4,180 717 691 561
2004年10月 3,093 677 643 391
2003年10月 2,461 516 511 280
2002年10月 1,940 398 380 196
2001年10月 1,524 180 175 93
株式情報(2/17現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
57,400円 283,238株 16,257百万円 28.9% 1株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
2,900.00円 5.1% 4,005.24円 14.3倍 47,377.12円 1.2倍
※株価は2/17終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
システナの2012年3月期第3四半期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
データ通信系のファームウェア(主に携帯電話端末や基地局向けの組み込みソフト)開発に強みを持ち、情報システム構築等のシステムインテグレーション事業を育成中だった(株)システムプロが、持分法適用会社だったカテナ(株)を吸収合併し、2010年4月1日にシスプロカテナ(株)として再スタートを切り、2010年7月1日に社名を新たに(株)システナに変更した。新会社は、システムプロの情報システムサービス事業とカテナの金融機関向けを中心とするシステム開発事業を連携させると共に、システムプロの移動体高速データ通信システム事業との融合を図り、ユビキタス時代のエアー・シンクライアント・サービスの実現を目指している。
 
<事業内容>
モバイル高速データ通信事業
携帯電話・スマートフォンを中心にモバイル端末全般の開発工程(企画、仕様策定、設計・開発、品質評価など)に携わる。主要顧客はモバイル端末メーカーおよび通信キャリア。メール機能、ブラウザ機能、マルチメディアプレーヤー機能、デジタルテレビ機能、GPS機能等での実績が豊富。ここもとはAndroidプラットフォームの非携帯分野への組込みや制御ソフトウェアの設計・開発にも注力している。
情報システム事業
金融機関(生損保、銀行等)の基幹・周辺システムの開発を手掛けるほか、ネットビジネス事業会社向けに電子書籍システムやコンシューマ向けポータルサイト構築といったオープン系システムなども手掛ける。オープン系技術と金融分野の業務知識及び基盤系技術を融合した事業展開により新たな領域の開拓を進めていく考え。
ITサービス事業
システムの保守・運用、データ入力、及びヘルプデスク・ユーザーサポートを手掛ける。主要顧客は電機メーカー、外資系企業、官公庁等。
ソリューション営業
ITプロダクト(サーバ、PC、周辺機器、ソフトウェア)の販売やシステムインテグレーションを手掛ける。ITサービス事業と一体となって営業展開を進め、所有から利用(クラウド等)へのニーズの変化に対応する事で事業拡大、高付加価値化を図っている。主要顧客は電機メーカー、外資系企業。
エアー・クラウド推進事業
パブリック・クラウドに特化し、代表的なクラウド型サービスである『Google Apps for Business』や、『Microsoft Office 365』の提供、コンサルティング、導入支援を行うとともにシステナ独自サービス『cloudstep』の提供を行う。
コンシューマサービス事業
子会社(株)GaYaが手掛けるスマートフォン向けアバターSNS・ソーシャルゲームの企画・開発・運営。
 
 
2012年3月期第3四半期決算
 
(1)第3四半期連結業績
 
連結子会社の構造改革推進、貸倒引当計上などが重石に
2012年3月期第3四半期は、前年同期比23.5%減収、同26.8%営業減益となった。単体ベースでは、情報システム事業の一部譲渡により前年同期比19.3%減収となったものの、収益性の大幅な改善もあり、営業利益段階では同1.6%増と堅調に推移した。
連結ベースでは事業の重複を排除し、効率化を図るために前第4四半期において連結子会社アドバンスト・アプリケーション(株)株式の持分を全て売却したほか、成長が見込みにくい事業を譲渡したこともあり、マイナス成長となった。収益面では、連結子会社(株)GaYa及び(株)IDYがまだ先行投資段階にあることに加え、同じく連結子会社である東京都ビジネスサービス(株)が貸倒引当金171百万円を計上したことが連結利益を圧迫した。なお、四半期純利益については、第3四半期の課税所得に関わる繰延税金資産の取崩額946百万円に加え、法人税率引き下げに関する法律が施行されたことによる繰延税金資産の取崩額356百万円を税金費用として計上したことが全体業績の足を引っ張ったとのこと。
 
(2)セグメント別動向
 
モバイル高速データ通信事業
前年同期比10.9%減収、同38.1%営業減益で着地した。震災のみならず、タイの洪水、急速な円高の進行、更には韓国・台湾・中国等のメーカーとの競争が激化するなど、厳しい環境が続いた。加えて、各移動体端末メーカーが開発機種数を絞り込んだこともあり、開発案件は縮小傾向となった。一方、通信キャリアでは通信インフラの充実、サービスや品質の差別化に注力していることもあり、企画・開発、通信インフラや移動体通信端末の品質検証案件は順調に拡大した。
受注縮小基調が強まった中、注力分野であるAndroidプラットフォームの非携帯分野での展開は進展を見せた。各電機メーカーがタブレット端末やテレビなどの家電に加え、ナビゲーションシステムを始めとする車載端末への搭載を発表しているが、同社はAndroidスマートフォン開発のノウハウの蓄積と実績が評価され、アミューズメント系コンテンツサービスを一括で受注したほか、家電・車載端末案件、スマートフォンを利用したコンシューマ向け・企業向けのサービス開発・システム評価等のビジネスモデルの育成・拡大などが進んだ。第3四半期では開発案件受注縮小をカバーしきれなかったが、今後の動向には期待したい。
なお、連結子会社(株)IDYの受託開発案件において不採算プロジェクトが発生したことから、連結での売上高営業利益率が13.4%(前年同期実績19.2%)に低下した。しかし、システナ本体の管理体制を同社に導入するなど様々な対応策は打たれており、今後については不採算案件が多発するリスクは小さいだろう。
 
情報システム事業
前年同期比52.5%減収、同18.6%営業減益となった。連結子会社の売却および事業譲渡による減収に加え、東日本大震災の影響もあり減収となったものの、収益面では、前期から取り組んでいる構造改革と収益改善策(契約条件の精査、原価管理の徹底、稼働率向上に向けた営業強化など)実施の継続もあり、売上高営業利益率は前年同期比4.1ポイント改善の9.8%まで高まってきた。
金融機関系顧客は総じてシステム投資の選択と集中、開発計画の見直しやコスト削減を前面に押し出す姿勢が強かった。このような厳しい環境下においても、同社は大手損保会社の統合案件への参画拡大、大手ポータルサイト運営会社への営業強化などに取り組んできた。受注活動においては、中国 iSoftStone社(NY証券取引所上場)とのオフショア合弁会社iSYSを活用したコストメリットと同社のマネジメント力を提案することで他社との差別化を図っている。そのほか、期初から推進してきたモバイル高速データ通信事業との連携強化により、主要顧客である金融機関向けにAndroid端末を利用したエアークラウドビジネスモデル(スマートフォンやタブレット端末とクラウドシステムを連動させることで、販売員の業務支援を行うもの)を提案するなど、事業領域の拡大にも積極的に取り組んでいる。
 
ITサービス事業
前年同期比10.1%減収、同52.3%営業減益となった。震災の影響や電力供給の制約に加え、世界経済の低迷及び株安、円高もあったことから、IT投資に対するマインドは冷えきったままである。しかし、BCP(事業継続計画)対策を基軸としたリスク管理案件やシステム更新案件への営業を強化したこと、グローバル化対応を中心としたITアウトソーシングの提案などが功を奏し、単体業績は前年同期比13.9%減収、同91.8%営業増益となった。BCP対策を中心とした営業力強化についても、ソリューション営業部隊と連携することで基盤構築から運用・保守までの一貫したサービス提案を行なった。外資系企業やグローバル化を目指す国内企業向けには、前期より「1クライアント複数サービスの提案」を合言葉に「IT知識+英語力」のサービス提供が可能な人材の獲得、教育の強化に取り組んできたことが、グローバル展開を志向する企業ニーズとうまくマッチし、収益性の改善に結びついた。但し、連結子会社の東京都ビジネスサービス(株)が新規取引先からの回収が滞っている売掛金の一部を貸倒引当金として計上したこともあり、連結ベースでは大幅な減益に転じている。
 
ソリューション営業
前年同期比12.5%減収、同168.7%営業増益となった。震災やその後の円高などもあり、主要顧客である製造系企業を中心にIT投資の抑制基調が続いた。このような環境下、同社は事業の継続をキーワードにしたBCP対策への取組みの強化、サーバの仮想化、データバックアップ、保守運用までの一貫したサービスを展開するなど、より付加価値の高い商材を選別した事業を推進。同時にPCメーカーと協業し、Windows 7へのリプレイス提案と共にキッティングサービス(PCを新規導入する際に必要となるOSのセットアップ、ソフトウェアのインストール、メモリ・ハードディスクの増設、ネットワークの接続、プリンタの設定、メールの設定などPCを実際に使用できる状態にする作業)を付加することに取り組んだ。その結果、PCの販売台数及びサービス売上が伸長した。開発部門と連携したトータル・ソリューション・サービスの事例も拡大基調にある。
 
エアー・クラウド推進事業
前年同期比570.4%増収となり、収益面では会社計画よりも早い黒字化実現となった。東日本大震災を機に、ユーザー企業でクラウド型サービスに対するニーズが高まっていることが背景にある。一昨年から取り組んできた「Google Apps」の販売ノウハウが蓄積されてきたこと、「Google Apps」で実現できないソリューションサービスをオリジナルサービス「cloudstep」シリーズで提供してきたことが競合他社に対する差別化となり、大型案件獲得に繋がっている。
 
コンシューマサービス事業
前年同期比3.0%減収となり、営業赤字幅も若干拡大した。スマートフォンに特化したアバターSNS・ソーシャルゲームの企画・開発・運営事業を展開する(株)GaYaにおいて昨年8月にAndroid搭載スマートフォン向けゲーム3タイトルの正式サービスを開始した。しかし、他社の参入が想定以上に早かったことを受け、より確実に収益確保できるビジネスモデルへと転換を図っている。具体的には、スマートフォン向けSNSサイト構築、ゲームサイト構築、ECサイト構築、Android搭載スマートフォン向けモーション3Dアバター技術に加え、iPhoneアプリ開発体制も整えることで、スマートフォン向けBtoB、BtoCビジネスを展開するユーザー企業の開発支援を展開している。そのほか、新たなゲームコンテンツを開発し、SNSゲームを展開する大手SNSサイトへの提供も行なっている。
 
(3)財政状態
総資産は前期末比3,627百万円減の20,826百万円となった。売掛金の回収などにより売上債権が同1,152百万円減少したこと、繰延税金資産の取崩などにより、投資等が同800百万円減少したことなどが理由。
有利子負債の削減等により、負債計は前期末比2,354百万円減の7,407百万円となった。自己株式の増加に伴い、純資産は同1,273百万円減少した。
 
 
 
2012年3月期通期予想
 
 
来期に向けて足場固めを図る
2012年3月期会社計画は前期比14.5%減収、同6.2%営業減益の予想。第3四半期決算の開示に合わせ、12年3月期会社計画が若干下方修正されている。連結子会社である東京都ビジネスサービス(株)において貸倒引当金を計上したこと、繰延税金資産の取崩しを行うこと、が理由。繰延税金資産の取崩しについては、「経済社会の構造の変化に対応した税制の構築を図るための所得税法等の一部を改正する法律」及び「東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法」に基づき、13年3月期以降に適用される法人税率が再計算されることが理由。単体の業績はほぼ計画通りに推移していること、キャッシュ・フロー及び財務の状況を鑑み、年間配当額は2,900円とする計画(従来計画は2,600円)。
特需が一巡したモバイル高速データ通信事業のマイナスを、情報システム事業、ソリューション営業を中心にカバーしていく戦略には大きな変更はない。子会社に対する管理体制も整備することで、来期以降の拡大に向けた足場固めを図っていく計画である。
なお、東京都ビジネスサービス(株)における新規取引先から支払いが実行されない売掛金の残高(一部は第2四半期末に引当済)171百万円が貸倒引当金に計上される可能性がある。
 
 
今後の戦略
 
逸見社長は同社の目指す姿をスマホ・クラウド・コストメリットをキーワードに新たな収益モデルで稼ぐ「トータル・ソリューション・サービス」と掲げている。これは、「クラウド・ソリューション」、「グローバル・ビジネス」、「スマホ・ビジネス」の3つを軸に、各事業の強みを連携させることで、ITの企画から構築、検証、導入、教育、保守、サポートに至るまでのトータル・ソリューションを実現させることが狙いである。
来期に向けた具体的な取り組みとしては、まず子会社の拡大路線を修正し赤字を一掃することである。既に取り組んでいることではあるが、今後も引き続き経営改革に取組み、来期以降の増益実現にむけた礎を築く計画。次にトータル・ソリューション・サービスの収益拡大に向けた営業展開を図っていくことである。
 
3つのキーワード
【クラウド・ソリューション】
パブリック・クライドに特化し、コンサルティングから導入支援まで、ALLシステナが保有するスキルとマネジメント力に加え、iSYS(オフショア)、北洋情報システム(株)(ニアショア)の開発力を生かしたコストメリットとIDYのハードウェア企画力を活用する。Android搭載スマートフォンやタブレット端末とクラウドを連動させたシステムを企画から保守までのトータル・ソリューションで提供し、顧客のIT化を通じたコストダウンに貢献していくことを狙う。

【グローバル・ビジネス】
業務スキル・マネジメント力とiSYSの開発力を融合し、高品質と圧倒的なコストダウンにより領域拡大を図る。中国で培ったノウハウを活かし、顧客の海外展開に追従する形でグローバル展開も進めていく。

【スマホ・ビジネス】
爆発的な広がりを見せるスマホおよびソーシャルメディア市場を対象に、グループで培ってきたオンラインゲーム開発、Androidスマートフォン開発、課金・顧客管理、コンテンツ配信システム開発、金融や各種企業向け大規模システム開発、機器導入から保守・運用のノウハウを総合的に提供することで、圧倒的な競争力を持つ開発支援が可能。

これらのサービスを「ALLシステナ総合営業」の名の下、全事業部門が全てのサービスを提案・提供する総合営業部隊となって、企画・提案から構築、導入、教育、保守・運用、サポートまでのワンストップサービスの窓口となるべく変革を進めていく。
 
 
取材を終えて
カテナ(株)の吸収合併から2期が経過した。本体の構造改革に取り組んだ前期に続き、今期は子会社の構造改革を実行している。この取り組みが計画通りに進捗すれば、筋肉質の企業体質が出来上がると会社側は考えている。構造改革一巡後の来期は2桁増益を視野に入れているとのことである。厳しい競争も予想されるが、スマートフォン、クラウド、ソーシャルメディアといった急拡大しているマーケットを対象に、ALLシステナの総合力でマーケットを開拓していくことのできることが同社の大きな強みとなるだろう。具体的には来期のトータル・ソリューション・サービスによる案件受注の実績に期待したい。