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(4829) 日本エンタープライズ株式会社

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ブリッジレポート:(4829)日本エンタープライズ vol.19

(4829:東証2部) 日本エンタープライズ 企業HP
植田 勝典社長
植田 勝典社長

【ブリッジレポート vol.19】2012年5月期上期業績レポート
取材概要「コンテンツサービス事業において、課金体制や機種変更の際の会員引継ぎ等、キャリア側のスマートフォン対応が進んだ他、ソリューション事業にお・・・」続きは本文をご覧ください。
2012年1月24日掲載
企業基本情報
企業名
日本エンタープライズ株式会社
社長
植田 勝典
所在地
〒150-0002 東京都渋谷区渋谷1-17-8
決算期
5月 末日
業種
情報・通信
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2011年5月 2,370 266 283 168
2010年5月 2,147 150 173 77
2009年5月 2,475 292 317 175
2008年5月 3,123 572 578 272
2007年5月 3,677 774 783 447
2006年5月 3,416 694 688 418
2005年5月 3,018 587 570 348
2004年5月 1,958 205 168 226
2003年5月 1,752 134 131 58
2002年5月 1,704 51 53 23
2001年5月 1,417 301 262 126
株式情報(1/12現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
8,170円 377,000株 3,080百万円 5.9% 1株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
130.00円 1.6% 450.93円 18.1倍 7,760.61円 1.1倍
※株価は1/12終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROE、BPSは前期末の実績。
 
日本エンタープライズの2012年5月期上期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
モバイルソリューションカンパニーを標榜。コンテンツの自社開発にこだわり、合言葉は「コンテンツで勝つ!」。音楽やゲーム・デコメ等のコンテンツを制作し携帯等を通じて配信するコンテンツサービスと、企業のコンテンツ制作・運営やシステム構築等を手掛けるソリューションが2本柱。また、日本のコンテンツを世界へ広げるべく海外展開にも力を入れており、中国で第3世代携帯電話(3G)向けサービスの普及を睨み、各種コンテンツを配信している他、携帯電話の加入者数が急拡大しているインドでは現地法人を設立し、本格的な参入に向けて準備を進めている。 グループは、モバイルコンテンツ事業を推進している(株)ダイブ、レーベル事業等を手掛けるアットザラウンジ(株)、交通情報を中心にした情報提供とシステム開発の交通情報サービス(株)、因特瑞思(北京)信息科技有限公司、北京業主行網絡科技有限公司、瑞思創智(北京)信息科技有限公司の連結子会社6社と、Web・Mobileサイト開発・保守及びコンテンツ開発等の(株)フォー・クオリア、瑞思放送(北京)数字信息科技有限公司、NE Mobile Services(India)Private Limitedの非連結子会社3社。
 
コンテンツサービス事業
携帯電話等のキャリア(移動体通信事業者)が運営するi-mode、EZweb、Yahoo!ケータイといったインターネットに接続が可能な携帯電話の公式サイトや、mixi、Mobage、GREEといったソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)へ自社開発したコンテンツを提供し、月額課金あるいはダウンロード課金制により、その代金をキャリア等から受取っている。中国・インドをターゲットとした海外事業にも取り組んでいる。
 
ソリューション事業
コンテンツサービスから派生したビジネス。モバイルサイト構築・運用業務、ユーザーサポート業務、デバッグ業務、サーバネットワークの運用・監視・保守、自社コンテンツの2次利用(以上、ソリューション)、他社コンテンツの制作・運営(ソリューションコンテンツ)、更には、広告(アフィリエイト広告:携帯電話販売代理店との協業による成功報酬型コンテンツ販売)、及び物販等を行っており、携帯電話はもちろん、パソコン等のあらゆるメディアに対応したソリューションを提供している。
 
<海外展開 インドで電子書籍の配信がスタート>
同社のインド現地法人であるNE Mobile Services (India) Pvt. Ltd.(インド ムンバイ)が、11年12月20日より、インドでiPad向け電子書籍アプリ「iSTARDUST」の独占配信を開始した。
インドは契約携帯電話の登録件数が8億件(11年10月現在、8.81億件、出所:インド電気通信管理局)を超え、中国(9億件)に次ぐ世界第2位の携帯電話大国。現在も毎月1,500万件規模(インド電気通信管理局のデータを基に同社が算出)の増加が続いており、モバイルコンテンツ市場も第三世代携帯電話の普及を背景に成長速度が加速するものと見られている。こうした中、同社は09年11月に現地法人を設立し、スマートフォンやタブレット(多機能情報端末)の普及を追い風に高い成長が見込まれる電子書籍にフォーカスした事業展開を進めている。この一環として、インドのライフスタイルマガジン大手MAGNA社(インド ムンバイ)と提携し、MAGNA社が出版する「Stardust」等主力7雑誌の電子書籍の独占配信権(業務提携)を獲得。今回の「iSTARDUST」の独占配信はその第一弾であり、同社はインド市場における電子書籍事業の先導役として注目を集めている。
 
 
2012年5月期上期決算
 
 
前年同期比10.4%の増収、同35.6%の経常増益
売上高は前年同期比10.4%増の1,243百万円。国内外での電子書籍関連ビジネスを中心にコンテンツサービス事業の売上が伸びた他、スマートフォン向けアプリ開発を中心にソリューションの売上も増加した。利益面では、フィーチャーフォン(従来型携帯電話)からスマートフォンへの移行に伴う一時的な会員数の減少で収益性の高い音楽・メール・カスタム等が減少したため原価率が上昇したものの、コンテンツ制作等の内製化を進めて物販以外の売上原価の伸びを抑えた事や、広告宣伝費の効率的な使用及び経費節減に努めた事で営業利益率が11.3%と2.3ポイント改善。営業利益は140百万円と同37.6%増加した(四半期純利益の伸びが大きいのは、税負担率の低下による)。
期初予想との比較では、フィーチャーフォン(従来型携帯電話)の会員減少で売上が期初予想を下回ったものの、予想以上に利益率の高いスマートフォン関連の受託事業(アプリ開発)が増加した事やサイト開発・制作のコスト削減が進んだ事等で、利益面では大幅な予想超過となった。
 
 
コンテンツサービス事業の売上高は前年同期比11.3%増の627百万円。11年2月に(株)ACCESS(東京都千代田区)から引き継いだ電子書籍総合販売サイト「ケータイ書店Booker’s」(東京都書店商業組合との共同運営による)や女性向け健康サイト「女性のキレイ・リズム」が寄与した「その他」や「海外」を中心に売上が増加した。ソリューション事業の売上高は同9.5%増の616百万円。スマートフォン向けアプリ開発を中心に「ソリューション」の売上が増加した他、「物販」(CD販売)や「広告」(店頭アフィリエイト)の売上も増加した。
 
 
前年同期との比較では、国内外での電子書籍関連ビジネスの寄与でコンテンツサービス事業の売上が増加した他、スマートフォン向けアプリ開発やCD販売を中心にソリューション事業の売上も増加。物販の増加で売上総利益率が低下したものの、広告宣伝費の効率的な使用や経費節減等で販管費を抑制した結果、営業利益は70百万円と20.0%増加した。

一方、前四半期との比較では、コンテンツサービス事業の売上が増加したものの、ソリューション事業の売上の減少をカバーできなかった。ソリューション事業の売上が減少したのは、前四半期に大きくCD販売が伸びた反動と納期の関係でソリューションの売上が減少したためだが、ソリューション事業は、スマートフォン向けアプリの開発ニーズが本格的に顕在化してきた事に加え、スマートフォンの課金体制の整備が進んできた事でアフィリエイト広告の収益性も改善しており、モーメンタムは良好。
 
 
 
上期末の総資産は前期末比45百万円減の3,193百万円。借方では、配当や法人税等の支払い及び子会社への貸付等で現預金が減少する一方、子会社への貸付金で投資その他が増加。一方、貸方では、利益を計上した事で純資産が増加する一方、未払法人税(89百万円→64百万円)等が減少した。CFの面では、売上の増加に伴う運転資金や税金費用の増加(54百万円→87百万円)で営業CFが減少したものの、預金の払戻し等で投資CFが511百万円の黒字となったため、前年同期は50百万円だったフリーCFが581百万円に増加した。配当の支払いで財務CFがマイナスとなったが、現金及び現金同等物の上期末残高は1,622百万円と前期末比528百万円増加した。
 
 
 
事業別の施策と進捗状況
 
(1)国内事業
コンテンツサービス事業
新たな成長市場として期待されるスマートフォン市場の拡大を見据えて、①Android向けラインアップの拡充、②月額サイトのキャリア決済対応、及び③既存公式サイトの会員引継対応を進めた。
 
①Android向けラインアップの拡充
生活実用系やツール系のAndroid Webサイトの開設や、ユーザーの囲い込みを図るべく無料アプリを中心にAndroidアプリの拡充に取り組んだ。
 
 
②月額サイトのキャリア決済対応
デコメ、音楽、及び健康&フィットネス(女性のキレイ・リズム)の主力6サイトでマルチキャリア(NTTドコモ、au、ソフトバンクモバイル)対応を進めた。
 
③既存公式サイトの会員引継対応
月額課金サイトの決済対応やフィーチャーフォンからスマートフォンへの買い替え(機種変更)に伴う会員の引継ぎ対応等、携帯通信キャリアの施策に合わせた対応を進めた。具体的には、10月13日に auケータイ向けのEZwebコンテンツをauスマートフォンに対応させた他、11月18日にNTTドコモ開始したスマートフォン向けの新ポータルサイト「dメニュー」(ユーザーはフィーチャーフォンからスマートフォンへ買い替えても、継続して利用する事が可能になった)への対応を進めた。
 
 
上記の成果、フィーチャーフォン向けの売上の減少をスマートフォン向けの売上の増加で吸収できる体制が整った。下期は、店頭アフィリエイトによる会員獲得、アプリマーケットの有効活用、及び一人当たり利用額の向上等で増収ペースが加速する見込み。
 
ソリューション事業
顕在化しつつあるスマートフォンを活用したビジネス展開の支援ニーズに対応して、スマートフォン向けアプリ・サイトの制作に注力した他、コンテンツ販売に対する成功報酬を支払う「店頭アフィリエイト」を中心にした携帯電話販売代理店との協業強化やスマートフォン販売の手続き処理時間の長期化を解消する「店舗オペレーション効率化支援」の提供に取り組んだ。
 
 
 
(2)海外事業
現在、同社グループは海外事業として、中国及びインドで事業展開を進めている。
中国においては、2G、2.5G向けゲームコンテンツを配信しつつ、3Gの拡大を見据え、事業ドメインを電子コミックの配信サービスと位置付け、中国の作家や出版業界と連携しながら携帯電話向け電子コミックの配信に取り組んでいる。具体的には、「中国軽工業出版社グループ」(子会社が中国で科学技術・芸術コンテンツのインターネット出版事業を展開)や日本、台湾、韓国の、アニメ版権、漫画版権、及びキャラクターを、自社配信プラットフォーム「漫魚」及びキャリア公式配信プラットフォーム「動漫基地」を通して配信しており、「漫魚」においては、ショップ型ビューアを無料配信し、ビューア経由で電子書籍を有料配信している。
また、インドにおいては、スマートフォン・3G端末の普及を見据えた取り組みを進めており、この一環として、11年12月20日に業務提携したMAGNA社が出版している雑誌の電子書籍配信(iPadアプリケーション)を開始した。
 
 
 
2012年5月期業績予想
 
 
通期業績予想に変更はなく、前期比19.4%の増収、同6.0%の経常増益予想
上期の利益が期初予想を大きく上回ったものの、通期の利益予想を据え置いた。スマートフォン向けの売上の増加とフィーチャーフォン向けの売上の減少が綱引きとなり、売上の着地点が読み難い事。また、スマートフォン向け広告宣伝費の積み増しを予定している事がその理由。
上記の業績予想においては、コンテンツサービス事業(売上高1,466百万円、前期比24.3%増)、ソリューション事業(売上高1,364百万円、同14.5%増)共に増収を想定しており、増収効果による営業増益を見込んでいる。配当は前期と同額の1株当たり130円の期末配当を予定。
 
 
コンテンツサービス事業においては、第3四半期(12-2月)はフィーチャーフォン向け月額課金サイトの会員減少の影響を受けるものの、第4四半期(3-5月)はスマートフォン向け月額課金サイトの会員獲得でフィーチャーフォン向けの減少をカバーできると見ている。また、11年12月に子会社化した交通情報サービス(株)の寄与も見込まれる。 ソリューション事業においては、スマートフォンの普及を追い風に企業向けソリューションの拡大が見込まれる他、店頭アフィリエイトをはじめとした携帯電話販売代理店との協業強化の成果も見込まれる。
 
<株式の取得>
CMS(Content Management System)やWeb・Mobileサイト開発・保守等の(株)フォー・クオリア及び交通情報の配信等の交通情報サービス(株)の2社が、子会社として新たにグループに加わった。
 
(株)フォー・クオリア(東京都渋谷区 代表取締役社長 松永州央)
11年10月31日に(株)アイ・エム・ジェイの子会社である(株)IMJモバイル(東京都目黒区)から株式を譲り受けた(100%子会社化)。(株)フォー・クオリアは、06年8月の設立で、直近の資本金は20百万円。サイトマネジメント型 CMS(コンテンツ管理システム)、Web・Mobileサイト開発・保守、デザイン&プランニング、及びデバッグサービスを手掛けており、200以上の携帯公式サイトの開発実績を有する他、Web構築の簡素化を実現するCMSパッケージや自社デザイナーによる高度なWeb・モバイルコンテンツの開発に強みを持つ。
 
 
今回、機能性・操作性・デザイン性に優れたサイト開発で実績を有する(株)フォー・クオリアを子会社化した事で、スマホ向けコンテンツ配信サービスにおける提供量・品質・スピード面での課題解決に道筋をつけた他、高機能なモバイルコンテンツの管理・運用システムがラインナップに加わった。日本エンタープライズ (株)が持つ企画力と(株)フォー・クオリアが持つ開発力を融合して更なるシナジーを追及していく考え。
 
交通情報サービス(株)(東京都千代田区 代表取締役社長 新田 勇)
11年12月21日に株式の買い増しにより連結子会社とした(53.1%の議決権を保有するに至る)。交通情報サービス(株)は、93年7月に東京都の他、民間会社58社の半官半民で立ち上げた。直近の資本金は499百万円で、①交通情報、交通関連情報、生活利便情報及び娯楽・文化・レジャー等の情報の提供、②上記情報提供に関する装置及びシステムの企画、開発、設計、製造、販売、工事、保守、リース等の関連サービスの提供、及び③前記各種情報等の利用等に関するコンサルティングを手掛けている。
 
 
今後、日本エンタープライズ(株)が持つ経営資源やモバイル及びコンテンツビジネスに関するノウハウと、交通情報サービス(株)が持つ情報系コンテンツ(日本エンタープライズはエンタテイメント系コンテンツを得意とする)を融合し、サイト会員の獲得、品質改善、及び顧客満足度アップにつなげていきたい考え。
 
 
今後の注目点
コンテンツサービス事業において、課金体制や機種変更の際の会員引継ぎ等、キャリア側のスマートフォン対応が進んだ他、ソリューション事業においても、スマホ関連の受託開発需要の顕在化やキャリアの課金体制整備に伴う店頭アフィリエイトにおける有料コンテンツの増加等、外部環境の改善が顕著である。また、スマートフォン向け店頭アフィリエイトのシステム開発の完了、M&Aによるグループ力の強化、更にはソリューションのメニュー増加等、同社社内において、上記の外部環境の改善を活かすための体制整備が進んでいる事も確認できた。M&A効果では、開発力の強化やサービスラインナップの拡充が進んだ事に加え、交通情報サービス(株)の収益貢献に期待が高まる。連結対象期間が短いため今期業績への寄与はわずかだが、売上高6~7億円、経常利益1.5~2.0億円の実力を有するだけに、通期で取り込まれれば連結業績へ与えるインパクトは大きい。上記の事業環境の改善や社内体制の整備の進展と合わせて考えると、遠からず07/5期の経常最高益が視野に入ってくるものと思われる(当期純利益ベースでは少数株主持ち分が控除される)。尚、交通情報サービス(株)の株式買い増し及び連結子会社化は、07年に交通情報サービス(株)の社外取締役に就任して以来、同社経営を支援してきた植田社長の経営力が評価され、実現したものだ。