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(8931) 和田興産株式会社

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ブリッジレポート:(8931)和田興産 vol.14

(8931:JASDAQ) 和田興産 企業HP
和田 憲昌 会長
和田 憲昌 会長
小阪 堅三 社長
小阪 堅三 社長
【ブリッジレポート vol.14】2012年2月期第2四半期績レポート
取材概要「既に下期売上計上分(引き渡し分)の契約が完了しているため、12/2期業績について不安は少ない。ただ、7月に住宅エコポイントが終了し、9月には・・・」続きは本文をご覧ください。
2011年11月8日掲載
企業基本情報
企業名
和田興産株式会社
会長
和田 憲昌
社長
小阪 堅三
所在地
〒650-0023 神戸市中央区栄町通4-2-13
決算期
2月 末日
業種
不動産業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2011年2月 28,231 2,048 844 428
2010年2月 29,890 573 -370 -226
2009年2月 32,333 2,577 1,548 118
2008年2月 29,564 4,020 3,063 1,613
2007年2月 30,629 3,318 2,736 1,357
2006年2月 25,256 2,769 2,366 1,292
2005年2月 22,965 2,594 2,203 1,162
2004年2月 23,723 2,226 1,689 912
2003年2月 22,080 2,100 1,499 652
2002年2月 22,630 2,296 1,846 917
2001年2月 22,926 3,399 2,941 1,315
株式情報(10/31現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
359円 9,999,901株 3,650百万円 3.2% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
15.00円 4.2% 90.00円 4.0倍 1,432.54円 0.3倍
※株価は10/31終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROE、BPSは前期末の実績。
 
和田興産の2012年2月期第2四半期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
明治32年創業の老舗不動産会社。全てのステークホルダーとの共存共栄を目指す「共生(ともいき)」を企業理念とする。兵庫県神戸市を主要地盤に、明石市、阪神間で、マンション分譲を展開すると共に、不動産賃貸、土地有効活用等のソリューション、及び木造戸建分譲等を手掛けている。ブランド名「ワコーレ」を冠するマンション分譲は30~40戸の中規模マンションを中心とし、神戸市内では、10年連続で「供給戸数」第1位、13年連続で「供給棟数」第1位の実績を誇り、2011年2月末現在の累積供給実績は12,018戸(着工ベース)。マンション分譲を主力とする不動産販売事業と、住居、店舗、事務所、駐車場(月極・時間駐車)等の賃貸を中心とする賃貸その他事業に分かれ、11/2期は、不動産販売事業が売上高の91.2%を、売上総利益の74.5%を占めた。
 
 
 
 
 
2012年2月期第2四半期決算
 
 
一部物件の竣工前倒しや販売の好調で売上・利益共に期初予想を上回る着地
売上高は前年同期比13.4%増の135.1億円。前期の1棟卸マンション売却の反動でその他不動産販売が落ち込んだ他、ポートフォリオの見直しによる物件の減少で不動産賃貸収入も減少したものの、竣工・引渡が順調に進んだ分譲マンション販売が大きく伸びた。利益面では、前期に地価高騰時に仕入れた物件の売却が進み、たな卸資産の入れ替えが進んだ事で売上総利益率が7.2ポイント改善。一方、販売好調による広告宣伝費や販売促進費の減少で販管費は1.4億円減少し、前年同期は3.5億円にとどまった営業利益が16.9億円に拡大した。尚、資産除去債務会計基準の適用に伴う影響額の計上等で特別損失が増加したものの、有形固定資産売却益など2.4億円を特別利益に計上した事で特別損益も改善した。
期初予想との比較では、第3四半期(9-11月)以降を想定していた分譲マンションの竣工が第2四半期(6-8月)末に前倒しとなり売上が上振れ(東日本大震災の影響による工期の遅れが予想したほど深刻ではなかった)。逆に販売は予想以上に好調だったため、広告宣伝費や販売促進費が想定を下回り各利益が期初予想を上回った。
 
※分譲マンション販売における売上高について
売上高は引渡完了時点で計上され(戸数ベースで示したものが引渡戸数)、販売(売買契約締結)時点では、受注産業の受注高に相当する契約高(戸数ベースで示したものが契約戸数)としてカウントされる。通常、新築マンションは建築中に販売され(売買契約の締結)、竣工後(完成後)に引渡が行われる。このため、売上高は過去に締結した契約の結果であり、決算対象期間の販売動向を示すものではない。販売動向は契約高もしくは契約戸数の増減で推測する事ができる。
 
 
分譲マンション販売
売上高114.4億円(前年同期比90.0%増)、売上総利益23.0億円(同535.9%増)。竣工・引渡が順調に進み引渡戸数が358戸と同170戸(90.4%)増加した。一方、発売戸数は349戸と同200戸(36.4%)減少したが、これは東日本大震災や原発事故による住宅購入マインドの低下懸念から第1四半期(3-5月)の発売を44戸に抑えた(第2四半期には305戸を発売)事によるもので、下期は前年同期比30戸増の391戸を予定。発売戸数の減少で契約戸数も287戸と同211戸(42.4%)減少したが、第3四半期以降の竣工分6棟190戸の契約を完了した。
 
 
その他不動産販売
売上高9.3億円(前年同期比79.7%減)、売上総利益0.8億円(同88.1%減)。戸建住宅18戸(前年同期は33戸)及び販売用賃貸不動産1物件を販売。前年同期に複数の1棟卸マンション等の売却があった反動で大幅な減収・減益となったが、期初の想定に沿った着地。尚、戸建住宅に限れば、売上高7.4億円(前年同期比46.1%減)、売上総利益0.9億円(同55.1%減)。
 
不動産賃貸収入(その他含む)
売上高11.4億円(前年同期比11.6%減)、売上総利益5.4億円(同15.4%減)。ポートフォリオの見直しによる戸数の減少で住居の賃貸収入が減少した他、滞納率の改善等で店舗・事務所の賃貸収入がわずかに増加した。
 
 
(3)財政状態及びキャッシュ・フロー(CF)
上期末の総資産は前期末比4.8億円増の487.2億円。用地取得に伴う仕掛販売用不動産の積み増しに、長期借入金を中心に有利子負債の増加にて対応した。尚、仕掛販売用不動産116億円のうち72億円は今期の取得物件であり、資産の鮮度は高い。CFの面では、固定資産の売却で投資CFが黒字となったものの、積極的用地取得に伴い営業CFがマイナスとなり、フリーCFは34.8億円のマイナス。借入増で財務CFが黒字となったものの、現金及び現金同等物の上期末残高は55.1億円と前期末比比24.9億円減少した。
 
 
 
2012年2月期業績予想
 
 
分譲マンション販売においては、都心のシニア・ファミリー向け、駅近の1LDKや2LDK中心のシングル・DINK向け、更には住宅街で共用施設が充実したファミリー向けマンション等、立地に応じた企画と価格設定により幅広い消費者ニーズに応えると共に、中小型物件を中心にした開発でリスク分散を図っていく。
また、賃貸においては、現状93~94%と、ほぼフル稼働の状態を維持しているレジデンス系に注力し、また、築年数を基に実施しているポートフォリオの入れ替えを念頭に、個人が購入しやすい2~3億円の物件の確保に努める。
この他、戸建において分譲マンションとのシナジーを追及する他、安定的な資金調達に必要な財務基盤の維持にも努める。
 
 
前期比17.8%の減収、同101.4%の経常増益
売上高は前期比17.8%減の232億円を予想。前期1棟卸マンション等売却の反動によりその他不動産販売が同61.0%減と大きく落ち込む他、実需に合わせた販売価格の調整で主力の分譲マンション販売も188億円と同5.4%減少する見込み。一方、利益面では、分譲マンション販売における引渡物件の採算改善と販促関連費用の減少等で営業利益が同17.2%増加。シンジケートローンフィーも含めた金融費用の減少による営業外損益の改善や特別利益の計上等で当期純利益は9億円と同2.1倍に拡大する見込み。配当は1株当たり5円増配の期末15円を予定。
 
 
分譲マンション販売
下期の引渡は第3四半期(9-11月)88戸、第4四半期(12-2月)175戸を計画。通期では前期と同数の614戸となるが、実需に合わせ販売価格を設定したため、売上高は188億円と前期比5.4%減少する見込み。尚、第3四半期の引渡は、期初には190戸を計画していたが、このうちの102戸の引渡を第2四半期(6-8月)に完了した(この結果、第2四半期の引渡戸数は期初計画の146戸に対して260戸)。同社では、翌期引渡分の75%、翌々期引渡分の25%を当期中に契約することを中長期的な目標にしたい考え。
8月末の完成在庫は49戸。このうち33戸が11年5月に引渡を開始したシニア向け分譲マンション「ワコーレハート明舞」(総戸数102戸、明石市)。シニア向け分譲マンションの場合、実際に物件を見て購入する傾向が強く、竣工後、一定の販売期間が必要になる。「ワコーレハート明舞」は地域トップの総合病院と提携し、同病院とはデッキで行き来できる等の利便性が評価され、足下、ほぼ想定したペース(月3~5戸)で契約が進んでいる。同社は、期末における同マンションの完成在庫を15戸程度と想定している。
 
 
その他不動産販売
戸建住宅では、ワコーレノイエ明石大久保(5戸)等、通期で53戸の販売を計画しており、売上高18億円(売上総利益2.6億円)を見込んでいる。通期で80戸の供給体制が整ってきた事から、今後は事業サイクルの短期化を図り、収益性の向上にも努めていく考え。
 
不動産賃貸収入他
第2四半期末の稼働率は、住宅94.3%(前期末94.5%)、店舗・事務所82.4%(同86.4%)、駐車場60.2%(同62.4%)。住宅については、入居の入れ替わりに伴うリフォーム等を考えると、ほぼフル稼働の状態だが、マクロ景気の影響も受けている店舗・事務所や駐車場の稼働率改善が課題。また、住居については、築年数に応じたポートフォリオの入れ替えに伴い5棟197戸の住居を売却し、4棟131戸の物件を購入した。
 
 
 
今後の注目点
既に下期売上計上分(引き渡し分)の契約が完了しているため、12/2期業績について不安は少ない。ただ、7月に住宅エコポイントが終了し、9月にはフラット35Sの優遇金利が縮小されたため、今後の販売動向が気になるところだが、同社においては、地域密着の強みを生かした「一つのマンションギャラリーで複数の物件を販売する戦略」や都心回帰の消費者志向をとらえた「神戸・元町・三宮の人気エリアへの集中展開戦略」が奏功し、足下の販売は一次取得者を中心に堅調なようだ。
また、総務省「住民基本台帳人口移動報告」によると、兵庫県下を含む大阪圏では、東日本大震災以降、5か月連続で転入者が転出者を上回っていると言う。このため、神戸市を中心に、明石市、阪神間といった人気エリアに強みを持つ同社にとって、中期的にも良好な事業環境が続くものと思われる。
当面の注目点としては、来期業績の決め手となる下期の契約状況を挙げる事ができるが、中期的な観点からは、シニア向け分譲マンション「ワコーレハート明舞」の販売動向にも注目したい。後者については、高齢化社会を迎え需要の増加と様々な派生ビジネスへの展開が期待できる分野であり、先ずは実績作りが必要だ。