ブリッジレポート
(9616) 株式会社共立メンテナンス

プライム

ブリッジレポート:(9616)共立メンテナンス vol.30

(9616:東証1部) 共立メンテナンス 企業HP
石塚 晴久 会長
石塚 晴久 会長
佐藤 充孝 社長
佐藤 充孝 社長
【ブリッジレポート vol.30】2012年3月期上期業績レポート
取材概要「この上期でREITへの売却によるオフバランス化(セールス・アンド・リースバック)がほぼ完了し、有利子負債も前期末比17%減少する等、課題・・・」続きは本文をご覧ください。
2012年1月17日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社共立メンテナンス
会長
石塚 晴久
社長
佐藤 充孝
所在地
東京都千代田区外神田 2-18-8
決算期
3月
業種
サービス業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2011年3月 84,983 4,610 3,308 1,052
2010年3月 84,513 4,033 3,012 1,254
2009年3月 82,303 5,349 4,510 2,133
2008年3月 75,606 4,492 4,167 2,740
2007年3月 66,287 3,745 3,787 2,413
2006年3月 63,084 4,611 4,823 2,010
2005年3月 58,014 4,407 4,411 2,343
2004年3月 54,080 4,004 4,059 2,137
2003年3月 50,108 4,148 3,884 2,039
2002年3月 50,064 3,908 3,580 1,821
2001年3月 37,884 2,827 2,643 1,146
2000年3月 36,787 2,368 2,281 906
株式情報(1/11現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
1,467円 14,364,644株 21,072百万円 3.5% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
38.00円 2.6% 99.55円 14.7倍 2,099.90円 0.70倍
※株価は1/11終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROE、BPSは前期末実績。
 
共立メンテナンスの2012年3月期上期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
"ライフステージにおける様々な場面での「食」と「住」さらに「癒し」のサービスを通じて、広く社会の発展に寄与する"と言う経営方針の下、「現代版下宿屋」(食事付きの寮の運営)を中心にした寮事業、「温泉感覚を取り入れた大浴場」と「美味しい朝食」といった寮事業のノウハウを活かしたホスピタリティ重視のビジネスホテルや「リーズナブルで質の高いリゾートライフ空間の創造と提供」をテーマに掲げたリゾートホテルのホテル事業、オフィス(事務所)・レジデンス(住居)のビルメンテナンス、ビル賃貸及び賃貸代行、駐車場運営等の総合ビルマネジメント事業、外食やレストラン運営受託のフーズ事業等を展開。知名度と実績で他社を凌駕する主力の寮事業を安定収益源とし、ホテル事業の育成により成長を加速している。

事業の種類別セグメントと売上構成(11/3月期)は次の通りである。
 
 
 
 
2012年3月期上期決算
 
 
前年同期比2.4%の増収、同17.1%の経常増益
売上高は前年同期比2.4%増の438.3億円。事業構造改革プロジェクトの成果で主力の寮事業が堅調に推移する中、東日本大震災の影響が危惧されたホテル事業も、ビジネスホテルが前年同期を上回る稼働率で推移した他、リゾートホテルもゴールデンウィーク(GW)を機に稼働率が急回復。その他の事業も、今期は開発物件が下半期に集中するデベロップメント事業を除き売上が増加した。利益面では、PKP事業(自治体向け業務受託事業)にかかる先行投資負担があったものの(1.7億円の減益要因)、ビジネスホテルの高稼働と前期にオープンした事業所の収益性の改善でホテル事業の利益が伸びた他、限界利益の増加と大口契約にかかる契約金の計上で寮事業の利益も増加。営業利益は33.5億円と同18.0%増加した。四半期純利益の伸びが大きいのは特別損益の改善によるもので、投資有価証券評価損2.5億円など特別損失3.6億円を計上したものの、資産除去債務会計基準の適用に伴う影響額6.9億円の計上がなくなった事に加え、固定資産売却益1.2億円を特別利益に計上した。
設備投資は前年同期比56.7%増の25.6億円、減価償却費は同21.7%減の16.6億円。

尚、期初予想に対して利益の上振れが大きかったが、この主要因はホテル事業の好調である。期初予想を上回る高稼働が続いたビジネスホテルの利益が2.5億円、GW(期間中に全18棟中8棟が満室稼働となり、全体の稼働率も前年同期の90.3%から95.5%に上昇)を機に稼働率が急回復したリゾートホテルの利益が5億円、それぞれ上振れ。この他、寮事業やデベロップメント事業で経費削減が予想以上に進んだ。
 
 
寮事業
売上高は前年同期比1.6%増の200.6億円、セグメント利益は同2.4%増の30.3億円。震災被災地からの学生の入寮キャンセルがあったものの、期初稼働率(95.3%)が前年同期の実績を2.4ポイント上回る順調なスタートを切った事に加え、大手企業との新人研修寮としての新規契約や大口の留学生法人契約で契約金収入も増加した。上期末の稼働契約数は前年同期末比913名増の28,702名。
 
 
ホテル事業
売上高は前年同期比7.0%増の169.7億円、セグメント利益は同71.1%増の12.7億円。ホテル事業はドーミーイン(ビジネスホテル)事業とリゾート(リゾートホテル)事業に分かれるが、ドーミーイン事業では、復興需要があった一部の事業所も含めて、既存事業所が総じて前年同期を上回る稼働率で推移。また、震災による自粛等の影響があったリゾート事業も、ゴールデンウィークを機に稼働率が急回復し、夏場の本格的なリゾートシーズンは高稼働で推移した。尚、東北エリアのビジネスホテルは復興需要を受けて稼働率が大幅に改善した(仙台本館:76.8%→97.3%、仙台アネックス:82.3%→97.4%、仙台駅前:85.1%→98.7%、郡山:78.1%→88.7%)。
この上期はドーミーイン3事業所を新規オープンした(「天然温泉 富嶽の湯 ドーミーイン三島」、「天然温泉 白鷺の湯 ドーミーイン姫路」、「天然温泉 袖湊の湯 ドーミーインPREMIUM博多キャナルシティ前」)。
 
 
その他の事業(総合ビルマネジメント事業、フーズ事業、デベロップメント事業、その他事業)
総合ビルマネジメント事業は、ビル賃貸部門における稼働率改善等で増収・増益、デベロップメント事業も損益が改善したが、新規事業であるPKP事業は費用が先行し1.7億円の減益要因となった他、フーズ事業は消費低迷と価格競争の激化等で利益計上には至らなかった。
 
 
期末の総資産は前期末比181.5億円減の1,231.6億円。売上の増加に伴い売上債権が増加した他、下期引き渡し予定の販売用不動産(10.8億円→23.8億円)を中心にたな卸資産が増加したものの、自社所有物件のREITへの売却が進み有形固定資産が減少。回収した資金と手持ち資金を有利子負債の削減に充てた事でバランスシートのスリム化が進み、自己資本比率は25.2%と、前期末の21.3%から3.9ポイント改善した。
 
 
CFの面では、運転資金の増加で営業CFのマイナス幅が大幅に拡大する一方、有形固定資産の売却や敷金・保証金の差し入れの減少で投資CFのマイナス幅が縮小した。フリーCFが36.4億円のマイナスになった事に加え、有利子負債の削減を進めたため財務CFもマイナスとなり、現金及び現金同等物の上期末残高は90.4億円と前期末比178.5億円減少した。
 
 
2012年3月期業績予想
 
 
通期業績予想に変更は無く、前期比8.3%の増収、同5.8%の経常増益
上期業績が期初予想を上回ったものの、「仕入食材費や光熱費の価格変動等、先行きに不透明な要素がある」として、期初予想を据え置いた。
売上高は前期比8.3%増の920億円。賃料改定効果等による総合ビルマネジメント事業の増収と新規事業であるPKP事業の寄与でその他の事業の売上が同12.9%増加する他、寮事業(同3.3%増)、ホテル事業(同5.0%増)も堅調に推移する見込み。仕入食材費や光熱費の価格変動等を織り込んだ結果、原価率及び販管費率がわずかに悪化するものの、増収効果で吸収。営業利益は48.5億円と同5.2%増加する見込み。設備投資は同54.8%増の47億円を計画しており、減価償却費は同15.8%減の36.0億円を織り込んだ。
配当は1株当たり19円の期末配当を予定(上期末配当と合わせて年38円)。
 
 
 
新中期経営計画「Kyoritsu Value Up Plan !」(12/3期~16/3期)
 
 
寮事業の稼働率低下とホテル事業の投資負担から業績が伸び悩んでいたが、新中期経営計画において、寮事業モデルの見直しとホテル事業の投資回収を進めると共に、第3の柱となる事業の育成と経営基盤の強化に取り組んでいく考え。最終の16/3期には売上高1,350億円、営業利益110億円、経常利益90億円、当期純利益45億円の達成を目指しており、この目標達成に向けた施策として、寮事業の構造改革の仕上げと新たな成長戦略の遂行、収穫期入りしたホテル事業の収益拡大の加速、第三の柱となる新規事業の育成、及び人材育成と適正配置の4項目を挙げている。
 
 
学校の立地や企業のニーズに応じたピンポイント開発に取り組むと共に、1棟毎の立地、スペック等に応じた戦略的スクラップforビルドを進める。また、新商品「ハイドミール」の投入によるワンルームニーズの取り込みでドミール契約室数を増加させる(中計期間中約3,000室増加)他、入寮者を対象とする「ドーミー倶楽部」を設立し、従来の「食」「住」に加え、就職活動情報など「+α」の場を提供する。
 
 
ビジネスホテル事業では、施設毎の立地・スペック等に基づき「スタンダード」、「PREMIUM」、「EXPRESS」、「WEEKLY」分類を再仕訳する事で同一ブランド内の品質を均質化すると共に、各施設のポテンシャルを最大化しブランディングを強化する。また、成長著しいアジア圏の需要の取り込みにより成長を加速すると共に、グローバル化によるブランド力、認知度の向上を図る。一方、リゾートホテル事業では、リピーター対策として、顧客の期待値を超える「サプライズ」の提供により顧客満足度の向上を図ると共に、平均単価の引き上げと労働生産性の改善に取り組む事で収益構造を抜本的に改革する。
 
 
※ PKP(Public Kyoritsu Partnership)事業の展望
全国約1,700地方自治体において、民間委託が可能な業務に従事する職員数は、正職員10万人、臨時職員50万人を数え、金額換算すると年間約2兆円の市場規模。自治体側には運営コストの削減ニーズ(職員数の削減、地方交通網整備、第三セクター・公社の整備または廃止)があり、同社は人口30万人未満の市町村を「包括委託」の対象、人口30万人以上の中核都市を、「大型案件」、「部分委託」の対象として営業展開していく。

尚、PKP事業の基本戦略は、コンサルティングに基づく制度設計から業務委託までの一貫受託、及び車両運行から施設運営に至るまで多様性に富む複数業務を一括受託することの2点。受託業務内容としては、施設運営管理(学校給食、図書館等)、車両運行管理(スクールバス、公用車等)、地域活性化支援(温浴・宿泊施設等)を考えている。
 
実績(2011年11月30日現在)
受託実績自治体数14自治体(このうち包括受託先2自治体:北海道湧別町、和歌山県日高川町)
受託施設数36件/ 受託件数357台・人
 
 
 
 
 
今後の注目点
この上期でREITへの売却によるオフバランス化(セールス・アンド・リースバック)がほぼ完了し、有利子負債も前期末比17%減少する等、課題だった財務戦略が一段と進んだ。また、過去数年間、積極的に事業所を増やしてきたビジネスホテル事業やリゾートホテル事業が投資の回収期を迎えつつあり、ホテル事業の収益性改善も顕著だ。
こうした中、今期よりスタートした新中期経営計画では、収益基盤である寮事業及びホテル事業の強化を図ると共に、ホテル事業における海外への展開や既存事業で培ってきた強みを活かせるPKP事業の育成に取り組む考え。PKP事業の立ち上がりは順調で、今期10億円の売上が見込まれるが、来期は34億円に拡大し、事業所ベースの損益(グループの全社費用等を考慮しない損益)が黒字転換する見込み。来期は約24億円の増収が見込まれるが、商談が進んでおり、委託先の予算が固まる年末から年始にかけて正式に受注が確定する予定。
今後、寮事業では新規の施設開発による成長と既存施設のスクラップ&ビルドによる収益力の強化が期待でき、ホテル事業は投資回収が本格化する。また、ホテル事業の海外展開はこれからだが、PKP事業が順調に立ち上がる等、新規事業の育成も進捗している事から、成長軌道への回帰に向けた展望が開けてきたと考える。