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(8097) 三愛オブリ株式会社

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ブリッジレポート:(8097)三愛石油 vol.6

(8097:東証1部) 三愛石油 企業HP
金田 凖 社長
金田 凖 社長

【ブリッジレポート vol.6】2011年3月期業績レポート
取材概要「同社においては、東日本大震災での人的な被害は無く、事業所、石油関連施設及びガス関連施設に関しても、業務に支障となる程の被害は無かった。しか・・・」続きは本文をご覧ください。
2011年8月23日掲載
企業基本情報
企業名
三愛石油株式会社
社長
金田 凖
所在地
東京都品川区東大井5-22-5 オブリ・ユニビル
決算期
3月 末日
業種
卸売業(商業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2011年3月 888,583 12,896 13,126 6,462
2010年3月 833,991 6,364 6,675 1,005
2009年3月 981,734 9,353 9,714 4,618
2008年3月 861,914 7,537 7,456 3,298
2007年3月 791,583 7,044 7,354 3,281
2006年3月 726,445 5,713 5,799 4,032
2005年3月 360,046 5,892 6,385 3,814
2004年3月 266,352 3,576 4,088 1,780
2003年3月 261,719 3,051 3,146 692
株式情報(5/19現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
415円 74,806,949株 31,045百万円 11.7% 1,000株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
13.00円 3.1% 66.84円 6.2倍 769.35円 0.5倍
※株価は5/19終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
三愛石油の2011年3月期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
石油販売大手。主力の石油関連事業では、グループで約1,400のサービスステーション(以下、SS)に石油製品を供給しており、販売数量を安定的に伸ばしている。また、独自に開発した航空機への給油システム「ハイドラントシステム」により羽田空港の航空燃料供給を支えている他、LPガス(LPG)や天然ガスの販売も手掛ける。傘下に、キグナス石油(株)や國際油化(株)等の有力子会社を有し、子会社31社(うち連結子会社29社)及び関連会社4社(うち持分法適用会社1社)と共にグループを形成している。社名の“三愛”は、リコー三愛グループ(09年11月現在、63社・団体が加盟)各社の創業精神として受け継がれている「人を愛し、国を愛し、勤めを愛す」の「三愛精神」を基とする。
 
<事業内容>
事業は、石油製品の販売や化学品の製造・販売等の石油関連事業、LPGや天然ガスの販売を中心としたガス関連事業、及び航空燃料の給油業務や建設業等の航空関連事業他の3セグメントに分かれ、売上構成比は、それぞれ92.3、6.1%、1.6%(11/3期)。
 
石油関連事業
SS向けの石油販売や法人向けの産業エネルギー販売と共に、溶剤、工業薬品、防腐・防カビ剤、自動車用ケミカル商品等、様々な化学品の開発・製造・販売も手掛けている。
ガス関連事業
LPG、天然ガス、及び関連する機器の販売を行っている。LPG販売では直販子会社による家庭への供給と工業用の高圧ガス販売を手掛けており、天然ガス販売では佐賀県佐賀市で天然ガスを供給すると共に、電気と熱を生むコージェネレーションシステム等、省エネに必要な仕組み作りも提案している。
航空燃料事業他
航空燃料の保管及び航空機への給油を行う航空燃料取扱業と子会社三愛プラント工業(株)が手掛ける金属表面処理や建設工事等のその他に分かれる。また航空燃料取扱業では、羽田空港において、油槽船の接岸を含めた埠頭の管理や空港内の貯蔵タンク等の管理、及び地下パイプライン(全長約40km)を通して航空機に直接燃料を圧送するハイドラント式給油システムの運営・管理を行っている(実際の航空機への給油作業でも同空港の半数のシェアを有する)。また、神戸空港、佐賀空港、茨城空港他でも子会社で同様のサービスを提供しており、中部国際空港へは運営社員を派遣。
 
ハイドラントシステム(地下パイプラインで航空機まで航空燃料を圧送するシステム)
1955年、同社は羽田空港において日本初のハイドラントシステムによる航空機への給油業務を開始した。この給油施設は、国内主要空港(新千歳空港、成田空港、中部国際空港、伊丹空港、関西国際空港、福岡空港等)における給油施設のモデルとなっている。
また、96年10月には最新のコンピューターを駆使した給油システムが稼動し業務効率化が一段と進展。巨大な航空輸送機能をしっかりと支えている。
 
 
2011年3月期決算
 
 
前期比6.5%の増収、同96.6%の経常増益
売上高は前期比6.5%増の8,885.8億円。製品価格の上昇や記録的な猛暑の影響があったことや、10年10月の羽田空港での新滑走路供用開始と国際化効果による航空燃料取扱業の売上も伸長。プロパンガスや天然ガスも節約志向などの逆風が吹く中、大口顧客の獲得などにより売上が増加した。
利益面では、需給が締まり石油製品販売のマージンが改善した他、航空燃料取扱業が伸びた事もあり、売上総利益率が6.4%と同0.3ポイント改善。一方、経費節減に努めた結果、増収ながら販管費はわずかに減少し営業利益が128.9億円と倍増。羽田空港の航空機給油施設の一部撤去に伴う固定資産除売却損23.8億円など特別損失41.3億円を計上したものの、旧川崎ガスターミナルの土地売却益32.8億円など特別利益33.1億円を計上した事で特別損益も改善し、当期純利益は64.6億円と同6.4倍に拡大した(前期は固定資産除売却損や投資有価証券評価損等40.3億円を特別損失に計上した)。
期末配当金は1株当たり特別配当2円を含む8.5円を予定(年14円)。
 
 
石油関連事業は石油製品販売業と洗車機用ワックスや撥水コートといった自動車関連商品や防腐・防カビ剤等の化学品製造販売業に分かれるが、エコカーの普及が促進されるなど厳しい需給環境にあったものの、記録的猛暑が追い風となり売上の大半を占める前者の売上が増加。ガス関連事業も大口顧客の獲得などにより、プロパンガス及び天然ガスの売上が増加した。航空関連事業他では、子会社が手掛ける金属表面処理業の売上が増加した他、昨年10月の羽田空港での新滑走路供用開始と国際定期便の就航等で燃料搭載数量が増加し、航空燃料取扱業が伸びた。
 
(3)財政状態及びキャッシュ・フロー(CF)
期末総資産は前期末比48.8億円減の1,919.4億円。CFの改善を受けて有利子負債の削減を進めた他、旧川崎ガスターミナルの土地売却で有形固定資産が、のれん償却で無形固定資産が、それぞれ減少した。CFの面では、利益の増加に加え、税金の支払いが減少した事もあり営業CFが増加。羽田関連の投資一巡と固定資産の売却による投資CFの大幅な改善もあり、前期は3.0億円だったフリーCFが170.8億円に拡大した。有利子負債の削減を進めたため、財務CFがマイナスとなったものの、現金及び現金同等物の期末残高は334.7億円と前期末比97.5億円増加した。
 
 
 
2012年3月期業績予想
 
 
前期比6.9%の増収、同23.8%の経常減益予想
3月11日に発生した東日本大震災の間接的な影響や原発事故による先行きの不透明感から特に利益面で慎重な業績予想となった。引き続きグループをあげての経営の効率化に取り組むものの、石油製品販売業が前期ほどには伸びを確保できないと見ている。1株当たり配当金は特別配当2円を落とし普通配当を1円増配する考えで、年13円を予定。
 
 
 
 
取材を終えて
同社においては、東日本大震災での人的な被害は無く、事業所、石油関連施設及びガス関連施設に関しても、業務に支障となる程の被害は無かった。しかし、燃料供給元である石油元売の出荷施設が大きな被害を受けたため、ガソリン、軽油等の供給が逼迫し、グループ会社が運営する一部のサービスステーションが休業となった他、営業を続けたサービスステーションも給油数量制限や営業時間の短縮を余儀なくされた。営業は既に正常化しているものの、12/3期は省エネ意識の高まりが石油関連製品の需要を冷やす可能性があり楽観はできない。
しかし、経済活動の面から需要を考えた場合、生産活動が回復の途上にある上期は、石油関連製品の需要も前年同期比で弱含みの推移が予想されるが、下期は生産活動の回復とともに、需給環境は安定化するものと思われる。11/3期は元来、同社の予想が比較的慎重な傾向が強く、特に利益面で慎重な12/3期の業績予想について、我々は達成可能な下限値と考える。