ブリッジレポート
(8860) フジ住宅株式会社

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ブリッジレポート:(8860)フジ住宅 vol.26

(8860:大証1部,東証1部) フジ住宅 企業HP
宮脇 宣綱 社長
宮脇 宣綱 社長

【ブリッジレポート vol.26】2011年3月期業績レポート
取材概要「大阪南部から大阪北部及び兵庫県の一部を事業エリアとする同社に東日本大震災の直後的な影響は無かった。また、震災後一時的に設備機器の調達に一部・・・」続きは本文をご覧ください。
2011年7月26日掲載
企業基本情報
企業名
フジ住宅株式会社
社長
宮脇 宣綱
所在地
大阪府岸和田市土生町1丁目4番23号
決算期
3月
業種
不動産業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2011年3月 59,796 3,648 3,680 2,027
2010年3月 48,614 2,137 2,118 1,237
2009年3月 45,300 2,584 2,388 1,361
2008年3月 48,793 2,723 2,413 2,097
2007年3月 52,221 4,233 4,090 911
2006年3月 41,333 3,229 3,196 1,312
2005年3月 43,954 3,208 2,799 1,661
2004年3月 34,387 2,034 1,891 684
2003年3月 32,905 1,198 1,028 545
2002年3月 33,419 899 692 297
2001年3月 31,433 2,928 2,681 1,503
2000年3月 34,268 1,596 1,117 -2,237
株式情報(5/20現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
377円 35,351,725株 13,328百万円 12.3% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
18.00円 4.8% 65.63円 5.7倍 508.07円 0.7倍
※株価は5/20終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
フジ住宅の2011年3月期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
地盤である大阪府下を中心に阪神間、和歌山県北部地域で、戸建分譲等の住宅・不動産事業を展開。主力の戸建分譲は、分譲ながら間取りや設備仕様等、建築基準法の範囲内で最大限に顧客の要望を取り入れる「自由設計方式」と50~200戸規模で街並みの統一性を重視した開発を行う「街づくり」に特徴がある。この他、金融機関とタイアップした土地有効活用事業、賃貸・管理事業、個人投資家向けの賃貸マンション販売事業、及び中古住宅の改装販売等も手掛けている。各事業の内容は次の通り。
 
分譲住宅事業(11/3期売上構成比41.3%)
用地仕入・許認可の取得から、宅地造成、設計、建築、販売までの一貫体制を構築しており、「自由設計方式」と「街づくり」が特徴。マンション分譲も事業領域だが、地価上昇とその後の供給過剰と需要の低下に伴う事業リスクの高まりを予見し、03年春以降、市場の悪化を予測し停止していた分譲マンション用地仕入を再開。
 
住宅流通事業( 同 35.3%)
「快造くん」のブランド名で展開している中古住宅の再生・販売を中心に廉価な建売住宅の販売を手掛けており、小規模の宅地分譲や仲介手数料も含まれる。地域密着営業により交差点単位での地域情報の収集・分析力をベースとした物件の鑑定力や仕入・販売価格の査定の速度と正確性、更にはリフォーム業者の育成とマニュアル化等、独自のノウハウが強み。
 
土地有効活用事業( 同 10.9%)
賃貸住宅の建築請負と個人投資家向け一棟売賃貸マンションに分かれる。賃貸住宅の建築請負では、遊休地の有効活用を目的とした賃貸マンション・アパート等の建築提案を行なっており、市場調査・企画・設計・建築・竣工引渡後の運営管理までを一貫してサポート。コスト競争力の高い木造アパート「フジパレス」シリーズに08年11月単身高齢者専用賃貸住宅「フジパレスシニア」が加わり、より独自性が強まった。金融機関や既契約者からの紹介案件が多い。また、個人投資家向け一棟売賃貸マンションでは、1棟あたり1億円前後の賃貸アパートを中心に展開。資金運用手段として根強い需要がある。
 
賃貸及び管理事業( 同 12.2%)
100%子会社フジ・アメニティサービス(株)が手掛けている。安定収益源となるばかりでなく、土地有効活用事業や個人投資家向け賃貸マンションの販売等との相乗効果も高い事業。
 
注文住宅事業( 同 0.3%)
建替え案件を中心にした注文住宅建築及びリフォームを手掛ける。これまでテストマーケティングを行ってきたが、11/3期より新たなセグメントとして独立させた。
 
 
2011年3月期決算
 
 
前期比23.0%の増収、同73.7%の経常増益
売上高は前期比23.0%増の597.9億円。顧客の住宅間取りや設備仕様に対する様々なニーズに対応した自由設計住宅の引渡しが順調に進んだ他、優れた価格訴求力と拠点拡充効果で中古住宅販売も大きく伸びた。利益面では、リーマン・ショック後の地価下落時に仕入れた収益性の高い物件が中心となった分譲住宅事業を中心に売上総利益率が改善。販売戸数の増加による広告宣伝費や人件費の増加を吸収して営業利益は36.4億円と同70.7%増加した。尚、契約高は自由設計住宅や中古住宅を中心に同30.8%増の593.8億円。また、期末契約残高は前期末比26.8%増の324.6億円と過去最高を更新した。
 
 
分譲住宅事業は引渡しが順調に進み売上高が246.8億円と前期比34.4%増加。引渡物件はリーマン・ショック後の地価下落時に仕入れた物件のため利益率が高く、セグメント利益は18.0億円と同5.5倍に拡大した。また、販売も順調に推移し、契約戸数が910戸(前期644戸)と同41.3%増加。土地販売を含めた契約高は313.9億円と同47.9%増加した(自由設計住宅の契約に限ると同48.8%増の312.9億円)。期末契約残高は前期末比47.1%増の209.4億円(自由設計住宅に限ると同47.0%増の209.3億円)。

住宅流通事業は売上高が前期比25.0%増の210.9億円、セグメント利益が同11.8%増の13.0億円。フジホームバンク大阪店の仕入・販売エリアの拡大や岸和田市へ移転したフジホームバンク泉北店の取扱拡大で中古住宅の販売が伸びた他、経営資源を中古住宅に割いたため売上金額・増収率共に大きくは無いが、建売販売も堅調に推移した。契約高は同24.6%増の211.2億円、期末契約残高は前期末比0.9%増の30.0億円(中古住宅、建売住宅共に事業期間が短く期中に契約した物件の大半が期中に売上計上されるため売上規模に比べて契約残の規模は小さい)。
土地有効活用事業は売上高が前期比0.5%増の65.3億円、セグメント利益は同0.4%増の10.3億円。当期より本格化した高齢者専用賃貸住宅「フジパレスシニア」の引渡しが順調に進んだ。契約高は同7.4%減の65.5億円、期末契約残高は前期末比0.2%増の83.6億円。

賃貸及び管理事業は売上高が前期比8.0%増の72.8億円、セグメント利益は同10.8%増の3.0億円。土地有効活用事業にリンクした賃貸物件及び管理物件の取扱い件数が増加した他、稼働率も改善した。

今期から本格的に参入した注文住宅事業は売上高が1.9億円と前期比70.3%増加したものの、営業人員の採用を加速させたためセグメント利益は5百万円と同74.6%減少した。契約高は3.1億円(前期は1.4億円)、期末契約残高は1.4億円(同27百万円)。
 
 
(3)財政状態及びキャッシュ・フロー(CF)
期末総資産は前期末比119.5億円増の623.1億円。借方では、12/3期以降を視野に入れた自由設計住宅の土地仕入を積極的に行った事や中古住宅も含めた契約済み物件も増加し、たな卸資産が増加。昨年9月に「おうち館和泉店」をオープンし、今年3月に幹線道路沿いの好立地に「おうち館泉佐野店」を竣工した事等で固定資産も増加した。貸方では、当期純利益に加えて自己株式の処分により純資産が増加した他、大型現場の用地仕入資金として長期借入金を中心に必要資金を調達した。CFの面では、積極的な仕入に伴う支出の増加で営業CFがマイナスとなる中、拠点の拡充・移転で投資CFもマイナスとなったが、長期借入金を中心に必要資金を確保した事で現金及び現金同等物の期末残高は81.7億円と前期末比で自己株式の処分代金相当額の13.3億円増加した。
 
 
 
(4)主要事業のポイント
分譲住宅事業 事業エリアの拡大戦略が奏功
大阪南部を主力の事業エリアとしてきた同社だが、03年以降、大阪北部から阪神間へ事業エリアを拡大しており、11/3期は大阪北部・阪神間の契約戸数及び契約高が共に大阪南部を上回った。11/3期の販売好調の背景には、住宅取得に対する政策的な支援、リーマン・ショック後の地価下落、更には低金利といった外部要因もあるが、同社の分譲住宅事業おいては、事業エリアの拡大戦略が果実の回収期を迎えつつある事も要因だ。
 
 
また、11/3期の仕入においても、大阪北部及び阪神間を中心に同社が得意とする“街づくり”ができる規模の良質な住宅用地の取得が進んだ(13/3期以降に売上計上される見込み)。地価が上昇している事や景気の先行き不透明感を踏まえ、今後は事業期間の短い20~30戸規模の用地取得も進めていく考え。
 
 
 
11/3期の中古住宅の売上高は5期連続の増収となった。中古住宅の扱いでは、三井のリハウスや住友のステップ等、大手不動産会社の仲介事業をよく耳にするが、同社の住宅流通事業では、同社が売主となる事が特徴。中古住宅は購入後に不具合が見つかった場合の責任の所在が問題になるが(瑕疵担保責任)、信頼のある大手でも仲介業者では対応が限られるが、「快造くん」は同社が売主であるため購入者は新築と同じように安心して購入できる。
地域情報や物件の鑑定力及び仕入れ・販売価格の査定の正確性と速度、更にはリフォーム等のノウハウが必要なため中古住宅の市場規模は大きいが、競合は少なく、大手の仲介業者から持ち込まれる物件も少なくないと言う。現在、分譲住宅事業が大阪南部から大阪北部や阪神間へ事業エリアを拡大しており、この情報を生かして住宅流通事業も大阪北部や阪神間を強化していく考え。
 
土地有効活用事業
当事業は賃貸住宅の建築請負と個人投資家向け一棟売賃貸マンションに分かれるが、11/3期は前者において高齢者専用賃貸住宅「フジパレスシニア」の契約高が全体の65.8%を占めるに至った。「フジパレスシニア」は「自分の親を安心して預けられる住まい」という事業コンセプトの下に開発された介護医療サービス付きの賃貸住宅。不足しがちな高齢者が安心して暮らせる住宅を供給する事で、社会貢献と事業拡大の両立を目指している。
 
注文住宅事業
10年10月1日より新たな事業として開始した。注文住宅事業をバランス経営(長期安定経営)の5番目の事業の柱に育成していく考えで、既にモデルハウス2棟も建築済み。土地所有者の注文住宅の建築請負や、既存住宅の建て替えに特化し、当面、堺市以南にエリアを絞って事業を進めていく。
 
 
2012年3月期業績予想
 
 
前期比12.0%の増収、同8.7%の経常増益予想
売上高は前期比12.0%増の670億円を見込む。事業の特性として契約残高の少ない住宅流通事業の見通しが慎重だが、豊富な契約残を抱える分譲住宅が伸びる他、個人投資家向け一棟売賃貸マンションを中心に土地有効活用事業の売上も増加する見込み。また、賃貸及び管理事業も、土地有効活用事業にリンクした取扱い件数の増加が見込まれる。利益面では、中古住宅の営業エリア拡大の一環として兵庫県内初の中古住宅の仕入・販売拠点「フジホームバンク西宮店」の開設(4月に開設済み)や注文住宅事業の育成等に伴う先行投資負担を吸収して営業利益が同13.8%増加する見込み。経常利益は同8.7%の増加にとどまるものの、特別損益の改善(前期は投資有価証券評価損2.2億円など特別損失2.3億円を計上)で当期純利益は23.2億円と同14.4%増加する見込み。
配当は1株当たり年18円を予定(期末配当9円を含む)。
 
 
 
取材を終えて
大阪南部から大阪北部及び兵庫県の一部を事業エリアとする同社に東日本大震災の直後的な影響は無かった。また、震災後一時的に設備機器の調達に一部で混乱が生じたものの影響は軽微だったと言う。現在、設備機器・資材調達は正常化しており、関西地区では住宅購入マインドにも変化はないようだ。ただ、今後はリーマン・ショック後に廉価で仕入れた物件の引渡しが一巡してくる事に加え、需要もリーマン・ショック後の急激な落ち込みの反動が沈静化してくるものと思われる。このため、V字回復した分譲住宅事業も、今下期から来期にかけて成長速度が巡航速度に落ち着いてくるだろう。
もちろん、この辺りは同社も認識しているところで、分譲住宅事業においては事業期間が短く在庫リスクの小さい20~30戸のプロジェクトへの対応を強化する等、供給戸数の拡大を追わず、市場動向に応じた住宅供給でシェアアップを図っていく。一方、成長のけん引役として価格訴求力の強い中古住宅や、高齢化社会の到来にマッチし人気の高い人高齢者専用賃貸住宅「フジパレスシニア」を強化していく考え。