ブリッジレポート
(2183) 株式会社リニカル

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ブリッジレポート:(2183)リニカル vol.9

(2183:東証マザーズ) リニカル 企業HP
秦野 和浩 社長
秦野 和浩 社長

【ブリッジレポート vol.9】2012年3月期第3四半期業績レポート
取材概要「CRO業界やCSO業界は、医薬品開発のアウトソーシング化及び国際共同治験の増加を背景に緩やかな成長が続いている。加えて、リーマンショック後・・・」続きは本文をご覧ください。
2012年2月14日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社リニカル
社長
秦野 和浩
所在地
大阪市淀川区宮原1-6-1 新大阪ブリックビル
決算期
3月
業種
サービス業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2011年3月 2,512 288 278 147
2010年3月 2,404 480 473 273
2009年3月 2,036 549 515 300
2008年3月 1,273 505 494 296
2007年3月 613 186 195 114
2006年3月 118 16 19 11
株式情報(2/1現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
284円 11,394,933株 3,236百万円 16.1% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
11.00円 3.9% 22.86円 12.4倍 68.81円 4.1倍
※株価は2/1終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROE、BPSは前期末実績。
 
リニカルの2012年3月期第3四半期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
臨床試験(治験)や医薬品の市販後臨床試験等に関わる業務の一部を代行する事で製薬会社の医薬品開発を支援するCRO(Contract Research Organization)事業を手掛けており、第2の柱とするべくCSO(医薬品営業受託業)を育成中。CRO事業では、治験の最も大切な段階である第II相試験(フェーズII)及び第III相試験(フェーズⅢ)における「モニタリング業務」とこれに付随する「品質管理業務」、及び「コンサルティング業務」に特化している事が特徴。また、統合失調症、うつ病、アルツハイマー等の中枢神経系(Central Nervous System :CNS)領域やがん領域といった難易度の高い領域に注力する事で他社との差別化を図っている(これに対して、生活習慣病等の領域は差別化が難しく受託競争が激しい)。主な取引先は、エーザイ、大塚製薬、第一三共、武田薬品、ヤンセンファーマ等。

尚、新薬の開発トレンドは生活習慣病から治療満足度が低いCNS領域やがん領域にシフトしているが、がん領域の開発は安全性情報の取り扱いが難しく、CNS領域では有効性評価の標準化が難しいため、これまでは製薬会社の社内で対応していた。しかし、近年、こうした難しい領域でもアウトソーシングされるケースが増えている。
 
<CRO事業の業務内容>
モニタリング業務
治験が手順通り正確に行われているかを監視(モニタリング)する。この業務を行う者をCRA(Clinical Research Associate:臨床開発モニター)と呼び、治験薬や実施計画書についての説明から治験データの回収までを手掛ける。
 
品質管理業務
CRAが医療機関から回収したデータについて、定められたチェックリスト等を用いて確認する。
 
コンサルティング業務
製薬会社に対して、新薬開発のスケジュール作成から治験企画、承認申請に至るまでのコンサルティングを行う業務。新薬開発をスムーズに進めるための技術的なサポートも行なっている。
 
<中期事業戦略>
①(実績を残しつつあるCNS領域に加え)がん領域を中心にした治験領域の拡大、②日米欧の3極体制の整備による既存事業(CRO)の強化、及び③CSO事業の育成の3点がポイント。がん領域は、国内の大手医薬品会社がM&Aを含めて強化している領域で、世界の主要抗がん剤の売上は右肩上がりで推移している。3極体制の整備では、日本を含むアジア、米国、欧州の3極でCRO事業を展開し、国際共同治験(グローバルスタディ)に対応できる体制を整備する。この一環として、現在、米国法人LINICAL USA, INC.(米国カリフォルニア州、08年7月設立)が、現地でモニタリング・コンサル業務を手掛けている。また、CSO事業を育成しCRO事業とのシナジーを追求する事で、新薬の開発段階から上市後に至る一気通貫のサービスが可能となり、付加価値向上はもとより、製薬会社の利便性も高まる。尚、CSOとはContract Sales Organizationの略で、医薬品の販売において重要な位置を占めるMRの派遣やマーケティング支援等により製薬会社の医療機関向け医薬品販売を支援する。
 
 
2012年3月期第3四半期決算
 
 
前年同期比17.3%の増収、同97.8%の経常増益
主力のCRO事業で受注残の消化が順調に進んだ他、育成中のCSO事業も新規案件の受託に成功。売上高は2,197百万円と前年同期比17.3%増加した。利益面では、治験モニターの稼働率が高水準で推移した事でCRO事業の利益率が大幅に改善。未だ事業規模は小さいもののCSO事業も利益貢献し、営業利益は461百万円と同92.1%増加した。
 
 
(2)受注状況
 
中止案件がなく受注残が順調に消化されたものの、これを上回る受注を獲得した事で第3四半期末の受注残は前期末比2.7%増加した(直近の1月27日現在では6.2%増)。
尚、各案件の受託総額は症例数や対象疾患に起因する治験の難易度等に応じて変わるが、契約で定めた治験実施期間(1年から3年程度)内において月数で案分され売上計上される。
 
(3)財政状態及びキャッシュ・フロー(CF)
CFの改善による現預金の増加で第3四半期末の総資産は1,858百万円と前期末比297百万円増加した。CFの改善要因は、利益の増加と売上債権の回収が進んだ事による営業CFの改善によるもので、前年同期は60百万円のマイナスだったフリーCFが404百万円の黒字に転換。新規借り入れが減少したため、配当金の支払いをカバーできず財務CFがマイナスとなったものの、現金及び現金同等物の第3四半期末残高は843百万円と前期末比294百万円増加した。
 
 
 
 
2012年3月期業績予想
 
 
通期業績予想に変更はなく、前期比15.0%の増収、同61.2%の経常増益予想
第3四半期(累計)決算において営業利益以下の各利益が通期予想を上回っているが、事業特性として実施中案件の中止リスク等がある事もあり、会社側は慎重な姿勢を崩さなかった。配当は1株当たり11円の期末配当を予定している。
 
 
今後の注目点
CRO業界やCSO業界は、医薬品開発のアウトソーシング化及び国際共同治験の増加を背景に緩やかな成長が続いている。加えて、リーマンショック後の一時的な需要の落ち込みで事業譲渡や廃業など業界の再編・淘汰が進んだため、勝ち残ったCRO及びCSOの事業環境は良好だ。
尚、通期業績予想が据え置かれたが、事業特性を考えれば、慎重な姿勢を崩さなかった会社側の考えは理解できる。しかし、特段の事がない限り、想定通りの売上を上げる事ができれば、利益は50百万円~100百万円程度上振れするものと思われる。もっとも、堅調な受注と豊富な受注残を考えると、「売上予想自体が保守的である」とも言える。