ブリッジレポート
(2317) 株式会社システナ

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ブリッジレポート:(2317)システナ vol.14

(2317:東証1部) システナ 企業HP
逸見 愛親 社長
逸見 愛親 社長

【ブリッジレポート vol.14】2012年3月期第2四半期業績レポート
取材概要「カテナ(株)の吸収合併から今期で2年が経過した。前期の本体の構造改革に続き、今期は下期にかけて子会社の構造改革を着実に実行することで、・・・」続きは本文をご覧ください。
2011年11月22日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社システナ
社長
逸見 愛親
所在地
東京都港区海岸一丁目2番20号 汐留ビルディング14階
決算期
3月 末日
業種
情報・通信
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2011年3月 39,176 2,579 2,661 2,957
2010年3月 3,636 490 536 340
2009年10月 8,161 1,261 1,258 1,180
2008年10月 9,603 1,816 2,153 1,275
2007年10月 7,930 1,595 1,555 849
2006年10月 5,917 961 967 602
2005年10月 4,180 717 691 561
2004年10月 3,093 677 643 391
2003年10月 2,461 516 511 280
2002年10月 1,940 398 380 196
2001年10月 1,524 180 175 93
株式情報(11/16現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
49,400円 302,168株 14,927百万円 28.9% 1株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
2,600.00円 5.3% 5,384.02円 9.2倍 48,856.93円 1.0倍
※株価は11/16終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
システナの2012年3月期第2四半期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
データ通信系のファームウェア(主に携帯電話端末や基地局向けの組み込みソフト)開発に強みを持ち、情報システム構築等のシステムインテグレーション事業を育成中だった(株)システムプロが、持分法適用会社だったカテナ(株)を吸収合併し、2010年4月1日にシスプロカテナ(株)として再スタートを切り、2010年7月1日に社名を新たに(株)システナに変更した。新会社は、システムプロの情報システムサービス事業とカテナの金融機関向けを中心とするシステム開発事業を連携させると共に、システムプロの移動体高速データ通信システム事業との融合を図り、ユビキタス時代のエアー・シンクライアント・サービスの実現を目指している。
 
<事業内容>
モバイル高速データ通信事業
携帯電話・スマートフォンを中心にモバイル端末全般の開発工程(企画、仕様策定、設計・開発、品質評価など)に携わる。主要顧客はモバイル端末メーカーにソフトウェア製品をライセンスしているソフトウェア開発販売会社(サードパーティー)。メール機能、ブラウザ機能、マルチメディアプレーヤー機能、デジタルテレビ機能、GPS機能等での実績が豊富。ここもとはAndroidプラットフォームの非携帯分野への組込みや制御ソフトウェアの設計・開発にも注力している。
情報システム事業
金融機関(銀行、生損保等)の基幹・周辺システムの開発を手掛けるほか、ネットビジネス事業会社向けに電子書籍システムやコンシューマ向けポータルサイト構築といったオープン系システムなども手掛ける。オープン系技術と金融分野の業務知識及び基盤系技術を融合した事業展開により新たな領域の開拓を進めていく考え。
ITサービス事業
システムの保守・運用、データ入力、及びヘルプデスク・ユーザーサポートを手掛ける。主要顧客は電機メーカー、外資系企業、官公庁等。
ソリューション営業
ITプロダクト(サーバ、PC、周辺機器、ソフトウェア)の販売やシステムインテグレーションを手掛ける。今後は、ITサービス事業と一体となって営業展開を進め、所有から利用(クラウド等)へのニーズの変化に対応する事で事業拡大、高付加価値化を図る。主要顧客は電機メーカー、外資系企業。
エアー・クラウド推進事業
パブリック・クラウドに特化し、代表的なクラウド型サービスである『Google Apps for Business』や、『Microsoft Office 365』の提供、コンサルティング、導入支援を行うとともにシステナ独自サービス『cloudstep』の提供を行う。
コンシューマサービス事業
子会社(株)GaYaが手掛けるAndroidスマートフォン向けアバターSNS・ソーシャルゲームの企画・開発・運営。
 
 
2012年3月期第2四半期決算
 
 
単体は好調も、連結子会社の貸倒引当などで減収・減益
2012年3月期第2四半期は、前年同期比23.3%減収、16.7%営業減益。計画に対しても若干ではあるが未達となった。
事業の重複を排除し、効率化を進めるために前第4四半期において連結子会社アドバンスト・アプリケーション(株)の持分を全て売却したことや、成長が見込みにくい事業を譲渡したことなどにより、前年同期比減収となった。また利益面においても、2010年11月設立の連結子会社(株)GaYaが大手SNSサービス会社の予想以上に早い参入で苦戦を強いられたことに加え、同じく連結子会社東京都ビジネスサービス(株)が貸倒引当金171百万円を計上したこと等から、営業利益、経常利益でも減益となった。なお、四半期純利益については、当期より繰延税金資産の取崩額6億円を税金費用として計上したため、減益幅が営業利益、経常利益よりも大きくなっている。
ただ、単体は上記の理由等から減収ではあるものの、営業利益1,164百万円(前年同期比 +39.2%)、経常利益1,211百万円(同 +35.3%)と前年同期比、予想比とも大幅な増加となった。
 
 
モバイル高速データ通信事業
前年同期比3.6%減収、26.7%営業減益となった。
震災の影響は受けたものの、Androidプラットフォーム搭載のスマートフォンの秋冬モデルの開発・評価案件の受注は堅調に推移している。携帯電話からスマートフォンへのシフトは急速に進んでおり、各通信キャリア、国内メーカーはラインアップの充実や高品質・仕様による差別化、コスト削減に積極的に取り組んでいる。また、スマートフォン市場の急拡大に伴い、ソーシャルネットワークプロバイダ、消費者向けサービス事業者、大手SIerなども、スマートフォンやタブレット端末を利用した様々なサービス提供を開始しており、開発需要はますます旺盛になることが期待される。ただ、今期は昨年のAndroidスマートフォンの第一号機開発の特需が一段落したことから、減収・減益となった。
 
情報システム事業
前年同期比54.4%減収、同3.7%営業増益となった。
子会社の売却および事業譲渡による減収に加え、東日本大震災の影響もあり減収となったものの、収益面では、前期から取り組んでいる構造改革を推進し、収益改善策(契約条件の精査、原価管理の徹底、稼働率向上に向けた営業強化など)を実施した結果、増益となり、売上高営業利益率を前年同期比で6ポイント改善させることができた。
また、今年7月に設立した中国 iSoftStone社(NY証券取引所上場)との合弁会社「iSYS」を活用したオフショア案件の獲得は順調に推移した。加えて、「エアークラウドビジネスモデル」の提案も積極的に進めている。エアークラウドビジネスモデルとは、スマートフォンやAndroid搭載タブレット端末とクラウドシステムを連動させ、リアルタイムに販売員の業務支援を行うことを目的としたビジネスモデルで、同社オリジナルの造語。モバイル高速データ通信事業とのシナジーを高めることで事業領域を拡大し、主要顧客である金融機関向けを囲い込んでいく狙いがある。
 
ITサービス事業
前年同期比8.4%減収、同92.4%営業減益となった。
IT投資の抑制傾向を受け、新規顧客の拡大は難しい環境にあるため、新たな切り口での事業展開による収益性の向上を目指している。その中で、「ITスキル+英語力」のサービス提供が可能な人材の獲得、教育の強化に前期より取り組んできたところ、グローバル展開を志向する企業ニーズを上手く取り込み、単体での収益は大きく改善した。 ただ、連結子会社 東京都ビジネスサービス(株)が貸倒引当金を計上したため、連結では大幅な減益となった。
 
ソリューション営業
前年同期比13.3%の減収、営業利益は黒字転換となった。
同事業もIT投資の抑制やハードウェアの価格低下などを受け厳しい環境であるため、より付加価値の高い商材の取扱いに注力した。このため、売上高は減少したものの、キッティング(※)などのサービス売上の増加やリベートの獲得などにより、黒字転換を達成した。

※キッティング:PCを新規導入する際に必要となるOSのセットアップ、ソフトウェアのインストール、メモリ・HDの増設、ネットワークの接続、プリンタの設定、メールの設定などPCを実際に使用できる状態にする作業。
 
エアー・クラウド推進事業
前年同期比714%の増収。計画よりも早く黒字化を実現した。
東日本大震災を機に、クラウド型サービスニーズの高まりを受け、引き合いが大幅に増加した。また、昨年から取り組んできた「Google Apps」の販売ノウハウが蓄積されてきたこと、「Google Apps」で実現できないソリューションサービスをオリジナルサービス「cloudstep」シリーズで提供していることなどから差別化も進み、1,000ライセンスを超えるような大型案件も複数獲得することができた。
 
コンシューマサービス事業
前年同期比7.6%減収。赤字幅は拡大となった。 スマートフォンに特化したアバターSNS・ソーシャルゲームの企画・開発・運営事業を展開する(株)GaYaにおいて約1億円の投資を行い、今年8月にAndroid搭載スマートフォン向けゲーム3タイトルの正式サービスを開始したものの、大手SNSサービス企業を中心に他社の参入が想定以上に早く、苦戦している。より確実に収益確保できるビジネスモデルへの転換を図っている。
 
(3)主要子会社の概況
(株)ProVision
携帯端末やWebアプリケーションの品質評価を手掛け、本体のモバイル部門と連携し事業を推進している。業績は順調に推移。
 
東京都ビジネスサービス(株)
東京都が49%出資し、安定した利益を上げる企業であるが、納品・検収が完了し請求済にも関わらず、支払われないため顧客と協議中の案件が発生し、171百万円の貸倒引当金を計上。本体の主導により管理体制を強化。
 
(株)GaYa
当第2四半期は開発の効率化、広告宣伝費の削減により損失を99百万円に抑制(計画は130百万円の損失)。ビジネスモデルの転換により下期黒字化を目指す。
 
(株)IDY
今年4月に子会社化したが、受託開発案件で不採算プロジェクトが発生し、56百万円の営業損失を計上。本体の管理体制を導入し、再発防止を徹底。
 
(3)財政状態
【資産の部】
総資産は前期末比2,911百万円減の21,541百万円となった。売掛金の回収などにより受取手形・売掛金が14億円減少。繰延税金資産の取崩などにより、投資その他の資産が5億円減少した。
【負債・純資産の部】
負債は、短期借入金を中心に17億円返済するなどして、前期末比で3,140百万円圧縮し6,620百万円となった。
これに伴い、自己資本比率は合併時の42.6%から24.9P改善し、67.5%となった。
 
 
 
2012年3月期業績予想
 
 
単体好調、構造改革効果で来期に向けての足固めを図る
2012年3月期は前期比14.5%減収、同0.4%営業増益を見込む。
第2四半期実績は売上・利益ともに計画には届かなかったものの、単体は好調に推移していること、子会社を含めた構造改革の効果が下期から期待されることなどから業績予想に変更は無い。
特需一巡のモバイル高速データ通信事業を情報システム事業、ソリューション営業がカバーする形だ。子会社に対する管理体制も整備し、来期以降の拡大に向けた足固めを図る。
年間配当額は実質200円増配となる1株2,600円の計画。
 
 
モバイル高速データ通信事業
Androidスマートフォン開発ノウハウの蓄積・実績をベースとし、スマートフォンを利用したソリューションサービス等、新しいビジネスモデルを育成していく。部門内におけるこの新ビジネスモデルの売上高を、今期5%から来期20%、3年後50%へと急拡大を目指す。
 
情報システム事業
iSYSを活用したオフショア開発に加え、グループ会社と連携したニアショア開発も推進していく。また、モバイル高速データ通信事業との連携により、モバイル・タブレット端末を活用したエアークラウドビジネスモデルを積極的に提案し、事業領域の拡大を図る。
 
ITサービス事業
英語力を活かしたヘルプデスク業務等、企業のグローバル化に伴う市場拡大が期待できる業務に注力し、収益力の向上を図る。英語が堪能な女性を積極的に活用し、スタッフの男女比を、現在の85:15から3年後には50:50へ変革させる計画だ。
 
ソリューション営業
同社の全てのサービスを絡めた総合営業を推進する。特にキッティングを始めとした付加価値の高いサービス売上の拡大を目指す。これにより、営業利益率を4%まで引き上げることを目標としている。
 
エアー・クラウド推進事業
クラウド型サービスに対するニーズの急拡大を背景に、営業力を強化するとともに、自社オリジナルサービス「cloudstep」の付加価値拡大による差別化を推進し、顧客基盤の一段の拡充を図る。
営業損失15百万円の計画だが、大幅に黒字転換し営業利益20百万円で着地すると見込んでいる。
 
コンシューマサービス事業
当初のビジネスモデルから確実に収益を確保できるモデルへの転換を決断した。競合相手であった大手SNS事業者に対するゲームコンテンツの提供を始め、スマートフォン向けビジネスを展開する事業者のSNSサイトやゲームサイトの構築、ECサイト構築などを機器選定からクラウドシステムの提案までトータルでサポートする。
真正面からの競争には勝ち切れなかったものの、(株)GaYaの開発力やノウハウ・実績については大手SNS事業者も一定の評価を与えており、今後様々な展開も期待できるという。
 
(3)子会社に関する方針
規模拡大路線の修正を行い、先行投資の段階から回収段階への移行を進め、連結利益への貢献を図る考えだ。
 
 
今後の戦略
 
逸見社長は同社の目指す姿を「スマホクラウドコストメリットをキーワードに新たな収益モデルで稼ぐ『「トータル・ソリューション・プロバイダ』」と掲げている。
これは、「クラウド・ソリューション」、「グローバル・ビジネス」、「スマホ・ビジネス」の3本柱をキーワードに、各事業の強みを連結し、ITの企画から構築、検証、導入、教育、保守、サポートまでトータル・ソリューションを実現するものである。
 
3つのキーワード
【クラウド・ソリューション】
パブリック・クライドに特化し、コンサルティングから導入支援まで、ALLシステナが保有するスキルとマネジメント力に加え、iSYS(オフショア)、北洋情報システム(株)(ニアショア)の開発力によるコストメリットとIDYのハードウェア企画力を活用し、Android搭載スマートフォンやタブレット端末とクラウドを連動させたシステムを企画から保守までのトータルソリューションで提供し、顧客のIT化を通じたコストダウンに貢献する。

【グローバル・ビジネス】
業務スキル・マネジメント力とiSYSの開発力を融合し、高品質と圧倒的なコストダウンにより領域を拡大し、中国で培ったノウハウを活かし、顧客の海外展開に追従しグローバル展開を図る。

【スマホ・ビジネス】
爆発的な広がりを見せるスマホおよびソーシャルメディア市場を対象に、グループで培ってきた、オンラインゲーム開発、Androidスマートフォン開発、課金・顧客管理、コンテンツ配信システム開発、金融や各種企業向け大規模システム開発、機器導入から保守・運用のノウハウを総合的に提供することで、圧倒的な競争力を持つ開発支援が可能。

こうしたサービスを、「ALLシステナ総合営業」の名の下、全事業部門が全てのサービスを提案・提供する総合営業部隊となって、企画・提案から構築、導入、教育、保守・運用、サポートまでのワンストップサービスの窓口となれるよう、変革を進めている。
 
 
来期に向けた具体的な取り組み
 
上記の『「トータル・ソリューション・プロバイダ』を目指すにあたり、今期及び続く来期に向け具体的には以下のような取り組みを進めていく。

①子会社の拡大路線を修正し、赤字を一掃。経営改革を下期に実行し、来期は増益へ。

②トータルソリューションサービスの収益拡大に向けた営業を展開。モバイル・情報システム関連で大型案件の受注、引き合いが活発化。

③単体の営業利益は今期28億円を計画。来期はトータルソリューションサービスでの各事業部の売上上乗せと、子会社の収益貢献により、大幅な収益拡大を計画。
 
 
取材を終えて
カテナ(株)の吸収合併から今期で2年が経過した。前期の本体の構造改革に続き、今期は下期にかけて子会社の構造改革を着実に実行することで、筋肉質の企業体質が出来上がると逸見社長は考えており、その上で、構造改革が一巡した来期は20%に近い2桁増益を目指すと意欲的だ。
厳しい競争が予想されるものの、スマートフォン、クラウド、ソーシャルメディアと今後の急速な市場拡大が期待されるマーケットを対象に、ALLシステナの総合力でマーケットを開拓していくことのできる力が同社の大きな強みとなろう。まずは、来期のトータルソリューションサービスによる案件受注の実績に期待したい。