ブリッジレポート:(8275)フォーバル vol.35
(8275:JASDAQ) フォーバル |
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企業名 |
株式会社フォーバル |
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会長 |
大久保 秀夫 |
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社長 |
中島 將典 |
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所在地 |
東京都渋谷区神宮前 5-52-2 青山オーバルビル |
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決算期 |
3月 |
業種 |
卸売業(商業) |
項目決算期 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 当期純利益 |
2011年3月 | 32,287 | 681 | 665 | 464 |
2010年3月 | 32,206 | 523 | 478 | 449 |
2009年3月 | 34,358 | 112 | 17 | -1,879 |
2008年3月 | 34,323 | -933 | -1,264 | -532 |
2007年3月 | 26,216 | -1,878 | -2,012 | -1,390 |
2006年3月 | 27,500 | 3 | 14 | 1,063 |
2005年3月 | 40,089 | 1,962 | 1,962 | 1,174 |
2004年3月 | 32,981 | 1,446 | 1,360 | 660 |
2003年3月 | 37,402 | 1,522 | 1,334 | 443 |
2002年3月 | 44,411 | -860 | -1,027 | -4,756 |
2001年3月 | 52,045 | 1,026 | 699 | 86 |
2000年3月 | 54,668 | 1,278 | 1,281 | 1,122 |
株式情報(6/7現在データ) |
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今回のポイント |
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会社概要 |
経営コンサルで攻める
フォーバルは創業者である大久保会長の類いまれなるアイデアと事業遂行力によって、ベンチャー企業として発展してきたが、局面によって事業の転換を迫られ負担が発生した。しかし、そのマイナスの負担をかなり整理し、苦しい局面を脱した。現在進めている経営計画では、事業の安定化と拡大を目指している。経営コンサルを軸とした情報通信でのビジネス展開は、有力商品の開発と相まって、十分伸びていくことができよう。中島社長が推進する着実な収益力の回復に注目したい。
5段階で顧客開拓を実行
当社は30年前の創業の時から業界を一歩リードする創意工夫を持ち込む形で、情報通信機器のリース販売を全国の中小企業に展開してきた。だが、機器というハードウェアの優位性が相対的に薄れていく中で、情報通信機器を使ってもらうコンサルティングにビジネスモデルの変革を推進してきた。ハードの販売から経営課題を解決するITコンサルティングサービス(当社では「アイコン」という)へ大きくシフトしてきた。しかも、この情報通信コンサルタント企業としてのフォーバルを日本だけでなく、アジアにも展開しようとしている。09年にコンサルティングディビジョン(コンサル事業部)を設置し、本格的に取り組んでいる。ハード機器販売からコンサルへの社員の意識改革に積極的に取り組んでいる。資格制度を取り入れて、NTTコミュニケーションズが主催するドットコムマスターの資格と、個人情報保護士の資格を全社員が取得するよう義務付け、すでに400人以上がとっている。若手にとっては、取得しなければ昇進できないようにしている。 中小企業に対して、当社は5つのレベルでサービスを提供し、シナジー(相乗効果)を追求している。①回線契約、②ハードウェアの販売、③保守サポート、④ウェブ構築、⑤経営コンサルティング、の5段階である。中小企業の現場で使われている情報通信の回線を効率よく安く済む方策(①)から入ってもよいし、上位のマネジメントに対して経営コンサルから入り、経営改革を実行する中で、そのサービスの一環として、④~①におりてもよいのである。 アイコン契約の客にフォーカス
今、主力としている経営コンサルについては、大久保会長自らセミナーの講師を務め、集客した企業経営者の四分の一は何らかの形でフォーバルの経営コンサルに関心を持っている。大久保会長の話には説得力がある。中小企業の経営者に参考になることがいろいろ含まれ、抽象論でなく、具体的に何をすべきかがはっきり示される。そうすると具体的に相談したくなるのである。しかも、集客する人々は、すでにフォーバルの顧客である場合が多い。そういうユーザーに声をかけている。会社の営業担当に対しては、1社でも多くの顧客が当社と良好な関係が築けるように、強力な推進を行っている。顧客を5つの層に分けており、通信サービスやハードだけ利用している顧客に対して、いかにアイコン契約を獲得するかに全力投入をしているのである。 現在、当社と継続的に取引のある顧客が5万社ほどあるが、そのうち、アイコン契約の顧客は1万事業所ほどある。これを数年後に2万事業所に拡大するのが重要な経営目標である。経営コンサルはこの既存客に声をかけており、コンサルの顧客になる可能性はかなり高いのである。 当社の営業においては、KPI(重要経営指標)として、このアイコン契約の顧客を何件作るかというミッション1本においており、マネジメントはこの件数をみている。よって、フォーバルの経営コンサル戦略は会長をヘッドに、コンサルティングディビジョンを軸に、会社が一丸となって動いているのである。その効果は着実に出ている。 ビジネスの構図
フォーバルのアクティブの顧客は5万社ほどあるが、その中で、①ビリングシステムを通して継続的に取引のある客を現在の3.8万社から5万社に増やす、②アイコン(ITコンサル)の対象となっている顧客を現在の1.19万事業所から2万事業所にもっていく、③力をいれている経営コンサルの顧客を増やす、という目標のもとで活動している。ビリングサービスとは、情報通信サービスにおいて、中小企業が大手並みの割引サービスを受けられるように、当社が間に立ってサービスの取り次ぎをすると同時に、さまざまなサービスの請求書の支払処理を一括で請け負って、伝票を1枚にまとめて、顧客の手間を省くというサービスである。 アイコンサービスとは、ITコンサルティングに関わる継続的なサービスを受ける顧客で、コピー機のメンテナンスなど保守サポートサービスや、経営相談などを月間料金でうけている。 経営コンサルは月30万円のコンサル料をベースに展開していく。一人10社の顧客をもって、コンサルタントが10人とすれば、年商3.6億円となる。この金額は大きくないが、コンサルをベースに当社が得意とするアイコンに結びついていけば、着実なビジネス拡大に繋がるとみられる。 これらの事業をグループで展開している。フォーバル(8275 ジャスダック上場)を軸に、フォーバルテレコム(9445 マザーズ上場)、フォーバル・リアルストレート(9423 ジャスダック上場、オフィスソリューション関連)、リンクアップ(移動体通信関連)など、グループ企業が連携して活動している。 |
中期経営方針 |
(1)新たなイノベーション・・・フォーバルテレコムのFMC
ツーウェイスマートを本格投入
固定電話と携帯電話を融合したFMC(固定モバイル変換型)をフォーバルテレコムが開発した。これを使うと、中小企業にとって会社の固定電話と自ら持って歩く携帯電話を一体化して、どこでも自由に社内と同じように使える。社員同志なら社外で通話しても社内同様の費用になる。ホワイトビジネスフォンパックとして1機種でトライしてきたが、昨秋から新たな機種を投入している。従来のビジネスフォンメーカーの電話をこちらに切り替えることにより、当社のビジネスチャンスは大幅に増える。このホワイトビジネスフォンパック(WBP)を「ツーウェイスマート」と名付けている。欧州ではすでに主流となっているものであるが、これを当社が独自開発し先行した。契約はフォーバルテルコムが顧客の中小企業と結び、その通話料をソフトバンクモバイルに支払う。大手企業なら自前でできるが、中小企業のためにサービスを提供しようという当社の考え方の実践である。
光通信とJV(合弁の企画販社)を設立し協業
一部ハード機器(グループのリンクアップ社が企画し外部へOEM)は必要なので、これを販売して営業コストをカバーし、その後は利用料でランニングコストをまかない、ここから稼ぐという仕組みである。この企画販売にあたっては、光通信と合併でホワイトビジネスイニシアティブ(WBI)を50:50の出資で作った。ここを通してフォーバルグループと光通信グループが販売するのである。今回このアイデアは現場から出てきた。新商品に関して従来は30年前から大久保会長がアイデアマンとして発想し、実現してきたのが当社の特色であるが、今回のツーウェイスマートは会長のアイデアに依存しているわけではない。現場でイノベーションを起こす力を培い、それが花開いたと言える。これは、かなり市場に受け入れられると考えられるので、今後の業績に相当貢献してこよう。 フォーバルのコンペティター(競合企業)としては、大塚商会(4768 東証1部)、光通信(9435 東証1部)、エフティコミュニケーションズ(2763 JQ)、レカムホールディングス(3323 HCS)などが挙げられるが、その中で今回、光通信とは一部連携を取っている。また、顧客開拓においては、既存顧客の深掘りを主眼に置いているので、勝算は十分あろう。 今後の成長戦略
4年前から進めてきた「情報通信コンサルタント」になるというアイコンサービスが効果を上げてきたことである。これをさらに進める。かつては情報通信機器の販売にサポートを加えるというものであったが、これに経営支援というコンサルティングの軸を立てた。経営支援というのは、"よろず相談にのる"というものだが、その中でもITを使って経営効率を上げるというソリューションに貢献することを狙っている。当社が先行し、他社もここにきて、類似のサービスを始めたが、追いつかれないようにしていく。社員のスキルを鍛え、インターネット認定ドットコムマスターという資格は社員の72.0%が取得し、個人情報保護士の資格も63.9%が有している。この2つは全社員が取得するように仕向けており。こうしたことを通じて、コンサル志向を強めようとしている。 アイコン(i+con)とは、定期訪問付き経営相談サービスである。1カ月3500円から100万円以上まで、様々なレベルがあるが、いずれも毎月定額の収入が入るという意味でストック型のビジネスである。 アイコンサービスを追求することによって、顧客とのリレーションが深まり、ARPU(顧客当たりのサービス利用料)も上がることになる。アイコンの契約数は08年度0.91万社(売上高19億円)、09年度1.06万社(同21億円)、10年度1.19万社(同23.6億円)と増えている。3カ月に1度は定期的に訪問することになるので、飛び込み的な営業よりはずっと効果的である。 よろず相談の件数は今年度1000件を目標にしており、コンサルの質の向上が課題となっている。このコンサルの中心は、情報通信(IT)を活用した経営の高度化である。同時に、この分野における海外の成長機会の取り組みも重要である。海外では、中国の隣にあるカンボジアやベトナムなど、アジアの国々に注目している。 情報通信を活用した経営の高度化では、スマートフォンのツーウェイスマート(2waySmart)を推進する。スマートフォンを社内ネットに取り入れて業務の効率化を図る。まず、ツーウェイスマートでアイコンユーザーを増やす。次に次世代セキュリティを提案する。そしてクラウドを利用する方向にもっていく、という作戦である。流れは、ツーウェイでアイコンを進め、よろず相談に持ち込んで、次に海外を目指すという展開である。カンボジアやベトナムは人口構成が中国よりずっと若く、消費意欲も強い。こうした国の発展は間違いないので、そこに入っていく中堅企業のIT化をサポートする。 (2)アジア展開・・・カンボジアで先行
シーセフの社会貢献活動
公益財団法人シーセフ(CIESF、 Cambodia International Education Support Foundation) とは、カンボジア国際教育支援基金のことで、大久保会長の社会貢献活動の一環として設立し、理事長は大久保氏が務めている。歴史的な経緯もあり、カンボジアには十分な教育の機会がないことを憂い、その人材教育から教育のインフラまでを作っていこうという活動に取り組んできた。この活動を商売抜きに本気で実行したことによりカンボジアに貢献、ひいては高く評価された。その評価が間接的に、今日のビジネスにつながってきたわけである。大久保会長もシーセフと自社の事業をきっちりと分け、両立を図っていく方針である。
プノンペン経済特区にITサポート窓口を設置
フォーバルは、業績の改善が進み、財務体質の強化も進展した。そこで、カンボジアを始め、アジアでの事業展開を加速しようとしている。日本企業の海外展開は、中国はもちろんタイやベトナムも盛んであるが、今やカンボジアもターゲットになってきた。当社は次の発展しそうな国で先行メリットを活かそうとしている。まず、カンボジア、で橋頭保を築いた。カンボジアには4つの主要な経済特区(プノンペン、マンハッタン、タイセン、シアヌークビルポート)があるが、その中のプノンペン経済特区ではITサポートの窓口を設置した。カンボジアでは、輸入関税が免除されたり、20%の標準法人税率が最長9年免税となる。カンボジアに進出したいという日本企業がいろいろ出始めている。フォーバルは大久保会長の強いネットワーク力で、カンボジアにいち早く入り込み、日系企業が数多く進出しているプノンペン経済特区にITサポート窓口を開設している。大手企業がカンボジアへの進出を表明しており、特区のITインフラを活用する。そのITインフラのサポート役をフォーバルカンボジアに頼むことになろう。ITインフラはもちろん、セキュリティのビジネスにも広がりそうである。 プンノンペン以外の特区にも同じ仕組みを作ろうと現在働きかけている。このグローバルアイコンサービスは、日本企業が進出する前のフィージビリティスタディでも相談にのり、進出後はITサービスでビジネスを広げるというパターンである。フォーバルがカンボジア(100%子会社)は現在26名(日本人3名)の陣容で大盛況である。 プノンペン経済特区ではすでに日系企業5社が稼働している。カンボジアのビジネスを周辺国に横展開する。まず、ベトナムにフォーバルベトナムを作り、次にインドネシアに行く予定である。 |
当面の業績 |
業績を着実に伸ばす
2011年3月期は売上高32287百万円(前年度比+0.3%)、営業利益681百万円(+30.1%)、経常利益665百万円(+39.0%)、当期純利益464百万円(+3.4%)となった。中小企業経営へのアイコンサービスが客数を伸ばし、業績を牽引している。テレコム事業も順調に伸びている。モバイルは北海道で展開しているauショップであるが、auのスマートフォン対応の遅れで減益となった。フォーバルのauショップは北海道のauの中ではシェア25%とトップである。auのスマートフォン対応も4Qからは取り戻している。 粗利益率は28.1%(前年度26.7%)に改善したが、販管費比率は26.0%(同25.1%)とやや上昇した。 有利子負債は08年度29.1億円、09年度23.9億円、そして10年度が20.3億円と順調に削減してきた。これによって自己資本比率は26.0%、29.2%、そして32.0%と上昇した。 マネジメントアプローチで分かり易くなる
売上内訳は従来と変わった。セグメントの分類は、従来の機器関連事業とネットワーク関連事業から、フォーバルビジネスグループ、フォーバルテレコムビジネスグループ、モバイルショップビジネスグループへ変更された。経営者が意思決定をするにあたって、経営管理上社内で用いている分類に基づくというマネジメントアプローチに従ったことによる。各々の事業部別に売上、営業利益をみるので、分かりやすくなったといえよう。
今2012年3月期も増益を目指す
2012年3月期は売上高330億円(前年度比+2.2%)、営業利益7.0億円(同+2.8%)、経常利益7.0億円(同+5.2%)、当期純利益3.5億円(同-24.7%)。今期からは会計上の税負担が増える見通しなので、当期純利益は減る。アイコンの顧客増として、今期2000社増やして、1.4万件にしたいと考えている。海外の現法は収益的には少なく、業績予想に入れるほどではない。大震災の影響は印刷物やビジネスフォン、コピー機の調達という点で影響は少しあるが、下期にはとり戻せよう。 連結上の累損は本業の利益で早期解消を目指す
連結バランスシート上の2010年度末の利益余剰金は-25億円である。さまざまな事業の整理に伴う過去の負担が残っていることによる。25億円の累損が残っている要因は2つある。1つは、2002年3月期にフォーバルテレコムで49億円の欠損が発生したことである。ブラジル人向け携帯電話サービスなど、事業の撤退や整理を行った。この分は38億円の増資や、資本金、資本準備金の取り崩し(欠損填補)で埋め合わせたが、フォーバルからの出資分については簿価のまま残っていたことによる。もう1つは、09年3月期にフォーバル本体で人材関連などグループ会社の整理を行ったことに伴う赤字が加わったことによる。この-25億円は期間利益で消していくので、もうしばらく時間を要する。会社側では、この3年間で一掃することを目指している。税法上、欠損については7年間の猶予期間があるが、これが子会社のフォーバルテレコムにおいては、既に税務上の累損を一掃しているので税金がかかってくる。よって、連結ベースの累積一掃には税引き利益で対応していくことになる。本業が着実に展開でき、業績の向上が見込める局面にあるので、いい方向に向かっているといえよう。 |
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