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ブリッジレポート:(4709)インフォメーション・ディベロプメント vol.36

(4709:JASDAQ) インフォメーション・ディベロプメント 企業HP
舩越 真樹 社長
舩越 真樹 社長

【ブリッジレポート vol.36】2011年3月期業績レポート
取材概要「同社グループが東日本大震災で被災する事はなかったが、3交代制で24時間365日ノンストップのサービスを提供するITアウトソーシングの一部の要・・・」続きは本文をご覧ください。
2011年6月7日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社インフォメーション・ディベロプメント
社長
舩越 真樹
所在地
東京都千代田区二番町 7-5
決算期
3月
業種
情報・通信
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2011年3月 16,450 839 892 447
2010年3月 17,263 850 864 155
2009年3月 18,458 1,057 1,109 563
2008年3月 18,032 1,200 1,191 594
2007年3月 14,692 1,024 1,024 550
2006年3月 13,028 851 845 430
2005年3月 11,378 550 557 119
2004年3月 11,203 625 628 203
2003年3月 11,668 598 591 274
2002年3月 11,081 548 546 272
2001年3月 9,738 756 735 242
2000年3月 8,468 640 586 320
株式情報(5/13現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
535円 7,427,841株 3,973百万円 7.6% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
21.00円 3.9% 67.31円 7.9倍 807.69円 0.7倍
※株価は5/13終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
インフォメーション・ディベロプメントの2011年3月期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
金融向けITアウトソーシングに強みを持つ独立系の情報サービス会社。一つの顧客に対し、ソフトウェア開発からシステム運営管理、BPOまで、複数のサービスを提供するBusiness Operations Outsourcing戦略を推進しており、好不況の波の大きいIT業界にあって、相対的に業績の変動が小さく、高配当を継続している。
 
グループは、同社の他、システム運用を手掛ける(株)日本カルチャソフトサービス(出資比率100%。以下、CS)、日本ユニシス(株)との合弁会社(株)ソフトウエア・ディベロプメント(同80%、SD)、情報システム・コンサルティング等の(株)プライド(同54.4%)、紙データの電子化技術を有する(株)シィ・エイ・ティ(同59.5%、CAT)、及び中国で艾迪系統開発(武漢)有限公司(100%、ID武漢)の連結子会社5社。
 
ITアウトソーシング(ITO)
1,000名規模の技術者を擁する専門部隊が、ミドルウェアのカスタマイズからハードウェアの保守、24時間体制のオペレーションまで、トータルかつ高付加価値のアウトソーシングを実現している。
ソフトウェア開発・保守(SI)
「独立系SE集団」として、特定のマシン、OS、ツール、開発言語にとらわれず、顧客の開発ニーズに合わせたシステム構築をサポート。大型汎用機から携帯端末まで、金融、公共、サービス分野を中心に豊富な実績を誇る。
ビジネスプロセスアウトソーシング(BPO)
金融機関等へ「バックオフィス」、「ヘルプデスク」、「要員派遣」、「デジタルソリューション」などのサービスを提供している。
その他
セキュリティ&コンサルティングを中心に展開している。世界の大手ベンダーと提携し、各種セキュリティ製品の提供からコンサルティング、セキュリティ環境の構築・導入・運用・サポートまで一貫したサービスを提供している。
 
 
 
2011年3月期決算
 
 
前期比4.7%の減収、同3.3%の経常増益
売上高は前期比4.7%減の164.5億円。新規開拓が進んだITアウトソーシングがほぼ前期並みの売上を維持した他、セキュリティ業務を中心にその他の売上も増加したが、大口のデータ入力案件が終了したビジネスプロセスアウトソーシングが大きく落ち込んだ他、システムインテグレーションもIT投資の低迷で開発案件が減少した。利益面では、継続案件の一部で受注単価の下落等があったものの、グループ内で業務の効率化・内製化が進んだ他、プロジェクト管理の徹底でトラブル対応等も減少し、売上総利益率が0.5ポイント改善(。一方、のれん償却費(150百万円→78百万円)を中心に販管費が減少したため、営業利益は同1.4%減の8.3億円とわずかな減少にとどまった。雇用調整助成金収入(7百万円→39百万円)の計上等で営業外損益が改善した他、のれん減損損失(前期は251百万円を計上)が無くなり特別損益も大きく改善したため、当期純利益は4.4億円と同2.9倍弱に増加した。
尚、売上原価は132.0億円と同734百万円(同5.3%)減少したが、主な要因は業務の効率化による残業代を中心にした労務費の減少(305百万円)、及び外注費(306百万円)の減少。一方、セキュリティ業務の好調で商品仕入(57百万円)等が増加した。
 
 
セキュリティ業務の好調でその他の売上が増加した他、主力のITアウトソーシングも、一部の継続案件での単価下落を潜在ニーズの掘り起こしや付加価値サービスへの転換で吸収して前期並みの売上を確保した。一方、システムインテグレーションは電力・系で売上が伸びた顧客もあったが、銀行・生損保向けを中心に総じて受注が低迷。ビジネスプロセスアウトソーシングは大口のデータ入力案件の終了で売上が大きく落ち込んだ。
 
 
顧客別では、金融機関、情報・通信・サービス、その他と、3セグメントで売上が減少。ただ、金融機関はシステム運営管理が下支えとなり、また、情報・通信・サービスはシステム運営管理の下支えに加え、電力・運輸系の一部顧客で開発売上が伸びた事で小幅な売上の減少にとどまった。
 
 
売上の減少による固定費負担の増加で同社個別の経常利益が前期比28.2%減少したものの、(株)シィ・エイ・ティが黒字転換した他、農林系金融機関向けの好調で(株)日本カルチャソフトサービスが、また、IT投資の上流部門であるコンサル案件が下期に回復した事で(株)プライドが、それぞれ増益。IT投資低迷の影響を強く受けた(株)ソフトウエア・ディベロプメントも雇用調整助成金収入が下支えとなった。
 
(4)財政状態及びキャッシュ・フロー(CF)
期末総資産は前期末比2.0億円減の92.7億円。貸方では、短期借入金を積み増した事で現預金が増加する一方、のれん償却で無形固定資産が、繰延税金資産を中心に投資その他が、それぞれ減少。貸方では、未払法人税等や役員退職慰労引当金が減少する一方、純資産や有利子負債が増加した。CFの面では、役員退職慰労金の支払い(4.0億円)で営業CFが減少したものの、投資有価証券の売却やM&A関連の支出が減少した事等による投資CFの改善でフリーCFが前期の2.3億円から2.6億円に増加。短期借入金の積み増しで財務CFのマイナス幅も縮小し、現金及び現金同等物の期末残高は19.9億円と前期末比2.3億円増加した。
 
 
 
業界動向と同業他社の状況
 
経済産業省発表の「特定サービス産業動態統計調査」(11年4月19日発表)によると、情報サービス産業の売上高は、09年6月から11年2月まで長期にわたりマイナス成長が続いているが、10年度の上場ITサービス企業各社の業績は生産性の向上で改善傾向にあった。しかし、3月11日に発生した東日本大震災の影響で11年度は再び不透明感が強まり、特に上期のソフトウェア開発への影響が懸念されている。
 
 
2012年3月期業績予想
 
 
受注に不透明感はあるものの、プロジェクト管理の徹底等で前期比7.2%の営業増益を目指す
売上高は前期比0.3%増の165億円。大口案件終了の影響等でビジネスプロセスアウトソーシングが減少するものの、新規のITアウトソーシングで吸収できる見込み。一方、システムインテグレーションは特に不透明感が強いが、受注残の消化が進む事と下期以降のIT投資の回復に期待し前期並みの売上を見込む。利益面では、プロジェクト管理の徹底とグループをあげてので一段の営業利益率改善を目指す。雇用調整助成金収入を折り込んでいないため、経常利益が同0.8%の増加にとどまるものの、特別損失が無くなる事や税効果会計の影響で当期純利益は5.0億円と同11.8%増加する見込み。配当は1株当たり2円増配の期末21円を予定(配当性向31.2%)。
 
 
 
(2)今後の方向性と見通し
「Business Operations Outsourcing」、「クラウドへの対応」、「グローバル展開」、「コーポレート・ブランドの育成」、及び「グループ経営の効率化」と「人材開発・育成」に取り組む事で、新中期経営計画「Breakthrough 200!」で掲げた14/3期の目標(連結売上高200億円、営業利益12.5億円)達成を目指す考え。
 
Business Operations Outsourcing
一つの顧客に対し、ソフトウェア開発からシステム運営管理、BPOまで、複数のサービスを提供するBusiness Operations Outsourcingを推進する事で既存顧客の深耕と新規顧客の開拓を図る。尚、同社では、上記のトータルなITアウトソーシングサービスを「iii-Bos24®」として、「IDグループ」と共にブランディングしていく考え。
 
 
クラウドへの対応
クラウドコンピューティングの普及に伴い、今後、需要の増加が見込まれるプラットフォーム系開発業務において要員の育成を行い、顧客ニーズに広範かつ迅速に対応できる体制を構築する。また、クラウド関連サービスを提供する他社との提携にも柔軟に対応していく考え。尚、プラットフォーム系開発業務とは、ハードウェア、OS、ミドルウェアの機能を最適な手段で活用し、低コスト高信頼性のシステム稼働環境を設計・構築するサービス。
 
グローバル展開
ID武漢(艾迪系統開発(武漢)有限公司:中国湖北省武漢市)は、ソフトウェア開発からシステム運営管理、BPOまで、トータルなITサービスを提供している。今後は現地有力ベンダーとの協業や提携も含め中国市場におけるビジネス展開拡大を図っていく考えで、12/3期は黒字化を視野に入れている。また、5月9日にはSYSCOM (USA) INC.との業務提携を発表した。SYSCOM社は、主に米国における日系金融機関や商社を対象にデータセンターにおけるシステム運営管理からネットワーク環境の設計・構築、更にはERP導入や内部統制構築支援等のサービスを提供しており、サーバの仮想化などシステムの基盤系分野においても豊富な実績を有する。今後は、SYSCOM社の協力の下、グローバル展開を進める顧客の情報システムをサポートしていく。
 
グループ経営の効率化と人材開発及び育成
グループ経営の効率化に向け、グループ各社の管理部門の一元化や営業活動におけるグループ内連携強化等、グループリソースを最大限活用し経営の効率化を進めていく。また、要員の適正配置や時間外勤務管理の厳格化に伴う業務フローの見直し等も進め、業務プロセスの改善も図る。
人材開発及び育成では、階層別トレーニングや各種技術研修など研修・教育制度の拡充を図る他、先端技術や語学の習得を目的に留学制度を設ける等、グローバルに活躍できる人材の育成に取り組む。
 
取材を終えて
同社グループが東日本大震災で被災する事はなかったが、3交代制で24時間365日ノンストップのサービスを提供するITアウトソーシングの一部の要員は、交通機関の運行が不安定だった震災から数日間は近くのホテル等に宿泊し自宅に戻れなかったと言う。同社では、あしなが育英会特別奨学金、JAグループ、JFグループ、岩手県山田町の小学校への義援金の寄付に加え、5月28日にはチャリティコンサート(収益金を義援金として日本赤十字社へ寄付)特別協賛を行った(http://www.idnet.co.jp/news/pdf/attacca_20110528.pdf)。
一方、業績については、景気等の影響を最も受けやすいシステムインテグレーションに底打ち感が出ていたが、東日本大震災の発生で再び不透明感が高まった。第2四半期(7-9月)までは案件の中止・延期が懸念される。ただ、新規開発はリーマンショックを境に長期間にわたり抑制されていただけに先延ばしにも限界があり、下期以降の投資再開を予想する声は少なくない。同社においては、ITアウトソーシングで新規顧客の開拓が進んでおり、また、ビジネスプロセスアウトソーシングでも大口案件終了の影響が一巡する等、もともと業績モーメンタムは良好だ。東日本大震災の影響で一時的な腰折れは避けられないが、方向性が大きく変わる事はないと考える。