ブリッジレポート
(9616) 株式会社共立メンテナンス

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ブリッジレポート:(9616)共立メンテナンス vol.29

(9616:東証1部) 共立メンテナンス 企業HP
石塚 晴久 会長
石塚 晴久 会長
佐藤 充孝 社長
佐藤 充孝 社長
【ブリッジレポート vol.29】2012年3月期第1四半期業績レポート
取材概要「東日本大震災による影響が見通せず、保守的な計画になっていたことは事実だが、会社計画をきっちりと上回って進捗していることは素直に評価・・・」続きは本文をご覧ください。
2011年9月6日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社共立メンテナンス
会長
石塚 晴久
社長
佐藤 充孝
所在地
東京都千代田区外神田 2-18-8
決算期
3月
業種
サービス業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2011年3月 84,983 4,610 3,308 1,052
2010年3月 84,513 4,033 3,012 1,254
2009年3月 82,303 5,349 4,510 2,133
2008年3月 75,606 4,492 4,167 2,740
2007年3月 66,287 3,745 3,787 2,413
2006年3月 63,084 4,611 4,823 2,010
2005年3月 58,014 4,407 4,411 2,343
2004年3月 54,080 4,004 4,059 2,137
2003年3月 50,108 4,148 3,884 2,039
2002年3月 50,064 3,908 3,580 1,821
2001年3月 37,884 2,827 2,643 1,146
2000年3月 36,787 2,368 2,281 906
株式情報(8/16現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
1,208円 14,364,740株 17,352百万円 3.5% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
38.00円 3.1% 99.55円 12.1倍 2,104.11円 0.6倍
※株価は8/16終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
共立メンテナンスの2012年3月期第1四半期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
"ライフステージにおける様々な場面での「食」と「住」さらに「癒し」のサービスを通じて、広く社会の発展に寄与する"と言う経営方針の下、「現代版下宿屋」(食事付きの寮の運営)を中心にした寮事業、「温泉感覚を取り入れた大浴場」と「美味しい朝食」といった寮事業のノウハウを活かしたホスピタリティ重視のビジネスホテルや「リーズナブルで質の高いリゾートライフ空間の創造と提供」をテーマに掲げたリゾートホテルのホテル事業、オフィス(事務所)・レジデンス(住居)のビルメンテナンス、ビル賃貸及び賃貸代行、駐車場運営等の総合ビルマネジメント事業、外食やレストラン運営受託のフーズ事業等を展開。知名度と実績で他社を凌駕する主力の寮事業を安定収益源とし、ホテル事業の育成により成長を加速している。

事業の種類別セグメントと売上構成(2011/3月期)は次の通りである。
 
 
 
2012年3月期第1四半期決算
 
 
前年同期比増益基調を確保
2012年3月期第1四半期は、前年同期比1.8%減収、同7.6%営業増益となった。売上面では、竣工・引渡し時期のズレ込みから減収となったデベロップメント事業が足を引っ張る形になったものの、東日本大震災の影響が懸念された寮事業、ホテル事業は堅調に推移した。
収益面では、寮事業の期初稼働率が好調に立ち上がったこと、ホテル事業はドーミーイン(ビジネスホテル)事業が前年同期を上回る稼働率で推移したこと、などを牽引役に増益基調を維持した。
第2四半期累計会社計画(売上高43,300百万円、営業利益2,580百万円)に対する進捗率は、売上高48.1%、営業利益41.6%。ホテル事業の季節性等を鑑みると、会社計画を上回るペースで進捗していると推測される。
 
 
寮事業
寮事業は、前年同期比1.4%増収、同6.9%営業増益となった。期初稼働率が95.3%(前期実績92.9%)と高水準でスタートできたこと、大口の留学生法人契約により契約金等が増加したこと、などが牽引役となった。6月末の稼働契約数は29,205名(前年同期末比1,032名増)。
 
ホテル事業
ホテル事業の売上高は前年同期比4.7%増となった。復興需要の影響もあり、ドーミーイン(ビジネスホテル)事業の稼働率が前年同期を上回ったこと、ゴールデンウィーク以降はリゾートホテル事業の稼働率も大きく改善してきたことがドライバーとなった。同事業の第1四半期売上計画が前年同期比約15%減であったことを鑑みると、相当に堅調だったことが伺える。期中の新規オープンは「天然温泉 富嶽の湯 ドーミーイン三島」、「天然温泉 白鷺の湯 ドーミーイン姫路」の2ヶ所。開業時の初期投資負担等もあり営業利益は赤字に留まったが、前年同期に比べると赤字幅が縮小している。
 
その他のセグメントについて
総合ビルマネジメント事業は、前々期大口解約のあった賃貸ビル事業の稼働率が着実に改善してきたこともあり、前年同期比7.7%増収となった。営業利益段階でも僅かだが営業黒字を確保した。但し、依然として値下げ圧力が強いこともあり、本格的な回復には至っていない。デベロップメント事業が前年同期比28.2%減収となったことが第1四半期業績の足を引っ張ったが、開発物件の竣工・引渡し時期のズレ込みによるものであり、懸念視する必要はないだろう。
 
(3)財政状態
2011年6月末の総資産は前期末比3,783百万円減の137,531百万円。借方では現預金の減少(前期末比3,003百万円減)、その他有形固定資産の減少(同2,399百万円減)が目に付く。一方、貸方で変動が大きかったのは、前受金の減少(同1,394百万円減)、長期有利子負債の減少(同2,532百万円減)。前期末の有形固定資産売却で得た資金が有利子負債返済に振り分けられた形である。会社計画では、2011年3月末のネット有利子負債残高(長期リース債務を含む有利子負債から手元流動性を差し引いた残高)557億円を、2012年3月末には523.1億円まで削減することになっている。なお、計画には織り込んでいないが、今期も3物件を目処に売却を進めているとのこと。
 
 
 
2012年3月期業績予想
 
 
基調は強い
2012年3月期は、前期比8.3%増収、同5.2%営業増益、同5.8%経常増益を計画している。震災の影響として、売上高1,900百万円(寮事業400百万円、ホテル事業1,500百万円)、経常利益1,030百万円(寮事業208百万円、ホテル事業822百万円)を計画に織り込んでいる。設備投資額は4,700百万円(前期実績3,037百万円)を想定。
収益の柱となる寮事業では、4月に入って首都圏を中心に7棟、689室が新規開業、総定員が416棟、32,062室まで拡大したうえ、期初稼働率が95.3%(前年同月比+2.4ポイント)と好調なスタートを切った。加えて、1棟ごとに稼働状況も含めたコスト管理を引き続き徹底することで、収益性の改善を図る。
第2の成長ドライバーとして期待されるホテル事業は、前期比5.0%増収、同15.2%営業増益を見込む。震災の影響を最も受けるセグメントであり、先行きを見通しにくいため、保守的な前提になっている。具体的には、既存ビジネスホテルの緩やかな回復(稼働率前提は前期比1.0ポイント改善の77.8%)、前期開業した6事業所の通年寄与、今期開業事業所の売上寄与を想定している。リゾートホテルについては、稼働率が前期の70.8%から67.4%まで悪化する前提になっている。第1四半期の既存事業所売上高が会社計画を上回って進捗したうえ、第2四半期の会社計画も前年同期比約4%減であることを鑑みると、上期会社計画の達成確度は高いと言えよう。
 
新たな取組み
注目すべき新たな取組みとして、「ドーミーインの海外展開」、「PKP事業への取組み」が掲げられている。第1四半期決算発表時に新たな開示はなかったものの、長期的には注目していきたい分野である。具体的な計画は以下の通り。
ドーミーインの海外展開については、海外事業開発部を新設し、海外展開の検証・事業化に動き出している。2011年7月に韓国に海外現地法人を設立しており、2012年度中にはソウル市内にドーミーインを開業する計画である。J.D.POWER ASIA PACIFIC調査による「2010年日本ホテル宿泊客満足度調査(1泊9,000円未満部門)」において宿泊客満足度第1位を獲得するなど、アジア圏においてドーミーインのブランド力が高まっていること、アジア圏の高い経済成長力、などが海外進出の背景となっている。寮事業において海外からの留学生を積極的に受け入れてきたという歴史も影響しているのだろう。日本国内で行っている「温泉感覚を取り入れた大浴場」、「美味しい朝食の提供」といったホスピタリティ重視の戦略を海外でも展開するとのことである。最初に進出するソウルでは宿泊施設が約2万室足りないと言われている上、既存のホテルも高級ホテルと廉価ホテルに偏っているため、ドーミーイ
ンに対するニーズは相当あると推測される。
PKP事業は次世代事業の大きな柱として位置付けられている。PKPとはPublic(自治体)-Kyoritsu(共立メンテナンス)-Partnership(連携)の略。行財政改革を推進する地方自治体業務(施設運営管理、車両運行管理、地域活性化支援など)を同社が包括請負する事業である。地方自治体にとっては財政負担の軽減と住民サービスの向上を両立出来得る事業形態となる。既に多くの自治体が関心を寄せているとのこと。2012年度の黒字化が当面の目標となる。
 
 
取材を終えて
東日本大震災による影響が見通せず、保守的な計画になっていたことは事実だが、会社計画をきっちりと上回って進捗していることは素直に評価したい。とくにこれから繁忙期を迎えるホテル事業において、ドーミーイン事業が前年同期を上回る稼働率を確保していること、リゾート事業においてもきめ細かい営業施策の効果が具現化していること、が全体業績に与える影響は大きい。我々は寮事業という安定収益源にホテル事業という成長ドライバーを上乗せすることがバリュエーション拡大に繋がると考えており、第2四半期以降の繁忙期の動向には注目していきたい。更に将来の成長ドライバーとして海外展開、PKP事業への取組みが動き出したこともポジティブに受け止めている。財務戦略には大きな進展がみられず、前期の不動産売却資金を有利子負債返済に充当した他には大きな動きはなかった。但し、会社側は3物件を目処に今期中の売却に動いているとのことであり、今後の動向を見守りたい。