ブリッジレポート
(6498) 株式会社キッツ

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ブリッジレポート:(6498)キッツ vol.4

(6498:東証1部) キッツ 企業HP
堀田 康之 社長
堀田 康之 社長

【ブリッジレポート vol.4】2011年3月期第3四半期業績レポート
取材概要「増収ながら減益が見込まれる今期だが、その要因としては、原材料高(銅相場の上昇)、価格低下、鋳鋼バルブの苦戦の3点に集約できる。原材料・・・」続きは本文をご覧ください。
2011年2月22日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社キッツ
社長
堀田 康之
所在地
千葉市美浜区中瀬1-10-1
決算期
3月末日
業種
機械(製造業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2010年3月 96,592 6,976 6,248 3,079
2009年3月 127,095 7,188 6,475 3,396
2008年3月 149,274 11,615 10,525 6,290
2007年3月 149,512 11,342 10,652 9,973
2006年3月 107,631 9,673 9,132 8,070
2005年3月 95,705 9,627 8,513 5,804
2004年3月 73,802 4,181 2,962 1,598
株式情報(2/4現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
380円 109,940,361株 41,777百万円 5.8% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
7.00円 1.8% 27.68円 13.7倍 475.86円 0.8倍
※株価は2/4終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
キッツの2011年3月期第3四半期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
バルブを中心とした流体制御機器・装置の総合メーカー。バルブは、「水道メータ周り」、「ガスメータ周り」、「給湯器」等でよく目にするが、家庭だけでなく、あらゆる産業設備に使われており、同社は素材からの一貫生産を基本に、青銅、鋳鉄、ダクタイル、ステンレス鋼等を素材に数万種をラインナップしている。また、バルブの部材として使用される伸銅品の外販を行っている他、フィットネス事業やホテル事業等も手掛けている。東洋バルヴ(株)、(株)清水合金製作所など連結子会社31社と共にグループを形成しており、海外売上高比率は10/3月期現在で20.9%。バルブでは国内トップ。伸銅品では国内2位のポジションにある。
 
<事業セグメントの概要>
事業は、バルブ事業、伸銅品事業、及びサービスその他の事業に分かれ、10/3期の売上構成比は、それぞれ73.1%、16.8%、10.1%。
 
バルブ事業
キッツグループのコア事業であり、上下水道・給湯・ガス・空調等のライフラインや石油・化学・紙パ・半導体等の産業分野において、流体制御機器として重要な役割を担うバルブや継手を中心に、製造・販売している。
伸銅品事業
伸銅品とは、銅に亜鉛を加えた「黄銅」、すず及びりんを加えた「りん青銅」、ニッケル及び亜鉛を加えた「洋白」等の銅合金を、溶解、鋳造、圧延、引抜き、鍛造等の熱間または冷間の塑性加工によって、板、条、管、棒、線等の形状に加工した製品の総称。キッツグループの伸銅品事業は、黄銅製の材料を用いた「黄銅棒」を生産販売している。この黄銅棒は、バルブの部材を初め、水栓金具、ガス機器、家電などの部材として使用されている。
その他
総合スポーツクラブの経営(フィットネス事業)、ホテル・レストラン経営(ホテル事業)、及びガラス工芸品の販売を行っている。
 
 
 
2011年3月期第3四半期決算
 
 
前年同期比9.2%の増収、同8.8%の経常減益
売上高は前年同期比9.2%増の779.1億円。需要回復と銅相場高騰を受けた製品価格の上昇で伸銅品事業の売上が大きく伸びた他、主力のバルブ事業の売上も国内外で増加した。ただ、材料費の上昇(銅相場の上昇)や円高の影響で売上総利益率が23.5%と1.8ポイント悪化。子会社の増加等による販管費の増加を吸収できず、営業利益が同12.2%減少した。経常利益が同8.8%の減少にとどまったのは金融費用が減少したためで、特別損益の改善や税効果会計の影響もあり四半期純利益は23.6億円と同5.0%増加した。為替レートは、1ドル=89.02円(前期通期実績93.71円)、1ユーロ=116.63円(同130.51円)。電気銅建値は712,000円/トン(同620,000円/トン)。
 
 
主要子会社では、建築設備向けの回復で東洋バルヴの売上・利益が増加した他、半導体製造設備向けを手掛けるキッツエスシーティーが売上の急増で営業損益が黒字転換。また、伸銅品事業を手掛けるキッツメタルワークスも京都ブラスとの合併効果で増収・増益となった。一方、原材料高で青黄銅バルブ等を手掛けるキッツタイが増収ながら大幅減益となった他、官公需の弱さもあり上下水道向け製品を扱う清水合金製作所が損失を計上。石油精製・石油化学向け鋳鋼バルブを手掛けるキッツ閥門(中国)も生産量の減少と採算の悪化で損失を計上した。また、前期に買収した独ペリン社も利益計上には至らなかった。尚、キッツ個別では前年同期比4.5%の増収ながら、鋳鋼バルブの苦戦が響き同17.0%の経常減益。
 
 
バルブ事業
売上高557.4億円(前年同期比6.0%増)、セグメント利益57.6億円(同9.6%減)。国内外で売上が増加した。国内(前年同期比5%増の392億円)では、主力の建築設備向けや機械装置関連向けの回復と半導体関連向けの好調(同88%増)で、上下水道向け(同10%減)、石油精製・石油化学向け(同25%減)、及び食品製紙向け(同4%減)の減少をカバーした。海外(同10%増の165億円)では、北米が同32%減少したものの、アジア向けがタイ・インドネシア向け(同96%増)を中心に同77%増加した他、欧州・その他も09年12月に子会社化した独ペリン社の寄与で同4%増加した。もっとも、北米は年央に在庫調整が完了し回復基調にあり、一方、欧州・その他は独ペリン社を除いた実質ベースでは同27%の減収。利益面では、数量の増加に加えコスト削減も進んだが、原材料高(銅相場の上昇が主因)や半導体関連等の固定費の増加に加え、価格低下(市況に低下に加え、相対的に単価の高い国内の構成比の低下による平均価格の低下)、及び鋳鋼バルブでの採算悪化(10億円を超える減益要因となった模様)等で利益率が悪化した。
 
伸銅品事業
需要増に伴う販売量の増加や銅相場高騰を受けた製品価格の上昇で売上高が145.3億円と前年同期比29.3%増加。利益面では、銅相場の上昇による原価差益の減少を増収効果とコスト削減で吸収し、ほぼ前年同期並みの利益を確保した。
 
その他(前年同期 : サービスその他の事業)
政策効果(高速道路料金の土日一律1,000円)の剥落等でホテル事業(ホテル紅や)の売上が減少したものの、前期に開設した新店舗の寄与によるフィットネス事業の売上増で吸収。ほぼ前年同期並みの売上・利益を確保した。
 
(3)財政状態及びキャッシュ・フロー(CF)
第3四半期末の総資産は前期末比23.7億円増の999.0億円。11年10月の普通社債(60億円)の償還に備え、10年11月に普通社債を発行し60億円を調達した(長期を中心に借入金の返済を進めたため有利子負債全体では28億円強の増加にとどまった)。CFの面では、M&A関連の支出が減ったものの、利益の減少とたな卸資産の増加等による営業CFの減少が響き、フリーCFが前年同期の30.7億円から18.5億円に減少した。社債の発行による資金の調達で財務CFが黒字となり、現金及び現金同等物の第3四半期末残高は119.4億円と前期末比22.0億円増加した。
 
 
 
2011年3月期業績予想
 
 
通期業績予想に変更は無く、前期比8.7%の増収、同12.0%の経常減益予想
3セグメント全てで売上が増加するものの、原材料高に加え、円高の影響による価格低下等で売上総利益率が悪化。子会社の増加や増収に伴う費用増等で、営業利益が同12.6%減少する見込み。配当は1株当たり4円の期末配当を予定(上期末配当3円と合わせて年7円)。
 
 
 
 
 
取材を終えて
増収ながら減益が見込まれる今期だが、その要因としては、原材料高(銅相場の上昇)、価格低下、鋳鋼バルブの苦戦の3点に集約できる。原材料高(銅相場の上昇)については、年間で10億円を超える減益要因になる見込み。海外の市況については、11月から12月にかけて輸出価格を5~10%値上げしており、3月から4月にかけてその効果が現われてくる見込みだ。国内市況は、実際の製品価格の低下は2%程度の模様。しかし、最近の需要の改善と原材料の上昇などで、価格下落リスクは軽減されている。鋳鋼バルブの苦戦については、二つの要因があり、一つはキッツ閥門(中国)の損益の悪化で、もう一つは伊那工場(長野県)で生産している国内製品の価格面での競争力低下だ。キッツ閥門については、10/3期に稼働率の維持を目的に低採算案件を受注した事が今期の苦戦の理由だが、これは一過性のもので、足下、需要増で稼働率は改善傾向にある。また、伊那工場については、価格面でてこ入れの必要な製品について中国への生産移管を進めている。中国へ生産移管するに当たって鋳型の造り替えが必要となるため、現在その作業が進められている。多少時間を要するが、来期の第3四半期末から第4四半期にかけての黒字転換が見込まれている。また、中国マーケットについては、従来のハイエンド市場に加えミドルマーケットについても、順次、市場へ商品を投入していく予定。
以上、今期の業績には現われないが、来期に向けての準備は進んでいる。加えて、8月以降、北米の回復基調が鮮明な上、年明け以降は建築を中心に国内での受注も好調だ。また、アジアも好調を維持しており、今期を底とする業績回復シナリオが現実味を増してきた。