ブリッジレポート
(4323) 日本システム技術株式会社

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ブリッジレポート:(4323)日本システム技術 vol.17

(4323:東証2部) 日本システム技術 企業HP
平林 武昭 社長
平林 武昭 社長

【ブリッジレポート vol.17】2011年3月期業績レポート
取材概要「2011年3月期も減益となったが、期中で下方修正していたので、特段の驚きはないだろう。しかしこれで3期連続の減益であり、投資家の信頼を裏切・・・」続きは本文をご覧ください。
2011年6月21日掲載
企業基本情報
企業名
日本システム技術株式会社
代表取締役社長
平林 武昭
所在地
〒530-0005 大阪市北区中之島2-2-7
決算期
3月 末日
業種
情報・通信
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2011年3月 8,990 211 264 216
2010年3月 9,322 456 497 300
2009年3月 10,449 806 852 447
2008年3月 10,705 931 945 426
2007年3月 9,711 389 405 138
2006年3月 7,917 111 125 605
2005年3月 8,189 522 502 319
2004年3月 7,767 540 537 67
2003年3月 7,064 676 635 194
2002年3月 6,939 658 606 181
2001年3月 6,285 834 814 282
株式情報(6/3現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
600円 4,739,153株 2,843百万円 5.1% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
25.0円 4.2% 46.42円 12.92倍 914円 0.66倍
※株価は6/3終値。発行済株式数は直近期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
日本システム技術の2011年3月期業績について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
ソフトウェアの受託開発(11/3期売上構成比61.3%)、主に教育機関向け業務パッケージの開発・販売(同22.9%)、及び情報システム関連機器等の販売(同15.8%)を行っている。
 
<沿革>
設立は、1973年3月。JAST(同社)の特徴である教育機関向け業務パッケージには、90年代前半から取り組んでおり、94年10月に学校事務支援統合システムパッケージソフト「GAKUENシリーズ」の販売を、98年8月に大規模大学向けERP「GAKUEN REVOLUTION(学務)」の販売を、2000年2月に学校関係者間の情報ネットワークを実現する統合型Webサービスシステム「UNIVERSAL PASSPORT」の販売を、それぞれ開始。01年11月のジャスダック上場を経て、03年2月に東証二部に株式を上場した。
 
<特徴>
 
1.理念重視の経営
 
「情報化の創造・提供による社会貢献」をモットーとして、いかなる企業系列にも属さない完全独立の立場を堅持することにより、業種、技術分野、プラットフォーム等を問わず、常に最新の技術に挑戦しつつ、自由な立場で幅広い分野の開発業務に取り組むことを経営の基本方針としている。

この基本方針に則り、顧客、株主、社員、社会がそれぞれWin-Win(双方有益)の関係を築くべく、「四方良し」の理念を掲げ、それぞれの価値を最大化し、全体としての企業価値を高めることにより、安定的成長を実現することを目標としている。

また、このような成長の原動力となるのは従業員一人一人の情報システム開発に対する情熱と顧客への誠心誠意のサービス製品であり、そのためには人間力の研鑽が何よりも先行すべきである、との信念に基づいた「人づくり」経営に徹することにしている。
 
(経営理念の基本的考え方)
「天爵を修めて人爵これに従う」=天爵を修めることで、はじめて人爵を与えられる。人爵を得て、その結果として天爵を与えられることはない。
 
2.広範な情報サービスの提供
 
メーカーや系列等一切の成約を受けず、自由な立場で広範な分野でサービスを提供することができる。
 
(サービス内容)
1.ソフトウェア開発
2.システムコンサルテーション
3.システム管理運用
4.システムインテグレーションサービス
5.ソフトウェアパッケージの開発・販売
6.情報機器の販売、ネットワーク構築
 
(事業セグメント)
1.ソフトウェア事業(ソフトウェアの受託開発) ⇒ SIerの側面
①ビジネスアプリケーション分野    (事務処理系システム)
②エンジニアリングアプリケーション分野(制御、技術系システム)
③イベントアプリケーション分野 (スポーツ・文化イベント関連システム)
④アウトソーシングサービス   (情報システムの一括運営管理)
 
2.パッケージ事業(ソフトウェアパッケージの開発、販売)
   ⇒ パッケージメーカーの側面
戦略的大学経営システムの開発・販売、導入支援、保守等
 
3.システム販売事業(ハード、ソフトの販売、ITインフラの構築)
   ⇒ 販社(BtoB)の側面
ハードウェア・ソフトウェアパッケージの販売、保守、ネットワーク構築等
 
3.大手優良企業群との長期取引
 
下表のように、大手企業群と長期取引が多いのも同社の特色。しかもすべてが直接取引きである。
長期取引であるため、先方顧客からは同社が「コア・パートナー」となっている場合が多く、そのため不況期でも受注が大きく落ち込むことが少ない、と会社側は述べている。
 
 
 
4.グループ拠点展開
 
 
大阪と東京の2本社制を敷いており、早くから海外に開発拠点を展開している事も特徴。また、2006年8月には、大学向けマーケットを中心とする文教分野での業容拡大を図るべく、首都圏の大規模大学を中心に、システム機器等の販売で実績のあるアルファコンピュータ(株)の全株式を取得した。これにより、パッケージ、情報機器及びネットワーク等を一貫して提供する大学向けSI(システム・インテグレーション)事業の大規模展開が可能となった。
 
 
5.国内トップシェアを誇る教育機関向け業務パッケージ
 
大学向け経営改革ソリューションとして提供している統合業務パッケージは、94年10月の発売以来、318校(11年5月20日現在)への導入実績を有し、文教マーケットにおいて高い評価を受けている。

特徴は、大規模な総合大学から小規模の短期大学に至るまで、主要業務を全方位でカバーしているため、パラメーターの設定だけで大学個々のニーズに柔軟に対応できる事。つまり、カスタマイズの必要がないため、ユーザーは導入時及びその後の運用・メンテナンスに関わるトータルコストを削減する事ができる。なお、1案件あたりの導入金額は数10万円~数億円と、導入規模により広範囲にわたる。

少子化問題への取り組み戦略のひとつとして、大学各校は優秀な学生を確保するべく、学生向けサービスや経営品質の向上に取り組んでいる。しかし、全国に約1,200校あると言われる大学・短大の大半がメインフレーマー等による手作りのシステムやカスタマイズを前提としたパッケージを使っていという。品質・価格両面での優位性から競合は少ないようで、販売拡大の余地は大きいと思われる。現在20%のシェアを、早期に30%に引き上げたい考え。
 
 
 
6.その他の特長
(人材重視) ⇒ 品質安定、低コスト体質
新卒中心の採用と長期的な人材育成
人材流動の激しい業界内で高い定着率を維持
 
(品質、信頼へのこだわり) ⇒ 高いリピートオーダー率、大手顧客との長期取引
「一括丸投げ」は行わず、社員中心のプロジェクト編成
請け負った案件は顧客が満足するまでやり抜く、途中退場はしない
 
(特徴的な営業戦術) ⇒ 受託開発パッケージ販売・機器販売の共存共栄に成功
既存顧客はSE自らリピート案件を発掘(営業なき営業)
新規顧客は専門営業がソリューション提案
パッケージ事業は代理店販売が主体
 
(徹底したコスト管理) ⇒ 問題の早期発見による不採算案件の最小化、低コスト体質
 
2011年3月期業績
 
<連結業績>
 
2011年3月期の業績結果は上表のようになった。昨年度下期から受注が急減速したことから上半期の業績が不調であったが、下半期以降は回復傾向にある。
また研究開発費が前期比で220百万円ほど増加、これも減益の大きな要因。
2011年2月に業績を下方修正したが、その後期末に向けて業績が回復したことから上方修正をした。
退職給付制度改定に伴う特別利益を1.5億円計上した。
将来導入が予想されるIFRSによる包括利益と当期純利益の差は僅少。
<事業セグメント別業績動向>
 
事業セグメント別の概況は下表のようになった。
 
 
(ソフトウェア事業)
通信業向けビジネス系が絶好調、軟調な他業種向けを下支えした。
さらに研究開発投資を積極化した。
また不採算案件もほぼゼロであった。

(パッケージ事業)
保守・導入支援、仕入販売は増収であったが、大学向けのプログラム・プロダクト販売やEUC(パッケージ販売後の個別案件)が前年を下回り減収となった。

(システム販売事業)
政局の混乱等の影響で公共系案件の予算執行が停滞、その結果、大幅な減収となった。
 
<分野別売上構成推移>
 
分野別の売上比率は下図のようであり、構成比に大きな変化はなかった。
 
 
<パッケージ事業品目別売上構成推移>
 
パッケージ製品の品目別売上高構成比は下図のようになった。
 
 
主な変化としては、①06~08年に投入した主力PPは安定期に突入した、②派生的アイテム(EUC,仕入販売)の比率が過半数になってきた、③ストックビジネス(保守)が増加した。
 
 
<最終顧客の業種別売上構成推移>
 
最終顧客の業種別売上構成比率は下図のようになった。
 
 
通信:ビジネス系は大型案件受注、工程進捗も順調で+30%
金融:リーマンショック以降連続減収、▲35%
サービス・流通:ほぼフラット
製造業:▲4%と微減
官公庁その他:システム販売事業案件の減少で▲20%
教育機関:パッケージ事業は増収であったが、その他が軟調で▲5%
<顧客主要グループ別構成推移>
 
主な顧客グループ別売上比率は下表のようになった。NTT向けの比率が上昇し、他のメーカー向けの比率が相対的に低下した。
 
 
 
2012年3月期業績予想
 
<連結業績>
会社側では2012年3月期の業績を下表のように予想している。
 
 
(ソフトウェア事業)
地域・産業別組織へ再編し、収益基盤の再構築を図る
研究開発投資を継続 ⇒ 下請けでなくJAST主導のビジネスを創生する
PMO(Project Management Office)の設置により不採算ゼロを継続
増収・大幅増益を達成し、主力事業らしい状況にする
 
(パッケージ事業)
東西2事業部制にすることで、地域に特化し効率を追求する
PP販売は安定期 ⇒ 追加製品でトップブランドの地位を磐石にする
高水準の研究開発を継続 ⇒ 次世代製品、サービス育成の起点年度とする
 
(システム販売事業)
一見、期首の受注残は減少しているようだが、実態(見込み案件)は既に年間売上以上を確保している
公共系:昨年度は執行が停止したが、今年度は執行再開を期待。CIO補佐官も受注済み
部門としては最大の成長を見込み、赤字解消を狙う
 
<主な計画:変革への施策>
 
(研究開発投資の例)
医療情報サービス(JMICS):保険者からデジタルレセプトデータを預かり、コンピューターにより自動的に前レセプトの点検を行うクラウド型サービス。
大学向けパッケージ:学内情報端末の開発(同社初のハードウェア事業)
先進ソリューション:先進検索ツール、生体認証ビジネスの推進
パッケージソリューション:金融機関向けのCRMの開発
 
(アライアンス)
ODKソリューション(パッケージ事業)、韓国PLESION(医療サービス)との協業
他にも複数のアライアンス案件が以前では考えられなかったペースで進行中
 
(資本政策等)
11/3/23付けで「ファシリティ特約付新株予約権」100万株相当をローンチ:これにより柔軟な資本増強、株主数の増加、株式の流動性向上を目指す
安定的な配当(年25円)を維持
東証1部の基準である株主数2,200名を目指す(11年3月末は1,676名)
IR、ディスクロージャの強化:新製品プレスリリース、説明会などの回数を増やす(前期比2倍を目標)
 
取材を終えて
2011年3月期も減益となったが、期中で下方修正していたので、特段の驚きはないだろう。しかしこれで3期連続の減益であり、投資家の信頼を裏切った結果となっている。説明会ではいろいろな施策を説明していたが、今は「内容」より「結果」の時期であり、とりあえず「増益」が当面の目標となる。

株価も低位に留まっており、バリュエーション的には割安と思われるが、次の目標はまず「増益基調に戻すこと」だろう。以前からの課題である低流動性の改善にも前向きに取り組んで欲しい。今回、これに対する施策が発表されたが早期にこれらが実行され流動性が改善されることを望む。