ブリッジレポート
(2317) 株式会社システナ

プライム

ブリッジレポート:(2317)システナ vol.13

(2317:東証1部) システナ 企業HP
逸見 愛親 社長
逸見 愛親 社長

【ブリッジレポート vol.13】2012年3月期第1四半期業績レポート
取材概要「今期初めまでに事業モデルの再編が完了し、次世代を見据えた戦略も具体的に描かれた。東日本大震災の間接的な影響を受けるうえに、将来に向け・・・」続きは本文をご覧ください。
2011年8月30日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社システナ
社長
逸見 愛親
所在地
東京都港区海岸一丁目2番20号 汐留ビルディング14階
決算期
3月 末日
業種
情報・通信
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2011年3月 39,176 2,579 2,661 2,957
2010年3月 3,636 490 536 340
2009年10月 8,161 1,261 1,258 1,180
2008年10月 9,603 1,816 2,153 1,275
2007年10月 7,930 1,595 1,555 849
2006年10月 5,917 961 967 602
2005年10月 4,180 717 691 561
2004年10月 3,093 677 643 391
2003年10月 2,461 516 511 280
2002年10月 1,940 398 380 196
2001年10月 1,524 180 175 93
株式情報(8/11現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
67,300円 302,168株 20,335百万円 28.9% 1株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
2,600.00円 3.9% 5,384.02円 12.5倍 48,856.93円 1.4倍
※株価は8/11終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
システナの2012年3月期第1四半期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
データ通信系のファームウェア(主に携帯電話端末や基地局向けの組み込みソフト)開発に強みを持ち、情報システム構築等のシステムインテグレーション事業を育成中だった(株)システムプロが、持分法適用会社だったカテナ(株)を吸収合併し、2010年4月1日にシスプロカテナ(株)として再スタートを切り、2010年7月1日に社名を新たに(株)システナに変更した。新会社は、システムプロの情報システムサービス事業とカテナの金融機関向けを中心とするシステム開発事業を連携させると共に、システムプロの移動体高速データ通信システム事業との融合を図り、ユビキタス時代のエアー・シンクライアント・サービスの実現を目指している。
 
<事業内容>
モバイル高速データ通信事業
携帯電話・スマートフォンを中心にモバイル端末全般の開発工程(企画、仕様策定、設計・開発、品質評価など)に携わる。主要顧客はモバイル端末メーカーにソフトウェア製品をライセンスしているソフトウェア開発販売会社(サードパーティー)。メール機能、ブラウザ機能、マルチメディアプレーヤー機能、デジタルテレビ機能、GPS機能等での実績が豊富。ここもとはAndroidプラットフォームの非携帯分野への組込みや制御ソフトウェアの設計・開発にも注力している。
情報システム事業
金融機関(銀行、生損保等)の基幹・周辺システムの開発を手掛けるほか、電子書籍システムやコンシューマ向けポータルサイト構築といったオープン系システムなども手掛ける。オープン系技術と金融分野の業務知識及び基盤系技術を融合した事業展開により新たな領域の開拓を進めていく考え。
ITサービス事業
システムの保守・運用、データ入力、及びヘルプデスク・ユーザーサポートを手掛ける。
ソリューション営業
ITプロダクト(サーバ、PC、周辺機器、ソフトウェア)の販売やシステムインテグレーションを手掛ける。今後は、ITサービス事業と一体となって営業展開を進め、所有から利用(クラウド等)へのニーズの変化に対応する事で事業拡大、高付加価値化を図る。
エアー・クラウド推進事業
ユビキタス社会の中で生産性を飛躍的に向上させるシステムとして同社が起案したエアー・シンクライアント・サービスを展開。同サービスにより、スマートフォンに代表されるユビキタス端末と移動体通信網でクラウドシステムを構築しリアルタイムでの相互データ通信が実現する。通信回線やサーバ、パソコンを自前で用意する必要の無いクラウドシステムのため、初期投資を抑える事ができるうえ、いつでもどこでも使いたい時に必要なだけ業務用ソフトウェアを低料金で使う事が可能となる。旧システムプロが持つ移動体通信のノウハウと、旧カテナが営業展開するクラウドコンピューティングのシステムインテグレーションを融合させることで、優位性を高めている。
コンシューマサービス事業
子会社(株)GaYaが手掛けるAndroidスマートフォン向けアバターSNS・ソーシャルゲームの企画・開発・運営および子会社(株)ProVisionが手掛ける損害保険代理店業務、車両運転業務の請負。
 
 
2012年3月期第1四半期決算
 
 
モバイル高速データ通信事業を中心に会社計画を上回って進捗
2012年3月期第1四半期は、前年同期比20.6%減収、2.5%営業減益となった。前第4四半期において連結子会社アドバンスト・アプリケーション㈱の持分を全て売却したこと、11年4月1日をもって某金融機関向け基幹システム開発部門の事業を譲渡したこと、などを背景に前年同期比減収となったものの、前期から取り組んでいる全社的構造改革によって、減益幅は限定的なものとなった。東日本大震災の影響が想定よりも軽微だったこと、構造改革による生産性向上が順調に進んでいることなどを受け、期初会社計画は6月20日に上方修正されている。第1四半期の着地はこの修正された会社予想に沿った線での着地となった。
 
 
モバイル高速データ通信事業
モバイル高速データ通信事業は、前年同期比3.9%増収、19.6%営業減益となった。Androidプラットフォーム搭載のスマートフォンが国内キャリアより相次いで発売されたことを背景に、売上面では堅調に推移した。とくに国内メーカーが日本特有の機能を付加することで海外メーカーとの差別化を図っていることもあり、開発需要は拡大傾向にある。Androidプラットフォームの非携帯分野でも市場が活性化し始めており、今後の動向には注目していきたい。先行投資ステージにあるため、収益段階では前年同期比マイナスとなっているが、ビジネスモデルの転換期にあるため、当面はトップラインの動きに着目すべきだろう。
 
情報システム事業
情報システム事業は、前年同期比53.8%減収、同5.6%営業減益となった。子会社の売却および事業譲渡による減収に加え、東日本大震災の影響から、主要顧客である生損保のシステム開発、広告・ネットビジネス系企業のポータル開発の案件が延伸するなど、厳しい需要環境が続いた。収益面では、前期から取り組んでいる構造改革を推進し、収益改善策(契約条件の精査、原価管理の徹底、稼働率向上に向けた営業強化など)を実施した結果、売上高営業利益率は前年同期比5.5ポイント改善させた。まだ先行投資ステージにある中での収益性改善は評価できよう。
第1四半期の注目すべき動きとして、中国オフショア合弁会社(iSYS)の立ち上げ及び受注獲得に向けた営業強化を図った点が挙げられる。東日本大震災の影響で損保の統合案件が先送りされていることを逆にチャンスと捉え、近い将来に起きるだろう価格競争激化に先回りして対応を進めるための動きである。
エアークラウドビジネスモデルの提案も積極化している。エアークラウドビジネスモデルとは、スマートフォンやAndroid搭載タブレット端末とクラウドシステムを連動させ、リアルタイムに販売員の業務支援を行うことを目的としたビジネスモデル。モバイル高速データ通信事業とのシナジーを高めることで事業領域を拡大し、主要顧客である生損保を囲い込んでいく狙いがある。
 
ITサービス事業
ITサービス事業は、前年同期比0.6%減収、同10.9%営業減益となった。顧客の情報システム部門を中心としたアウトソーシング需要の掘り起こし、外資系企業や海外展開を目指す国内企業への営業強化に取り組んではいるものの、引き続き厳しい状況が続いている。但し、東日本大震災を受け、拠点を首都圏から西日本にリスク分散する需要が増加したこともあり、下期に向けては明るい兆しも出てきている。
 
ソリューション営業
ソリューション営業の売上高は前年同期比13.9%減となった。企業がIT投資を再開するような動きが顕在化していないため、引き続き構造改革を推進している状況にある。PCメーカーと協業しWindows7への切替商談に注力した結果、市場全体が伸び悩む中、前年同期比36%増のパソコン出荷台数を確保するなど一定の成果は挙がっている。基盤構築については、中堅企業を中心としたBCP(事業継続計画)対策に関わるソリューション案件の受注が増加したこともあり、収益性が大きく改善した。営業利益も黒字を確保している。
 
エアー・クラウド推進事業
昨年から取り組んできた「Google Apps」の販売ノウハウが蓄積されてきたことを背景に、引き合いは増加傾向にある。顧客数増加と共に1,000ライセンスを超えるような大型案件の受注も獲得し始めているとのこと。「Google Apps」で実現できないソリューションサービスをオリジナルサービス「cloudstep」シリーズで提供していることが競合他社に対する比較優位性にもなっているようである。更には東日本大震災を契機に、クラウド型サービスに対する意識に変化が起きていることもポジティブに作用している。その結果、売上高が前年同期比641.6%増加し、営業利益段階での黒字化を達成した。
 
コンシューマサービス事業
損害保険代理店、車両運転業務の請負等のサービスに関しては、外販比率向上を推進している。一方、スマートフォンに特化したアバターSNS・ソーシャルゲームの企画・開発・運営事業を展開する㈱GaYaでは、Android搭載スマートフォン向けゲームSNS「GaYa」及びGaYaからプレイ可能なゲーム「Me’oのスイーツショップ」、「Me’oのダンスホール」、「GaYaカジノ」のβ版テストが再開された。現在は先行投資段階にあるため、当面は営業赤字が続くだろうが、8月中にも導入されるアイテム課金の動向には注視していきたい。
 
(3)財政状態
第1四半期末の総資産は前期末比2,084百万円減の22,369百万円となった。現預金、売上債権の減少により流動資産が前期末比1,961百万円減となった影響が大きい。貸方勘定では仕入債務、有利子負債が減少した結果、自己資本比率は前期末比5.9ポイント上昇の64.0%となった。
 
 
 
2012年3月期業績予想
 
 
今下期の回復を見込む
2012年3月期は前期比14.5%減収、同0.4%営業増益を見込む。東日本大震災の影響が残る第2四半期のモメンタムは依然として弱いものの、下期以降は回復基調を強める計画。通期でみた場合、先行投資負担の重いモバイル高速データ通信事業、情報システム事業を、前期から取り組んできた構造改革の成果が一段と顕在化するであろうITサービス事業、ソリューション営業がカバーすることになろう。年間配当額は実質200円増配となる1株2,600円の計画。
 
 
モバイル高速データ通信事業の今期は、3年後のLTE普及期に向けて先行投資を積極的に行っていく計画である。そのため、増収減益となるが、既存事業が好調な間に次世代を見据えた投資を行う経営判断を評価すべきだろう。具体的な投資は、1)コストダウンニーズに対応することでキャリア案件を強化、2)連結子会社㈱IDYを通じたハードウェアへの取組み、3)中国合弁会社iSYSによるオフショア体制の強化、4)ドイツCETECOM社との新評価スキームの開発による認証マークへの取組み、など。
加えて、東日本大震災の影響から部品調達難やAndroid搭載スマートフォンの秋冬モデル開発ロードマップ見直しが実際起きているため、上期はエアポケット状態になると会社側は想定している。しかし、スマートフォン自体に対する需要は底堅いことから、既に下期以降を見据えた動きをとっている。今後はLTEやWiMAX搭載モデルの開発も増加していくことから、今後の動向には注目していきたい。中期的には非携帯分野(デジタル家電、Android車載端末など)への進出が成長ドライバーとなる可能性がある。

情報システム事業は成長分野へのシフトを鮮明にしていく。成長分野への転換が困難と判断した分野については、連結子会社売却及び一部事業譲渡という形で対応した(影響額は、売上高55億円、営業利益3億円)。そのため、今期は前期比減収減益となるものの、今後は中国合弁会社によるオフショア開発を推進し、グローバルな開発体制を確立することで、成長力を高めていく計画。

ITサービス事業、ソリューション営業は、今期も営業力強化と生産性向上を両立させることで、増益体質の確立を図っていく計画。エアー・クラウド推進事業については、来期黒字化を目標に既存顧客70社の契約更新と年間150社の新規顧客開拓を目指す。

コンシューマサービス事業ではAndroidスマートフォン向けアバターSNS・ソーシャルゲームの企画・開発・運営を行う㈱GaYaにかかる期待が大きい。最大の強みと考えるモーションアバター3Dを使用したコンテンツ「Me’oのダンスホール」等を市場に投入していくことで、初年度50万人の会員登録を目指す。そうすれば早期収益化も視野に入ってくる。先行投資額は2億円。
 
 
取材を終えて
今期初めまでに事業モデルの再編が完了し、次世代を見据えた戦略も具体的に描かれた。東日本大震災の間接的な影響を受けるうえに、将来に向けた先行投資ステージにある2012年3月期の見栄えは決して良いものではない。しかし、合併効果を最大限に活かし、既存事業が足元の業績を支えている間に次世代に向けた投資を行う経営判断はきちんと評価すべきだろう。