ブリッジレポート
(6498) 株式会社キッツ

プライム

ブリッジレポート:(6498)キッツ vol.7

(6498:東証1部) キッツ 企業HP
堀田 康之 社長
堀田 康之 社長

【ブリッジレポート vol.7】2012年3月期上期業績レポート
取材概要「上期業績で利益の圧迫要因となった中東向け大型プロジェクト物件は、年末までに全ての製品の出荷完了予定、関連費用及び損失の計上は上期で一巡・・・」続きは本文をご覧ください。
2011年11月22日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社キッツ
社長
堀田 康之
所在地
千葉市美浜区中瀬1-10-1
決算期
3月末日
業種
機械(製造業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2011年3月 106,059 6,341 5,929 3,063
2010年3月 96,592 6,976 6,248 3,079
2009年3月 127,095 7,188 6,475 3,396
2008年3月 149,274 11,615 10,525 6,290
2007年3月 149,512 11,342 10,652 9,973
2006年3月 107,631 9,673 9,132 8,070
2005年3月 95,705 9,627 8,513 5,804
2004年3月 73,802 4,181 2,962 1,598
株式情報(11/8現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
310円 109,223,604株 33,859百万円 5.8% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
7.50円 2.4% 25.63円 12.1倍 480.88円 0.6倍
※株価は株価は11/8終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROE、BPSは前期末実績。
 
キッツの2012年3月期決算上期について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
バルブを中心とした流体制御機器・装置の総合メーカー。バルブは、「水道メータ周り」、「ガスメータ周り」、「給湯器」等でよく目にするが、家庭だけでなく、あらゆる産業設備に使われており、同社は素材からの一貫生産を基本に、青銅、鋳鉄、ダクタイル、ステンレス鋼等を素材に数万種をラインナップしている。また、バルブの部材として使用される伸銅品の外販を行っている他、フィットネス事業やホテル事業等も手掛けている。東洋バルヴ(株)、(株)清水合金製作所など連結子会社31社と共にグループを形成しており、海外売上高比率は11/3月期現在で22.6%。バルブでは国内トップ。伸銅品では国内2位のポジションにある。
 
<事業セグメントの概要>
事業は、バルブ事業、伸銅品事業、及びその他に分かれ、11/3期の売上構成比は、それぞれ72%、19%、9%。
 
バルブ事業
キッツグループのコア事業であり、上下水道・給湯・ガス・空調等のライフラインや石油・化学・紙パ・半導体等の産業分野において、流体制御機器として重要な役割を担うバルブや継手を中心に、製造・販売している。
 
伸銅品事業
伸銅品とは、銅に亜鉛を加えた「黄銅」、すず及びりんを加えた「りん青銅」、ニッケル及び亜鉛を加えた「洋白」等の銅合金を、溶解、鋳造、圧延、引抜き、鍛造等の熱間または冷間の塑性加工によって、板、条、管、棒、線等の形状に加工した製品の総称。キッツグループの伸銅品事業は、黄銅製の材料を用いた「黄銅棒」を生産販売している。この黄銅棒は、バルブの部材を初め、水栓金具、ガス機器、家電等の部材として使用されている。
 
その他
総合スポーツクラブの経営(フィットネス事業)、ホテル・レストラン経営(ホテル事業)、及びガラス工芸品の販売を行っている。
 
 
 
 
2012年3月期上期決算
 
 
前年同期比9.8%の増収、同18.2%の経常減益
売上高は前年同期比9.8%増の563.5億円。フィットネス事業やホテル事業の売上が東日本大震災の影響で減少したものの、主力のバルブ事業の売上が国内外で伸びた他、銅相場の上昇で伸銅品事業の売上も増加した。ただ、中東向けの大型プラント物件の受注が利益を圧迫。原材料価格の上昇や円高と価格競争の激化によるバルブ価格の下落もあり、営業利益が同16.2%減少した。

尚、為替レートは、1ドル=81.77円(前年同期実績91.02円)、1ユーロ=115.98円(同119.24円)。電気銅建値は771,000円/トン(同681,000円/トン)。
 
 
バルブ事業は、震災後の仮需が1Q(4-6月)で一巡したものの、2Q(7-9月)は海外売上高が約6億円増加し1Qと同水準の売上を確保した。ただ、利益面では、中東向けプラント物件等の損失計上や売上構成の変化(収益性の高い青黄銅製バルブの売上減)による利益率悪化で前四半期比45.1%減少した。銅相場の乱高下の影響で伸銅品事業の収益性が低下する一方、施設稼働率の改善と原価低減でフィットネス事業の収益性が改善した。
 
 
バルブ事業
国内、海外共に売上が増加し、セグメント売上高は402.8億円と前年同期比10.7%増加した。このうち国内売上高は同7.0%増の274.4億円。市場別では、水市場(上下水道向け、同25%増)、機械装置関連市場(同4%増)に加え、一般化学市場やガス市場も震災に伴う工場の復旧需要等で増加。一方、半導体市場が微増(2Qに限れば、前年同期比、前期半期比共に減収)、石油精製・石油化学市場が前年同期並み。また、建築設備市場は震災直後に発生した仮需(代理店の在庫積み増し)で1Qに売上が増加したものの、2Qはその反動による在庫調整で減収となり、上期累計でも微減収となった。海外売上高は同19.5%増の128.4億円。中国(同56%増)やタイ・インドネシア(同20%増)において前期からの好調が続いており、北米も前下期の受注増を受けて売上が38%増加。一方、債務問題に揺れる欧州が低迷した(欧州・その他で同10%減)。
セグメント利益は同11.1%減の31.8億円。増収効果や原価低減効果があったものの、中東向け大型プラント物件での不採算案件の発生などが響いた上、市況の下落や原材料高など悪材料が重なった。
 
伸銅品事業
乱高下した銅相場の影響を受けて増収ながら、セグメント利益が減少した。具体的には、銅相場高騰に伴う製品価格の上昇で売上高が112.0億円と前年同期比15.1%増加したものの、原価差益の減少(銅相場が継続的に上昇した前年同期と異なり、乱高下したため)や銅相場の急落による在庫評価減に加え、増産対応による労務費の増加もあり、セグメント利益が1.9億円と同32.8%減少した。
 
その他
フィットネス事業、ホテル事業共に震災の影響を受け、売上高が48.6億円と前年同期比6.5%減少したものの、フィットネス事業で原価低減が進み(節電及び販促費の削減)、セグメント利益は3.0億円と同8.8%増加した。尚、震災では、フィットネス事業において、水戸店、仙台店が被災し一時休店(6月に再開)した他、ホテル事業も団体客のキャンセル等が発生した。
 
(3)会社別動向
個別業績は、売上高271.6億円(前年同期比7.3%増)、営業利益4.0億円(同67.5%減)、経常利益9.0億円(同48.2%減)。復旧需要等で売上が増加したものの、中東向け大型プラント物件の評価損・廃棄損に加え、製品価格低下や原材料高が響いた。
子会社については、建築・水市場において、東洋バルヴ及び清水合金製作所の売上が復旧需要等で増加。ただ、利益面では、稼働率の改善で清水合金製作所の損益が改善する一方、価格低下で東洋バルヴが微減益となった。海外では好調なアジア経済を背景にキッツタイの売上・利益が大きく伸びた。プラント・エネルギー市場では、前期に苦戦した北澤閥門(中国)が売上拡大で損益が大幅に改善、独PERRIN(ペリン)社も売上が大きく伸び、黒字転換。受注好調なキッツアメリカも売上が大きく伸び利益が倍増した。この他、半導体製造設備向けを手掛けるキッツエスシーティーは売上がわずかに増加したものの、市況下落で採算が悪化。伸銅品事業を手掛けるキッツメタルワークスが増収ながら減益。フィットネス事業のキッツウェルネスが原価低減で減収ながら増益。ホテル事業のホテル紅やが減収・減益。
 
 
有利子負債の削減を進めたため、上期末の総資産は999.3億円と前期末比2.0億円減少した。同社個別の在庫の増加、売上の増加に伴う子会社(東洋バルヴ、清水合金製作所、ペリン社)の在庫積み増しでたな卸資産が増加する一方、現預金及び有利子負債が減少した。
CFの面では、たな卸資産が増加する一方、仕入債務が減少したため営業CFが大幅に減少。設備投資を抑制したものの、前年同期は11.2億円の黒字だったフリーCFが8.6億円のマイナスに転じた。有利子負債の削減に伴い財務CFもマイナスとなり、現金及び現金同等物の上期末残高は116.4億円と前期末比10.5億円減少した。
 
 
 
2012年3月期業績予想
 
 
下方修正された通期予想は前期比2.8%の増収、同20.7%の経常減益
下期は仮需の影響が無くなるバルブ事業が前年同期並みの売上を確保するものの、銅相場の下落で伸銅品事業の売上が減少する見込み。利益面では、円高が響く上、売上構成の変化と価格下落でバルブ事業の利益が減少する他、銅相場の下落で伸銅品事業の利益も減少。営業利益は52億円と同18.0%減少する見込み。
ただ、上期との比較では、たな卸資産の健全化が進んだバルブ事業の利益が同32.1%増加し、連結ベースの営業利益も同21.8%増加する見込み。1株当たり4円の期末配当を予定している(上期末配当と合わせて年7.5円)。
 
 
 
 
(2)グループ経営基盤の確立とサービスレベルの向上に向けた取り組み
11年6月には、連結子会社である三吉バルブが青黄銅製バルブの生産を行う川越工場を閉鎖し、生産をキッツに移管した。来12年1月には、青黄銅製バルブの生産・販売を行う連結子会社東洋バルヴを営業部門と製造等の非営業の部門に会社分割する予定で、非営業部門はキッツに移管され、東洋バルヴは販売のみを行う会社として新たなスタートを切る。いずれも強固なグループ経営基盤の確立に向けた取り組みであり、12年1月以降は、グループの基幹事業である青黄銅製バルブの生産拠点を、キッツ茅野工場(現東洋バルヴ茅野工場)とKITZ(Thailand)Ltd.の2拠点に集約し、経営資源の効率化に加え、設計部門など重複業務の解消による経費削減も進める見込み。
また、11年10月にシンガポールに販売子会社「KITZ Corporation of Asia Pacific Pte.Ltd.」を設立した。アジア・パシフィック地域に密着した販売・マーケティング拠点との位置づけで、今後、キッツグループ長期経営計画「KITZ Global Vision 2020」における海外重点エリアの一つであるアジア・パシフィック地域において収益拡大を進める上で重要な拠点となる。
 
 
取材を終えて
上期業績で利益の圧迫要因となった中東向け大型プロジェクト物件は、年末までには全ての製品の出荷が完了する予定で、関連費用及び損失の計上は上期で一巡した。大型プロジェクト案件は、これまでも結果として採算面で厳しいケースが多かったため、新たにプロジェクト専任の部署を新設した。同部署は、営業、技術・設計、購買、原価管理、生産管理、品質管理、品質保証等を網羅した約60人の部隊。積極的な営業活動によるビジネスチャンスの取り込みと確実な収益化が期待されている。
国内が仮需の一巡による落ち込みからの回復過程にあり、今後、復興需要の本格化が期待できる。一方、海外は欧州の苦戦が続きそうだが、アジア・オセアニアや北米の好調が続いており、受注残も増加傾向にあるようだ。震災の影響や不採算案件が一巡しており、(回復速度を測る事は難しいが)業績は今上期を底に回復に向かうものと思われる。