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ブリッジレポート:(2462)ジェイコムホールディングス vol.21

(2462:東証1部) ジェイコムホールディングス 企業HP
岡本 泰彦 社長
岡本 泰彦 社長

【ブリッジレポート vol.21】2012年5月期上期業績レポート
取材概要「スマートフォン市場の拡大が追い風となり、携帯電話業界向けのサービスが好調だ。使い慣れたフィーチャーフォン(従来型携帯電話)であれば、買い・・・」続きは本文をご覧ください。
2012年2月7日掲載
企業基本情報
企業名
ジェイコムホールディングス株式会社
社長
岡本 泰彦
所在地
大阪市北区角田町8番1号 梅田阪急ビルオフィスタワー19階
決算期
5月 末日
業種
サービス業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2011年5月 15,905 901 955 489
2010年5月 13,522 789 834 475
2009年5月 14,162 913 953 340
2008年5月 12,404 885 907 489
2007年5月 9,605 812 786 444
2006年5月 6,657 594 552 274
2005年5月 4,684 284 281 152
2004年5月 3,271 142 141 56
2003年5月 2,222 90 88 45
2002年5月 1,616 77 76 40
2001年5月 1,369 73 70 34
株式情報(1/26現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
714円 9,156,000株 6,537百万円 12.0% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
25.00円 3.5% 68.26円 10.5倍 462.03円 1.5倍
※株価は1/26終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROE、BPSは前期末の実績。
 
ジェイコムホールディングスの2012年5月期上期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
純粋持株会社である同社、総合人材サービス事業と携帯電話キャリアショップの運営を手掛ける連結子会社ジェイコム(株)、持分法適用関連会社サクセスホールディングス(株)とその傘下で認可保育園等の運営を手掛ける(株)サクセスアカデミーの3社でグループを形成。主力の総合人材サービス事業では、携帯電話業界に特化した差別化戦略が奏功し、業界動向や顧客ニーズを的確に捉えたサービスと情報の提供が顧客企業から高い評価を受けている。ただ、中期的には、既存事業を中心にしつつも、グループ全体での幅広いサービスの提供を目指している。
 
<沿革>
1993年9月、パッケージ旅行の企画会社(株)パワーズインターナショナルとして設立されたが、携帯電話市場の成長性に着目して96年4月に携帯電話ショップの運営を開始。同年11月にはジェイコム(株)に商号を変更すると共に定款を変更し携帯電話業界に完全にシフトした。98年10月にはショップ運営のノウハウを活かして携帯電話業界向け人材ビジネスに参入。人材ビジネスの順調な拡大を背景に、2005年12月の東証マザーズ上場、更には07年2月の東証1部への市場変更とステータスも向上した。
携帯電話業界に特化した人材サービス企業として事業展開してきた同社だが、09年12月には、業界・業種・職種を問わずシナジーのある事業へ展開するべく持株会社体制へ移行。商号もジェイコムホールディングス(株)に改めた。M&Aや戦略的な事業提携を積極的に推進していく考えで、この一環として、同年同月に認可・認証保育園の開設や院内・企業内・学内での保育サービスの受託を手掛ける(株)サクセスアカデミー(現サクセスホールディングス(株))に資本参加(持分法適用関連会社として議決権の20%を保有)。10年2月には東証1部上場の(株)TOWと資本・業務提携した他、11年9月には、住金物産(株)の100%子会社で、同社・同社グループ及び一般アパレル企業向けにデザイナーやパタンナー等の人材紹介を手掛けている(株)アイ・エフ・シーの全株を取得した。
 
<事業内容>
事業は、携帯電話業界向けを中心に、情報通信、金融、アパレル等を顧客とする総合人材サービス事業と携帯電話ショップ運営のマルチメディアサービス事業に分かれ、11/5期は前者の売上高が全体の97.2%を占めた。総合人材サービス事業は契約形態により、派遣契約、業務委託契約(同社から見れば業務の受託)、及び紹介予定・職業紹介契約に分かれ、セグメント内の売上構成比は、それぞれ68.1%、31.8%、0.1%。また、マルチメディアサービスでは、各通信キャリアと丸紅テレコム(株)との三者間契約により、関西地区でドコモショップ1店舗、ソフトバンクショップ1店舗を運営している。
 
<若年層のステップアップを支援>
総合人材サービス事業では、派遣社員等やアルバイトを受け入れる企業側のメリットだけを追求するのではなく、働く側のキャリアアップにも配慮している。具体的には、派遣社員もしくはアルバイトとして採用した社会経験の浅い学生やフリーター等の若年層を、教育やOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)により勤続年数に応じてステップアップさせ、最終的には希望する職業へ正社員として就職できるよう支援するシステムが構築されている。
 
 
2012年5月期上期決算
 
 
前年同期比17.0%の増収、同10.5%の経常増益
売上高は前年同期比17.0%増の87.3億円。スマートフォンの市場拡大に伴う人材需要の増加や前期上期から本格的に受注を開始した業務委託(同社から見た場合「受託」)案件の取り込みが進み主力の総合人材サービス事業の売上が84.8億円と同17.2%伸びた他、マルチメディアサービス事業の売上も2.4億円と同11.1%増加。地域別では、シェア拡大余地の大きい首都圏や北関東で営業強化に努めた結果、東日本地区の売上高が同22.6%増加した。
ただ、業務委託案件のサービス開始直後の一時的な現象で売上総利益率が低下したため、営業利益は前年同期並みの水準にとどまった。営業外損益の改善は保育サービスを手掛ける関連会社の好調(持分法投資利益:7百万円→35百万円)や教育研修にかかる助成金収入(19百万円)の計上によるもの。特別損失の減少もあり、四半期純利益は同19.2%増加した(この上期は特別損失として本社移転費用10百万円など21百万円を計上したが、前年同期は投資有価証券評価損37百万円やゴルフ会員権評価損19百万円など57百万円を計上)。
尚、期初予想に対して営業利益の下振れが比較的大きくなったが、この要因は、期初予想において特別損失に織り込んでいた本社移転時の原状回復費用が、上記決算では販管費に計上されたため。これを考慮すると、営業・経常利益は実質的には期初予想に沿った着地(本社移転は11年10月下旬)。
 
(2)総合人材サービス事業の動向
携帯電話業界においては、スマートフォンの普及で商品・サービスの複雑化から、携帯電話ショップでの一人当たり接客時間が長期化し、販売員だけでなく、商品の説明や設定等でも人材需要が発生しており、同社はこうしたニーズの取り込みが進んだ他、派遣から委託へのユーザーニーズの変化にもうまく対応できた。
契約形態別では、派遣から委託へ契約形態が変更された案件の多くを取り込む事ができたため、業務委託契約が大幅に増加。委託へのシフトで売上が減少した派遣も、件数ベースでは堅調に推移した。業界別では、スマートフォンやデータ端末等各通信キャリアの販売促進強化を背景に携帯電話業界向けサービスの需要が大きく伸びた他、全国的な対応と業界知名度の向上でアパレル業界向けの取引も増加した。また、顧客別では、業務委託契約の増加で大手携帯電話販売代理店向けの売上が増加した他、スマートフォン市場の拡大による専門知識を持った人材の需要増でその他の販売代理店向けの売上が前年同期比2.2倍に増加。大手以外の販売代理店やアパレル関係で新規開拓が進み、上期累計の取引社数は294社と前年同期比34社増加した。
地域別では、シェア拡大余地の大きい首都圏や北関東の営業強化に努めた結果、東日本地区の売上高が高い伸びを示した。
 
 
 
 
 
 
売上原価率が前年同期の82.7%から 83.7%に1.0ポイント上昇(悪化)した。業務委託契約に伴うサービス開始直後にみられる一時的な原価率の上昇があった事が大きいが、携帯電話業界の競争激化で想定以上に残業時間が増加した事も原価率上昇の一因となった。 一方、販管費率は11.6%から 11.4%に0.2ポイント低下(改善)した。採用及び人材育成の強化に伴い人件費や採用教育費の比率が上昇したものの、コスト管理の徹底や業務効率の適正化の推進に注力した成果が表れた他、本社移転に伴い地代家賃の比率も低下した。
 
(4)財政状態及びキャッシュ・フロー(CF)
上期末の総資産は前期末比2.1億円減の59.8億円。事業の拡大に伴い売上債権や未払金(スタッフに支払う給与)が増加したものの、満期償還で有価証券が減少した他、配当及び法人税等の支払いもあり、総資産全体では上記の通り減少した。バランスシートのスリム化が進み、上期末の自己資本比率73.1%と前期末比4.9ポイント改善。有利子負債に依存しない健全な財政状態が維持されている。
CFの面では、事業拡大に伴う運転資金の増加で営業CFがマイナスとなったものの、有価証券の償還による投資CFの黒字で吸収して1.5億円のフリーCFを確保した。配当の支払いで財務CFがマイナスとなったものの、現金及び現金同等物の上期末残高は11.2億円と前期末と同水準を維持した(17百万円増)。
 
 
 
 
2012年5月期業績予想
 
 
通期業績予想に変更は無く、前期比16.3%の増収、同23.5%の経常増益予想
年末年始商戦や年度末商戦等で繁忙期を迎える下期は、携帯電話業界のキャンペーン案件やイベント需要の取り込みによる売上の増加を見込んでおり、委託契約案件の収益性も改善する見込み。1株当たり15円の期末配当を予定している(上期末配当と合わせて年25円)。
 
 
(2)改正労働者派遣法案の修正のポイント
11年12月7日民主党・自民党・公明党の3党による改正労働者派遣法案の修正案が合意された。修正のポイントは下記の通りだが、今回の修正は、日本経済の活性化のためには多様で柔軟な働き方が必要である事、また、ライフサイクル等から派遣という働き方を選ぶ労働者は多く、働く意欲のある人にとって有効な働き方である事が認められつつある事を示している。こうしたコンセンサスの形成を踏まえて、今後、コンプライアンスの遵守やキャリア形成等優良な派遣会社が評価される傾向が強まると思われ、コンプライアンスの遵守を徹底すると共に、派遣社員等やアルバイトを受け入れる企業側のメリットだけを追求するのではなく、働く側のキャリアアップにも配慮してきた同社にとって追い風になると考える。
 
 
(3)4つの重点施策
12/5期の取り組みとして掲げている重点施策とその進捗状況は次のとおりである。
 
 
業務受託の品質向上
獲得した受託案件を継続的に受注していくためには取引先の信頼に応える品質を維持していく必要がある。このため、「顧客」を軸とした業務改善・営業管理体制を推進していく。
 
第二・第三の柱となる新規事業の確立
保育業界向け及びアパレル業界向けの人材サービスを第二・第三の柱として育成してく考えで、連結子会社ジェイコム(株)が手掛ける保育士紹介・派遣サービスとのシナジーを活かしながら、保育サービスを手掛ける持分法適用関連会社サクセスホールディングス(株)の事業を拡大させていく他、デザイナーやパタンナーなどアパレル分野の専門職の人材紹介を手掛ける(株)アイ・エフ・シーは、アパレル向け店舗スタッフの紹介・派遣で実績のあるジェイコム(株)とのシナジーを追及して行く。また、広告代理店と太いパイプを持ち企画提案力や制作力に優れたTOW(東証1部4767)との資本・業務提携による事業拡大にも注力していく考え。
 
グループ会社の管理体制強化
株式上場を目指しているサクセスホールディングス(株)を管理面・営業面からサポートしていく。サクセスホールディングス(株)は高い収益性を維持したまま、順調に売上・利益が拡大しており、11/12期は、売上高5.981百万円(10/12期5,237百万円)、営業利益343百万円(同185百万円)、経常利益472百万円(同178百万円)、当期純利益264百万円(同33百万円)と、売上・利益共に高く伸びる見込み。続く12/11期は売上高が7,002百万円と大きく伸びるものの、経常利益は480百万円と微増にとどまる見込みだが、これは13/11期以降の飛躍を念頭に積極的な施設の開設が利益を圧迫するためだ(12/12期は認可保育園10施設を含めた26施設の新規開設を予定。11/12期は19施設を新規開設し、期末施設数は193施設)。
 
事業環境に迅速に対応できるコンプライアンス体制の維持
事業領域が拡大し「働く」のサイクルが広がる中で、企業の成長スピードに応じたコンプライアンス体制を維持していく考え。
 
 
今後の注目点
スマートフォン市場の拡大が追い風となり、携帯電話業界向けのサービスが好調だ。使い慣れたフィーチャーフォン(従来型携帯電話)であれば、買い替え時の顧客対応は30分程度で済むが、高機能で操作方法が全く異なるスマートフォンの場合(マニュアルの配布がない機種もある)、2倍、3倍の時間を要する事が少なくないと言う。一方、端末販売に占めるスマートフォンの比率は11年にようやく20%を超えた程度で、15年には70~80%に達すると言われている。このため、携帯電話業界向けの人材サービスも、当面、活況が続くものと思われるが、同社の中期的な成長力を考えた場合、スマートフォン需要に沸く間に保育業界向けサービスやアパレル業界向けサービス等で第二・第三の柱となる事業の基盤固めができるか否かがポイントとなる。